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誰がために百合は咲く 後編

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シナリオガイド

守旧か保守か、中立か。──生徒会選挙、投票開始。
シナリオ名:誰がために百合は咲く 後編 / 担当マスター: 有沢楓花

 パラミタ内海でのお茶会──という名の交易交渉、兼生徒会役員試験──は、その日の夕方を迎えました。
 この間多少のトラブルはあったものの、お茶会自体はおおむね平穏に進み、ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)伊藤 春佳会長を始めとした生徒会現役員たちは、交易の方向性におおよその目途を付けていました。

 エリュシオン帝国内で手広く商売をしている老商人アダモフは、持病の発作を起こしましたが、生徒たちの活躍と心遣いによって回復しました。
 彼は一命を救われたこと、シャンバラの先にある地球の存在を意識したこと、それに百合園のおもてなしの心。それにより、シャンバラとヴァイシャリーを侮っていた心境に変化があったようです。
 美術品から香辛料、雑貨まで手広く扱う商会の商品の中から、彼が提示したのは保存のきくもの……香辛料、茶、織物でした。
 逆に日本や地球の機械的な技術を欲しています。初めから高度な機械を導入しても運用・研究は難しいので、美術品としても価値のある日本の初期の機械・数学に関わりのある「からくり」や和時計などを幾つか店頭に飾ってみたい、と思っているようです。
 ヴァイシャリーからは、特産品であるガラス細工を輸出することになりそうですが、地球の技術を渡すことには幾つかの問題をクリアする必要がありそうです。
 イルカ獣人たちに対しては、作った宝石や真珠、珊瑚などを用いた装飾品を買い取る話を進めています。

 近海に住むイルカ獣人の族長ハーララとその娘ヤーナからは、美しい貝類や海底で採れる宝石、それに工芸品を提示されました。
 ヴァイシャリー側は工芸品に価値があるのは勿論ですが、元となる珍しい貝などを仕入れ、ヴァイシャリーの技術で加工したいという意見があります。また、交易を通してパラミタ内海の状況を掴みたいため、見慣れぬ魚や石などを調査目的での買い取りも行おうとしています。
 ハーララからヴァイシャリーに望むものは、お金です。ヴァイシャリーに工芸品を売ることなどで正当なお金を定期的に得て、これで島をまとめてから、今後の身の振り方を考える予定です。
 というのも、部族の住む群島は、異常気象によるものか海面上昇の影響を受け、島の面積が徐々に少なくなっていました。そして島民は族長派と移住派で二つに分かれていたのです。
 ヤーナが父親に同行したのは、シャンバラにほど近い海の視察や、ヴァイシャリーの水上建築を可能とする技術が転用可能かどうか、知る為でもありました。
 しかし事態は意外にも早く進行していました。
 ヤーナの恋人であるカイが彼女を追いかけてきたのは、部族の分裂の危機を伝えるためでもありました。カイの父親は移住派のリーダーで、本島に残った人間もまとめ、数日中に移住の話を別の部族に持ちかける予定だというのです。
 百合園の生徒や商工会議所から参加した一人フェルナン・シャントルイユ(ふぇるなん・しゃんとるいゆ)は彼らにどのような援助ができるのか考えています。

 またヴァイシャリーが輸出できそうなものに関しても話がでました。材木、種々の海産物、ワイン、リキュール、オリーブオイルにチーズ、ハム、ハーブ、紅茶。
 建築、造園、彫刻・絵画、美しいガラス細工に金銀宝石細工などの美術品、家具、食器、香水、料理……、造船とその技術。ヴァイシャリー伝統の、あるいは地球と融合したデザインの服や宝飾品などもあります。ヴァイシャリー湖独自の産物や、無形では文化の音楽や演劇、オペラ。
 意外なところでは、貴族社会で鍛えられたメイドや執事の技術は高く評価されています。
 勿論、その他にもヴァイシャリーや地球から、様々なものが提示できるでしょう。



 では、お茶会のもう一つの目的──生徒会選挙の「試験」としての側面に、立候補者たちの心中はどうでしょうか。
「……大事なのは、マナーや形ではなく、その本質……?」
 生徒会長に立候補したアナスタシア・ヤグディンはスタッフ休憩用のカフェから夕暮れを見て、小さく呟きました。
「どうかされましたの、アナスタシア様?」
 同志であり副会長に立候補したオルガが、憂い顔のアナスタシアに近づきます。
「……私は間違っていたのかしら? 形に拘っていたのは、百合園の守旧派でなく、本質を見ていなかった私なのかしら?」
「アナスタシア様……」
「いいえ、ここはパラミタ。シャンバラが建国し帝国と和平を結びましたのよ──であれば、今までよりも大勢の、パラミタ出身の生徒が入学するはずですわ」
 アナスタシアは自分に頷きます。
「今までは百合園本来の美徳とやらだけで良かったのかもしれませんわね。でも地球の、それも日本の一部のマナーからその心を読み取れと全校生徒に今後も言い続けるのは、難しいのではなくて?
 私は再度、新しいマナーの確立を目指しますわ。もう帝国だけの意見を、とは言いませんわ。ただ皆さんが納得できるレディの在り方、心の在り方を生徒全員が模索する生徒会を目指したいと思いますの」
 もう一人、守旧派として生徒会長に立候補した日高 桜子は、そんなアナスタシアの態度に戸惑っていました。今までかたくなにエリュシオンの文化を広めようとしてきた彼女の変化に、成長を見たからでした。
(……私には、良いところもなくて、お茶会でも他の立候補者の皆さんのように、活躍もしていない……。それなのに、半日経っても何も、変わっていなくて。……本当に生徒会長としてやっていけるのかしら……)
 それでも励ましてくれた人達の為にも、頑張らなくてはと手を握りしめます。
 革新派や中立派の意見は桜子にも納得できることは多々ありますが、それでも時期尚早というのが彼女の意見なのです。
 そしてアナスタシアが帝国出身であり、勝気である、ということが彼女には立候補の動機にもなっていました。
「それに、あれだけの戦いがあったのに……すぐに帝国の方と本当に、心から仲良く……できるのでしょうか……」
 気弱だからこそ、今まで虐げられてきた、自分からなかなか意見を言えない人たちの声をすくいとれるのではないかとも考えています。
 生徒会長ではありませんが、守旧派として会計に立候補した村上 琴理(むらかみ・ことり)は、百合園がラズィーヤが女官を育成するために設立したという面に重きを置いています。できるだけ保守的に生徒会を運営したいと考えているようです。
 琴理は疑問をぽつりと漏らす桜子に、頷きました。
「そうですね。私は今まで通り、百合園はまずヴァイシャリーと共に在り、それからシャンバラのため、留学生のためになっていけばいいと思っています。
 まずは地元の方たちの意見を取り入れて、何があっても、ヴァイシャリーの一般の住民を、契約者として守れるようにしたいのです。
 ラズィーヤさんがヴァイシャリーに日本が母体の百合園を選ばれた以上は……その目的のために、受け入れる意見の取捨選択の中に、まず日本人として、大和撫子としての価値観を中心に置きたいと思っています」
 これからの百合園が守旧か革新か、それとも中立か。何処に向かうかは勿論生徒ひとりひとりの選択次第ですけど、と彼女は付け足します。
「彼女はきっと帝国に帰る人でしょう。他者の権利を尊重するのは大事ですが、アナスタシアさんの主張は、彼女が生徒会長にならなくても、私たちで取り入れられることだと思いますし……。
 誰にでも優しい人は、誰にも優しくないのとよく似ていると思います」
「もし、私が会長になれたとして、いえ、なれなくても……私が百合園を卒業した後も……地球にもし帰ってしまうようなことになっても……」
 桜子は夕日に染まる波間を見つめました。
「私の行動は、私のものだけではないんですね……きっと」

 そんな、それぞれの意思と悩みを抱える候補者たちを、ラズィーヤと春佳、そしてシャンバラ海軍ヴァイシャリー艦隊所属、海軍中将・フランセット・ドゥラクロワ(ふらんせっと・どぅらくろわ)提督は遠くから眺めています。
「それで、選挙は上手くいっているのか?」
 フランセットの問いに、ラズィーヤは微笑みます。
「ええ。このお茶会が終わりましたら、すぐに百合園女学院で投票が始まりますわ。万が一もないように……選挙管理委員の皆さんが気を付けて準備を進めてくださって、とても助かっていますわ」
「万が一、ね。そこに従妹殿は含まれていないと見える」
「どういう意味かしら?」
 あくまでも優雅に微笑むラズィーヤに、フランセットは肩を竦めました。
「従妹殿のことは信用しているが……選挙なのだから、生徒の意見を尊重して欲しいものだと思ってな」
「さあ、どうかしら、ご心配には及びませんわ。それより、警備の方を引き続きお願いいたしますわね」
「分かっている」
 海上周囲には刃魚という海の魔物が現れ、客人のイルカの一人が怪我を負ってしまったのでした。
 フランセットは、今のところ海中にいなければ危険はないと判断したものの、海軍に警備の強化を命じています。
「候補者が警備スタッフの任を選ぼうと、危険は及ばせない。……と改めて言うほどのこともないが。刃魚はせいぜい1〜3メートルほどの魔物だ、契約者なら問題なく対処できるだろう」
 海軍や警備担当者の人員配置について、彼女は簡単に説明しました。
「跳ねたところを始末するか、小型飛空艇や水上バイクを出せば問題ない。海に飛び込んだりしたら少々厄介だが──流石に夜の波間だからな」
「景観を損なわずに、対処していただけますわね?」
「努力しよう」
 そう、お茶会の会場は船です。これからアフタヌーン・ティー、そして夕食をいただきながらのナイト・クルーズが始まるのでした。


担当マスターより

▼担当マスター

有沢楓花

▼マスターコメント

 こんにちは、有沢です。
 こちらは、百合園女学院生徒会・白百合会の本部役員の選出シナリオとなります。
 後編は、立候補及び投票がシナリオ内にて行われます。
 シナリオに参加しない百合園生でも(条件付で)掲示板で生徒会選挙に簡易投票が可能です。
 立候補者は前編最終ページ及び、後編での立候補者を挨拶掲示板にてご確認ください。
 また、前編で既に立候補された方も含めまして、挨拶掲示板で選挙演説など行っていただいて構いませんが、PLさん向けのものとなりますので、リアクション上での判定には加味しません。


【シナリオでの投票方法】
・シナリオに参加された百合園女学院所属のMC1人につき、一票投票することができます。棄権も可能です。
 (リアクション上の描写としてMCとLC、あるいはLCのみが投票しているのは可能です)
・上記候補者NPC及びPCの名前(それと分かるなら略称でも可)又は派閥を、一役職につきひとり、アクションのどこかにお書きください。
・候補者ではなく派閥を投票対象とした場合、守旧・革新・中立(みんななかよく含む)のどれかに投票をお願いします。
 票は各スタンスの候補者に均等に割り振られます。
・なお、「誰が誰に投票したか」はアクションでリアクションに書いても良いと明記されない限り、描写されません。
 「何票投票されたか」もシナリオ内では明示しません。誰に多くの支持が集まった、というような描写になります。


【掲示板での投票方法】
・シナリオに参加されない百合園女学院所属のMC1人につき、一票投票することができます。
・ただし、「誰がために百合は咲く 前編」発表前日から一年間遡っての間に、「百合園シナリオ」に参加されている方に限らせていただきます。
 百合園シナリオの定義は、シナリオガイドの扉絵で「百合園が背景」の場合、「百合園所属NPCが登場」している場合のどちらかを満たしている場合、
 その他明らかに百合園女学院と関わりのあるシナリオの場合とさせていただきます。
・1票で0.5票としてカウントとさせていただきます。
・投票の記入は、投票専用のスレッドをご用意しますので、こちらにお願いします。
・投票対象はシナリオとは違い、「派閥」での投票になります。守旧・革新・中立(みんななかよく含む)のどれかに投票をお願いします。
・票は各スタンスの候補者に均等に割り振られます。
・投票の締め切りは、アクション締め切りと同時になります。締切時刻以降の書き込みは無効とさせていただきます。

★投票掲示板
http://souku.jp/bbs/thread/7991/1


【後編から立候補される方へ】※前編で立候補された方は、この項目のきまりは不要です。
・立候補者は百合園女学院生限定です。
・役職は会長・副会長・書記・会計・庶務の五つです。
 落選時に他の役職があいていた場合、そちらでも宜しければその旨もご記入ください。
・ただし、会長と副会長は、執行部との兼ね合いがあります。重職は兼任ができません。詳細は『話をしましょう』1P後半、執行部の演説をご覧ください。
 その際、守旧派と革新派、或いは中立のどのスタンスに立つかをお書きください。
・立候補者は、お茶会のスタッフとして参加することになります。
・後編ではじめて立候補される方は、このほかに、他の投票をされる方が参考にされますので、シナリオアクション締切日一日前までに、挨拶掲示板にて役職及びスタンスの記入をお願いします。


 生徒会役員は、生徒達の投票に、ラズィーヤたち生徒会現役員が、試験となっている「お茶会」での行動を加味して決定されます。


 なお、今回何を交易品としたか(したいか)によって、それらの商品・加工品が、今後のキャラクタークエストに反映されます。
 皆様の参加をお待ちしています。

▼サンプルアクション

・生徒会役員に立候補(副会長)

・お茶会のスタッフをする

・お茶会で警備をする

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2011年08月27日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年08月28日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年09月01日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年09月15日


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