イルミンスール魔法学校

　うさぎのおなかの毛のように、白い色した朝でした。
　はさみを使って黄色い画用紙を、切り抜いているのはエリザベート・ワルプルギス（えりざべーと・わるぷるぎす）です。
　どうやら星形に切っているようです。
　ちょっと、いびつになりましたがなんとかできあがると、エリザベートはこのお星さまを、木のかたちに切り抜いた緑の画用紙の上に貼ります。そして今度はこの木を、赤いカードに貼るのでした。
　彼女が作っているのはクリスマスカードです。正しくは招待状、宛名は『御神楽環菜さま』。
　メッセージを鵞ペンでしたため、ぱたぱたあおいで乾かします。二つに折ったら、はい、できあがり。
　うまくできたのでしょう。にこーっと笑むと、エリザベートはさっそく次のカードに挑みました。
　のんびりはしていられないようです。まだまだ机の上には赤いカードがたくさん、山みたいに積まれているのですから。
「お母さん」
　校長室に入ってきたミーミル・ワルプルギス（みーみる・わるぷるぎす）は、かがんで画用紙の切りくずを集めながら言いました。
「いいお天気になりそうですよ。クリスマスパーティの日は」
　黄色と緑を両手いっぱいに集め、うっとりしたように続けます。
「きっと、星が降るような夜空になるでしょうね……」

　ところでここは、イルミンスール生小山内　南（おさない・みなみ）の自室です。
「やっぱり冬はこたつですねー」
　こたつに入ったまま南は身を折り曲げ、ぺたりと頬を天板に当てます。
「やっぱり……てこれ、こないだの夏に拾ったやつやないか」
　彼女のパートナーにしてちっちゃなカエルのおっちゃん（？）、カエルの　カースケ（かえるの・かーすけ）がつっこみました。
「いいんです。前からあったような顔をしたいんですー」
　ほや〜っと温かそうな顔をして、南はへへへと笑います。
「なんやそのこだわり……」
　カースケはカゴから小ぶりのみかんを取って、わしわし剥いております。
「ところで……あー」
　南はうつ伏せになると、ため息まじりに言いました。
「麻雀したいー」
「突然やな」
「だって、これですよ〜？」
　すりすりと天板に頬ずりしたりする南です。
　実はこの天板、緑のフェルトが張られているのです。これなら麻雀牌を倒してもジャラジャラかき混ぜても、かちんかちんウルサイ音は立ちますまい。しかも四つの縁はすべて、いい感じに牌が並べられるようになっております。さあ麻雀をやろう、今すぐ！……とでも言いたげな緑のフィールドなのです。
「せやったら、わてと二人打ちするか。まー、わて脱ぐもんこのちゃんちゃんこしかあらへんけど」
「脱ぐもん？　どういう意味です？」
「脱衣麻雀……アウッ！」
　投げられたみかんの皮が、ぺしゃっとカースケの頭を覆いました。



　こんな日が来るなんて、誰が想像したでしょうか。
　パティ・ブラゥ（ことクランジ　パイ（くらんじ・ぱい））とローラ・ブラウアヒメル（ことクランジ　ロー（くらんじ・ろー））の二人が、揃ってクリスマスツリーの飾りつけをするような日が。
　これまで、色々あった二人です。つい最近も色々ありました。その事件だって片付いていません。
　けれど事件は新情報もなく停滞中。ですので今、このときだけは、そろって小さな休息を楽しんでいるのでした。
「ナンセンスよ、こんなの。ただ年末の一日ってだけじゃない。大昔の聖人の誕生日って話も後づけで、正確な起源は不明だっていうし……」
　などと文句を言うわりに、パティはなんとも楽しそうにいそいそと、飾りつけにいそしんでいるようです。ミニチュアの星やトナカイ、赤ちゃんに履かせてあげたくなるようなブーツを、脚立をつかって吊していきます。
　大きなクリスマスツリーです。蒼空学園のロビーに設置されたこの季節の象徴を、二人してデコレートしているのです。
「……これはこのあたりかしら？」
　言いながらパティは、ヤドリギの束飾りを頭上にくくりつけました。脚立を降りようしたところで……、
「なにやってるの、ロー？」
　彼女は、頬を染めてもじもじしているローラに気づいたのでした。
「ん……でも、パイなら、いいよ」
「なにがいいのよ？」
　するとローラは脚立のパティを見上げるように顔をむけ、目を閉じてそっと胸の前で手を組みました。
「は？　どうしたのあんた？」
「知らないか？　ヤドリギの下では、好きな人にチューしていい。これ、鉄のオキテね？」
「バ、バ……あーーっ！」
　バカ言うんじゃないの！　というパティの言葉は、焦って脚立からバランスを崩し落っこちたことで、どこかに消えてしまいました。　

　そういえばイルミンスールのクリスマスパーティ会場にも、天然木のクリスマスツリーが用意されるという話です。
　もちろん、ヤドリギの束も飾られることでしょう。



　星降るその夜はクリスマス。
　聖なるイブの夜なのです。希望の朝を迎えるための夜なのです。
　イルミンスール魔法学校のクリスマスパーティに参加しませんか？
　気になるあの人とおめかしして。もしくは最高の仲間同士で。
　星降る夜は魔法のひととき、普段は口にできない言葉を、伝えられるチャンスがあるかもしれません。
　あるいは聖なるこたつにて、麻雀に興じるのもなんだか素敵かもしれません。恐るべき鍋があるという噂もあります。なにやらわくわくしてきませんか？

　いずれにせよ、どんな夜になるかはあなた次第。
　どうぞ、あなたのクリスマスイズを教えて下さい
　

　ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
　マスターの桂木京介（かつらぎ・きょうすけ）です。よろしくお願いします。

【シナリオ概要】
　このシナリオは、2022年のクリスマスイブの夜〜クリスマスの早朝の時間帯に絞って、イルミンスール魔法学校開催のクリスマスパーティならびにそれに前後する物語を描くという主旨のものとなります。
　メインとなるパーティ会場は講堂の大ホールです。オーケストラの演奏会が開けるほど広く、優雅な雰囲気のある場所のようですね。赤い絨毯が敷かれており、大きな天窓があるので星空も見えると思われます。
　メイン会場では立食パーティを予定しています。ステージもあるのでバンドの演奏（クリスマス向けのもの推奨）をすると喜ばれるかと思われます。
　学校による参加制限はありません。あらゆるキャラクターが参加できます。


【ご注意】
　シナリオ主旨のため、クリスマスイブ（18時以降）からクリスマスの朝（せいぜい7時くらい）までの時間帯から外れるアクションをかけても描写されません。申し訳ないのですがご了承下さい。

　また、本シナリオは基本的にイルミンスール魔法学校でのパーティについて描写するものとします。
　ですので、自宅でくつろぐ場面をご希望の場合は、『パーティから帰ってきたところ』（あるいは『今から行くところ』）といった描写になるかと思われます。といっても魔法学校にさえいるのであれば『大図書室内で道に迷って会場にたどり着けない』というような展開は例外的にですが可能です。

　ダブルアクションの扱いは比較的厳しく行きます。
　麻雀大会にMCが参加、残りのLC二人がクリスマスツリーでデート……というアクションだと、メインと思われるLC二人の描写はあっても、MCのほうは描写がごく薄くなると思われます。
　

【公式NPCについて】
　以下の公式NPCが登場します。
・エリザベート・ワルプルギス、ミーミル・ワルプルギス――主催者です。皆さんに挨拶したりします。
・アーデルハイト・ワルプルギス――主催者側のはずですが、悠々と立食パーティを楽しんでいます。
・御神楽環菜、ルミーナ・レバレッジ――来賓客として会場にいます。最初は主としてエリザベートと話しています。
・山葉涼司――ニルヴァーナから一時的に帰ってきており、やはり来賓客として会場にいます。
・アゾート・ワルプルギス――なぜか間違って闇鍋闘技場（後述）にいて困惑しています。
・イングリット・ネルソン――何を思ったか闇鍋闘技場にいます。『闘技場』という言葉に引かれただけ……？
・金元ななな――麻雀聖王戦（後述）に率先して挑む猛者です。実力は未知数。
・アッシュ・グロック――麻雀はとても下手（手牌が思いっきり顔に出る）なのに麻雀聖王戦に挑戦します。
・夏來香菜、遠藤寿子、アイリ・ファンブロウ、ミリア・フォレスト、小暮秀幸、レオン・ダンドリオン、設楽カノン
　――彼らはパーティ参加者として会場のあちこちにいるでしょう。
・仁科耀助――『八岐大蛇の戦巫女』事件によってパートナーの那由他と離れていますが、少なくとも表面上は明るく過ごしています。女性をたくみにヤドリギの下に連れ出そうとするかもしれません。
・雅羅・サンダース三世――『八岐大蛇の戦巫女』事件によってパートナーのアルセーネと離れていますが、「心配しないで下さい」と事前にアルセーネから言われていたので、あまり元気はないもののパーティに出席しています。慰めてあげるといいかもしれません。

・馬場正子――エリザベートに許可を取ってパーティ会場外に暗幕のかかった一部屋を設け、ここで『蒼空学園名物・闇鍋闘技場（仮）』を開催します。読んで字の如く闇鍋をして楽しもうという催しです。食べられるものであれば何を入れても可。一度箸をつけたら必ず食べなければならない……というルールのもと、エレガントなパーティとは一線を画す危険な祭を繰り広げます。なお『闇鍋闘技場』という名前はあくまで仮称なので、『夜魅鍋殺試亜夢（やみなべころしあむ）』とか物騒な当て字名前をつけてあげると喜びます。（提案が複数あれば正子が気に入ったものを選びます）


【桂木担当NPCについて】
・クランジΠことパトリシア・ブラウアヒメル（パティ・ブラゥ）――パーティ会場にいます。ローラがいるのでご機嫌です。
・クランジΡことローラ・ブラウアヒメル――パーティ会場にいます。なんだかクリスマスツリーが気になる模様。そわそわしてます。
・ユマ・ユウヅキ――おめかししてパーティ会場にいます。
・小山内南、カエルのカースケ――エリザベートの許可を取り、講堂の小ホールで麻雀大会、その名も麻雀聖王戦を開催します。スキル禁止、ハンチャンごとにメンバーを変える総当たり戦を予定していますが、参加人数によっては展開が変わります。最低でもこの二人とアッシュ、なななで四人打ちをします。　※ヒント：南とカースケはコンビ打ちをしてきます。
・カーネリアン・パークス――そもそもクリスマスに興味がないので登場しないか、出たとしてもわずかです。


【NPCと交流する際に気をつけて頂きたいこと】
　展開によっては登場しないNPCもいます。
　NPCとアクションを絡めたい場合、どのNPCと接触を持つか、そして、該当NPCとのこれまでの関係（初対面なのか友人同士なのか等）を明記しておいて下さると大変助かります。
　また、NPCと絡めることを希望されても、上手く行かない場合があることをあらかじめご了承下さい。後述のヤドリギの下でのアクションについても留意願います。


【クリスマスツリーについて】
　屋外となりますが、会場のすぐ外に巨大クリスマスツリーが立てられています。
　そのあちこちにたくさんの飾りつけがされていますが、脚立等を用いて飾り付けの追加は可能です。
　また、いい感じで人の目の届かないところにヤドリギの飾りがあったりします。しかも、一つではなく。

　以下、ヤドリギの下でキスをする場合の注意ですが。
　PC同士の場合、アクションで双方の同意が必要です。
　相手がNPCの場合、恋人や夫婦でない（＝該当する称号を持っていない）と失敗する可能性があります。


　以上、今回も、皆さんのアクションに込められた『想い』をできるだけ汲み取ってリアクションに反映させたく思っております。

　皆様のご参加を楽しみにお待ち申し上げております。
　桂木京介でした。

・メイン会場のパーティに参加する。

・小山内南の麻雀大会に参加する。

・馬場正子の闇鍋闘技場に参加する。

・野外、クリスマスツリーの下であの人とデート。