シナリオガイド
ここはどこ? クジラの中! 水着を狙うコウモリの大群から、逃げのびろ!
シナリオ名:夏の海と、地祇の島 後編 / 担当マスター:
640
誰かの、声が聞こえます。──誰かが、肩を揺すっています。
「……ん……加能……先……輩……?」
少しずつ、覚醒していく意識。うっすらと、少しずつ開けていく視界。
その中で詩壇 彩夜(しだん・あや)が認識したものは、濡れ鼠になった先輩、加能 シズル(かのう・しずる)の姿でした。
「よかった、気付いたのね。気分は、大丈夫?」
「はい、……ええ、っと」
ぼんやりと身を起こし、頭を振って意識をはっきりさせようとします。そして、彩夜は気付きます。
自分が、見知らぬ場所にいること。自分の身体がシズル同様、ずぶ濡れであること。そして、周囲の風景から、妙な暑さを感じることを、です。
「わたしたち。たしか、クルーザーで迷子の人たちを拾って、それから──……」
それから、どうしたんだっけ。その先の記憶が、彩夜には曖昧でした。
「喰われたのだよ、我々は」
「──え」
不意に投げられた声は、乗っていたはずのクルーザーの持ち主……クジラたちの島の管理者たる地祇、『蒼の月』。
──『……ん、さん……? 聞こ……』
彼女の手にある通信端末からは、どこからか通話中なのであろう卜部 泪(うらべ・るい)先生の声が耳障りなノイズにかき消されながらも、微かに漏れ聞こえてきます。
そして、その隣には……獣人でしょうか? ラッコの耳を髪の間から覗かせて、ショートカットの少女が微笑んでいます。
「きゃっ!?」
と。彩夜のすぐ目の前を一羽のコウモリが飛び去っていきます。その足に──海藻や、布地と思しきものを掴んで。
「気をつけて。どうやら空気の心配はないようだけれど……ここにはそのせいであのコウモリたちもいる。巣作りの材料に、私たちの水着を狙っているわ」
「え、ええっ?」
「我々も、危ないところだった。そっちの獣人どの……リンどのに助けてもらわなければ、な」
コウモリ? 水着を、狙っている? 助けてもらったって、一体。
「ど、どこなんですか? ここは!?」
「ふむ、まだわからんか。だから、言ったろう。さっき。喰われたのだ、と。こやつにな」
「……こやつ?」
こやつとしては捕食のつもりもなく、おそらくは我々にじゃれあいにきただけだったのだろうがな。そしてリンどのはこやつと同じ種族のクジラの中に住み着いている、そういう獣人の一族よ。
蒼の月が、言って。足元の、肉色をした地面を軽く、二度、三度踏み鳴らしました。
てっきり、これほど大きな個体はもう死んだものと思っていた──いつの間にこの島に帰ってきておったのか。そう彼女がぼやく、今現在彩夜たちのいるこの場所は。
「この海のクジラたちの『長』。パラミタコロサスホエールの、長老じゃな。その身体の中に、我々はいる。いや、我々だけとも限らんが──とにかく、そういうことだ」
とにかく、ここを出ねばな。蒼の月が言うと、リンと呼ばれた獣人が、あっちにも助けた人たちがいると、シズルや彩夜たちを促しました。
さあ、みなさん。
クジラの胎内から何とか無事に、生還しましょう。
担当マスターより
▼担当マスター
640
▼マスターコメント
ごきげんよう。ゲームマスターの640です。『夏の海と、地祇の島』後編のシナリオガイドをお送りします。
今回、バカンス中の皆さんに前に現れたのは、『パラミタコロサスホエール』と呼ばれる種類の一頭の巨大なクジラでした。
皆さんはホエールウォッチングの最中、島と同程度の大きさをもつこのクジラによって誤って飲み込まれ、またあるいは飲み込まれる人々を浜辺から目撃します。
クジラの中か、外。その、いずれかの立場でこのクジラと、皆さんは向き合うことになります。
クジラの中は広大であり、空気も十分にありますが、同時にそこに住み着くコウモリたちが巣の材料にせんと皆さんの身に着けている着衣を狙って、隙をみつけては襲ってきます。
特に湿気の多い場所ですから、水気に対し強い水着の生地は狙われやすいことでしょう。このコウモリたちが、迷路のように広がったクジラの胎内、あちこちにいます。
コウモリの襲撃をかわしながら、皆と合流しつつ脱出を目指してください。
また、それら襲撃者と同じように少数ですが、皆さんには協力者もいます。『蒼の月』たちと一緒にいる『リン』とその一家である、このクジラを家として暮らすラッコの獣人一家です。
リンに、父、母。幼い妹がひとり。この四人が、脱出を手伝ってくれることでしょう。
一方で、外からも呑み込まれた人々を助けるために働きかけていくことが必要です。
パラミタコロサスホエール自体は非常におとなしく人懐っこい、また珍しい種ですので今回の事件はまさしく偶発的な事故としか言いようがないのですが、救助のためには注意すべき点があります。
それはふたつ。前述の人懐っこいことと、珍しいということです。
人懐っこいというか、人懐っこすぎるがゆえ、このクジラは人々とじゃれあいたがります。当のクジラとしてはそのつもりでも、なにしろ巨大すぎる身体ですので、接する際には慎重を期することはやりすぎてすぎるということはありません。
そしてこのクジラは現在は生き残った数の少ない希少種であるため、シャンバラ政府は保護指定を出しています。パラミタ内海沿岸に住む猟師や獣人が保護していますので、もしも傷つけようし、彼らに見つかった場合には、攻撃を受ける可能性があります。
それゆえクジラを殺す、例えば風穴を開けて中の人々を助け出すとか──そういう手段はとれません。
今回、シズルと彩夜は蒼の月とともにクジラの中に呑み込まれています。
泪先生は彼女たちからSOSを受けて、浜辺から救助のための作戦を練っています。
それでは、皆さんの参加をお待ちしております。
▼サンプルアクション
・クジラの胎内からの出口を探して、コウモリから逃げ回る
・クジラの胎内で、迷う
・浜で、クジラに飲み込まれた人たちの救助策を練る
▼予約受付締切日
(予約枠が残っている為延長されています)
2012年08月25日10:30まで
▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)
2012年08月26日10:30まで
▼アクション締切日(既に締切を迎えました)
2012年08月30日10:30まで
▼リアクション公開予定日(現在公開中です)
2012年09月11日