イルミンスール魔法学校

　２月半ば、ちらちらと雪が舞い落ちる日に、百合園女学院の生徒達と他校の協力者達を率いて、校長の桜井静香（さくらい・しずか）は、ヴァイシャリーの北に存在するルリマーレン家の別荘を訪れています。
　今回は、この別荘で催しを行おうというのではなく、ここで準備を行って、キマクの外れに設立された神楽崎分校に差し入れに行こうとしているのです。
　シャンバラ古王国の離宮を守護していた６人の騎士の一人であるマリザの封印は、この別荘の地下で解くことが出来ましたが、マリルの封印はこの別荘の北西、神楽崎分校の方に存在しているという話です。
　封印解除に向かうメンバーは神楽崎分校に到着後にこっそり抜け出して解除に向かうことになります。
「チョコレートには、えっと……ハッピー『婆麗雲蛇威雲』って書くんだよ！　文字間違えると、怒られて『フクロ』にされちゃうんだからね！」
　ミルミ・ルリマーレン（みるみ・るりまーれん）は小さな女の子と一緒に分校生達に配るチョコレートを作っています。
「えっと、むずかしくて文字つぶれちゃう……。ふくろってどんなふくろかわかんないけど、やだあ……っ」
　椅子の上に乗っかり身を乗り出して、女の子はミルミに言われた通りチョコレートにホワイトチョコレートで文字を書いていきます。
　最近、ミルミはいつもこの少女――ライナ・クラッキルと一緒にいます。
　実は、ライナは百合園女学院生徒会執行部、通称白百合団団長の桜谷　鈴子（さくらたに・すずこ）が里親募集に応じて引き取った少女なのです。
　鈴子とライナは先日正式に契約も交わしました。
　それからというもの、ミルミは先輩風を吹かせて、ちょっぴりライナを子分扱いしているのです。
　鈴子がライナばかり可愛がっていると少し嫉妬をするミルミですが、ライナのお姉さんとして、きちんとミルミ自身もライナを可愛がってはいます。
「今回は早河綾ちゃんも来るっていうから、何か事件起きそうだよ……。ミルミ達は危ないから、綾ちゃん達には近づかないで、分校の人達と遊んでようね」
「うん！　よろこんでもらえるかなっ」
　ライナは一生懸命文字を書き続けています。
　早河綾は日に日に回復しているそうです。下半身は完全に麻痺しており本人の意思で動かすことは出来ない状態ですが、上半身の麻痺は殆どなくなっており、自分で食事をしたり、多少の会話をすることが出来るようになっているとのことです。
　ただまだ精神は正常な状態ではなく、少しのことでパニックを起こして叫びだすことがあるそうです。

「仕事入ったぞー」
　届いた手紙を手に、柄の悪い男が酒場のような建物に入り、仲間を集めます。
　外でたむろしていたメンバーも窓から中を覗き込んでいます。
　沢山の視線を受けながら、手紙に書かれている仕事の内容を男は皆に話します。
「キマクの外れに建てられたパラ実の神楽崎分校に、明日、百合園生達が差し入れに来るんだってさ。その差し入れか、現場で直接料理に……この白い粉を混ぜろって話だ。飲ませる相手は分校に訪れた奴なら誰でも構わない」
　封筒に手紙と一緒に入っていた、白い粉を男は皆に見せました。粉は透明の袋に入れられています。
「魔法的効果のある薬らしいぜ。即効性じゃなく、数日後に効果は現れるとか。１つ１つの袋の中身はすべて同じ薬ってわけじゃねぇみたいだ。成功した場合は、上から直接報酬の支払いがあるらしい。薬は１袋きっかり１人分。少しでも減ってたら効果は不完全となり失敗になっちまう。人間っていうか、知的生命体以外には効果はないって話だ」
　依頼を受ける人物には１人につき１袋のみ、薬が託されます。

　一方、組織のとある拠点では、裏稼業バイト募集時にリーダーを務めていた男が高崎　悠司（たかさき・ゆうじ）を呼び出しました。
「確かお前、女連れて来んの得意って言ってたよな。で、神楽崎分校の場所も知ってるんだよな？」
「そうっすよ。仕掛けるんすか？」
　リーダーの言葉に、悠司は表情を変えずに問いました。
「いや、その神楽崎分校に、明日、珍しい種族の女と子供が訪れるんだそうだ」
「珍しい種族っすか？」
「ああ、妖精のような姿だが、大きさは人間より一回り小さいくらいだそうだ。大人でも子供でもいい、お前、ちょっと分校生に紛れ込んで１匹連れてこいや」
　成功したら、組織の幹部に紹介してやるとの話です。
　連れてこられた人物は能力などを調べられた後、多分売られてしまうのでしょう。
「分校でちょっとした事件が発生するはずだから、上手く利用するんだな」

こちらのシナリオは、百合女学院のキャンペーンシナリオです。
百合園女学院のＰＣが抽選で優先されますが、他校の方も歓迎いたします。但し囮行動でもあるため、警戒がされています。顔を隠していたり、身分の証明が出来ない方が百合園生に混ざることは不可能です。
これまでの話は特に気にせず、ほのぼのと百合園の課外活動を楽しむことを目的にご参加いただいて構いません。
こちら闇組織編は後半まで単発風になっております。後半に向かってシリアスになっていきます。参加したい回だけのご参加でも大丈夫です。
闇組織を追っていくことや、闇組織側として活動することを目的とする方は、１回１回の積み重ねも大切になってきます。

尚、百合園女学院キャンペーン『嘆きの邂逅』は２分割となっており、こちらの闇組織編２回に参加された方は、来月ガイド公開予定の離宮編２回（シリアス、難易度高）にはご参加いただけません。ご了承下さい。

今回はキマクにある、パラ実の『神楽崎分校』で、作業に勤しむ分校生達のお世話（日中）と、分校設立のお祝い兼バレンタインパーティ（夜）を行います。
辺りには雪が降り積もっています。雪遊びなどもしていただいて構いません。
神楽崎分校は、道路沿いの喫茶店で授業が行われていますが、その裏側に位置する２００坪ほどの敷地にホールを建設中です。百合園生達が到着する日には建物の建設だけは終了しているものとお考え下さい。近くの木を切り倒して材木とし、分校生達のみで建設を行っているため、立派な建物ではありません。
分校に宿泊場所はないため、百合園生達は当日のうちにルリマーレン家別荘に帰還します。分校生達は、朝まで騒いでいても、ホールで雑魚寝しても可です。ただ、どなたも用意してくれなければ、暖房設備がないので、とても寒いです。

分校のホールを今後どう活用するのかはまだ決まっていませんので、案がありましたらご提案下さい。

リアクションでの描写は原則１ＰＣ１シーンです。状況によって複数シーンに登場する方もいるとは思いますが、アクションは原則１つの事柄への行動にして下さい。
ＬＣはなるべくＭＣと一緒に行動してください。但し、同じ事柄へのアクションであり、行動が繋がっていれば別行動も出来なくはありません。

今回のシナリオの舞台はこの神楽崎分校一帯のみです。別の場所や皆が行く日以外の日という独自設定行動はどうかご遠慮下さい。
例外として、闇組織への接触方法を持っている方（リアクションや交流等で）は、闇組織絡みの行動をとっていただいて構いません。

【同行予定ＮＰＣ】
桜井静香（百合園女学院校長）
桜谷鈴子（白百合団団長）
ミルミ・ルリマーレン（鈴子のパートナー。６騎士ジュリオ・ルリマーレンの子孫）
ラザン・ハルザナク（ルリマーレン家執事）
麗しきマリル（６騎士の１人。ルリマーレン家の別荘の地下で眠っていた）
ミズバ・カナスリール（白百合団員、綾の友人）
アユナ・リルミナル（６騎士の１人ファビオと接触したことがある）
早河綾（闇組織の一員だった元白百合団員）
ライナ・クラッキル（ハーフフェアリーの幼子。鈴子のパートナー）
（その他、瀬蓮とアイリスのみ誘っていただいても構いません）

ＰＬ情報とＰＣ情報の違いにご注意下さい。
ガイドに載っている『粉を混ぜろ』という情報につきましては、キマクあの場所に訪れたことがある方のみ知りうる情報となります。
訪れたことがあっても、早河綾に連れられて来た方や、早河綾救出時に組織のメンバーに顔を見られている方は真正面から訪れても追い返されてしまい、知ることが出来ないと思われます。

『妖精拉致』という情報（依頼）に関しましては、ガイドに登場している高崎悠司さん、組織の仕事を請け負っている風祭隼人さんと、『嘆きの邂逅〜聖戦の足音〜』か『嘆きの邂逅〜闇組織編〜』で、「悪役アクションを期待してる、悪役としての立ち回りに期待している」といった個別メッセージを受け取ったことのある方のみ、知ることの出来る情報（受けられる依頼）とさせていただきます。受けなくても立場が悪くなることはありません。

それでは、アクション楽しみにお待ちしております。

・バレンタインを楽しむ

・チョコレートをもらう

・雪遊びをする

・封印を解きに行く

・大切な人を守る