「や、やめて下さい!!」
逃げ惑う少女たちの悲鳴が、シャンバラ大荒野の虚空に響きわたります。
「ヒャッハー! 久しぶりの獲物だぜぇ!!」
壮絶な追いかけっこの末、少女たちを捕まえた荒くれ者たちは、舌なめずりをしながら、哀れな虜を次々に、銀の十字架にはりつけにしてしまいました。
「おお、こりゃ可愛いぜ。さて、どうしてくれようか?」
荒くれ者たちは、小高い丘の上に立てたいくつもの十字架の上の少女たちと、風に吹かれてまくれあがるそのスカートを目にして、意地汚い笑みを浮かべていました。
そのときのことです。
「ちょっと、待ったー!!」
別の荒くれ者たちの集団が、向こうの薮の中から姿をみせました。
「んだ、お前らぁ? 邪魔すんじゃねぇ!!」
少女たちをはりつけにした方の荒くれ者たちは、顔を真っ赤にして怒り出します。
「いいブツをとらえたようだな。オレたちに寄越せ!! お前らのような下衆なチンピラにはもったいねえんだよ!!!」
乱入してきた荒くれ者たちは、凶悪な笑みを浮かべて言いよりました。
「だコラァ? ナメやがって。やんのかよ? ぶっ殺すぞオラァ!! こんの、ハイエナのウンコ野郎どもが!!」
下衆なチンピラ呼ばわりされた荒くれ者たちは、完全にキレてしまいました。
「ハイエナのウンコ野郎だとぉ? おどりゃ、死にたいかー!!」
最初は余裕な笑みをみせていた襲撃者たちも、顔を真っ赤にして怒ってしまいました。
「あん? ふざけたこといってんじゃねえよ。てめえこそ、死ねや!!」
「面白ぇ。てめぇらのその口に拳を叩きこんで、内蔵をひきずり出してやらぁ!! 地獄で後悔しろよ!!」
もはや、十字架の上の「獲物」のことなどは忘れてしまった様子で、二大勢力は互いを睨みあい、一触即発の状態となりました。
「いけません、いけません! か弱い少女の奪い合いをするなどと!! みなさん、止めに行きましょう!!」
十字架と、その下でのガンつけあいを目撃したアケビ・エリカは、顔を真っ青にして、付近を通りかかる人たちに救援を要請しています。
「た、食べられちゃう? い、いやぁ、助けてぇ!!」
十字架の上の少女たちは、涙を流して悲鳴をあげ続けています。
いま、シャンバラ大荒野で、いきなりの、とてもレベルが低そうだけど本人たちは必死な、女の奪い合いをきっかけとした大ゲンカが始まろうとしていたのです。