シャンバラ教導団

「……んん。…………あ、あれ？　ここは……えっ？」

　雅羅・サンダース三世（まさら・さんだーすざさーど）が目を覚ますと、豪華な屋敷にいました。
　きらびやかな内装。
　見るからに高そうな壷や絵画が周囲には飾られ、天井にはシャンデリアが吊るされています。
　雅羅はというと、ふかふかのソファーに腰を下ろしており、横では器量良しの執事が、巨大な鳥の羽でできた団扇で彼女をあおいでいました。
　しかも、よく見れば、周囲には雅羅のほかにも、同じように執事やメイドにもてなされている者たちの姿が見えます。
　ある者は、豪華な食事に舌鼓を打っています。
　またある者は、気持ちよさそうに全身エステを受けています。

　一体これは何だと雅羅が困惑していると、

「おや？　目が覚めましたか」

　突如、声をかけられ、雅羅が振り返ります。
　そこには初老の男性が立っていました。
　真っ黒なスーツに、胸には蜘蛛の模様をあしらった模様がついています。

「あの、あなたは？」
「申し遅れました。私はこの屋敷の主です。皆様は、この私の屋敷にゲストとして呼ばれたお客様です」
「え？　いや、私はそんな……」

　呼ばれたような記憶はないと、雅羅が告げようとした時です。突然、雅羅の頭がボーっとしてきました。
　すると、どういうわけか、雅羅は彼の言うことが間違っていないように思え始めました。

「フフッ、どうかなさいましたか、雅羅様？」
「……い、いいえ。なんでもありません。……そうですよね。私たちはこの屋敷に呼ばれたゲストでしたね！」
「ええ、左様です。さぁ、こちらへどうぞ。今、美味しいケーキと紅茶をご用意していますよ」
「え！　本当ですか！」
「ええ。ここには、皆様を楽しませるすべての物がそろっております。心ゆくまで、ご堪能ください……フフフッ」

■■■

「すぅー、すぅー……うふふっ、このケーキ美味しいですね〜」
「くっ！　起きろ！　雅羅っ！」

　気持ちよさそうな寝息を立てながら、呑気な寝言を呟く雅羅に、高円寺　海（こうえんじ・かい）が怒鳴り声をかけています。
　二人は白い粘着質な糸でぐるぐる巻きにされ、木に吊るされています。
　その横には、同様の状態で木に吊るされたまま眠る多くの生徒たちの姿があります。

「チッ……このままじゃ、まずいな」

　そう呟く海の視線の先では、象ほどもある巨大な蜘蛛がキシャキシャと奇声を発しながら、彼らを見つめていました。

　どうも、皆様。マスターの海原です。
　通算、四度目のシナリオ、頑張らせていただきます。
　前回、一度コメディに浮気しましたが、今回は再びホラーです。

　さて、今回の話はガイドを読んでも皆様「？」状態だったと思います。

　今回、皆様は巨大な毒蜘蛛に捕まった哀れな被害者になっていただきます。

　この巨大な毒蜘蛛には、特別な毒があり、現在、皆様はその毒のせいで幻覚を見せられている状態です。
　幻覚の世界で皆様は、謎の紳士が主を名乗る館のお客ということになっています。なので、館にいるうちは美男美女の執事やメイドに奉仕され、楽しいひと時を過ごすことができます。
　ですが、このままだと、現実世界で毒蜘蛛の餌となるでしょう。なんとか、この世界が幻なんだということに気づき、現実世界に戻って蜘蛛から逃げないといけません。

　もちろんこのガイドを読んでいる皆様は、毒蜘蛛の存在に気づいていますが、幻覚を見ている皆様のキャラたちはその事実を知りません。どこで気づくかなどを自分で決めることで、さらに面白いロールができるかと思います。

　幻覚から目覚める方法としては、「幻覚の中で死ぬほどの傷を負う」か「強く現実世界を意識する」などがあります（他にも皆様のアクションの中で良いものがあれば、判定の上、採用していきます）。
　また、館の外は真っ白な世界が広がっているだけで、何もありません。そのあたりを目撃し、「この世界は現実じゃない」と気づく人も出てくるでしょう。

　さて、この絶体絶命の危機に、皆様はどうするのでしょうか？
　皆様が巨大な蜘蛛の餌食とならぬよう、ご健闘をお祈りしております。

・幻覚に気づかず、楽しむ

・「この館はおかしい」と疑い、調査

・何かの拍子に現実世界を思い出す