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リアクション
〜プロローグ〜 ハサミ娘
「ドクターの命令よ! みんなきりきり働いてっ!」
「わりぃなお嬢ちゃん達、クリスマスパーティーは終わりだ」
えっさえっさと慌ただしく働く文房具娘達に指示する少女に、ボロけた外套を着込んだ泡銭 平助は言った。
聞かれた少女は、少し不服そうな表情を浮かべながら男を見る。
「あんた、何?」
「なぁに、怪しい奴じゃねぇよ。ただ警察のもんだ」
「――!」
少女は髪の毛を逆立てると、手には身長ほどある大きなハサミが現れた。
「野蛮なやつだ……だがこいつらを野放しにするわけにもいかねぇからな」
平助はハサミ娘を前に、拳銃を向けようとしたときだった。
遠くからけたたましい警報音を鳴らしながら、赤いドレスを身にまとった少女が駆け寄ってくる。
その後ろにはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が付いてきているようだった。
サイレン音はビル屋上に居る、ペーパの元まではっきりと聞こえてくる。
「なんだ!? 何の音だ!?」
助手と共に”擬人化光線銃”を探していた手を止め、ペーパはビルからセレンフィリティ達の方へと見下ろした。
回転灯をつけた帽子を被りサイレンを鳴らしながら走る少女を見るなりペーパは声を張り上げました。
「あれだ!!」
「あれ……と申されましても。刑事と冬なのにロングコートの下にビキニを着た寒そうな女性方がいるだけですが……」
「あいつら! 俺の落とした擬人化光線銃で”消防車”を擬人化させたんだ!!」
「……ここぞとばかりにプレゼントらしい包み物を運んでるわね」
「さっさとこの騒動終わらせて、買い物に戻りたいわ」
セレンフィリティは軽くため息をつくと、隣の少女を見下ろした。
「さて、じゃあ任せたわよ?」
「はい!」
消防車娘はセレンフィリティの期待に覇気のある声で答えると、背中のリュックから大きなホースを取り出す。
「出力全開ですっ! 放水っ!!」
「きゃあああっ!」
消防車娘のホースから飛び出た水は、おもちゃ屋へ群がっていた文房具娘達へと発射される。
水圧の勢いに負け、文房具娘の3分の1が店の外壁へと押しつけられる。
辛うじて避けたハサミ娘は、ハサミを地面に突き立て杖代わりにして立ち上がる。
「くっ……あっちも擬人化光線銃を持ってるってことなの?」
「へえ〜擬人化光線銃って言うのねこれ」
セレンフィリティはその言葉を聞き、何も知らないとばかりに感心していた。
その隙をハサミ娘は逃さないとばかりに声を張り上げた。
「残ってる文房具娘隊! あの人達へ突撃よっ!!」
水圧から逃げ切れた娘達はそれぞれの武器を持ち構え、一斉に消防車娘とセレンフィリティ達へと走り出す。
消防車娘は先ほどのホースの攻撃ですぐに動き出せる状態ではなく、慌てていた。
「ど、どうしましょう」
「目を少しつぶるのよ!」
「へ」
セレアナが叫ぶと、瞬く間に目の前でフラッシュが起こる。
セレアナの放った”光術”は見事に文房具娘に直撃したのか、何人かの娘達は目を開けられず座り込んでいた。
しかし、それも小規模なものでハサミ娘は再び消防車娘へとハサミを振りかざしたときだった。
「はい、そこまでっ!」
「なっ――」
不意に聞こえてきた背後からのセレンフィリティの声に、ハサミ娘は思わず驚いた。
背後に付いてきていた他の文房具娘達は何故か地面に倒れていた。
消防車娘へと向けられたハサミを横にひねり、セレンフィリティへ向ける。
だが、それよりも先にセレンフィリティの”ヒプノシス”が眠気となりハサミ娘へと襲いかかった。
「そん……なばか……な……」
「あまり傷つけることなく済んでよかったわ」
「これで、しばらくは大丈夫でしょ。その間にこの騒ぎを起こした奴さえ捕まえれば」
「消防車さんも、お疲れ様」
「はいっ!」
消防車娘は倒れた文房具娘達を道ばたに寄せながら答える。
「仕事柄も性格として現れるみたいねそれ……ってあら、セレンあの光線銃みたいなのは?」
「さあ?」
セレアナの指摘に、セレンフィリティは首を傾げた。
確かに先ほどまでロングコートのポケットに突っ込んでいた”擬人化光線銃”の姿はなくなっていた。
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