薔薇の学舎

　ニルヴァーナに新しくできた地下街、アガルタ。
　最近は人の流れができ、観光都市として栄えつつあります。
　地下の空間は広大で、東西南北に走る大通りで分けられた４つの地区はそれぞれの特色を持ち、一個の街として日々発展を遂げている……はずでした。

「自由すぎるってのは、問題だな」

　アガルタの総責任者（いわゆる町長）であるハーリー・マハーリーは頭を抱えていました。
　といいますのも、地区の一つ、Ｃ地区がなかなか厄介なことになっているのです。

　総司令部（司令部＝役場。各地区に存在する）があるＡ地区は、高層ビルが立ち並ぶオフィス街へ。
　建物制限がなく、自由気ままな空気を持つＢ地区は、自由区とも呼ばれる冒険者たちの街へ。
　厳しい制限がなされて、景観を美しくさせたＤ地区は、芸術家や職人の集まる街へ。

　そして、Ｂ地区とのライバル地区として同じく自由な風を持たせていたＣ地区は……無許可の店が数多く並ぶ無法地帯へ。

　大通り周辺はそう危険ではないのですが、奥へ行けば行くほどに治安が悪くなっていて、違法取引なども行われているようです。
　活気があふれるがために治安が悪化するのはよくある話ですが、放っておくにはあまりにもひどい状況となっています。

「しかも代王がくるとか」

　深い深いため息がハーリーの口から漏れ出ました。
　というのも、我らが代王さま――セレスティアーナ・アジュア（せれすてぃあーな・あじゅあ）が

『前回の視察ではあまりＣ地区とやらは回れなかったからな！　今回はそこを見て回るぞ』

　と言ってきたのでした。
　なんとか断ろうとしたハーリーでしたが、セレスティアーナの中ではすでに決まった予定として視察が組み込まれているようで、断ったとしてもコッソリやって来そうだと判断。それならば目に見える範囲にいてもらった方がいい、と渋々頷いたものの……。

「……蛇の道は蛇、か」

　何かを思いついたハーリーは、小さく呟いて立ち上がったのでした。


＊　＊　＊


「うぅー。どうしましょう」
　メガネにおさげ、といういかにもおとなしそうな少女がトボトボとアガルタの街を歩いていました。歩いているのは治安の悪いＣ地区で、灰色の街の中、彼女はずいぶんと浮いています。

　彼女の名前は巡屋　美咲（みさき）。極道一家に生まれ、そこで育ち、そして先日の両親の死をきっかけに家を継いだ、組長なのです。
　しかしながら不景気の波は巡屋一家をも襲い、何より絶大な力を持っていた父の死を同業者につき込まれて、もともといた場所を失い、新たな土地で再び花を咲かせようとアガルタにやってきたのでした。

「このままだと、私の代で巡屋（めぐりや）一家が終わってしまいます……」

　が、どうもうまく行ってないようです。
　落ちぶれた巡屋一家に残ってくれた構成員も少なく、第一資金などほとんどありません。このまま終わってしまうのか。そう美咲が落ち込んでいると、

「お嬢！　じゃなかった。組長！　ぐっどにゅ〜すですぜ！」
「ヤスさん？　グッドニュースって」

　残ってくれた数少ない古参の構成員であるヤスが、とある情報を教えてくれたのでした。

『アガルタの総責任者が、Ｃ地区をまとめてくれる有力者を探している』

　これだ！　と美咲は思いました。
　さっそくハーリーの元にひっそりと訪れ、話を聞きました。
　彼の話だと、２週間以内にＣ地区に秩序を取り戻したらＣ地区の裏をまとめさせてくれるらしいのです。
　条件としては、今後は一切の接触は無し。何があっても互いに他人のフリ。違法薬物の売買は禁止。一般人に迷惑をかけないこと。……などなどがありましたが、巡屋としては何も問題はありませんでした。
　

『見ててください、お父さん、お母さん。私、立派に家を継いで……絶対に２人の仇をとるから』

　決意を固める美咲の目には、暗い炎が渦巻いていました。


＊　＊　＊


　話は変わりますが、アガルタの街に遺跡が見つかったのは少し前のことです。
　アガルタでの調査の結果、ニルヴァーナの大地は文明の復興に合わせて回復しているようでしたが、ニルヴァーナの大地の荒廃の原因となっていた“黒い砂”の影響から完全に脱したわけではないようです。

　このままでは、北ニルヴァーナの荒廃を救うどころか、南ニルヴァーナが再び何かのきっかけで荒廃し始めてしまう可能性が高い。

　しかし希望も見つかりました。この遺跡には大陸の外へと脱したニルヴァーナ人を探せる遺物があるようなのです。
　彼らなら、ニルヴァーナの地を荒廃から救う術を持っているかもしれません。

　ですが調査は息詰まっていました。
　遺跡最奥の空間は１０メートル四方ほどで、ドアも窓もない、ただの壁があるだけの部屋。いったい何のためのどうすればいいのか、学者たちにもさっぱり分かりません。文字や絵も装飾も何もない、不思議な鉱物でできた部屋。転がっているのは、丸い物体――土星君・壱号に似た動かぬ物体のみ。
　他の部屋にもたくさんあるそれらが何を意味しているのか。
　調査隊は土星君本人に協力を申し出ましたが、土星君は嫌がり、遺跡には近づこうとしません。

　という話を、御主　悪世（おぬし　わるよ）（２８歳。独身）は聞きました。

「へえ……ならなおのこと、気になるわね。その土星君とやらが、なぜ嫌がるのか。どんな顔をするのか……ああっ楽しみだわ」

　悪世はふふり、と嫌らしく笑い、部下に指示を出します。実は彼女、御主組の首領なのです。そして人の嫌がったり悲しんだり苦しんだりしている顔を見るのが大好きでもあります。それを見るためなら、どんな手段も問わないほどに。

「ボス。巡屋も動き出したようですぜ」
「そう。小娘が……順調みたいね」

　口元の笑みが深まります。どうやら彼女にとって、楽しいことがあったようです。すぐさま指示を飛ばします。

「土星君とやらを捕まえてきなさい。手段は問わないわ」
「Ｃ地区の件はどうなさるので？」
「そんなの後でかまわないわ。小娘が綺麗にしてくれるでしょうし、最後に奪えばいいのよ」

　くくくと笑う悪世。彼女の手には、古い機晶メモリーから取り出したデータがありました。

「誰も知らない遺跡の中は、どうなっているのかしらね」


　なにやら怪しい雲行きになってきたアガルタ。どうなるのでしょうか！

　おはようございます、こんにちは、こんばんは、舞傘（まいかさ）と申します。始めましての方も、そうでない方も、よろしくお願いします。

　順調に発展を遂げるアガルタ。ですが発展していくといろいろ問題も出てくるようで……今回は治安が悪化しているＣ地区メイン（遺跡の入り口もここにあります）のお話です。
　が、出店していただくもよし、ひたすら観光するもよし。今までアガルタに来たことがない方も、楽しんでいっていただけると幸いです。……崩壊の危機とか知らないといわんばかりののんびり？　シナリオです。

※土星君については、マスターページを。
　観光場所については出店一覧をご覧ください。
　街には上記の店以外にサウナ施設もありますし、黒いお茶スキヤ・ティーと夜景、ネコ型の噴水（中央広場）はアガルタ観光の目玉です。

≪地区名募集！≫
　現在、正式な地区名はＡＢＣＤと味気ないものになっています。素敵な名前がありましたら、ぜひご提案ください。
　その際、若干もじる（合体する）可能性があります。複数の候補があった場合はよりその区にあった名前をこちらで選ばせていただき、該当候補なしの場合は次回に持ち越しになります。
　各地区の説明は上記のシナリオをご覧ください。
(記入例→Ｂ：冒険区　Ｄ＝芸術区　など。どの地区の名前か分かればＯＫ)

★巡屋一家を応援する！★
　ハーリーは巡屋がＣ地区を制してくれるのを望んでいるようで、ひそかに協力者を集めています。ですが責任ある立場なため、表向きは無関係を装うのでご注意ください（報酬はちゃんと支払われます）。
　もちろん、
・たまたま街で見かけて事情を知って協力する。
・巡屋一家から直接依頼を受けた。
　という流れでもかまいません。美咲ちゃんたちを助けてあげてください。
　ちなみに美咲ちゃんたちの家兼事務所は、オンボロアパート（風呂なし）です。構成員は５人（２０〜６０レベルほどの実力）。ヤスさん（６３）が一番の古参です。

★Ｃ地区はいただいた！★
　巡屋一家じゃなく、我らがＣ地区の支配者となる！　と言う方も大歓迎。Ｃ地区戦争に名乗りを上げていていただいてかまいません。
　とはいえ街一つを制することになるわけですから、判定は結構厳しめです。
（やられ役も募集です←ぇ）

★観光する！　出店する！★
　出店希望はまだまだ募集中です。観光も大歓迎です。
※出店について
　常に店にいる必要はありません。雇った名もなきＮＰＣに任せてもいいですし、気が向いたときだけ開く、と言う形でもかまいません。店を休んで観光してみたり、起きている事件に巻き込まれてみたり、他のお店と協力してイベントを企画してみたり……お気の向くままにどうぞ。
　掲示板で店にいるかどうか書き込むと、他の方が行きやすいかもしれません。
　出店一覧は最終ページに載せさせていただきます。地区や説明はこちらで考えていますが、どうしてもこの場所がいい。どうしてもこの説明は書いてほしい、などがありましたらアクション内にご記入ください（現在出店中の方も変更ＯＫ）。キャッチコピーなどもありましたらぜひ。

※観光について
　いろんなお店がありますので、ぜひいろんな場所へ行ってみてください。掲示板にお店について書き込みされていることもありますので、覗いてみると幸せかもしれません。

★すちゃらか代王視察隊！★
　これは観光する、にまとめてでいいんではなかろうかと思いつつ……すちゃらかです。代王です。かんこ……視察です。以上！
　基本的に治安の悪いＣ地区をめぐります。襲われたり、おさげの女の子とぶつかったり、輪っかをつけた丸い物体を見かけたりするかもしれません。

　上記以外のアクションも大歓迎！　悪世さん側についたり、遺跡を調べたり、土星君を説得したり……。
　では、楽しいアクション、お待ちしています。

※ＮＰＣについて
・巡屋　美咲（めぐりや　みさき）。１６歳。現役女子高生。めがねでお下げな大人しい子。護身術は叩き込まれているためそこそこ強いが、暴力はスキじゃない。必死に親の残してくれたものを守ろうとしている。アガルタに来たのは家を再興させるためだが……？
・御主　悪世（おぬし　わるよ）。２８歳。独身。カールした茶色の髪。真っ赤なドレス、とかなり派手な人。鞭が似合うどＳでもある。目的を達成するためなら、どんなことでもする。どうやら土星君を捕まえようとしているらしい。

・遺跡を探検だ！

・Ｃ地区を我が手に！（ネタ）

・出店する！

・すちゃらか視察隊！

・巡屋を応援する！