シャンバラ教導団

「さて、そろそろＳ＠ＭＰも本格稼働させないとね」
　フレイ・アスク（ふれい・あすく）がそう言うとプロデューサー役であるアポロン・サン（あぽろん・さん）が、
「前の会議で女性を全面に打ち出してアイドル路線でいこうって話があったけど、フレイはどっちがいい？　その、男の娘として男と絡む？　それとも男の娘として百合路線で行く？」
「ちょっとまて、男の娘前提！？」
　フレイの突っ込みに
「当然。ってことで、これからは常に女言葉で生活してね」
　アポロンはそう答えます。
「……まあいいや」
「いいのかい！」
「どっちでも需要あると思うけどどっちが良いかはよくわからないね。みんなに聞いてみようよ」
　アポロンの突っ込みはスルーされます。
「そうだね。映像投影装置が小型化してイコンに常設できるようになったから、戦場でもライブでも空中に大きな映像を投影してジャンヌ・ダルク的に戦場の歌姫として演出することは可能だよ」
　とほほーといった様子でそう説明するアポロン。
「じゃあ、女の子は衣装を考えないとね」
「フレイもね！」
「うぐぅ！」
「変な声出してどうしたのさ？」
「いえ、なんでもないです……はい」
　それから、アポロンはこう言いました。
「この間富士の総火演見てきたんだけどさ、戦場の歌姫やるんだったら女性陣だけでもイコンに乗っていたほうが良くない？　それかVTRでスクリーンに戦場の風景移すか……」
「それもみんなと相談。イコンはとりあえず使いたいけど相手役をやってくれる人がいないとね」
　とりあえず相談です。
「まあ、実際にイコンに乗りながら歌うにしろVTR流すにしろエキストラが必要だからいつもどおり各学校に依頼を流しておくよ」
「わかった〜」
「それからそれから前アイデアが出た『蒼空のフロンティア』プロジェクトを発動させたいと思うからそれの詳細も詰めよう」
「はい。任せます、プロデューサーさん」
「で、それをやりながら地方巡業開始ね。地道に営業かけないとね」
　ということでエキストラ募集の通知が各学校に届いたのでした。

「こーちょー、面白いイベントあるじゃない。あたしも出ていい？」
　ミレリア・ファウェイがコリマ校長にそう言うと
（いいぞ。ただしチョーカーはつけたままだ）
　と答えました。ミレリアのしているチョーカーには爆弾がセットしてあります。万が一彼女が寝返った場合にはコリマ校長がこの爆弾を爆発させます。
「りょーかい」
　ミレリアは手をひらひらと振って答えます。
　自室に戻るとリリア・シュレインと今後のことについて考え始めました。
　そして、地方巡業に乱入することに決めました。


「よう、フレイ、アポロン」
「あ、聡さんにサクラさん」
　山葉　聡（やまは・さとし）が、パートナーのサクラ・アーヴィング（さくら・あーう゛ぃんぐ）を連れて飛空艇の整備をしているアポロンとフレイのところにやって来ました。
「ほほー、これがステージに換装した姿か。なかなかいいじゃないか」
「皆さんのアイデアのお陰ですね」
　フレイが聡の言葉に答えるとサクラが口を開いた。
「地方巡業に一緒について回りませんか？　飛空艇だけの旅だと空賊に襲われたときに一溜りもありませんし、私たちのコームラントの装甲ならそれなりに頑丈ですから」
「それはいいが……お前、いつもだったら俺にサボるなとかいう立場じゃないのか？」
「アシュレイおじさまの件がありましたからね。憂さ晴らしです」
「……なるほど」
　ということで聡とサクラが護衛についてくることに決まりました。
　ちなみに最初の公演場所はタシガンです。
　ミレリアもレイヴンＴＹＰＥ−Ｅに搭乗して護衛としてついてくることになりました。

　そして、タシガンでの舞台上演リハーサル日。
「フレーイ、こっちの荷物はどっちよ？」
「あ、あっちにお願いします」
　聡はアポロンやフレイと一緒に荷物運びをしていました。サクラは、裏でＳ＠ＭＰの女性陣にメイクを施しています。ちなみにフレイたちは常日頃から女の子メイクなので、メイクをする必要はありません。
　と――
「やあ、なにかイベントがあるんですか？」
　そこにやってきたのは、銀髪で赤い瞳のダンディなオジ様と、13歳くらいの黒髪の男の子でした。
「ああ、私たちＳ＠ＭＰってバンドのライブをやるんですよ」
「へえ、音楽。そいつはいいねえ」
　オジ様が渋い声で答えます。
「お姉ちゃんたちも歌いますのん？」
　少年が京言葉で訪ねます。
「そうだよ、坊や」
「へえ、それは楽しみどすな」
「おじさんと坊やはタシガンの人？」
「私はタシガン出身の吸血鬼だけどしばらく故郷を離れててね。里帰りさ。こちらは、私のパートナーで地球人の暁央（あきお）様ですよ」
「へえ、契約者ですか」
　フレイが二人とそう話していると、聡が話しに割り込んできました。
「その年で契約者ってのも珍しいな。学校はどこなんだ？」
「あ、学校は……」
　暁央が言いよどみます。
「まあまあ、いいじゃないですか聡さん」
「そうそう、契約者にはいろいろ事情があるんですし」
　そこにアポロンとフレイが助け舟を入れます。
「まあ、そうか……そういやおっさんタシガン出身の吸血鬼なんだって？　サクラって知ってるか？」
　その名前が出ると、男性の表情が変わります。
「ああ、知っていますよ。懐かしい。小さい頃はよく遊んであげたものです」
「へえ、俺サクラのパートナーなんだけどさ、オッサン会って行かないかい？　サクラも喜ぶぜ」
「ほほう、サクラが契約者になったのですか。ようやく一人前になったっわけだ」
「俺と一緒に天御柱学院でコームラントのパイロットやってるよ」
「それはそれは。立派になったものだ。ところで、サクラは今どこに？」
「ステージの裏でメイクの手伝いしてるよ。そうそう、今回のライブな、あのミレリア・ファウェイがゲストで出るんだぜ。すげーだろ」
　その言葉を聞いて、少年と男性はわずかに表情を変えました。しかしその小さな変化に、三人は気づきません。
「それはそれは。ミレリアなら私も知ってますよ」
「僕、ミレリアお姉ちゃん大好きやわ」
「そっかー。じゃあ、楽しみにしててね」
　フレイが愛想を振りまきます。
「ところで、このステージの外側に武装が見えるようだが……」
　男性がそう訪ねます。
「ああ、最近何かと物騒ですからねえ。それにＳ＠ＭＰは鏖殺寺院や空賊とも戦ったりしますから。前回はジーハ空賊団っていう空賊と、皆と一緒に戦ったんです」
「それはそれは……」
「アシュ……いこ。今日はアシュの家でタシガン料理振舞ってくれるんやろ？」
「そうですよ。では、そろそろ参りましょうか、マスター」
「マスター？」
　男性の言葉にフレイが尋ねると
「ええ、私は暁央様と主従契約を結んでおりますもので」
　と答えました。
「では、明日のコンサートは楽しみにしていますよ。それでは、失礼……」
　そう言って吸血鬼の男性と少年は帰っていったのでした。


　そして、タシガンの官憲の牢屋。
「釈放だ！　出ろ」
　ジーハ空賊団のユウナとカルラ、小龍とエノクは、一時拘留されていた牢屋から釈放されました。
「なんであたしらが釈放されるんだい？　あたしの部下たちは？」
　官憲に尋ねると、彼は面倒臭そうに言いました。
「なんでも保釈金が支払われたんだとよ。１００万Ｇもの大金がね……どこの物好きがこんな札付きの犯罪者に金を積んだんだか……」
　その言葉に、ユウナはカチンときました。
「あたしらは自由の民さ空賊さ。山賊やそこらと一緒にしないでおくれ」
「似たようなものだろ。とにかく出ろ。表に飛空艇が待ってる」
「……姐御、行きましょ」
「そうね」
　カルラの言葉にユウナも頷いて表に向かって歩き出しました。
　そして飛空艇の中――
「ようこそ、ジーハ空賊団の諸君」
　そこにいたのは先程フレイたちの前にいたのと同じ顔の男性でした。
「オマエハ、ダレダ？」
　小龍が尋ねると
「私はアシュレイ・ピースロッド。鏖殺寺院の一派「ブラッディ・レイン」の幹部だ。君たちは復讐がしたくないかね？　ジーハ空賊団を壊滅に追い詰めた相手に」
　その言葉に、ユウナは怒りの声と表情で言いました。
「あたしらを鏖殺寺院の手駒にしようってのかい？　舐めんじゃないよ。あたしらは自由の民だよ」
　しかし、アシュレイは怯えた様子は見せません。
「……君たちを釈放したのは私だよ。そして君たちの生き残りで満足に動ける30人の部下の自由も私が握っている」
「ユウナ様、私達に選択権はないものと思われます」
　エノクが冷静にそう言いました。
「仕方ないね……で、あたしらは何をすればいいんだい？」
　釈然としない表情でユウナは訪ねます。
「なに、私たちと一緒にＳ＠ＭＰという音楽バンドのライブを叩きつぶしてくれればいい」
「音楽を？」
「彼らが君たちを壊滅させた相手さ。やたらと過剰に武装した飛空艇がいただろう……」
「あれかい……そういう事ならやらないでもない。でも、ライブを潰すってことは民間人も攻撃するってことだろう？　あたしらは獲物はぶんどっても人は傷つけない空賊だよ。そりゃ、敵には遠慮しないがさ」
「地球には、毒を食らわば皿までって諺があるんやで」
　そう言って暁央が飛空艇の奥から出てきました。
「なんだいこのガキは」
　ユウナがそう行った途端ユウナはアシュレイに殴られました。
「この御方は私のマスターだ。無礼は許さん」
「アシュレイ、ミレリア姉様殺しますのん？」
「はい。暁央様」
「楽しみやわぁ。鏖殺寺院同士だった頃は訓練でも手加減せなあかんかったからなあ……やっと、本気で戦える」
　暁央はドライアイスのような冷たい表情でニヤリと笑うと、ユウナたちを怯えさせました。
「やっと、表舞台で堂々とミレリア姉様とたたかえるな。アシュレイ、今日は機嫌が良いさかいそいつらの無礼も見逃したる。せやけど、次はないで、姉さん方」
「わかった……いえ、分かりました」
　そしてユウナは知ったのです。自分たちが恐ろしい相手に絡め取られてしまったということを。
「そうそう、明日のライブに乱入するんな、民間人はパラミタの人たちなんやから傷つけたらアカンで。僕らの敵はあくまでパラミタを食い物にする地球人なんやからな」
「わかったわ。姐御にはあたしが言い聞かせておくから、そろそろ失礼してもいいかしら？」
　カルラの言葉に、アシュレイは鷹揚に答えます。
「よかろう。30人の部下もまもなく保釈される。我々寺院のイコンと共にＳ＠ＭＰを……地球人と地球人に魂を売った売国奴どもを叩きのめしてもらうぞ」
「ワカッタ」
「ほな、行ってよろしい。まあ、今夜はこの飛空艇の中で過ごしてもらうけどな。晩餐の準備はできとるさかい、部下と一緒に楽しんだってや」
　暁央がそう言うと、カルラが
「ご配慮に感謝しますわ、暁央様」
　と言ってユウナたちを連れて退出した。
　そしてライブ当日の朝日が昇りました。

■
　というわけでＳ＠ＭＰ本格的に始動開始。
　まずはフレイをどういう路線でデビューさせるか考えてください。
　そのあとはＳ＠ＭＰで今後のことを会議してから、発掘した大型飛空艇をステージ式に換装します。
　ミレリアも出ますので宜しくお願いします。
　ミレリアやＳ＠ＭＰの楽曲の歌詞は常時募集しています。
　

■PL情報
　ライブの演出がひと通り終わったら戦闘になります。
　護衛のため、ロケのためなど理由をつけてイコンなどを持ってきてもかまいません。
　
　大型ビームキャノンを装備させたシュメッターリングによる紡錘陣で集中攻撃をし、そこに開いた穴から背面展開していきます。
　突破された場合は背後を半包囲されることになり、10秒程度無防備な背面からダメージを受けるためダメージが2倍になります。
　今回マスター側ではこの戦法に対するリアクションでのサポートをしません。この作戦に対する対策がアクションに書かれていない場合は敗北することもありえます。気をつけてください。
　戦闘の処理ルールに関してはマスタールームをご参照ください。

　敵は民間人は攻撃しませんが、そのことをＰＣは知りません。注意してください。
　空賊団のメンバーは飛空艇二隻に分乗してイコンと一緒に攻めてきます。敵の規模は参加するＰＣとイコンの数に合わせて変動します。ただし最低でもイコン５個小隊（２０機）はいます。


■バンド活動と戦闘に関して
　イコンを持ってきており、MCかLCのどちらかだけが音楽編に参加している場合は戦闘に参加してもダブルアクションとは判定しません。
　ただし、種別：イコン　二人乗り　のユニットに関しては一人だけの場合30%程度の出力しか出ません。ＬＣ二人乗りでも同様です。
　したがって、二人乗りのイコンにはMCとLCの両方を乗せないといけません。これは明確に差が出ますので、イコンに乗る際はLCの追加を忘れずにお願いします。


■本シナリオ限定特殊ルール
『エンゲージ』
　接敵するとエンゲージ判定がされ、交戦可能な状態となります。
　一つのエンゲージにはイコン8機（敵は４機編成で１小隊です）、飛空艇2隻、生身30人が存在できます。
　全体攻撃のアイテムや特技などは、このエンゲージ1つ分に対して効果を発揮します。
　離れたエンゲージに攻撃するのは、射程7以上のイコンの武器のみ可能です。

空賊団の4人のNPCの戦術について
　ユウナは剣で戦闘します。高レベルのトランスヒューマンで高い攻撃力を誇ります。真空波などで単体攻撃をしかけます。攻撃力は400程度。
　カルラは他のメンバーの支援をします。同じく高レベルの聖騎士で、オートガード、オートバリア、メジャーヒールやシーリングランスなどを使ってきます。
　小龍はドラゴネットで、ドラゴンブレス改+5と魔法の投げ矢で遠近両方の攻撃をしてきます。また、機甲200の高防御力で味方をかばいます。
　エノクはドルイド／メイガスで、崩落する空、幻獣の主、命の息吹、炎の精霊などを使ってきます。魔法攻撃力は300程度です。

　チャフ・フレアは標準装備です。描写されなくても使用しているものと考えてください。また、シナリオでは特にアクションをかけてチャフやフレアを使用しない限りは描写しません。
　※弾薬の補給に関して
　弾薬はミサイルなどのどう考えてもリロード不可能なもの以外は戦闘中に1回だけリロードを許可します。
　その際安全を確保していない場合は10秒間無防備になります。
　弾薬が尽きた場合は飛空艇に戻って補給することになります。
　ちなみに今回フレイの『月の宮殿』はステージとして展開しておりますので、チャフ、フレア、レーザーは使えますが、補給整備機能を持っていません。

・エキストラとしてライブに参加する

・アシュレイを迎撃する

・作詞をする