蒼空学園

　葦原島。
　この島に“ブライドオブ”シリーズのひとつ、ブライドオブハルパーがあるという情報を入手していたハイナ・ウィルソン（はいな・うぃるそん）は、自身が総奉行を務める葦原明倫館で手がかりを集めていました。
　片っ端から目についた文献と格闘していたハイナは、その中に明倫館の誰も知らなかった事実を発見します。
「これが本当なら、ブライドオブシリーズだけじゃなく、葦原にとっても大きなニュースでありんす」
　震える手でハイナが見ていたのは、葦原城付近と思われるものの見取り図でした。
　思われる、としたのは、そこに葦原城は描かれていなかったからです。それはつまり、葦原城が建てられる前、相当古い時代に記されたものであるということです。
　そこに描かれていた図面は、ハイナを驚かせるのに充分すぎるものでした。
　見取り図と今の葦原城が建っている場所を照合した結果、彼女が知った事実。

　それは、この葦原城の下にもうひとつ、城があるということです。

　もしこれが何千年も前からのもので、今も残っているのなら、ブライドオブシリーズもこの場所にあるかもしれない。そう思ったハイナは、急ぎ資料室を飛び出しました。
「灯台most暗しとは、このことでありんすね……！」
　ブライドオブシリーズが古王国時代から存在するものであることと、誰も知らなかった城が古より建っていたこと。このふたつの事実に、彼女は偶然以外のものを感じずにはいられませんでした。
　ハイナは急ぎ、調査隊結成のため、各学校に知らせを出しました。
　ちょうどその頃、鏖殺寺院の一派ブラッディ・ディバインも葦原島のブライドオブシリーズを狙っているという情報が入ったことも、彼女を急がせた一因でしょう。

　葦原城の地下に、もうひとつ城がある。
　その知らせと探索の依頼はもちろん、葦原の生徒たちの耳にも入っています。
「なあ、晴明。お前アレ行くか？」
　明倫館の生徒のひとり、安倍　晴明（あべの・せいめい）にそう声をかけたのは、彼と共に学園生活を送っている侍の参道　宗吾（さんどう・そうご）です。
「いや……地下って、なんか汚そうだし」
　乗り気な宗吾とは反対に、晴明はどこか消極的でした。彼、晴明は極度の潔癖症ゆえ、地下という言葉にあまり良い印象を持てなかったようです。
　すると、そんな晴明の様子とは逆に陽気な口調でくノ一のお華（おはな）が横槍を入れます。
「やっぱそれ、言うと思った！　晴明ってほんと極端だよね。あーあ、あたしは行こうと思ってたのに、つまんなーい」
「……別に止めないから、行ってくればいいだろ」
　ややふてくされ気味の晴明。さらに、晴明たちの後ろから突然会話に混ざったのは、カラクリ師の大橋　千住（おおはし・せんじゅ）でした。
「んなこと言って、お前だけ置いてったらイジケんだろ？　ひひっ」
「うっさいな」
　そのからかうような口ぶりに晴明が溜め息を吐くと、一通り会話を聞いていた虚無僧の神海（しんかい）が改めて晴明を誘います。
「拙僧らは、せっかく葦原で学んでいるのだから地下城に行こうと思っている。晴明、お主も来ぬか？」
「あのなあ……いくらいっつも一緒にいるからって依頼まで一緒に受けることは……」
　晴明の言葉通り、彼ら五人は明倫館での生活を共に送っていた者同士でした。学内でも仲良し五人組として噂が立つほど、何かと一緒に行動をしていたのです。
　ところが今回に限っては、晴明の潔癖症な性格がやる気を削いでいたようです。しかし、運命とはよく言ったもので、直後、晴明には直々に声がかかったのでした。
「晴明！　ちょっと来るでありんす！　その力を、是非地下城探索に活かすでありんす！」
「……マジか」
　手招きするハイナを見て肩を落とす晴明に、周りの四人はけらけらと笑いながら彼の肩を叩くのでした。
「なあに、俺らもついてくんだから大丈夫だって」
「今までだって、うまいことやってきたじゃん？　なんか、そういう感じでさ。ね？」
「つうか、お前がその潔癖症治しゃあ早えんだけどな」
「何はともあれ、まず詳しく話を聞きに行くことだ」
　それぞれに叱咤激励を受け、晴明は渋々ハイナのいる校長室に向かうのでした。

「今回は、予め先遣隊を送らせたでありんす」
　校長室で、ハイナは晴明に事情を告げます。
「じゃあ、そいつらに任せときゃ……」
「ところが、先遣隊の報告によると、一階一階が中々広く、しかも骸骨武者のような危険な化物がいっぱいでとても少人数では先に進めないようでありんす」
「だったらなおさら五人でなんて無理だろ」
「そこで、各学校に探索依頼を出したでありんす。晴明は、その者たちと一緒に最深部まで行って何があるか確かめてくるでありんす！」
「マジかよ……その中に汚いヤツとかいない？」
　やや強引に話を進めるハイナでしたが、彼女はこれでも、晴明に陰陽師として才があることを知っていました。同時に、晴明の性質にやや難があることも。
　今回のこの探索は、どうやら色々な生徒と触れ合うことで、晴明が一皮剥けてくれればという願望もあるようです。
　ハイナは既に集まっている生徒たち、そして晴明らに向かって声高に言いました。
「急ぎ葦原城の地下に行き、ブライドオブシリーズの有無と地下城の全貌を暴くでありんす！」

マスターの萩栄一です。
この度、ペリフェラルシナリオ【ニルヴァーナへの道】のシリーズのひとつを担当させていただくことになりました。
よろしくお願いします。

本シナリオは葦原島が舞台ですが、学校の制限はありません。所属に関係なく、どの学校の方もお気軽にご参加ください。
時系列も他のペリフェラルシナリオと被っていないとするため、
既に他の【ニルヴァーナへの道】に参加している方でも問題なく参加することが出来ます。

ここからはシナリオ内の設定についての捕捉です。よくお読みの上アクションをかけてください。

【安倍晴明について】
かの有名な陰陽師、安倍晴明の子孫として、若干十七歳ながらその類まれなる力は葦原の注目を集めています。
パラミタには数年前にやってきて、普段は他の生徒と同じように学園生活を送っています。
陰陽師らしく式神を使役することができ、用途によって十二もの式神を自在に操ると言われています。
なお、彼は極度の潔癖性で、何かに触れる時には基本的に式神を用います。
その上、微妙にクールぶるという性格も相まって、時折周りから冷たい人と誤解されることもあるようです。

【四人の葦原生について】
葦原明倫館にて晴明と行動を共にしている生徒たちです。
・参道宗吾……男性の侍です。晴明が不得意な肉弾戦などの分野で活躍します。頼れる兄貴肌です。
・神海……男性の虚無僧です。僧侶として、様々な道具を用い戦いをサポートします。冷静沈着です。
・お華……女性の忍です。くノ一として、身軽な動きで活躍します。その魅惑的な体で、時折周りの男をからかいます。
・大橋千住……男性のカラクリ師（アーティフィサー）です。機械類を操ります。人を喰ったような態度をよく取ります。
それぞれ地下一階が宗吾、二階が神海、三階がお華、四階が千住という順で彼らの見せ場は訪れます。
共に戦いたい方や話をしてみた方は、それぞれに応じた階でアクションをかけてください。
ただし、絡む際「共に戦うのがメインのアクション」なのか「会話をするのがメインのアクション」なのかを明確にしてください。
「お華とたくさん会話をした後、お華と連携して敵を倒す」というようなアクションはかけられません。
なお晴明の見せ場は地下五階ですが、彼と絡む場合に限っては特に階数を指定しなくても問題ありません。

【地下城について】
先遣隊の調査によると、城は地下五階まであるそうです。地下は特殊な磁場となっており、一切の通信機器は使えません。
最深部である地下五階は「深守閣（しんしゅかく）」と呼ばれ、恐らくここにブライドオブハルパーがあると思われます。
なお、各階にある障害は以下のようになっています。
障害についてはキャラが詳しくを知らなくても、
「おそらく罠や霊の類があるだろう」という考えのもとアクションをかけていただいて構いません。
地下一階……骸骨武者。感覚がないため、恐怖や痛みを感じません。腕力でねじ伏せるか、魔法が効果的なようです。
地下二階……ヒトダマ。乗り移りはしませんが、死者の呪いを口にします。精神が弱いと心を蝕まれます。
地下三階……追っ手として現れた寺院の忍。動きは素早いですが、耐久力はあまりないので少ない攻撃で倒せます。
地下四階……罠。水攻め、火攻め系と感覚を鈍らせる匂い袋があります。ここに挑む方は上手に対策しないと負傷します。
地下五階……謎の異形。ほぼすべての攻撃を吸収します。しかしその容量には限界があるようです。

今シリーズ前後編で展開します。前編である今回は深守閣へ辿りつくまでのお話となる予定です。
全体的にはシリアステイストでいこうと思っていますが、
今回は前編ということで多くの新キャラが登場するので、彼らとわいわい仲を深めてみるのも面白いと思います。
もちろんアクションがコメディに寄ればそちらに傾く可能性もあります。
なお、アクションがより書きやすくなるようちょっとしたヒントのようなものを後ほどマスターページに掲載しますので、
参考にしたい方はそちらをぜひご覧になってみてください。

・晴明に絡む

・参道宗吾に絡む

・お華に絡む

・大橋千住に絡む

・神海に絡む