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カノンを取り戻せ『完結編』

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カノンを取り戻せ『完結編』

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事前会議(S@MP)



「さて、それではS@MPの会議を始めますか。まずはコンマスからお願いします」
 アポロンがそう促すと、和希が発言した。
「俺は頭悪ぃから、難しい事は良く分かんねーけど、シャンバラの復興活動の応援になるような前向きな内容なら、こまけー事は気にせず、どんどんやればいいと思うぜ。地方公演とかもして、各地で頑張ってる奴を応援できたらいいな」
「なるほどそれはいいですね」
「もう一人のギターの妙子さんどうぞ」
「S@MPの新しい路線っちゅー話みたいやけど、今更ミレリアの真似の様なアイドルをするのはどうかと思うんや。このまま戦場を駆ける楽団でいいと思うんやけどなぁ。イメージとしてはジャンヌ・ダルクみたいに。それでも庶民的にっちゅーんやったら、S@MPの女性陣を前面に出して本当の意味でのアイドル化もありやと思うで。あるいはS@MPの中でいくつかユニットを作って違う路線で攻めてみるとか。ひとつはロック、ひとつはポップ……とか。まぁ、私の意見はこんなもんやな」
 妙子に続いて佐那がルース・メルヴィンと鷹村真一郎の二人を交互に見比べながら殊更ゆっくりと口を開き提案を述べる。
「私もどうせならアイドル路線がイイと思います。具体的には、テレビ映りを重視する兼ね合いで視聴率の取れないオッサン二人はアイドル仕分会議でリストラです♪」
 爆弾発言。
 会場がしーんとした。
「――なんて、冗談ですけどね。今年はエイプリルフールで、嘘を言い損ねてしまいましたので♪」
(まぁ、リストラなんてそれこそ論外です。そんな事で空位になったベースのポジションを得たとしても虚しいばかり。実力で獲得してこそ、意味があるというもの……)
 佐那は心の底でそう考える。
「私の考えるコンセプトは「一つの心、二つのS@MP」です。楽団員正式メンバー昇格も視野に入れているという事はS@MPメンバーが増えるという事ですよね? ならば、それに伴って観る側のニーズを反映し、そうした結果に応じたメンバー編成を行うユニット編成を提案します」
「なるほど。お二人の案はS@MPに複数のユニットを作ることと女性陣を前面に押し出すことですね」
 フレイが二人の意見をまとめる。
「俺も女性を前面に出したほうがいいと思うなあ。どうせベースとかドラムは音楽の裏方だし、派手な楽器や歌のメンバーを前面に出す感じでいいと思う」
 ルースが意外にも賛同する。
「全ての人々に希望を……その考えはいいんだけど、ミレリアと一緒になるのはイヤね。ミレリアに足りないものって何かあるかしら? 色々決めることもあるけど、まずは私たちの象徴となるような物、それとイメージカラーがあると便利ね。と言う訳で私が考えたシンボルはズバリ『太陽』! イメージカラーは『黄』! 明るい歌でみんなを元気付けたり、太陽のようにそこに居るだけで安心できるようなアイドルを目指したいわね!」
「なるほど。確かにミレリアの二番煎じってのもあれですね。よく考えないと」
 グリムゲーテの言葉にアポロンがそう答える。
「自分がイメージするのは【活力】、歌を聴いた人が何かをなそうという時にささやかでもいいから、後押しできるような歌になればと思う」
 クリスティーがそう言う。
「戦場の歌姫なんてどうかしら? 妙子さんの意見に賛成。戦場を駆け抜けるグループでいいんじゃない?」
 ルカルカがそう言って真一郎を見る。
「正直教導団の立場としては今回の件は思う事もありますが……個人的にはバンドのメンバーとして当初から自分の出来る事は役目以外にやれる事は無いですし、自分のプレイが力になるのなら全力でやり遂げるだけです。息を合わせてドラムスとしてリズムを刻み続けるのみ。バンドの方向性など今後の事については個人的な意見は無く、皆の決定に従うつもりです」
「分かりました。それでは次はアレックスさんどうぞ」
 アポロンが次を促す。
「これまで目立った活躍をしておらず、逆に迷惑や我が侭を散々してきてるのでS@MPの今後について口出しするのを躊躇っているところです。そもそもアイデアもないけれど。ただ、イコンパイロットという前提がどうなるのかに関してはもの凄く気になっています」
「その点については和希さんの言うように地方公演をするというのならパイロットにこだわる必要はないでしょうねー。ただ、『音楽』における士気の向上というのは軍歌ができたころから肯定されているわけです。なのでこれからも戦場で歌うことはあると思います」
 フレイがアレックスの懸念に対してそう答えた。
「メインコンセプトに『蒼空のフロンティア』を提案するよ。例えば……ボクの【真水】。グリムゲーテさんの【太陽】。これらを個人のテーマとして、それぞれ音楽に取り組み、このコンセプトで紡ぎ合わせる事で、新しい音楽を開拓して行けないかな? 大人数で音楽ができるんだから、最大限に生かさないとね♪ メンバーの想いを包括しつつ……響き合える音楽……リスナーさんに、安心して聴いて楽しんでもらえる……と、思うんだ。路線は……近年のアニメ主題歌的アプローチかな? ボクは【真水】がテーマ、元気ハツラツ☆♪路線だよ。ミネラルウォーターのクリアーさに価値はあると思う」
 アームルートじゃないほうの花音がそう言う。
「アニメ的アプローチ。いいですね。熱血ソングとか!」
 もともとアニメの影響でロボット乗りになっただけあってフレイの反応は早かった。
「うーん。『蒼空のフロンティア』ですか。なかなかにそのイメージを形にするのは難しいけどなんとなくは分かりました」
 アポロンがそう答える。
「うん。まとめると地方公演を行う。その際はイコンはなし。戦場においてはジャンヌ・ダルクのように雄雄しく勇ましく。人々の前では女性を前面に打ち出してアイドル化路線。そしてプロジェクト名は『蒼空のフロンティア』。アプローチ的にはアニメ路線。まあ、ロボットアニメの主題歌のような感じでいいのかな?」
「後おそろいの衣装を用意すればいいと思うよ。グリムゲーテさんの提案したシンボルカラーの黄色と『蒼空のフロンティア』の青。それから、ポップとかロックとかバラードとかごとに編成を変えるのもいいかもね」
 フレイとアポロンがそう言って話題をまとめる。
「ということで、次回のS@MPの活動は軍事作戦がなければシャンバラ復興チャリティーコンサートでいきますね」
「了解。まあ、俺はドラムを刻むだけですが」
 フレイの言葉に真一郎が答える。
「異議がなければそろそろ解散してイコンのメンテナンスに入りたいと思いますが……」
 今のところ異議はないようであった。
 ということで解散になりメンバーはイコンの整備のためにハンガーに駆けていった。