シャンバラ教導団

　かつて、ツァンダの上流貴族として名を馳せていた名門フェンザード家。
　そのフェンザード家の長女ラーミラの体の中に、魔導暗号鍵と呼ばれる謎の物体が隠されています。
　この魔導暗号鍵は、フレームリオーダーという巨大な怪物達に狙われていました。
　巨獣形態と巨人型戦闘体型を自在に使い分けるフレームリオーダー達に対抗する為、蒼空学園、天御柱学院、そしてシャンバラ教導団からそれぞれ一部のイコンパイロットを供出して、特殊部隊ＵＢＦ（ＵｎｉｔｆｏｒＢｕｓｔｉｎｇＦｒａｍｅｒｅｏｒｄｅｒ）を編成しましたが、対フレームリオーダー戦線は膠着状態にあり、大きな戦果は未だ挙げられていません。
　２０２２年初頭、魔働暗号鍵を摘出して破壊する為の装置人工解魔房が、ジャンバラ大荒野とヴァイシャリーの領境に位置する宿場と交易の街デラスドーレ地下の古代要塞遺跡ヴァダンチェラ内にて発見され、先般、ようやくこの人工解魔房が起動出来る目処がつきました。
　そしていよいよ、ラーミラをツァンダからデラスドーレまで護送し、人工解魔房による魔導暗号鍵摘出措置を施すという段取りに入ろうとしていたのですが――。

　　　　　＊　＊　＊

　ＵＢＦは、蒼空学園敷地内の大型飛行船用離陸場をベースポイントとして使用しています。
　そしてこのＵＢＦの指揮官を務める馬場　正子（ばんば・しょうこ）は、ベースポイントのイコン用ドック脇に設置されている待機エリア内のブリーフィング用大型ビジョンテーブルを前にして、その強面に渋い表情を浮かべていました。
　ラーミラをデラスドーレに護送するに際して、少々厄介な問題が浮上してきたのです。
「アヤトラ・ロックンロールの縄張りだな、このルートは」
　正子はビジョンテーブル上に映し出されたシャンバラ大荒野の一部の地形を睨み付けながら、低く唸るような声を絞り出しました。
　アヤトラ・ロックンロールとは、近頃急に力を付けてきた蛮族の野盗団です。
　噂によれば、オブジェクティブという電子映像の怪物達と接触し、格段に戦闘力を増強させてきたとのことですが、真相は今のところ、誰にも分かっていません。
　正子の傍らに、ラーミラと個人的に親しいレティーシア・クロカス（れてぃーしあ・くろかす）が佇み、正子の太い指が示すその一点を、じっと凝視しています。
　しばらく嫌な沈黙が続いていましたが、ややあって、レティーシアがその白い面を正子に向けました。
「他に、ルートは無いのですか？　空路は、フレームリオーダーに撃墜された際の危険性を考えると論外だ、とおっしゃるのは分かりますが……」
「ラーミラを連れ出せば、その瞬間に奴らに知られる。移動を開始した後は一刻も早く、デラスドーレに到着せねばならん。であれば、矢張りアヤトラ・ロックンロールの縄張りを突破していく必要がある」
　正子の有無をいわさぬ応えに、レティーシアは小さな溜息を漏らしました。
　アヤトラ・ロックンロールの縄張りを突破するとなれば、防御力を増強させた車両を用意する必要があり、その準備だけでも相当に手間がかかるのは、容易に想像出来たからです。

　　　　　＊　＊　＊

　一方、デラスドーレの街では。
「またぞろ大勢来たもんだねぇ、こりゃ」
　蒼空学園料理研究部鉄人組副長にして正子の右腕たる三沢　美晴（みさわ　みはる）は、避難命令が発令され、ほとんど無人と化した街の中心部である広場で、眼前に迫る幾つもの凶悪な影に緊張の視線を投げかけていました。
　彼女が睨み付けるその先には――複数のオブジェクティブがゆっくりと近づいてくる姿があります。
　マーダーブレイン、ストームテイル、マーシィリップス、スナイプフィンガー、スキンリパー、そしてスカルバンカー。
　いずれも、人工解魔房を破壊する為に出現したと思われる強敵ばかりです。
　美晴の傍らには、オブジェクティブ対策を推進してきたマーヴェラス・デベロップメント社の特務エージェントジェイク・ギブソンの姿があります。
「生き残ったオブジェクティブによる総攻撃、といったところですな」
「……簡単にいわないでよ。厄介な奴ばっかり残ってるじゃないの」
　エージェント・ギブソンによるオブジェクティブの動向解析により、このデラスドーレが襲われるということを事前に察知した正子が美晴をこの地へと派遣したのですが、しかし敵は予想以上の戦力を揃えて、一気に攻勢に出てきたようでした。
　オブジェクティブの中でも格段の強さを誇るマーダーブレインとスカルバンカーが同時に攻撃を仕掛けてくるとなれば、美晴もエージェント・ギブソンも、相応の覚悟を決める必要があります。
　美晴は右肘に巻きつけた革製の黒いエルボーサポーターを、軽く撫でてひと息入れました。
「まぁ、来ちまったもんはしょうがないさね。まとめてかかって来やがれ、なんてでかい口を叩くつもりはないけど、とにかくやるしか無さそうだね」
「お手伝いしますよ。我が社としても、オブジェクティブ殲滅は必達事項ですので」
　エージェント・ギブソンも、この時ばかりは珍しく緊張気味に、表情を硬くしていました。
　これだけの攻勢を凌ぎ切れるかどうか――対オブジェクティブ戦に於いてはベテランと呼べる彼でさえも、予測不可能だったのです。

　本シナリオガイドをお読みくださり、ありがとうございます。

　本シナリオは
　　『わたしの中の秘密の鍵』
　　『スイートルーム』
　の続編ですが、上記シナリオに参加・不参加に関わらず、どなたでもご参加頂けます。

　今回は三つのタイプの敵が登場しますので、それぞれのシーンに合わせたアクションをかけて頂くことになるかと思われます。

１）対フレームリオーダー
　こちらは、イコンに搭乗してのアクションとなります。
　ラーミラを追って出現するフレームリオーダーを迎撃してください。
　登場するフレームリオーダーは現時点では不明です。

２）対オブジェクティブ
　デラスドーレの街での戦闘です。
　最強ランクのオブジェクティブが出現していますので、相応の戦力が必要となります。
　戦場は街中ですので、イコンは使用出来ません。

３）対アヤトラ・ロックンロール
　特殊防護を施したトレーラーにラーミラを乗せ、高速移動しながらの戦闘になります。
　トレーラー荷台の外壁には迎撃用タラップや、タラップ間を結ぶ通路が増設されています。
　ＰＣはトレーラーの荷台外壁部分で敵を迎え撃つか、別の移動手段で並走して戦う形となります。
　トレーラーや護衛人員に破壊の余波が及ぶ恐れがある為、イコンは使用出来ません。
　また、高速移動ですので通常の小型飛空艇や空飛ぶ箒では追いつけません。
　襲う側も守る側も、高速移動しながらのチェイスバトルとなります。


　ちなみに、今回初出となるアヤトラ・ロックンロールの主構成員は、以下の通りです。

■蛮族の野盗団『アヤトラ・ロックンロール』
・デーモンガス
　革製ブーメランパンツと鋼のフェイスガードを装着する、全身筋肉の塊のような怪人。
　アヤトラ・ロックンロールのリーダー。
・トゥーエッジャー
　オールバックの長髪と髭面が特徴的な、葉巻をこよなく愛する悪人面の巨漢。
・ジェニー・ザ・ビッチ
　革製ビキニスタイルとショットガン二刀流が特徴的である、妖艶な美女。
・ヴァーノン・ジョーンズ
　ピンク色のモヒカンと革鎧、ボウガンがトレードマークの凶暴な男。

　アヤトラ・ロックンロールの構成員達は、武装した高速バギー、ニトロブースター搭載のバリケードカート、高速タイプの小型飛空艇などを駆ってトレーラーを追跡してきます。



　それでは、皆様からの素敵なアクションをお待ちしております。

・フレームリオーダーを迎撃する。

・オブジェクティブを迎撃する。

・アヤトラ・ロックンロールを迎撃する。