シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

intermedio 貴族達の幕間劇(後編)

リアクション公開中!

intermedio 貴族達の幕間劇(後編)

リアクションが公開されました!

リアクションの閲覧はこちらから!

リアクションを読む

参加者一覧を見る

シナリオガイド

第二幕開演。幕閉じる時、現実が演じているのは悲劇か、喜劇か。
シナリオ名:intermedio 貴族達の幕間劇(後編) / 担当マスター: 有沢楓花


【前回までの流れ】

 ヴァイシャリーの名門貴族バルトリ家の寝室に届いた、一通の手紙。それは、内容からいって、当主夫人アレッシア・バルトリへの殺人予告状のように思われました。
 『アレッシア・バルトリ お前が28歳になるその日が、人生で最後の日になるだろう』
 アレッシアから相談を受けた、デザイナーにして、当日上演されるオペラの衣装担当者クロエ・シャントルイユは弟のフェルナン・シャントルイユ(ふぇるなん・しゃんとるいゆ)を通して、百合園女学院と校長桜井 静香(さくらい・しずか)に協力を頼みました。
 そして当日、事件を防ぐためにバルトリ家を訪れた学生たちは、確かにその目的を達成したのですが──目の前で行われたのは当の婦人アレッシア・バルトリによる自殺未遂でした。
 しかし、そもそも殺人予告場が届いた、と部外者のクロエに相談したのはアレッシアです。
 何故そんなことになったのか、クロエは彼女に問いただそうとしましたが……、
「いいな、アレッシアはシャンバラ人の医者に診せる。地球人、およびシャンバラの人間でも、契約者との接触は許さん!!」
 アレッシアの夫にして現当主アウグスト・バルトリは、普段よりも一層かたくなになり、限られた人間以外の、学生の屋敷への出入りを禁止しました。
 というのも、百合園女学院の生徒牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)とそのパートナー達四人が、アレッシアを殺害しようとしたからです。
 アルコリアは本心から殺害しようと思ったのではなく、彼女を殺害したと見せかけて浚うことで危険から遠ざけようとしたのですが……それを後で静かに説明されても、アウグストの怒りは収まりませんでした。というのも、その際周囲にいた貴族や生徒を巻き込んでの大騒ぎとなり、アレッシアが自ら薬を飲んで自殺を図ったからです。彼にはその結果しか見えていません。
 アレッシアが人前でその行為に及ばざるを得なかった──人知れずに自殺を図れなかった──のはアルコリアの強硬手段のおかげだったのですが、それを知る者はアレッシア以外にいませんでした。


【今回のできごと】

「……生きてる……?」
 翌朝、寝室で目を覚ましたアレッシアの枕元にはミア・マハ(みあ・まは)と、シャンバラ人の医者がいました。
「気が付かれましたか。薬の影響は、ミアさんの直後の処置のおかげで、ほとんどありません。ですがまぁ、しばらくは安静にしていることです。精神的なショックの方が大きいようです。というより、ストレスですかな」
 医者に言われ、アレッシアはうつむいて首を横に振りました。
「本当はひっそりと、誰にも知られないように実行するつもりだったのですが……」
「何故あのようなことをしたのか、説明願いたいものじゃな」
 ミアの問いかけにアレッシアは長い沈黙の後、
「もう、疲れたんです……。裏切りを疑い続けて生きていく生活に。そしてもう、裏切られ続けるのは嫌なのです……」
「裏切られる? 誰にじゃ?」
「……夫と、それから……。……それより、私を殺そうとしたあの方は……?」
「ああ、それなら」
 ミアが、静香がラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)と相談の上、アルコリアとそのパートナーには百合園内での謹慎を申し付けた、と答えると、アレッシアは複雑そうな顔で、夫はさぞ怒ったでしょう、とだけ答え、
「もう一人の犯人は、どうなりましたか」
「何の事じゃ?」
「いえ、何でもありません。……そうですか、結局クロエさんには、ご迷惑をかけてばかりになってしまいましたね」
 彼女は疲れたように首を振ると、それきり口をつぐみました。
 そして彼女は病人のような、半幽閉生活を送ることになったのです。

 それは彼女の再度の自殺を恐れたアウグストによる言いつけでした。
 アレッシアを家から出すなと本人と使用人言いつけたアウグストでしたが、自身は深夜に帰ってきては翌朝出掛ける生活が続き、一晩中家に帰ってこないことすらあります。
 馬車で出かけるため、使用人たちは、高級住宅街のはずれに住む屋敷に通っていることだけは知っています。この屋敷は最近建てられたもので、若い女が、メイドと二人で暮らしているとのことです。また人の出入りが時折ありますが、その多くは年配の貴族や懐の温かい商人だそうです。
 この間にクロエは何とかアレッシアから事情を聞こうとしましたが、この事態を招いた責任者だとアウグストには思われており、使用人にも、会わせないよう言いつけています。応接間までは通されますが、アレッシアが自ら会おうとしない限り、アウグストや言いつけを守る使用人に、話を握り潰されてしまうでしょう。
 アウグストが学生の中でアレッシアと会うことを許可したのは、彼女の一命を取り留めたミア・マハと、及びその地位を国に保証されている東西ロイヤルガード本人(パートナー含まず)だけです。
 また、使用人として馴染んだ高務 野々(たかつかさ・のの)も、仕事を続けているなら、寝室を始め様々な場所に出入りできるでしょう。



 ──シャントルイユ家、応接間。
「つまり、ドナート卿が予告状を送ったか、それを知る立場の物から情報を事前に入手できたか、どちらかということですね」
 フェルナンの問いに、葛葉 翔(くずのは・しょう)は頷きました。
「付け加えるなら、“嘘感知”に引っかかったということは、意識的に嘘をついているということになります」
「バルトリ家はヴァイシャリー家側の貴族です。勿論、ヴァイシャリー家と表だって対立する貴族は少なく、ドナート卿もヴァイシャリー家には従順に見えますが……」
 ではバルトリ家とはどうか、といえば。
「貴族の中には陰謀策謀を好む方たちがいます。そうでなくとも、自ら直接対峙しなくともバルトリ家を失脚させることが可能なら、口をつぐんでいるでしょう」
 先日の誕生日パーティで明らかになったのは、アレッシアがバルトリ家の中心であり、夫アウグストを補佐するために政略結婚をさせられ、そして使用人にも慕われていない──という事実。
 それを彼が知っているなら、アレッシアが殺害されるのをわざわざ止める必要はないのです。
「これも知っているのでしょう。殺害予告について知ることができる立場なのですから」
「ドナート卿が予告状を送った可能性は排除していいですね」
「ええ、おそらく、あれは夫人の狂言だったのでしょう。では……誰がそれを彼に話したのか、ですが」
 予告状の件は限られた人間しか知らないのです。内部の人間で知っているのは、アレッシアとアウグスト、そしてアレッシアが信頼をおくモニカという侍女だけです。
「──ここで考えていても埒があかないわ。私は出かけるわね」
 黙って話を聞いていたクロエは、ソファから立ち上がりました。
「何処にですか?」
「ドナート卿のお屋敷に、新しいデザインのドレスを売り込みに行くのよ」
 夫人でもいいし、娘でもいい。あしらわれても、使用人にでも話を持ちかけてみればいいわ、とクロエは言います。
「たいていの女性はきれいなものや賛美に弱いから、何らかの情報を聞き出せると思うの。でも、期待はしないでおいてね」
 クロエは他に数人、助手として来てくれる生徒を募集しました。



 戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)は、手の中の瓶に目を落としました。
 睡眠薬。
 アレッシアとのいかがわしい噂を立てられている、オペラ歌手ディーノが眠れないと使用しているものです。
 そして、予想通りというべきか、アレッシアが自殺未遂に用いたのと同じものでした。
 真に狙われているのは彼である──との予測は当たっており、もし彼が隠さなかったら、たとえアレッシアが公衆の面前で自殺未遂を行ったとしても、ディーノは事件との、何らかの関連を疑われていたでしょう。
(つまりこういうことですね。アレッシア殺害の絶好の動機を持つ者がおり、彼が服用している睡眠薬で、彼女が死んだら──合法的に、彼は絞首台に送られる可能性が高い)
 ディーノとの別れ際、今度はいつパトロンと会うのかと聞いた小次郎に、ディーノは答えました。
「中断されたオペラの第二幕をやってみたらどうかと、話をいただいたんだ」

 その後アレッシアが回復したという報に、ディーノは第二幕の上演を決定しました。
 ディーノの家は、住宅街にあるこぢんまりとした一軒家です。
「最低でも、人間さえいれば演じることはできるからね。ご覧いただけるかは分からないが、バルトリ家ご夫妻には招待状を出してお招きした。返事はまだだけどね」
 参加するのはディーノ達オペラ歌手と奏者と、スタッフが数人。規模は前回よりさらに小さくなってしまいますが、仕方ありません。
 観客はアレッシアとアウグスト、そして援助者のビアンカの三人の予定です。
「学生さんには、もし手伝ってくれるならとても助かるし、観劇してもらってもいいと思っている。この前のことはみんな腹立たしく思ってるけど、止めようとしてくれた人たちが沢山いたんだ。もう一度オペラを一緒に観て、和解してくれればいいと思っているよ」
 彼の言葉に嘘はないようですが、ディーノに関しては、いくつかの疑問点が持ち上がっています。
 アレッシアの狂言(本当に自殺するつもりだったようですが)がディーノを殺すことも目的であったとして、二人の間にあった擦れ違いの原因は何でしょうか。ディーノに何かを疑われるような余地が残されているのでしょうか。
 そして、アレッシアに代わり、ディーノの新しいスポンサーとなった貴族ビアンカ・カヴァルロは、本当に貴族なのでしょうか。



 百合園女学院、校長室にて。
「勝手に出て行ってごめんなさい」
 アレッシアのゆるスターである真珠を胸に抱き、村上琴理(むらかみ・ことり)はパートナーであるフェルナンに頭を下げました。
 フェルナンは彼には珍しく仏頂面になります。
「事情は分かりました。……で、言っておきますが、……俺も怒ることがあるんですよ。一応これでも、パートナーなんですから、何かあれば遠慮なく相談してください。勝手に一人で抱え込んで出て行かれて、心配しないとでも思いましたか?」
「……うん。ごめんなさい」
「事情は分かりました。……俺こそ心配をかけて済みませんでした。確かに最近色々と考えることが多く、自分の誕生日を忘れる程度には疲れていたようですから」
 でも大丈夫ですよ、と彼は笑います。
「今回の事件が終わったら、誕生日分の休暇を貰うつもりなんです。少々気が早いですが、貴方と友人と皆でどこかに遊びに行きませんか? ……ああ、桜井校長」
 校長室の扉が開いて、静香が顔を出しました。
「ただいま、ラズィーヤさんの許可は貰ったよ。あ、村上さんも一緒に行くよね」
「何処へですか?」
「みんなで、この前のことを謝りに。それで、もう一度オペラのお手伝いをしに」
 それから、と静香は付け足します。
「真珠の処遇。どうしたらいいかまだ迷ってるんだよね。誰の手にあるのが一番いいのか、アレッシアさんやみんなで考えてみよう?」

担当マスターより

▼担当マスター

有沢楓花

▼マスターコメント

 お久しぶりです、もしくははじめまして、有沢です。
 イラストシナリオをはさみお待たせいたしましたが、『intermedio 貴族達の幕間劇』全二回のうち後編をお送りします。

 ヴァイシャリーの、古王国時代から続く名門貴族のひとつ、バルトリ家。
 前回、屋敷で行われた誕生日パーティは彼女の殺害未遂(という演技)及び自殺未遂により、中断されました。
 今回の事件はその一週間後、ディーノの家で開かれるオペラの再演当日となります。
 この日登場人物のほとんどが、ここに集まります。
 が、現在の状況ですと、アレッシアとアウグストは欠席します。アレッシアは無気力な日々を送っており、アウグストは「いつもの屋敷」に出かける予定があるからです。
 またドナート卿とクロエは、当日もドナートの屋敷にいる予定です。
 つまり、誰も何もしなかった場合、ビアンカひとりを観客にオペラが演じられてその日は何事もなく終わりますが、バルトリ家は没落し、支持を受けているヴァイシャリー家にも多少の影響があります。
 また、全員集まらなくても、アクションによって事件は解決しますが、難易度は上がると考えられます。
 当然ですが、これとは別に、自殺は防いだのだから裏事情なんて気にしないで遊ぶ、という選択肢もあります。

 また、アルコリアさんにつきましては、百合園内での謹慎を言いつけられています。特に見張りなどはいませんが、普通に校門から出ようとした場合、場合生徒会役員から止められます。百合園内からできることは限られていますので、行動には工夫が必要でしょう。

 ■主な登場人物■
  ・アレッシア・バルトリ    バルトリ家当主の妻。28歳。アウグストを補佐するため、政略結婚させられている。実質的にはバルトリ家の主人。
                 ディーノへの恋愛感情は多少あるが、身分と役目のため無意識下で抑えていた。
  ・アウグスト・バルトリ    バルトリ家当主。33歳。次男だったが、急死した長兄の代わりに家督を継いだ。
                 ヴァイシャリー家を支持する。旧時代的な貴族。浮気をしているという噂がある。
  ・ディーノ          現在、貴族のご婦人方に絶大な人気を誇るテノール歌手。オペラでは、当時のバルトリ家当主役を務める。
                 つい最近まで、アレッシアの援助を受けていた。現在のパトロンであるビアンカに恋愛感情を持っている。
  ・ビアンカ・カヴァルロ    貴族の令嬢と名乗っている。ディーノの演劇上の援助者であるが、その他贈り物などもしているらしい。
  ・ドナート卿         バルトリ家とは仲が良くない貴族。アレッシアの脅迫状その他のことを知っていた。

  ・クロエ・シャントルイユ   ヴァイシャリーのデザイナーの一人。ドレスから宝飾類までトータルコーディネート。
                 アレッシアの相談を受けた。シャントルイユ家次女。
  ・フェルナン・シャントルイユ シャントルイユ家の長男。桜井静香の友人の一人。
  ・村上琴理          フェルナンのパートナー、百合園女学院の生徒。アレッシアのゆるスター「真珠」の現在の飼い主。
  ・桜井静香          百合園女学院校長。ディーノでのオペラの手伝いを買って出る。

 それでは、皆さんのアクションをお待ちしています。

▼サンプルアクション

・アレッシアを説得する

・アウグストの後をつける

・クロエと共にドナート卿の屋敷を訪ねる

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2010年12月11日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2010年12月12日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2010年12月16日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2010年12月29日


イラストを設定する 設定イラストを編集/解除する

リアクションが公開されました!

リアクションの閲覧はこちらから!

リアクションを読む

参加者一覧を見る