イルミンスール魔法学校

　学習室でただ座って片腕の頬杖を付いている破名・クロフォード（はな・くろふぉーど）を見つけた手引書キリハ・リセンは、コンコンと半開きになっていた扉を叩きます。
「メールが来てますよ」
「誰宛に？」
「クロフォード宛です」
「依頼はしばらく受けられないと先に――」
「いえ、それが、『ボロいから建て直せ、金は振り込んだ。』とスポンサーから」
　メッセージを送った人物に心当たりのある破名は軽く目を見開き、頬杖の上でキリハに向かって首を傾げました。
「……ボロい、のか？」
「ハイ」
　即答されて破名は小さく唸ります。
　孤児院『系譜』が相当に古い建物だというのは破名以外の全員が持つ共通の認識でしょう。
「そうか。なら――」
「『お前は手を出すな』とも書かれてましたよ」
「…………」
　センスや感性とは無縁に等しい破名です。言葉が出るわけがありませんでした。
　そして、抗議申し立てできるような相手でもありません。スポンサー様はスポンサー様です。
　頬杖を止めて、片手を髪に突っ込んでガシガシと頭を掻く破名を眺め、キリハは嘆息しました。
「自覚はしているんですね」



　破名は顔を上げます。
　建物を修復しろと、お金まで振り込まれているので、このままというわけにもいきません。
「とすると、どうするか……」
「クロフォード」
「なんだ」
「王や、そうですね、ディオニウスや契約者の方に、ご相談してみてはいかがでしょう」
　幸いにも一年ほど前から孤児院を取り巻く環境は大きく変わっていました。
　前々から協力してもらっている王　大鋸（わん・だーじゅ）や、先日から連絡と報告をやり取りしているシェリエ・ディオニウス（しぇりえ・でぃおにうす）、そして、契約者達という存在は、破名の中では一年前と比べ言葉を交わした分だけ印象を変えています。
「業者に頼むよりは貴方も安心できるでしょう？」
　比較対象を出され無言になった破名に「では、決まりですね」と言い放ったキリハは、準備の為に学習室を後にしました。
　少女に見透かされた破名は、力なく笑って片腕で頬杖をつくと再び窓の外に視線を向けます。
　窓の外では、最年長のシェリー・ディエーチィ（しぇりー・でぃえーちぃ）を中心に子供達は今日も平和そうに遊んでいました。

　本シナリオは孤児院の建物修繕（建築）シナリオとなっております。
　グループ分けは以下のとおりです。用語はわかりやすいように括っただけなので、あまり突っ込まないでいただけると嬉しいです。
　ＭＣＬＣは同じグループ内で作業してください。それぞれ別グループで作業した場合はどちらか一方の作業風景での描写となります。
　それと以下はＰＬ情報ですのでご注意願います。

【１】外装
　屋根や壁、柱や廊下という部分です。
　少しくらいなら間取りを変えることも可能です。
　●パート参加ＮＰＣ：王　大鋸、シェリー・ディエーチィ、ニカ（守護天使の少年）

【２】内装
　壁紙や絨毯、カーテンや家具の部分を含みます。
　孤児院の子供は３：７の割合で女の子が多いです。
　●パート参加ＮＰＣ：シェリエ・ディオニウス、フェオル（獣人の幼女）、ヴェラ（ヴァルキリーの少女）

【３】屋外
　ぐるりと囲う柵までが敷地内になってます。
　倉庫程度の建築は可能ですが、柵外での活動はお控えください。

　手引書キリハ・リセンは全体を忙しなく動き回っていますので、困ったことがあればいつでも声を掛けて下さい。
　破名・クロフォードも声を掛けられたら応対します。が、スポンサーから手を出すなと言われている手前、特に手伝うということはしません。また、子供達が居るのでトラブルが無い限り転移魔法を含む自身の能力を使うつもりもないようです。
　留守番組の子供達（上記名前の挙がっている子）は作業の手伝いを進んでしてくれます。
　他の子供達とマザーは少し遠くに出かけていますので次の日まで帰ってきません。


■孤児院『系譜』の建物について。
　古い民家を二軒繋げただけという造りになっています。当時の修繕に当たっていたのが破名なので外見は察していただけると幸いです。
　状態としては、荒野だからこそ問題にならない範囲で、雨漏りがしない程度です。
　参考までに建物内部の様子です。
　一階　……　応接間、学習室、食堂、キッチン、浴室、物置、物置（元隠し部屋）
　二階　……　子供達の部屋（大小合わせ四部屋）、マザーの個室、物置（現在守護天使の男性が寝ています）
　屋外　……　井戸、トイレ、倉庫

　※それほど大きな建物というわけではないので、掲示板での話し合いを推奨いたします。

・【１】外装を整える。

・【２】内装を整える

・【３】屋外、または、その他