薔薇の学舎

「詰めが甘いところは相変わらずよね、アンタ」
　苦虫を噛みしめたような表情を浮かべるジェイダスを前に、一人の男が呆れたようにため息をつきました。長い漆黒の髪を後ろで一本にまとめた男の名は、中村　雪之丞（なかむら　ゆきのじょう）。ジェイダス・観世院（じぇいだす・かんぜいん）の学友であり、現存する4名のイエニチェリの一人です。
　ジェイダスの執務机に腰をかけた雪之丞は、机の上に置かれた報告書を手に取ります。そこには先日パラミタ内海で開催された「美男子オーディション」の結果が記されていました。
「普段うちの生徒達は、こんなむさ苦しい所に押し込まれているのよ。男ばかりのコンテストなんて開いたって、やる気でないっつうの」
　雪之丞の言葉には、遠慮の欠片もありません。ジェイダスも彼の辛辣な言葉に慣れているのでしょう。不機嫌そうに顔をしかめていますが、咎めようとはしません。
　そうこうするうちに雪之丞の矛先は、ジェイダスの側に控えていたルドルフ・メンデルスゾーン（るどるふ・めんでるすぞーん）に向かいます。
「アンタもジェイダスの言われた通りに動くだけじゃなくて、もう少し考えなさいよ。美少年たくさんでウッハウハ〜なんて喜んでんのは、ジェイダスと一部の生徒だけだっての」
　歌舞伎役者でもある雪之丞は、普段から女言葉を使っています。しかし、その性癖は至ってノーマル。美少年を侍らせて喜ぶジェイダスの趣味は、昔から理解できないままですし、するつもりもないようです。
　雪之丞の舌戦を正面から受けることとなったルドルフは、自分が「見た目だけが取り柄のお稚児さんの一人だ」と言われたような気分になりました。
　言い返したい衝動に駆られましたが、ルドルフは必死の努力で感情を抑えつけます。同じイエニチェリと言えど、相手はジェイダスの学友なのです。自分とは立場が違うことをルドルフは知っていました。
「では、雪之丞様ならば、どうされます？」
　ルドルフに問いかけられた雪之丞は、得意気に鼻を鳴らしました。
「騎士道で競わせるわ。もちろんお姫様も完全装備でね」


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【第2回ジェイダス杯　参加募集要項】


■開催地
　ヴァイシャリー

■参加資格
　学校、性別を問わず参加できます。

■レースに使用する乗り物について
　薔薇学生は白馬、シャンバラ教導団員は軍用バイク、波羅実生はスパイクバイク、蒼空学園生は小型飛空挺、インスミール魔法学校生は空飛ぶ箒となります。ただし、ヴァイシャリーは運河が入り組む水上都市です。すべての場所に橋が架かっているとは限らないため、バイクによる出走は不利です。そのため希望する参加者にはゴンドラを貸し出します（レースの途中で乗り換えることはできません）。平地でのスピードの目安は、軍用バイク＞スパイクバイク＞小型飛空挺＞白馬＞空飛ぶ箒＞ゴンドラです。
　また、百合園生には参加者とペアになって出走していただくため、乗り物の貸し出しを行いません。

■チェックポイントについて
　百合園生は、チェックポイントにてお待ちいただきます。チェックポイントに到着した参加者の中からお好みの同行者をお選びください（アクションをかける際には、具体的な参加者名もしくは、希望する参加者のタイプをご指定ください）。　百合園生の数が参加者の人数よりも少なかった場合、あぶれてしまった方の同行者は第一回ジェイダス杯で登場した等身大ジェイダスフィギアとなります。

■妨害・トラップについて
　レース中の妨害行為は認めております。ただし、百合園生以外は、事前にトラップをしかけることはできません。

■リタイア条件
　ヴァイシャリーの治安と景観を守るため、妨害用のランチャー等、特殊な武器の持ち込みは固く禁じます。持ち込みが発覚した時点で失格とさせていただきます。
　乗り物の改造については、一般的な近所のスーパーやホームセンターで売っている材料を使って行う場合のみ認めます。ただし、ゴンドラ及び、空飛ぶ箒、白馬の改造はできません。
また、百合園生、及び等身大ジェイダスフィギアは丁重に扱ってください。扱いがぞんざいだと判断された時点で失格となります。くれぐれもご注意ください。

「第二回ジェイダス杯」は新たに登場したイエニチェリ・中村雪之丞プロデュースでお送りします。
今回のテーマは「騎士道」。皆さんならではの「騎士道」をアピールしつつ優勝を目指してください。上位入賞者及び、騎士に相応しい行動を取られた方には、称号を進呈させていただきます。

・堅実に走る

・他者を妨害する

・憧れのあの方と優勝を目指そう！