蒼空学園

「隊長も副隊長も不在で、何の作戦をやろうってんだか……ねぇ、トゥリンさん？」
　皮肉しかないターニャことスヴェトラーナ・ミロシェヴィッチ（すゔぇとらーな・みろしぇゔぃっち）の言葉に、トゥリン・ユンサル（とぅりん・ゆんさる）は首を横に振ります。
　空京某所にある軍隊『プラヴダ』の駐屯所に、彼女達は集まっていました。しか招集命令が出されていると言うのに、そこに集まったのは二百を超える隊員の中の二十数名と、その仲間の契約者だけ。
　残りの隊士や、軍に無関係な筈の契約者達まで引き連れた副隊長トーヴァ・スヴェンソン（とーゔぁ・すゔぇんそん）の謎の行動。隊長アレクサンダル四世・ミロシェヴィッチ（あれくさんだるちぇとゔるてぃ・みろしぇゔぃっち）の不在。
　近頃のプラヴダに何らかの異変が起きているのは明白です。
「原因がミリツァ・ミロシェヴィッチだって事くらいはアタシにも分かる」
　トゥリンが眉を顰めて出したのは、先の作戦で唐突に姿を現したアレクの妹の名前でした。
　彼女が現れてから全てがおかしくなっていったのですから、ミリツァ自身にこれといった不審さが見受けられなくとも、何となく胡散臭いものと疑わずにはいられません。
　疑念や不安からかなり弛んだ様子の隊士達を叱咤したのは、派手に改造された軍服に身を包んだ魔法少女でした。
「……整列はどうしたっスか。隊長もトーヴァお姉様も居ないからって皆タルみすぎ！！」
　キアラ・アルジェント（きあら・あるじぇんと）が伴っていた迫力に、プラヴダの隊士は姿勢を正します。残されたまともな状態の隊士の中では一等軍曹である彼女が一番の上官なのです。
「Ａｔｔｅｎｔｉｏｎ！　Ｓａｌｕｔｅ　ｆｏｒ　Ｈｏｎｏｒａｒｙ　ｃｏｍｍａｎｄｅｒ！」
　キアラが号令をかけた敬礼を捧げるべき上官『名誉隊長』の正体が分からずに困惑したままの隊士達、そして軍の独特のノリに付いていけていない契約者の前へ、クラッシュキャップを斜め被りにして軍服にミニスカート、極めつけにラインストーンでデコレーションされたサブマシンガンというフェティッシュなファッションの少女が現れます。
「諸君、よくぞこの場に集まってくれた」
「「…………は？」」
　眉間に皺を寄せた難しい表情……を頑張って作っているジゼル・パルテノペー（じぜる・ぱるてのぺー）に対して、皆は反応しきれません。するとジゼルは「あれ？」と首を傾げました。
「ええと、軍人さんってこんな感じだと思ってたけど違ったのかな……うーん……　
　みんなぁッ！　今日は！　ジゼルのために集まってくれて、ありがとぉッ！！」
　マイクを片手に持ち、ハートのエフェクトが飛び散るようなジゼルの間違った挨拶に、たった二十数名しか残されていない隊士達が、雄々しい呼応で彼女に答えます。さながらアイドルコンサートの体を見せる作戦前の演説に、キアラがジゼルの肩をトントンと叩きました。
「ジゼルちゃ――名誉隊長殿、僭越ながら私が説明を……」
「う、うん。お願いします！」二人は打ち合わせの詰めが大分甘いようでした。
「我らプラヴダの目的は『世界平和の為にジゼル・パルテノペーを全力で守る』事！
　だが近頃の隊の内情は芳しく無い上、この目的を蔑ろにしていると名誉隊長殿は判断なさった。
　そこで我々は私の指揮のもと本日１３：００よりここ空京にて、名誉隊長に捧げる特別作戦を開始する。
　作戦名は『林檎の毒作戦』！！」
　ネーミングが悪役じみているキアラ立てたその作戦は、ジゼルを使ってアレクを籠絡する――要するにハニートラップ作戦でした。異様なカリスマと絶大な戦闘力を誇る隊長さえこちらの陣営へ取り戻せば、姿の見えない敵とも互角に戦えると踏んだのです。
　しかしこの作戦にはアレクを囲う様にしているミリツァの、そして彼女の言いなりになっているトーヴァたちの邪魔が入る事は必至。
　妨害からジゼルを守りきり後押してやる必要があると、キアラは言います。
「以上が本作戦の概要である。正面からやってこない卑怯な敵から名誉隊長を守りきり、我らが総隊長を正義へ取り戻すぞ！」
「『お兄ちゃん』に相応しい真の妹キャラはこの私！
　シスコン野郎のハートを狙い撃ってやるんだから！
　皆、私に協力してくだ……しなさーーーーーーい☆☆☆」
「「うおおおおおおっ！！！　ジゼルちゃん！　ジゼルちゃん！　ジゼルちゃん！」」

＊

　丁度同じ頃、ザンスカールでは……。

「「ミリツァ様！　ミリツァ様！　ミリツァ様！　ミリツァ様！」」
　地面を割る様な声の中、壇上に現れたミリツァが「静まりなさい」と手を掲げます。その姿を目にしただけで激しい感動に駆られる彼等に、ミリツァの隣に控えていたトーヴァが、状況を説明します。
「――という訳で我ら『白の教団』は、これより空京にてプラヴダを迎え撃つわ。
　甘い考えでノコノコやってきた人魚姫の偽物の足を、銃弾で八つ裂きにしちゃいましょう」
　不敵に笑うトーヴァの横から、ミリツァがもう一度顔を出しました。何時もは気高さと自信に溢れたその瞳はウルウルと濡れ、どこか守ってあげたくなる……そんなオーラが溢れ出していました。
　そう、これこそが彼女の持つ妹力だったのです！
「このままでは私、またお兄ちゃんを取られてしまう。
　助けてくれる？　だって皆は、私の大切なお友達なのでしょう」
「「お任せ下さい！　全てはミリツァ様の為に！！」

＊

　 一方は仲間達を取り戻す為に。見えない敵と戦う為に。
　一方は謎の力に導かれて。
　お兄ちゃんの真の妹の座を賭けて、出撃を開始する彼女達。今、聖戦の幕が切って落されるのでした。
　

　こんにちは、東です。
・本シナリオは【茨姫は秘密の部屋に】の続きに当たるシリーズの二回目（全三回）です。ですが特に制限も無く何処からでも入れる仕様です。気負わず楽しんでアクションを掛けてみて下さい。
・今回はジゼルのデートをプロデュースしたり、白の教団の邪魔から庇ったり守ったりしてジゼルのデートを成功に導く事が目的です。
・前回【白荊に絡めとられた】という称号を配布された（闇落ち）キャラクターは、白の教団（ミリツァ陣営）で敵対アクションを行って下さい。

＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊

【場所】
　移動出来る場所は空京のみです。飲食店、公園、ショッピングモールの施設など有り得そうな場所を好きなように上げてみて下さい。
　なお、楽しくぶっ飛んだものや現実なら丸一日なければこなせないようなイベントは一部可能ですが（プールなど）、確実に日にちを跨ぐようなものや、人間として余りにおかしいものは作戦として却下されてしまう可能性があります。


【ＮＰＣ・１】
プラヴダ
［ジゼル・パルテノペー］テレパシー（＊）でキアラと通信し、指示に従って行動します。しかし本人の性格上暴走する場合も……。
＊スキルとしてセットしていなくても、ジゼル陣営の作戦参加者であれば問題ありません。

［キアラ・アルジェント］本作戦の隊長です。作戦指令本部（と言いながらその辺のカフェなどを移動します）から、ジゼルやプラヴダ、時に契約者のＰＣさんに指示を出します。

［トゥリン・ユンサル］ジゼルの行く場所に先回りし、彼女の行動が上手くいく様に行動します。

［スヴェトラーナ・ミロシェヴィッチ］白の教団が実力行使に出た場合の為に、ジゼルのガードとして、密かに彼女の近くに控えます。

＊
白の教団
［ミリツァ・ミロシェヴィッチ］アレクがプラヴダに呼びつけられたと聞いて作戦を察知。『友達』たちに守って貰い、邪魔して貰うようにお願いしました。またジゼルはアレクのパートナーである為殺すつもりはありませんが、『多少』肉体を傷つけても構わないと思っているようです。見えない空間をも把握し、策敵する特殊能力が有るようですが、こちらは集中していないと使用することは出来ません。

［トーヴァ・スヴェンソン］ミリツァの行動が上手くいくように働きかけ、時にはジゼル本人を傷つけるような行動にでます。

＊

［アレクサンダル四世・ミロシェヴィッチ］キアラから決算報告があると呼び出された場所にはジゼルが居て、ミリツァまでついてくる。仕事は……？と内心疑問に思いつつも、取り敢えず彼女達の好きなようにさせています。
しかし実際何も気づいていない訳では無く、適当な行動を取りつつトーヴァ達の洗脳解除を狙っています。信頼する相手には協力を申し出る場合も……。

＊洗脳解除について
　ミリツァが空間把握能力を使用すると、原因が洗脳されたキャラクターの肉体に石の形を伴って発現し、破壊が可能になります。また、ジゼルの歌でも破壊する事が可能です。それらについてはアレクのみが気づいている状態です。


【ＮＰＣ・２】
　ジゼルの友人のＮＰＣをお助けキャラクターとして呼び出す事が出来ます。
　こちらのアクションをかける場合、ＮＰＣ描写枠としてＬＣの追加をお願いします。該当の追加分ＬＣはリアクションで描写されません。予めご了承下さい。
（＊以下のキャラクター以外は呼び出す事が出来ません。）
　雅羅・サンダース三世　　　高円寺　海
　キロス・コンモドゥス　　　夏來　香菜　　　　南条　琴乃
　アリサ・ダリン　　　　　　仁科　耀助　　　　泉　美緒

・ジゼルのファッションをプロデュース！

・ジゼルちゃんのボディーガード！？

・ミリツァ様の為に！