天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

【DarkAge】エデンの贄

リアクション公開中!

【DarkAge】エデンの贄

リアクションが公開されました!

リアクションの閲覧はこちらから!

リアクションを読む

参加者一覧を見る

シナリオガイド

そこはクランジに支配されたもうひとつの『未来』。闇の時代に見いだせるのか、光を。
シナリオ名:【DarkAge】エデンの贄 / 担当マスター: 桂木京介

 雫が落ちてくる。
 一滴一滴、閑散とした劇場に響く不揃いな手拍子のように落ちてくる。
 ずっとこの音を聞いていたら気が触れそうだ。彼は意識から水音を消し去るべく、鉄格子の外に注意を向けた。
 外は、死んだ鼠のような色をした分厚い雲が広がっている。太陽の姿など、その一部ですら拝むことができない。普段と変わらぬ光景だ。ここ数年、うんざりするほど見てきた眺望だ。
 まだ水音は聞こえる。
 そもそも2024年のしかもこの場所に、こんな『モンテ・クリスト伯』じみた石牢があること自体が異様だが、そのうえ常に、どこかから水漏れがあることも異様であると彼は知っていた。
 なぜならここは、地上数十メートル上方の空に浮く人工島なのだから。
 浮遊大陸パラミタ(それは現在、人の居住しうる唯一の大陸でもある)のさらに上に浮遊する砦、そのすべてが囚人収容施設、すなわち監獄なのである。
 砦はヨーロッパの古城めいた外観で、作り物ながら周辺の岩場もまとめて空にある。
 そうやって、かつて繁栄を享受した空京上空から威圧しているのだ。かの地に肩寄せあって暮らしている被支配民族……機晶姫以外のすべてを。
 まさに現代のバスチーユ、逆らえばいつでもここに収容するという警告(メッセージ)なのだ。
 あまりに直線的だが無駄のないメッセージといえよう。支配者、とりわけその特権階級であるクランジたちは無駄を好まない。
 一方でいびつながら、クランジには皮肉のセンスもあった。
 彼女ら……その長であるクランジε(イプシロン)は、この浮遊監獄島を『エデン』と名づけていた。
 ――俺たちはいわば、エデンの贄だ。
 淀む黒雲を眺めながら山葉 涼司(やまは・りょうじ)は思った。
 伸ばし放題の口ひげに埋もれた口元がわずかに歪んだ。それは皮肉か、自嘲か、それとも諦観によるものか……それは自分にも判らない。
 涼司の背後で閂が外される音がした。そのごとりとした金属音を聞くのはいつ以来だろう。
「出ろ」
 背の低い少女が戸口にあった。金髪に青い目、フランス人形のように整った顔立ち、しかしその瞳の奥には青白い怒りが、炭火のように燻っている。ぴったりとした黒い軍服を着、威圧的なデザインの黒い軍帽を目深にかぶっていた。
 クランジπ(パイ)だ。
 天使のような顔立ちながらπは、人間に深く怨みを抱いているという。そのサディスティックな行動は天使どころか、悪魔のそれに近いと言われている。そのπが、縊り殺してやるとでも言いたげな目で涼司を睨みつけている。
 ――ようやく処刑のときが来たか。
 涼司はそれを待っていたかのように両腕を伸ばし前方へ差し出した。首につけた能力制御プレートが鈍い金属音を立てた。
 このときπの連れた猛獣が低い唸り声を上げた。まるで「違う」とでも言うかのように。
 黒い獣をなだめるようにその背を撫でると、πは目を怒らせた。今度は炭火ではない。はっきりとした憎しみの焔だ。
「ζ(ゼータ)……所長が、『会う』と言ってる」
 πはそれだけ告げると顎をしゃくった。来い、と言っているのだ。πは黙ったまま、ビーフジャーキーを口に咥えている。
 獣が吼え声を上げた。πの許しさえ出れば、彼女は今すぐにでも涼司の首をねじり切ってしまうだろう。
 彼女、である。獣は文字通りの獣ではないのだ。目に理性の光なく、言語を解さず、けだものさながらに生きてはいるが、まぎれもないクランジの一族である。伸びきって酷く汚れた黒髪の下には、濁った半開きの目があった。きれいに開かれていたとしたら、きっと、美しい瞳であったに違いない。
 獣のような機晶姫は、名をクランジρ(ロー)といった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 すべてが狂いはじめたのは2020年の秋のことだった。
 蒼空学園とイルミンスール魔法学校が、夏祭りを共同開催した夜……あれがこの世界にとって最後の、幸せな記憶だったかもしれない。
 その直後、御神楽環菜が暗殺され、これを口火とするかのように様々な悲劇が世界を覆った。万人の万人に対する闘争が具現化したのだ。最悪の形で。
 今や地球の大半は核兵器によって蹂躙され、人の住める地域などほとんど存在しない。
 唯一、核を逃れたパラミタも、混乱に乗じた塵殺寺院によって分断され、焼かれ、その多くが寺院の支配を受けるに至った。
 だがその塵殺寺院が、手勢としていた殺人機晶姫『クランジ』に支配権を奪われ、滅亡することになるなどと、誰が想像できただろうか。
 かくて、呪いの時代が到来した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 空京。
「また……」
 声に苛立たしげな色が混じるのを、クランジο(オミクロン)は隠そうとしなかった。
「また私の邪魔をするのかッ……!」
 οはクランジの人狩り部隊の指揮官である。黒い軍服はπと同じだが、魔女のような三角帽を斜めにかぶっていた。
 本日οは、レジスタンスに参加している人間の追跡を行っていたのである。廃墟となった町外れまでたどりついて、ようやく彼女は自分たちが罠にはめられたことを知った。
「ここここれはオオゴトですよう〜!」
 同行者のクランジτ(タウ)が、舌を噛みそうな口調でοに訊いてくる。τの両目は栗色の前髪の下で、その表情はうかがえないが、狼狽していることは態度と口調で十分すぎるくらい理解できた。まるで水に落ちた猫だ。
「R……」
 暗がりから姿を見せたのは、οの想像通りの人物だった。
「また私の邪魔をするのか、ξ(クシー)!」
R U(are you) OK? My SIS(sister)? 姉さんオ久しブリ!」
 そのクランジ……οの血を分けた妹……クランジξ(クシー)はどこか金属的な声で笑った。
 ξとοは、まったく同じ顔だ。ともに機晶姫化される以前の素体は人間で、しかも双生児だったためである。
 しかし、同一なのは逆に言えばそれだけだ。黒いロングヘアのοに対し、ξは桃色と青に染め分けウルフシャギーにしたショートヘア。服装だって、軍用コートの姉とは正反対、妹はホットパンツにブーツ、迷彩柄のタンクトップである。気温がおかしくなり冬が冬らしくなくなって何年も経つとはいえ、それでも肌寒い扮装であろうに。
 ついでに言えば表情もまるで逆だ。οは真顔、ξは笑顔。そして立場も一致しない。姉はクランジの一員として人間を狩り、妹はレジスタンスの一員として、そんな姉と戦っているのだ。
「なぜ人間になど手を貸す……いずれ滅びゆく連中に。我々クランジこそがこの世界の覇者だ」
「OK、OK、SIS、ソノ考え方がアタシには気に入らナイ。Don’t U understand? アタシは思い上がったヤツは嫌いなのサ、とりわけ、そいつがアタシと同じ顔しているとあっちャネ!」
 量産型の数が足りない――οは手勢を振り返り思考を巡らせた。無人格な灰色の戦闘機晶姫を、この日οは二体しか連れてこなかった。あとの味方はτだけ。包囲されたとすれば危険だ。
 そんなοの逡巡を見逃すξではない。
「注意一秒怪我一生のGO to Heaven!!」
 ぱっと跳躍すると同時にξは、己の右腕を投げ捨てていた。実際にはその肘から下を外し、そこに仕込まれた刃を抜き放っていたのだ。
 一颯。風を呼ぶような一撃がοの頭部めがけ叩き込まれる。
 だがοも並の使い手ではない。瞬時にして彼女も左腕を捨て、濡れたような光沢を持つ刃を剥き身にして攻撃を受けた。激しい火花が散った。
 半身を逸らし反撃に出ようとしたοだが、その眼前でξが、二カッと笑ったのに気づいた。
「SIS、アノ子を忘れてル!」
 οの両脚がたちまち凍り付いた。比喩ではない。本当に凍り付いたのだ。正しくは、両足と腰のあたりが。
「……こいつを倒せば、少しでもボク、心が軽くなるよね……?」
 物陰から現れたのはこの場で四人目のクランジであった。外ハネした髪は鮮やかなほどの赤毛、美少女といっていい顔立ちだろう。しかし、その顔色は冴えない。目も、不安そうにきょろきょろしている。
「あー、そういうコト。でも、なんか暗いヨネ? λ(ラムダ)ハ」
「……暗く、ないよ……だって、だってボク…………」
「Oh、ゴメン。悪気、ナイヨ。だから……その、泣くナっテ!」
 ξは溜息をついた。赤毛の彼女はクランジλ、心に大きな傷を負っており、それゆえか些細なことでも、それこそ戦闘中であっても、突然泣き出すなど不安定なところがあるのだ。それでも、ξが行動を共にするようになって随分とマシになったのだが。
 ξは舌打ちした。λのことではない。いつの間にかτが、体内から高い熱を発生させ、熱くなった両手でοの氷を溶かしているのに気がついたからだ。
 罠に誘い込むところまでは良かった。だが、そこから畳みかけるのに失敗した。
 ――SISと決着をつケるのハ、今度にシた方がいいカモ。
 これがξの出した結論だ。『エデン』の襲撃計画が実行に移されるまでは、無茶をしたくなかった。

 だがそれほど遠い先ではない。計画(オペレーション)は、数日後には開始される。

担当マスターより

▼担当マスター

桂木京介

▼マスターコメント

このシナリオは『プレミアム シナリオ』となり、MCとLCの参加ポイントが他のシナリオと異なりますのでご注意ください。

 マスターの桂木京介です。
 本作は、舞台こそパラミタであり空京近辺を扱ったものではありますが、通常の世界観(以下『正史』と呼びます)とはまったく異なるクランジが恐怖政治を敷く平行世界を描いたifシナリオとなります

【クランジとは】
 桂木京介がこれまでのシナリオで幾度となく描いてきた機晶姫の一族です。そのほとんどすべてが女性型で、いずれも何らかの特殊能力を内臓しています。
 クランジは元々、塵殺寺院が開発した殺人機晶姫の一群に過ぎませんでした。便宜上『一族』と称しましたが血縁関係にあるわけではありません。ただ、彼女らは互いを『姉妹(シスター)』と呼ぶ傾向にあります。
 性格はバラバラで対立する者同士も多く、クランジたちは決して一枚板ではありませんでした。正史の世界では、契約者らに保護され、改心して通常の学生生活を送っているクランジも少なくありません。
 ですが本シナリオでは、大半のクランジが契約者に対する敵です。

【シナリオ概要】
 過去に私(桂木京介)が担当したシナリオに『切なくて、胸が。 〜去りゆく夏に』(2020年8月末)というものがありました。本作はそのシナリオ直後から正史と枝分かれした歴史を持つディストピアが舞台となっています。
 この世界を支配するのはクランジです。彼女たちは2024年現在では監視国家を築き上げています。正史のクランジたちは内紛によって規模を縮小させていきましたが、この世界ではカリスマ的リーダー『クランジε(イプシロン)』が存命しているため、組織的に動いて悪夢の歴史を実現させることに成功しました。
 クランジたちは定命の存在を計画的に根絶やしにしようとしています。なぜなら彼女たちにとっての究極の目的は、いずれ機晶姫だけの世界を作り上げることにあるのですから。
 クランジが支配のシンボルとしているのが空京上空に浮かぶ監獄島『エデン』です。エデンがどのような原理で浮いているのかはわかっていません。
 本シナリオはこのエデンを内外から突破し、叛乱の狼煙を上げることを基本的な目標とします。

【世界について】
 地球の大半は人が住めない状態になり、浮遊大陸パラミタそのものも究極的に環境が悪化しています。
 機晶姫が世界を支配しており、クランジが支配階級、それ以外の機晶姫は市民階級、機晶姫とパートナー関係を結んでいる契約者およびそのパートナーまでは二級市民という扱いですが、それ以外の者はかろうじて自給自足に近い状態で生きながらえているものの基本的人権は与えられていません。その大半が空京に暮らしています。
 無論、契約者たちとてこの状況を甘受しているわけではなく、シナリオガイド中でも描かれたようにレジスタンスの組織が出現しており、その中には、(体制側にとって)裏切り者のクランジも含まれています。
 かつてのシャンバラ教導団学舎が『総督府』という名称でパラミタ支配の中心的役割を果たしており、クランジεもそこにいると考えられていますが、本シナリオでは総督府までは描写しません

【このシナリオで選べるキャラクター】
・正史とは異なるDarkAge世界のPC
 2020年の秋からの人生は、正史の2020年以降とは違います。その影響で、性格や指向に変化があってもおかしくありません。エデンの囚人として登場することも、叛乱軍の一員として登場することもできるでしょう。パートナーに機晶姫がいるなら、二級市民という存在になることもできます。
 エデンの囚人である場合、板のような能力制御プレートを首に取り付けられているためスキルを使うことができません。

・DarkAge世界のパートナー
 正史と同じパートナーであっても構いません(その場合、契約者PC同様性格などに変化が出ていることでしょう)。
 あるいは、DarkAgeの歴史で新たに登場した本シナリオ・オリジナルのキャラクターであってもいいでしょう。

・DarkAge世界の一般人
 完全な一般人というのもいいでしょう。この場合も本シナリオ・オリジナルのキャラクターとなります。
 ただしその場合身体能力は一般人並で、アイテムやスキルなどを使うことはできません。

 ※本シナリオ・オリジナルのキャラクターを用いるときは、手段欄に名前や口調など簡単な設定をお書きください。

 なお、本シナリオは平行世界の物語であるため、キャラクターが死亡するという展開もありえます


【公式NPCについて】
 山葉涼司以外のNPCは2024年現在すでに死亡、行方不明、あるいは政治犯として『エデン』に投獄されており、登場しない予定です。御神楽環菜は死亡したままです。実力者の金鋭鋒やハイナ・ウィルソンのような存在は真っ先に命を奪われ、現在では墓石すらありません。

【桂木担当NPCについて】
 小山内南、カエルのカースケ――エデンに囚われています。

【クランジNPCについて】
クランジπ、クランジρ――人間に深い恨みを抱いているため、凶暴な敵として立ちはだかります。πは破壊能力を持つ超音波を口から放つことができ、ρは知性を失い獣のような存在ですがすさまじい怪力を発揮します。この二人は常に一緒に行動します。
クランジζ――『エデン』の所長です。超学習能力を有しており、眼前の人間の能力をコピーすることができます。
クランジκ――他の人間の姿に変身する能力を持つクランジです。黄金の半仮面を目に当てることが変身の引き金です。
クランジο――秘密警察人間狩り部隊の指揮官です。戦闘に長けており右腕を肘から外すとサーベルが出てきます。
クランジτ――腕を高温まで高め、触れる者を焼き殺すヒートハンドを持つクランジです。οの部下ですがやや消極的な性格です。
・量産型クランジ――自意識を持たないロボットのようなクランジです。顔はありますが目は入っておらず、全身が灰色の一色です。簡易的な電磁鞭を装備しています。
クランジυ(ユマ・ユウヅキ)――腕から槍のような鉄串を発射することのできるクランジです。『エデン』で働いていますが人間たちには同情的です。クランジの前では名乗りませんが、人間風の偽名『ユマ・ユウヅキ』を密かに気に入っています。

【クランジにおける協力者NPCについて】
クランジξ――「οのやっていることが気にくわないから」という理由でレジスタンスに協力しているクランジです。οの双子の妹で、左腕にサーベルを仕込んでいます。
クランジλ――冷凍光線を吐くことのできるクランジです。精神のバランスを崩しておりしばしばパニックを起こしますが、戦闘になれば頼もしい存在です。
クランジφ(ファイス・G・クルーン)――夏祭りで人の心に触れ、改心したクランジです。腕から電磁鞭を出すことができます。展開によっては登場しませんが、登場した場合、レジスタンスに加わると思われます。

【シナリオのシリーズ化について】
 シリーズのようなタイトルにしていますが、現在、シリーズ化するかどうかは未定です。皆様のアクションを見てリアクションのまとめに入ってから決めたいと思います。
 ですので、単発シナリオとの前提で参加していただけると幸いです。
 シリーズ化した場合、ご招待をお送りする可能性があります。


 以上、今回は変則的なシナリオですが、楽しんでいただければと思います。
 皆様のご参加を楽しみにお待ち申し上げております。

 次はリアクションでお目にかかりましょう。
 桂木京介でした!

▼サンプルアクション

・政治犯として収容されているが脱獄する

・レジスタンスの一員として行動する

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2014年02月28日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2014年03月01日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2014年03月05日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2014年04月09日


イラストを設定する 設定イラストを編集/解除する

リアクションが公開されました!

リアクションの閲覧はこちらから!

リアクションを読む

参加者一覧を見る