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リアクション
〜2〜 千枚通しとカッターと暴走ビル
「こっちだね〜」
シャンシャンと鈴の音を響かせ、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナーノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は”サンタのトナカイ”に乗って”導きの小鳥”の後を付いて行く。
ノーンの狙いはペーパ博士に直接会うことだった。
「だああああああああああああああああああっ!!」
「なっ……何!?」
暫くしてのことだった、下から何かが飛んできたのを”オートガード”がはじき返した。
慌ててノーンは攻撃してきた何かを確認すると、鋭い槍を持った少女だった。
「な、なにかな!?」
「ここから先はペーパ博士へは指一本触れさせません!」
「ワタシ、ただサンタクロースさんの代理でプレゼントを持ってきただけだよ!」
「サンタクロース……さん?」
何の事かよく分からず、じろじろと槍を持った少女はノーンを見た。
その特徴的な槍から、千枚通し娘らしかった。
「ダメです、プレゼントって言って怪しい物を渡すつもりかもしれません」
「む〜っ」
どうしたものかとノーンは頭を抱えたときだった、今度は背後から何かが通り過ぎ千枚通し娘へとぶつかる。
大剣とも言える大きなカッターが、千枚通しを捉えていた。
「千枚通しさんも、さすがにカッターには勝てないよねっ!!」
「やってくれますね……でも、私は最強の矛ですよ?」
「なにをお! こっちだって最強の矛だよっ!!」
カッター娘と千枚通し娘のにらみ合いが始める中、カッターを擬人化させた張本人である鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)がパチンという手を叩く音が響いた。
「どうだろう、ここは正々堂々と戦って最強の矛を決めるっていうのは」
「…………良いでしょう」
疑いの目を貴仁に向ける千枚通し娘だったが、それよりも勝負に気を取られたのか小さく頷いた。
「では両者構えて……始めっ!!」
カッターと千枚通しは再び火花を散らす。
§
その頃、近くでは衣草 玲央那(きぬぐさ・れおな)とネルソン・グリドゥン(ねるそん・ぐりどぅん)が興味深そうに、”擬人化光線銃”を眺めていた。
「これを当てた物は女の子に……」
そう言いながら、玲央那は近くにあるビルや店を見上げる。
ネルソンはそんな玲央那に慌てて「まった」をかける。
「もしも、取り返しの付かないことになったらどうするのだよ。やってしまったでは遅いだろう?」
「うーん、でも光線銃自体は小さいわけだし……たぶん大きい姿のままになるとかそんなことはないよね!」
「どっからその自信はわいてきた!?」
びっくりするやらのネルソンをよそに、玲央那は光線銃のトリガーを迷わず引いた。
光線銃の先は大きな30階建てのビルに向けられていたのだった。
§
「っ!!」
未だにカッターと千枚通し娘の勝負は決着が付かず、それをノーン達はただ呆然と眺めていた。
「これって、もしもずっと勝負が決まらなかったらどうなるの?」
「それは考えていませんでしたね……じゃんけんでしょうかね」
「えっ、じゃんけん?」
貴仁の言葉にノーンは驚く。
そのときだった、遠くからゆっくりと重みのある音が近づいてくるのに貴仁達は気がついた。
「なんでしょうかね、ビルが近づいてきているような……気がしますが」
ノーンは音の原因を探るべく再びサンタのトナカイに乗り、空へ上がると呆然とした。
巨大な女の子がこちらへと向かってきていた。
「しょぉーぶ? わたーしーもまーぜーてー!」
響くような高い声で、ビル娘はカッターと千枚通し娘へ声を掛ける。
しかし、そのあまりの圧巻と声に2人は思わず顔を見合わせた。
「さ、最強の矛ならビルくらい、つ、突き通せますよね!」
「最強の矛は千枚通しさんだよね! はい、頑張って!」
「わ、私はもう負けました! 降参です!」
「えーっ、ちょっと!?」
と言ってる間にもゆっくりとビルは町並みを道路を壊しながら、地響きを鳴らしながら歩み寄ってくる。
歩くだけ町が壊れる惨状に、玲央那もようやく事の不味さに少し焦りを感じ始めていた。
「すとーっぷ! とーまーれー!」
「ダメだ! 大きすぎて声が届いてないのだろう!」
玲央那はビルの足下で声をあげ、なんとか制止しようとするが反応はない。それどころか、千枚通し娘たちを追いかけることに夢中なのだろう、玲央那とネルソンは踏みつぶされそうになる。
「どうしたの?」
騒ぎを聞いてか、ノーンと貴仁が玲央那の元に駆けつける。
玲央那は「実は」と照れ笑いを浮かべながら、状況の説明をするのだった。
「……なるほど、声が届かないなら、顔の近くで声を出したらどうでしょう? ビルの上からとか」
一番に突破口を上げたのは貴仁だった。
「でも、あんなに動いてたらビルに上ったりしてる間に踏みつぶされてしまうわ」
「それなら、あの子たちに頑張ってもらいましょう」
そういいながら、貴仁は巨大なビル娘から逃げ回る千枚通し娘たちを指さした。
すると、ノーンは「はーい、はいっ!」と小さくはねながら手を上げる。
「空なら任せて! ビルまで登らなくても、ワタシのソリでひとっとびだよっ!」
ノーンが”サンタのトナカイ”を指さす。
これで、何とかなりそうだった。貴仁は大きな声を上げた。
「カッターと千枚通しさん! 2人で協力してそのビルさんを止めてください!!」
「へっ」
「え……私も!? 敵の私が何で――」
突然の貴仁の言葉に2人は戸惑いを隠せない。
千枚通し娘にいたっては敵を助けるということにためらいがあるようだった。
「踏みつぶされたいの?」
「うぐ……」
カッター娘の言うこともそのとおりで、カッターはしぶしぶ従うのだった。
「あーーーもうっ! せーので行きますよ」
「りょーうかーいっ!」
2人は一斉に振り返ると、カッターと千枚通しをビル娘の足元へと反撃する。
「ぎゃ!! やってくれたぁなぁああああっ!」
ビルは思わぬ反撃に地団駄を踏み始める。
「おーいっ! こっちこっちー!」
”サンタのトナカイ”で空を飛びながら、ノーンはビル娘に声をかけると、ビル娘はようやく声が聞こえたのか反応を返した。
「おうっ?」
「すとーっぷ! あなたが暴れると大変なことになるからひとまずすとーっぷ!」
その後ろで、玲央那が声を上げてビル娘に呼びかけた。
「えええっー、せっかく勝負できるとおもってたのにぃー」
その後、玲央那は何とかビル娘を説得し静かにさせることができるのだった。