ここはパラミタ内の自然保護区。複数の地球の国家が共同所有する土地です。
ここで開催される自然観察研究会に、天御柱学院の生徒である月村 正臣とそのパートナージョバンナ・アルシュタッドも足を運んでいました。
この研究会はパラミタ内の全学校に協力が義務付けられており、それぞれの学校から一定数の生徒が参加しています。
「…ねぇ、正臣?」
「ん、どうした?」
「……なんでここ…来たの?」
「ああ、今日は不定期開催の自然観察研究会の日だからね。 学校に籠りっ放しじゃアンナも疲れるだろう? 今日は気分転換にでも、と思ってさ」
「……そうなんだ…ありがとう、正臣。 私…お外大好き」
強化人間かつサイオニックであるジョバンナは、見た目に比べると言動が幼くたどたどしいです。
クィーンヴァンガードとして蒼空学園で生活していた正臣は、強化人間としてのそんな宿命を背負わされたジョバンナを気づかい
彼女を天御柱学院の超能力科に入学させ、自身も転入。現在は普通科の生徒としてジョバンナの側にいることにしました。
ちなみに「アンナ」とは正臣が契約の際に決めたジョバンナの愛称です。
「他の学校の生徒達も来てるみたいだ。 おっと……どうやら、普段通り無理やり来させられた人もいるようだね」
正臣の見つめる先で他校の生徒達がつまらなそうに昼寝をしていたり、別の場所ではなにやらこそこそと相談している一団もあるようです。
「……禁断の…果実?」
聞き耳を立てていたジョバンナが小声で正臣に問いかける。
「詳しくは分からないけど、そういう名前で呼ばれる何かがこの保護区の中にあるらしいよ」
噂では光り輝く宝物だ、とか言われてるらしいけどね。と肩をすくめながら正臣が続ける。
「宝……探す…?」
「そうだね、次は宝探しにでもこようか」
「…ツッ!?」
「どうしたアンナ!? 大丈夫?」
「…うん、でも……呼んでる…」
「えっ? ゴメン、よく聞こえなかった。 もう一度言ってくれないかい?」
「……私…大丈夫。 正臣は、心配しない」
………………
そうして昼下がり。
念のためジョバンナを研究会参加者用のコテージで休ませ、正臣は調査活動を続けていました。
正臣は、本当ならジョバンナの傍にいてやりたいところですが、全学校に協力を義務付ける研究会だけあって、
参加した生徒は中々に多くの作業をこなさなければならないのです。
「さて、一旦様子を見に行くか」
正臣がコテージに戻った時、アンナの姿は消えていました。
「…っ! アンナ!?」
この調査では、参加者全員で保護区のほぼすべての場所での調査活動が行われているため、
普通なら誰かが目撃しているはずですが……
「……アンナ、一体どこに行ったんだ…?」
森の奥深くには、人知れず葬り去られた廃棄施設。
禁断の果実の正体は。
「助、けて……」
途方に暮れる正臣に手を差し伸べられるのは…あなたしかいません。