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古の白龍と鉄の黒龍 第4話『激突、四勢力』

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古の白龍と鉄の黒龍 第4話『激突、四勢力』

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龍族と鉄族の最終決戦、そしてルピナスの企み。契約者の決断は――。
シナリオ名:古の白龍と鉄の黒龍 第4話『激突、四勢力』 / 担当マスター: 猫宮烈



●前回のあらすじ

 契約者に手合わせを挑んだ、龍族の若き隊長ケレヌスヴァランティ、鉄族の“紫電”“大河”
 彼らは契約者との戦いを通じて、彼らがただ敵対するばかりではない、共に手を取り合う可能性を秘めている存在であることを実感しました。

 しかし、情勢が彼らを、そして契約者を否が応にも緊迫した事態へと引きずり込もうとしていました。

 自身の修理が完了した鉄族の長“灼陽”は、『オペレーション:ファイナル』を発動。龍族との最終決戦を望みます。
 龍族の長ダイオーティもこれに呼応し、防衛の準備を整えます。鉄族の攻勢を耐え抜いた先に勝利はある、龍族の戦士たちはそう信じていました。

 また、魔族の王パイモンとイルミンスール魔法学校校長エリザベートが直接向かった、デュプリケーターを束ねる少女、ルピナスの拠点への攻勢は、拠点こそ使用不可能なほど破壊するに至りましたが、ルピナスは戦闘の結果、契約者の身体を奪い取った挙句、未来から来た世界樹の一人、ミーナをコントロールし、『深峰の迷宮』最深部へ向かおうとしています。
 そこに、『天秤世界』に関係する重大な秘密があるであろうことは、ほぼ明白でした。


●イルミンスール:校長室

「『深緑の回廊』はどうなっておる?」
 テレポートで現れたアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)へ、未来から来た世界樹のもう一人、コロンが答えます。
「今のところは安定しているみたい。今すぐ向こうに行けなくなるなんてことはなさそう。
 でも、通信の方は大分やられちゃってる。拠点が使えなくなっちゃったから、別の方法でどうにかしないと。
 パートナーさん同士は、連絡が取れるんだよね?」
 コロンの問いにアーデルハイトがうむ、と答えます。今、イルミンスールと『天秤世界』間の通信はほぼ麻痺状態であり、パートナー同士の通話でしか互いの状態を詳しく知る術がないと言ってもいい状況でした。
「……おにいちゃん……」
 コロンが『深緑の回廊』の向こう、帰って来ないミーナを心配する表情を浮かべます。
「……ミーナを天秤世界に行かせたのは、私の責任でもある。
 ミーナは必ず連れ戻す、それは約束しよう」
 アーデルハイトの言葉にコロンは、うん、と頷きます。そしてアーデルハイトは、心の中で付け足すように呟きます。
(あやつのことだ、何をするかは予想がつかぬが、何かはするはずじゃ。
 手は打っておかねばな。……たとえ他学校の生徒であっても、“生徒”を失うような事態を招くつもりはない)
 そこまで呟いた所で、もう一つ別の問題が浮上します。かろうじて話せるまでに復活したミーミル・ワルプルギス(みーみる・わるぷるぎす)の話から、ルピナスが中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)の身体を得ているという事実が明らかになりました。
(ルピナスの能力が明らかになりかけていた所に、また不明な点が出来おった。契約者の身体を得て能力がどのように変化したかが読めぬ以上、下手な行動は取れん)
 もしも、契約者を取り込む能力を得ていたとしたら、迂闊に接近するのは危険です。しかし、あの驚異的な再生能力を無くしていたとすれば、今は好機でもあります。
(……どうする、我が生徒たちよ?
 私はもう、お前たちに判断を委ねた身じゃ。どのような結末を迎えようとも、それを非難することはない。
 ただ……決して死ぬことのないように、とは思わせてもらうぞ)
 ――それは契約者だけでなく、『天秤世界』の者たちも含まれていました――。


●天秤世界:契約者の拠点近く

「では、今後の我々の行動について、検討を始めましょう」

 魔神 パイモン(まじん・ぱいもん)が進行役を務める中、その場に居合わせた者たちによる――リンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)モップス・ベアー(もっぷす・べあー)カヤノ・アシュリング(かやの・あしゅりんぐ)セリシア・ウインドリィ(せりしあ・ういんどりぃ)サラ・ヴォルテール(さら・う゛ぉるてーる)ニーズヘッグアメイア・アマイア魔神 ロノウェ(まじん・ろのうぇ)魔神 アムドゥスキアス(まじん・あむどぅすきあす)魔神 ナベリウス(まじん・なべりうす)――会議が行われていました。
「まずは契約者の拠点ですが、外観はまるで世界樹のように変化しています。見た目の変化は止まっていますが、また何かをきっかけとして動き出す可能性もあるでしょう。ここにはパラミタとを繋いでいる『深緑の回廊』もあるため、出来るなら異変を解決し、元の姿に戻したい所ですね」
 言ったパイモンの、皆の前に、今の契約者の拠点の映像が映し出されます。内部から生じた枝が施設を貫き、一つの集合体として存在しているかのようでした。見た目だけで言えばイルミンスールに近いものがあります。
「アーデルハイト様の言によれば、この変化はミーナがもたらしたものであるとの事です。彼は契約者と共にルピナスと接触を果たし、その際に何らかの操作を受けた。そして今、その操作の結果がこのような事態を招いたのでは、との事です」
 エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)を介して送られたアーデルハイトの推測をパイモンが述べ、次に自身も向かったルピナスの拠点について話し始めます。
「こちらは、域のほぼ全てが崩落しています。一部崩落に巻き込まれた契約者の収容と治療を行わせていますが、今後への影響は避けられないでしょう。
 契約者を負傷させてしまった事は、申し訳なく思います」
 パイモンが目を伏せ、しばらくの後に目を開き、再び口を開きます。
「ルピナスの拠点は、天秤世界の地下に広がる迷宮『深峰の迷宮』の入り口でもありました。
 拠点があのようになってしまった以上、ここから迷宮へ入ることは叶いませんが、他にいくつか入り口があると聞いています」
 パイモンが目配せし、視線を受けたカヤノがパイモンに代わり説明を始めます。
「あたいたちは『うさみん星』から迷宮に入って、ルピナスの拠点、それともう一個分かんなかった入り口を見つけたわ。
 それと、あたいたちと同じように調査してた契約者が、えっと……どこだっけ」
「『龍の眼』です、カヤノさん」
「そう、それ。そこの近くにも入り口があるって連絡をくれたわ。これと南の方にある入り口、合わせて3つから入ることが出来て、迷宮は契約者の拠点にも繋がっている。
 あたいとセリシア、サラは迷宮に入って、契約者の拠点に行けるかどうか試してみたい。あそこにはセイランとケイオースも居るし、フィリップも居るんでしょう?」
 カヤノがリンネに尋ねれば、リンネがうん、と答えます。連絡が途絶える間際、フィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)は契約者の拠点の調査をしているという報告を残していました。彼とセイラン・サイフィード(せいらん・さいふぃーど)ケイオース・サイフィード(けいおーす・さいふぃーど)と数名の契約者が拠点内に取り残されているのはほぼ明らかです。
「分かりました。ではカヤノさん、どの入り口から拠点へ向かわれますか?
 最も近いのはこの入り口ですが、ここは『龍の眼』に近い。龍族と鉄族がそれぞれ戦いへ向けて準備をしていますから、当然警戒されているでしょう。
 北と南、2つの入り口は龍族と鉄族の戦闘の影響は小さいと思われますが、距離があります」
「……あ、そっか。ゴメン、その点考えてなかった。
 あたいはリンネに来てもらって、この一番近い入り口から入ろうかなって考えてたけど、言われてみたら危険よね。ちょっと色んな人と話をしてきて、もう一回考え直すわ。リンネも来てちょうだい」
「うん、分かった」
 リンネとカヤノ、セリシア、サラが一礼して席を外し、再検討を行うために必要な場所へ向かいます。
「さて……ナベリウス、アムドゥスキアス。
 龍族のケレヌス、鉄族の“紫電”との戦いぶりを見てきたお二人は、今の事態をどう考えていますか」
 話を振られ、まずはアムドゥスキアスが口を開きます。
「僕はケレヌス・ヴァランティと手合わせをしたけど、彼らは決して戦いを扇動するような性格ではないと思う。それに契約者との手合わせも、確かにちょっとした事故はあったけど概ね穏便に済んだ。だから龍族が先手を取ったとは考え難いな」
「んーとねー、ちょーっとみただけだけど、“しでん”さんもなんかたのしそうにたたかってたようにみえたよー」
 『ナベリウス』の一人、ナナがアムドゥスキアスに続いて思いを述べます。
「情報の中に、鉄族の長である“灼陽”の修理が完了した、という内容のものがありました。
 おそらく鉄族は、いえ、“灼陽”は準備が整ったものと判断し、龍族に決戦を挑もうとしているのではないでしょうか」
 ロノウェが情報を分析した結果を述べ、パイモンが再び目を閉じ、まとめた考えを伝えます。
「私とロノウェは、“灼陽”の動向を追います。彼がどのような進路を取って龍族の元へ向かうのか、把握しておく必要があります。ナベリウスとアムドゥスキアスは、龍族の元へ向かってください」
「魔族の王サマよ、オレたちはどうすればいい?」
「ニーズヘッグさんとアメイアさんには、私達のフォローに当たって欲しいと考えています。
 今の我々の中で、機動力と攻撃力を兼ね備えているのはリンネさんの『エールライン・ルミエール』とあなた方です。リンネさんはカヤノさん達精霊に付いていただくのがよろしいと思いますので――」
「オマエたちにはオレたちが必要、ってわけか。いいぜ、その案に従う。アメイアも異論ないな?」
「勝手に決めるな……と言いたいが、私も異論ないな。分かった、その方針に従おう」
 ありがとうございます、と礼を言い、パイモンが皆を一様に見回して言います。
「我々の目的は、両者の戦いに決定的な決着を付けさせない事です。もしもどちらかの長が斃れるような事があれば、その時はおそらくこれまで繰り返されてきた天秤世界の法則が適用される事になるでしょう。それも一つの決着ではありますが……我々の望む決着ではない」
 何かの犠牲の上に成り立つ決着は、望むべきではない。
 ――犠牲を払って決着を得た者の言葉は、そのような意思を含んでいました。


●『昇龍の頂』

「ダイオーティ様。先程偵察の者が『疾風族』の“紫電”と“大河”が『龍の眼』に入ったとの連絡を送って来ました。
 『龍の眼』からここ『昇龍の頂』までは目と鼻の先。いかがなされますか?」
 頭を垂れ、報告をもたらしたケレヌスとヴァランティを前に、ダイオーティは落ち着いた表情で答えます。
「ここを主戦場にするのは、避けたい。『執行部隊』は出陣し、ここと『龍の眼』の中間辺りで『疾風族』を迎え撃って下さい。
 私は“灼陽”の狙いが判明次第、そちらへの対処に当たります。……彼を相手出来るのは私しかいないでしょう」
「心得ました。……ご武運を」
 ヴァランティが短く答え、立ち上がったケレヌスと、部屋を後にします。二人が扉の向こうに消え、ダイオーティは一息つくと背もたれに身体を預け、心に呟きます。
(……二人からは、ほんの少し、迷いのようなものを感じた。そしてそれは、私も同じ。
 ただこのまま、互いに戦い続けることが正解なのか……)
 その迷いが、種族を“死”に追いやる事は分かっていても、今のダイオーティには忘却の彼方に捨て去る事は出来ませんでした。デュプリケーターとルピナスの存在、そして契約者の存在が、彼女と龍族に鉄族との決着以外の道を示しつつあったのです。
(鉄族へも、契約者は働きかけを行なっていると聞く。それ次第では我々が守り切れる間に、攻勢が止むかもしれない……)
 そこまで考えた所で、ダイオーティは自分が契約者に期待を寄せている事に気付き、戸惑いを深くします。そのまま何事もなければ彼女は思考の海に沈んでいったかもしれませんが、それを遮るように従者の一人がダイオーティの元へ駆け込み、深刻な報告をもたらしました。

「報告します! 『ポイント32』が“灼陽”の攻撃を受け、鉄族に奪い返されました!」


(ポイント32が取られたか……“灼陽”の次の狙いはどこだ?)
 報告を受け、『執行部隊』の編成を待つ間、ケレヌスは思案を巡らせます。“灼陽”の次の狙いは普通に考えるなら、『龍の耳』でした。
(あそこにはそれなりの戦力を置いてはいるが……厳しいな。
 ダイオーティ様は『龍の耳』が“灼陽”の目的であると判明すれば、出撃なさるだろうが……)
 ケレヌスの胸の内では、果たしてダイオーティ様で“灼陽”を止められるだろうか、その思いがどうしても出てきてしまっていました。かつての戦いでダイオーティガを喪った事実、そしておそらくは契約者の手を借り、さらに強大な力を得て復活した“灼陽”、これに対し戦い抜く事に踏み切れない龍族の長と、自分自身。……これらがケレヌスを、消極的な思考へと向かわせていたのです。
「ケレヌス、部隊の編成が完了したわ。……厳しい戦いになりそうね」
 ヴァランティの声が聞こえ、ケレヌスは深みに嵌りそうだった思考を切り替えます。兎にも角にも、目の前に迫った『疾風族』、“紫電”と“大河”を退けない事には龍族の生き残る道はありません。

「今日の戦いは、今後の龍族の道筋を決める重要な戦いである。
 勝てば我々は明日への道を得、負ければ今日ここで道は途絶える。……何としても道を途絶えさせるわけにはいかん!
 各員、死力を尽くして『昇龍の頂』を守り抜け!」



●『ポイント32』

「うむ、これほどとは、素晴らしい。私の予想を超える力だ」
 龍族から奪い返した『ポイント32』上空で、“灼陽”は満足気に笑います。主力が引き払っていた事もあったものの、それなりの守備戦力を置いていた『ポイント32』を、“灼陽”はほぼ単騎で奪い返したのです。それを成せたのは契約者の働きかけがあっての事でした。
「ドクター・ハデスには感謝せねばなるまいな。
 ……さて、次の目標は『龍の耳』……ここを落とせば『昇龍の頂』を二方面から攻められる。私がダイオーティと決着を付ける頃には、『疾風族』が『昇龍の頂』を落としているだろう」
 そこまで口にした所で、“灼陽”は報告を寄越してきた“紫電”の口調に含まれていた、煮え切らない何かを思います。
(契約者は鉄族に、大きな影響を与えている。おそらく“紫電”も何らかの影響を受けている。
 それがどのような結果を生むか……フッ、いいだろう、見届けてやろう。私は私で、鉄族を生き残らせるため、龍族に勝利する手を打たせてもらう)
 心に呟き、“灼陽”は座っていた椅子から立ち上がり、定めた方針を告げます。

「我の次の目標は『龍の耳』とする!
 戦闘準備急げ! 目の前の山脈ごと消し飛ばすつもりで『龍の耳』を奪い取ってくれる!」



●『龍の眼』

 部下に指示を飛ばしながらも、“紫電”の表情は晴れません。
(本当にこのまま、龍族を滅ぼしちまっていいのか?)
 先程からその思いが頭の中を占め、どうにも抜けてくれないのでした。
(ちくしょう……悩むなんてオレらしくもねぇってのによぉ)
 いつもと違う自分に苛立ちつつ、“紫電”は与えられた任務を再確認します。“紫電”率いる『疾風族』は『龍の眼』から『昇龍の頂』を目指して出撃。途中でおそらくは『執行部隊』と交戦することになるだろう、その場合は敵戦力をこの宙域に釘付けにする事を優先せよ、との事でした。
「しーくん、編成終わったよ。私達はいつでも出撃可能だよ」
 こちらはいつもと変わらないほんわかとした様子で、大河が出撃準備が整った事を告げます。
「……うっし!」
 自分を奮い立たせるようにして立ち上がった“紫電”が、心の迷いを無理矢理に押し込んで、居並ぶ部下達に激励の言葉を発します。

「今日の戦いに勝利すりゃあ、オレたちはきっとこの気味悪ぃ世界から出られる!
 気合入れろぉ! 龍族のヤツらを地に沈めて、オレたち鉄族がこの空を制圧するんだ!!」



●『契約者の拠点』地下

(これが、契約者の肉体……力なのですわね)
 ミーナが掘り進む地下への道が出来上がるのを、綾瀬の身体を奪ったルピナスが見守ります。その間にルピナスは自分の力がどのようなものかを把握しようとしていました。
「……っ……」
 試しに自分の左腕を掻いてみれば、ピリッ、と走る感覚が伝わり、そして掻いた痕からは紅い血が流れ落ちます。
(この身体では、肉体の再生は難しいですわね。
 ……あぁ、今のが“痛み”だったのですね。とても懐かしい気がいたしますわ)
 痛み、それはルピナスが失って久しい感覚でした。
(この身体はわたくしに、失っていたと思っていたものを思い出させてくれる……
 嫌ですわ、わたくしはもう後ろを振り返ることはない、そう決めたというのに)
 こうなれば一刻も早く『深峰の迷宮』の最深部に辿り着き、『天秤世界』の根幹を為している力を得てしまおう。今のままではきっと、わたくしは心揺らいでしまうだろうから――。
(例えわたくしが、世界から見て正しくなかったとしても)

 浮かべた表情には、何種類もの色が含まれているように見えました――。


 そして、同じく『契約者の拠点』地下では、運悪く取り残されてしまった者たちが必死の抵抗を続けていました。

「……成長は、どうやら止まったようだ。根は未だに地面を掘り進んでいるようだが……」
 戻って来たケイオースを労い、セイランは憂いの表情を浮かべます。
「せっかく張った結界も、中から侵食されてしまっては、効果がありませんわね」
「予想外の事態……今までの俺たちならば、何も出来ずにいただろう。
 ……だが、今回は違う。俺たちは一つの可能性を生み出す力を有している」
 確信を持って発言するケイオースをセイランが注視し、ケイオースがその視線に頷いて答えます。
「拠点を守るために張った結界は、起点となるマーカーを設置し直す事で、範囲を調節する事が出来る。
 範囲を絞ればその分、結界の強度は増す。マーカーを今この拠点を侵食している存在の近くに設置する事で――」
「――活動を抑える事が出来る、というわけですのね」

(まさか、こんな事になるなんて……!
 でも、ここでじっとしていても何も始まらないし、何も解決しない)
 天井から伸びてきた『根』の影響から逃れた所で、フィリップが息を吐き、これからの行動を検討します。
(まずは、ケイオースさんとセイランさんと合流しよう。
 一人じゃ難しい事も、みんなで協力すれば何か出来るはずだから)
 意思を固め、フィリップも行動を開始します――。


 局面は、一つの終着点を含んだ分岐を見せていました。
 龍族と鉄族の最終決戦に白黒が付けば、勝った方は天秤世界のルールに従い元の世界へ戻るでしょう。それも『終わらない戦いを終わらせる』の一つの結末なのです。
 その場合、契約者とルピナスはどうなるか分かりません。現段階では天秤世界から両者とも追い出される可能性が最も高いと予想されますが、その際結果として契約者の手に負えなくなれば、それからは世界樹の力で解決されてしまうことになるでしょう。

 あるいは、ここでルピナスを滅してしまうのも選択の一つでしょう。ルピナスは契約者の身体を手に入れた状態で能力は未知数ですが、契約者という存在は契約者がよく知っています。決して挑んで倒せない相手では無いでしょう。
 ……だとしても、龍族と鉄族の戦いに決定的な影響を与えるわけではありませんので、彼らへの対処は別途必要になります。

 これまで契約者が選択してきた選択を貫くのであれば、龍族と鉄族の最終決戦にあえて決着を付けさせず、彼らを共闘する方向へ向かわせた上で天秤世界の秘密を明らかにし、ルピナスとの決戦に持ち込み彼女の企みを阻止することでしょう。
 その為には龍族と鉄族の互いへの戦意をどう処理するか、そしてルピナスの企みを完遂させないように立ち回ることが必要です。どれか一つでも失敗すればルピナスは企みを完遂し、天秤世界を脱するでしょう。

 それぞれの意思、そして力がぶつかり合った先に、『天秤世界』はどのような結末を迎えるのでしょう。
 それは、この世界を管理する世界樹すらも予想する事は出来ないのです――。

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

猫宮 烈です。
お待たせして申し訳ありませんでした、『古の白龍と鉄の黒龍』、第4話を始めたいと思います。


※先に、予めお伝えしておくこと
以前、このキャンペーンは6話構成とお伝えしました。
ですが、6話に固執するあまり、前回リアクションにて少々強引な判定がありました(と、自分では思っています)。

よって、後半戦である4話からは、6話構成であるという拘りを取り払おうと思います。
皆さんが投稿したアクションによる判定の結果、

ダイオーティ、もしくは“灼陽”が死亡する→4話で終了
ルピナスが死亡する→5話で終了
誰も死亡しない→当初の予定通り、6話で終了

と、方針を決めたいと思います。
皆さまにはご了承のほど、よろしくお願いいたします。


状況としては、3話終了時を引き継いでいるものとします。
3話の個別コメ等で、各PCの状況を補足しているかと思いますので、そちらに従った上でアクションをかけていただくようお願いします。


それでは皆さま、『天秤世界』の運命を左右する『古の白龍と鉄の黒龍』後半戦、どうぞお楽しみください。

▼サンプルアクション

・龍族(鉄族)の長を斃し、争いに決着を付ける

・龍族と鉄族の決戦に介入し、ここで決着を付けさせない

・契約者の肉体を得たルピナスを、ここで滅ぼす

・ルピナスを滅ぼさない方法を選択する

・その他、自分の決めたことを為す

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2013年08月27日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年08月28日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年09月01日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年09月26日


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