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【カナン再生記】擾乱のトリーズン(第2回/全3回)

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【カナン再生記】擾乱のトリーズン(第2回/全3回)

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シナリオガイド

反乱軍vs正規軍 この戦いを止めることはできないのか?
シナリオ名:【カナン再生記】擾乱のトリーズン(第2回/全3回) / 担当マスター: 寺岡 志乃

  アガデの都 領主の居城――

「おのれ……こざかしい反乱軍どもめ…!」

 黒水晶を見下ろして、ネルガルが唸っています。

「バァル!!」
「――は」
「もとはといえば、うぬの手綱が甘すぎるせいぞ! 早期に芽を摘まず、あのようなやからをのさばらせておいたからこのような事態を招いたのだ!」

 ネルガルは烈火のごとき怒りにかられ、手元の杯を力いっぱいバァルに投げつけました。
 額が切れ、血が流れます。しかしバァルは頭を下げたまま、静かにネルガルからの責めに甘んじていました。

「己の不始末は己でつけよ! 東カナン軍の総力を持って反乱軍など完膚なきまでに叩きのめせ! 二度と余に逆らおうなどといった輩が現れぬようにな!」
「お待ちください、ネルガル様」

 マントを翻し部屋を出て行こうとしたネルガルを、それまで緞帳の影に控えていた女神官アバドンが呼び止めました。

「聞けば反乱軍の旗頭となっておりますのは、以前バァル様の側近であられましたセテカ様とか。ご幼少の頃からのご友人とあれば、いかにバァル様とて無情になりきるのは難しいかと思われます。無意識のうちに情けをかけてしまうのが人のさがというもの。陛下の忠臣であるバァル様に無理強いするのはあまりに酷かと思われます。
 バァル様、ぜひこの僕をお連れください」

 アバドンが袖下から差し出した黒水晶。そこには、3つの頭を持つ見るからに凶暴そうな竜が映っていました。鍵爪のついたコウモリ羽、赤黒い鱗と湾曲した爪は鋼鉄製、それぞれの頭からやはり鋼鉄製のヤギ角を生やし、火炎・凍気・稲妻の息を吐き出しています。

「このようなこともあろうかと、龍の逝く穴より連れて来ておりました。これなるはアジ・ダハーカにございます。その性は邪悪にして獰猛、残忍であり、狡猾です。鋼の鱗は鉄刃を通さず、3つの頭は各々ファイヤーストーム・ブリザード・サンダーブラストなる魔法を用います。必ずや反乱軍を撃滅するバァル様のお役に立つことでしょう」

 こればかりはさすがにバァルも無言で従うわけにはいきません。アジ・ダハーカはカナンの古史にも出てくる最凶の竜の1匹、人を喰らうことでも知られていたからです。そのようなモンスターとの行軍は兵の士気に支障が出ると必死に反ばくしましたが、ネルガルがいたくこの案を気に入ったため、退けることはかないませんでした。
 移動中は常に魔封じの檻に入れておくこと、さらに魔封じの首枷を付けておくことを条件に、バァルは不承不承同意したのでした。
 

*       *       *

「あなたにも働いてもらいます」

 ネルガル、バァル両名が去った室内で、アバドンは緞帳の向こう側に正面を向けました。
 暗がりから、メニエス・レイン(めにえす・れいん)が不服そうな表情で出てきます。

「てっきりネルガル殿に紹介してもらえると思っていたんだけど」
「紹介?」

 アバドンは冷笑しました。

「あなたにネルガル様の御前に立つ資格はまだありません。たしかにメラムの町でのあなた方の活躍は拝見させていただきました。とても興味深い余興でしたね。特にあの褐色の肌の少女を燃やしたところなど、大変胸のすく思いがしました。だからこそ、あなたをバァル様から譲り受けたのです。
 ですが、あれはあなたのお仲間たちの手柄であって、あなた自身はなんら貢献していない。ネルガル様のお目にとまりたいのであれば、己の力で相応の働きを見せなさい。さもなくば…」

 アバドンは見せつけるように、黒水晶をメニエスに突き出します。
 そこはどこともしれない部屋の一室。既に石化刑に処されたパートナー、ミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)の姿がありました。

「無能者は不要です。この人質とともに砕け散るがいいでしょう」
「…………」
(――ずいぶんとみくびってくれたものね)

 ぎり、と奥歯を噛み締めるメニエスの前、アバドンは黒水晶の上でさっと手を振りミストラルの姿を消し去ると、次に双頭の白蛇の姿を映しました。暗くてよく見えませんが、その周囲をいくつもの人影らしきものが取り囲んでいます。

「心配はいりません。あなたにも新たなパートナーを用意してあります。このアンデッドを操るモンスター、エンディムを連れて、パァル様とともに行きなさい。そして必ずセテカ・タイフォンを仕留めてくるのです。あの男さえ消してしまえば、反乱軍など一気に瓦解するでしょう」

*       *       *

  東カナン イルの村――

 東カナンの解放を訴え、モンスター退治や領民の救済をしながら、反乱軍と東西シャンバラ人たちはゆっくりとアガデの都を目指していました。各町や村での設備の増強や配給、新たな施設を建設したりと様々なことに人手を割かれ、結果的に駐留することになった者たちもいましたが、それ以上に今の東カナンの有り様に絶望し、同行を志願する者たちが現れたため、人数は爆発的に膨れ上がっていました。
 ただし、彼らは民兵です。栄養状態は決して良いとは言えず、訓練も始まったばかり。騎馬軍団を誇る東カナンの土地柄ゆえ、馬術はだれもが子どものころより仕込まれますが、馬に乗れる者はいても鎧や剣といった武具は粗末な物で、しかもそれを馬上から満足に操れる者は少なく、到底バァル・ハダド率いる正規軍の敵とはなりえません。
 相手はおそらく甲冑に身を包んだ重騎馬隊を前列に、弓騎馬隊を後方に配し、混戦となれば一気に軽量の速騎馬隊が蹂躙するでしょう。もちろん歩兵の長槍兵もいます。
 まともにぶつかれば、おそらく半日ともたない――。
 それを知るセテカは、アガデから届いたばかりの書状を握りつぶしました。

「正規軍だけでも厄介なのに、バァルめ……人喰いのモンスターが従軍だと? 一体何を考えて…」

 そんなことを考えても仕方がない。モンスターも正規軍も確実に向かってきているのだから―――セテカは書状を忌々しげに暖炉に投げ込むと、皆の待つ部屋へ向かいました。

「戦場となるのはザムグの町近辺にあるアナト大平原だ」

 現在のアナトは草木1本生えない荒野と化していましたから、アナト大荒野と呼ぶべきかもしれません。

「あそこなら正規軍が展開するだけの広さがある。われわれはひと足先にザムグの町に入ることになり、そこで準備を整えることとする」
「ザムグの町が戦場になるのか?」
「いや、バァルの性格を思えばそれはまずない。領民を巻き込むことは絶対に避ける。町ごとわれわれに攻撃したりはしないだろう」

 ですが、それをあてにしてザムグの町にこもり、篭城戦をするわけにもいきません。モンスターがいつまでもバァルに従っているとも思えませんし、バァルも篭城をむざと許すはずがないからです。また、篭城するだけの余裕がどちら側にもないということもあります。潜入なり何なりの手を打たれるのは分かりきっていますし、そうなれば、結局被害はザムグの町に出るでしょう。

「ではどうする?」
「――少数精鋭による奇襲で指揮官であるバァルを捕らえるしかない」

 そのためにはもう1つ、しておかねばならないことがあります。
 こんなときに兵を分けるのは避けたかったのですが、ほかに打つ手はないとセテカは考えました。

「ネルガルが東の監視のために設置している神聖都の砦を同時に叩く

 セテカの指示で、すぐさま別動隊が組まれました。

 神聖都の砦は東と北の中間位置、連なる山脈のふもとにあります。一度反抗した南と違い、東は恭順しているために砦としての戦力はほとんどありませんが、全く兵が駐留していないわけではありません。
 ここにはワイバーンが数騎配備されており、東に何か不穏な動きがあれば北に飛ぶことになっています。現在ネルガルは東の巡回を終えてキシュへの帰途についていると書状にありました。バァルを捕らえたことを知られないためにも、ここは攻略しておく必要があるでしょう。


 凶悪な人喰いモンスターを倒し、バァルを捕虜とする、はたしてそんなことができるのでしょうか?

 風雲急を告げる――。
 東カナンの地で、今新たな鳴動が起きようとしていました。

担当マスターより

▼担当マスター

寺岡 志乃

▼マスターコメント

 こんにちは、または初めまして、寺岡 志乃といいます。
 こちらは「【カナン再生記】擾乱のトリーズン 第2話」となります。
 よろしくお願いいたします。


 舞台となるアナト大荒野について。
 草木1本生えていない、見晴らしのいい平地です。バァルたち正規軍はここに布陣しています。
 身を隠す物は特にありません。そのため、奇襲は夜に行うことになります。それにふさわしい装備が必要です。
 たいまつをつけたり光精の指輪を使用すると敵兵に発見される可能性が高いので、使用するのであれば工夫してください。

 アジ・ダハーカについて。
 ガイドにもあります通り、人喰いの凶悪な竜です。知能が高く、人語は話しませんが会話内容は理解しています。
 体長約30メートル。全身が赤黒い鋼鉄製の鱗で覆われ、剣や少々の魔法攻撃ははじきます。3つの頭は独自に動き、それぞれ炎・氷・雷の魔法攻撃を仕掛けてきます。翼によってジャンプや短時間浮かぶことはできますが飛行することはできません。
 魔封じの檻と魔封じの首枷は形ばかりで、兵士をなだめて安心させる程度の効力しかないため、ダハーカが本気を出せば簡単に破壊されます。
 基本的に人の命令はききません。一応バァルの命令をある程度はききますが、拘束力がないため都合が悪くなれば無視して勝手に人を襲います。

 エンディムについて。
 双頭の白蛇です。ほのかに燐光を発しています。アンデッドの群れを操って人を襲います。エンディム自身には大した攻撃力はありませんが、毒蛇なので牙に毒があります。また、魔法攻撃は一切寄せつけません。
 体長約3メートル、鎌首をもたげると1.3メートルほどの高さになります。
 今回メニエスに従うように命じられていますが、メニエスが本当の主ではないので、完全に従順というわけでもありません。

 神聖都の砦について。
 東から北に伸びる山脈のふもとにあります。外壁に囲まれ、ワイバーンがいて兵士もいますが、詳細はあきらかではありません。
 別動隊として動く人は、まず偵察を送り込む必要があります。もちろん偵察なしで突っ込むという方法もありますが…。


 前回メラムの町が守りきれましたので、マルドゥークの許可を得て西カナンを通り、反乱軍によって解放された東カナンの村や町を通るというルートができています。
 東西シャンバラ人は反乱軍の味方ですのでこのルートは自由に通行が可能となっていますが、ザムグの町より東方はまだルートが確定されていません。むしろこちらはアガデに近い分、いきなり現れたよそ者よりバァルの味方をします。先手を打って布陣前に軍に奇襲をかけるという方法は、失敗アクションとなりますのでご注意ください。


 それでは、皆さんの個性あふれるアクションをお待ちしております。

▼サンプルアクション

・アジ・ダハーカと戦う

・バァルを捕らえる

・セテカと行動する

・神聖都の砦へ向かう

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2011年01月25日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年01月26日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年01月30日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年02月20日


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