「たっ、大変です! ペーパ博士が少女達をつかって、クリスマスへの反逆を始めました!!」
空京署内に駆け込んできた下っ端の声を聞き、大柄な男は「ついに動き始めたか」とにやりと笑みを浮かべました。
男、泡銭 平助は前からこの博士が何かやらかすのではと睨んでいたために、この事態は予測済みでした。
空京署から出るなり、平助は驚愕しました。
デパートやおもちゃ屋からは煙が上がり、街の人々は悲鳴を上げながら逃げ回る、まるで戦争でも起きているかのような騒ぎでした。
「……おい、あそこでぞろぞろとしてるのはなんだ」
「わかりません……分かりませんが、普通じゃない何重ものフリルを着た魔法少女や、漫画の世界から出てきたような少女達……
たくさんの少女たちをおもちゃ屋や宝石店を襲わせてるようです」
「どういうことだ! あの非リア充の博士がどこから少女を調達した!?」
§
「そうだ、 この世界すべてからプレゼントを奪え!!」
とあるビルの最上階、白衣に身を包んだ長身の男は少女達に向けて命令を告げます。
少女達が命令に頷き地上へ降りていくのを見届ける中、地上に平助を見つけました。
「……ふんっ、やはり来たかデカ助」
「持ってきました、ドクターペーパ」
男は振り返ると、コンパスや分度器などを手に持ったぶっきらぼうな助手が立っていました。
まさに今デパートやおもちゃ屋を襲っている少女達は全てこの”文房具”が擬人化したものなのです。
「私の優秀な発明品”擬人化光線”による文房具娘達……はたしてお前らに止めら――ん?」
ペーパ博士は慌てて、白衣のポケットを弄り始めました。
その表情からは思わぬ事態だと言わないばかりの焦りが見えます。
「博士、心拍数が10上がっています。落ち着いてください」
ペーパ博士はぴたりと動きを止めると、「くっくっく」と薄気味悪い笑みをし始めました。
「くくくっ、、お、落としちまったんだぜ」
「額から汗をだらだらと流しながら、平然を装わないでください。もはや気持ち悪いです」
「きっ、気持ち悪い!?」
「うるさいです。まあ、聞かなくても分かりますが念のため……何を落とされたのですか?」
「……擬人化光線銃だ……まあ良い。これだけの文房具娘達がいるのだからな!」