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リアクション
第1章 少女十字架伝説
「あ、あれー、助けて下さいでございますー」
シャンバラ大荒野の灰色の空に、秋葉つかさ(あきば・つかさ)の悲鳴が響き渡る。
「へっへっへ、捕まえたぜー!!」
「や、やめて! ああー!!」
大きな両の胸を揺らしながら荒野を走っていたつかさは、追い駆けてきた荒くれ者たちに腕をとらえられ、涙を流して身悶えた。
だが、つかさはどこか、もたもたと走っていたようにも思えた。
また、腕をとらえられただけで、たいして抵抗もせず、あっさり捕まってしまうのも不思議だ。
だが、欲望で目がくらんだ荒くれ者たちが、そのようなことを気にするはずもない。
「おら、痛いだろ! もっと泣け!!」
荒くれ者たちは下卑た笑い声をあげながら、つかさの手首をひねって、背中にぐいぐい押しつける。
「きゃ、きゃああ! な、なにするんですか! そんなに乱暴しなくても、望まれるのならみなさんにご奉仕いたしますので。それがパンツァー神の御心です」
おおげさに首をうちふって叫びたてながら、つかさは涙を拭って、最後の言葉をきりっとした顔で告げた。
「あぁ? パンツ? その心がどうしただぁ?」
荒くれ者たちは、きょとんとする。
「パンツァーでございますわ。私は、パンツァーの巫女なのですよ?」
つかさは、自分をとらえている荒くれ者に身をすりよせながらいった。
「巫女? かーっ、わけわかんねえこといってんじゃねえよ、ターコ!!」
荒くれ者はイライラして怒鳴ると、つかさを突き飛ばして、そのスカートの裾の中に乱暴に手を突っ込んだ。
「パンツがどうしたんだよ、これがよお」
「ふ、ふにゃああ」
つかさは奇怪な悲鳴をあげると、地面を転がって身悶える。
「お? い、いいのか?」
荒くれ者たちは、何となくドキドキしてしまった。
身悶えるつかさからは、どこかゾッとするようなお色気が漂っていたのである。
「イア、パンツァー!! お仕えいたしますわ、ご主人樣方ぁー!!」
気がつくと、つかさは泥に汚れた顔を歪めて、涙を流しながら、荒くれ者たちの足にすがりついていた。
みしっ
つかさの心の中の何かが、きしんで、音をたてた。
だが、誰も、その音には気づかなかったのである。
「ヒャッハー!! こりゃ、今日はまた、いつになく大漁だぜヤッフー!!」
荒くれ者たちは、つかさと、捕えてきた他の少女たちとを、それぞれ、丘の上にたてた銀の十字架にはりつけにして、満足そうにほくそ笑んでいた。
そこに。
「あなたたち、何をしてるの?」
アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)が現れ、気丈にも、荒くれ者たちに向かっていったのである!!
「うん? 文句あんのかよ? おっ、こりゃまた、いい姉ちゃんじゃねえか。ゲッヒッヒ!」
荒くれ者たちは、邪魔者が現れたことに対して顔を歪めて怒ろうとしたが、アリアの容姿をみて、途端に唇を歪ませる。
ぼたぼたぼた
荒くれ者たちの唇からこぼれたよだれが、地面に薄汚いシミをつくった。
「ひ、ひどい! こんなことをして、許さないわ!!」
十字架にはりつけにされた少女たちの姿を目にして、アリアは怒りで身を震わせていた。
優しく素直で、真面目な戦士の心意気が、義憤で真っ赤に燃え上がっていた。
「あぁ? 許さないから、どうだってんだよ。え? 姉ちゃん?」
アリアを取り囲んで、荒くれ者たちが面白がって笑いながら問いかける。
「みんなを救うために。斬り捨てる!!」
覚悟を決めたアリアが、荒くれ者たちに剣を振り下ろす。
「おお、危ねえ危ねえ。勢いだけ一人前だな、姉ちゃん」
おおげさなリアクションをみせながらアリアの攻撃をかわして、荒くれ者たちは低い声で囁く。
「粋がってんじゃねえよ。触らせろや!!」
アリアの肩に、汚れた手が伸ばされた。
「や、やめて!!」
ばしっ
生理的な嫌悪感に促されるまま、アリアは、その手を平手で打ち払った。
「なっ!?」
「触らないでー!!」
舌打ちする荒くれ者に、アリアは大きな声をあげていた。
「てめえ!!」
荒くれ者たちは、いっきに殺気だった。
そこに。
「へっへっへ。お前ら、こいつがちょっと強いかもしれないと警戒しているのかもしれねえけどさ。大丈夫だって」
ネヴィル・テイラー(ねう゛ぃる・ていらー)が、荒くれ者たちの一人の肘を突っついていった。
「うん? 何だ、てめえは? そうなのか?」
突っつかれた荒くれ者は、ネヴィルの顔をうさんくさそうにみつめる。
「ああ、そうだぜ。簡単なことさ。こいつは人質とれば、抵抗できねえんだよ」
「なるほど。よし!!」
ネヴィルの言葉に、荒くれ者たちはあっさり納得させられてしまう。
「おい、姉ちゃん。あまり調子に乗ってるとな、はりつけにされてるこの子らの生命はねえぜ! それでもいいのか?」
荒くれ者たちの卑劣な言葉に、アリアの表情が変わる。
「な、何をいうの!?」
「まあ、生命は勘弁してやったとしても、貞操は奪うしかねえな。そういうもんだろ? ギャハハハハ」
アリアがいとも簡単に動揺したことに安心した荒くれ者たちは、鬼畜な笑みを浮かべた。
「ひ、卑怯よ、そんな!!」
か細い悲鳴のような声で抗議するアリアの顔を、荒くれ者たちが張り飛ばす。
ばしいっ
「く、くうっ」
張り飛ばされた衝撃で地面にうずくまったアリアは、真っ赤に腫れ上がった頬をさすってうめく。
「オラ、立てよ!!」
荒くれ者たちは、アリアの肩をつかんで、引き起こす。
「お願い、その子たちは逃がしてあげて。私は、何をされても耐えるから!!」
「ひゃっはっは! おい、聞いたか?」
アリアの訴えを聞いて、荒くれ者たちはお腹を抱えて笑い転げた。
「何がおかしいの?」
生真面目な表情で尋ねるアリアの背後に、ウォルター・ウィリス(うぉるたー・うぃりす)が忍び寄っていく。
「アホか、お前はここでヤられるんだよ」
ウォルターは、背後からアリアをいやらしく抱きしめると、両手でその身体をまさぐった。
「きゃあっ!! ウォ、ウォルター!? どうして!!」
アリアは悲鳴をあげながらウォルターを引き離そうとするが、ウォルターはいっこうにひるむ様子がなく、ぐいぐいアリアの身体を絞めあげていく。
「やめて。お願い」
アリアは全身にはしる微妙な感覚に喘ぎ、ウォルターに低い声で訴える。
「なにいってんだよ。あの子たちを助ける代わりに、何をされても耐えるといっただろ? いい感触してるじゃないか、なあ」
ウォルターは笑いながら、アリアの身体にむしゃぶりついていく。
だが。
「おい、それぐらいにしとけ。お前一人が楽しむものじゃないぜ」
荒くれ者たちは、ウォルターをアリアから強引に引き剥がしていた。
「うん? ああ、そうだったな、じゃ、こいつをはりつけにしようか」
ウォルターはうなずくと、アリアの手を取った。
「あの子たちを、解放して」
「わかったよ。お前がおとなしくはりつけにされたらな。だが、ちょっとでも抵抗してみろ。あの子たちにこれ以上ないほどの恥をかかせて、地獄を味わわせてやるぜ」
ウォルターは笑っていった。
「アリアのはりつけか。ひゅう。これは、たまらねえぜ」
ネヴィリも、唇を吹いて、笑いながらいう。
荒くれ者たちは歓声をあげながら、アリアを十字架にはりつけにした。
もちろん、ほかの少女たちを解放する、などという約束を守るつもりはなかった。
(……くっ。何とか耐えてみせるわ。何とか、耐えて。ほかの子たちがもてあそばれないように、私に気を向けさせられれば)
アリアは、下唇を噛んで屈辱に耐えながら、なお、他の囚われの少女たちを気遣っているのだった。
「うん? 何だ、ここは?」
十字架にはりつけにされている少女たちの一人、カレン・ヴォルテール(かれん・ゔぉるてーる)は、荒くれ者たちのヒャッハーやヤッフーの声が耳を打つ中で、徐々に意識を覚醒させられていった。
「あれ? オレ、どうして、こんな? って、えっ?」
カレンは、十字架の上の自分の境遇を突如として知ることとなり、心底から戸惑い、また、おびえた。
「ど、どうなってんだ、これ!? お、おい、美空、起きろ! なんか大変なことになってるぞ!!」
カレンは、身をよじらせて拘束から抜けようともがきながら、すぐ隣で別の十字架にはりつけにされている、相田美空(あいだ・みく)に思いきり焦った調子の声をかけた。
「うん……?」
カレンの声に脳を揺さぶられて、美空は少しずつ目覚めてきた。
「カレンさん? どうしたんです、これは? 手、縛られてますわ。身体、高いところにありますわ。きゃあっ!!」
言葉の途中で、美空は悲鳴をあげていた。
すぐ下にたむろして、いやらしい視線で自分をみつめている、救いようのないおぞましさを漂わせる荒くれ者たちの姿に気づいたからだ。
「おっ、お目覚めだぜ!!」
「ゲフー!! 姉ちゃん、いいパンツしてまんなー!!」
荒くれ者たちは、丸見えになっている美空のスカートの中身をまじまじと凝視しながら、悲鳴をあげる美空を言葉でなぶり始めた。
「こ、これは、ピンチです!! カレンさん!!」
「なっ? 気づくのちょっと遅かったけど、お前もこの状況びびるだろ? オレたち、二人で森の中を歩いていて、男たちにさらわれて、変な匂いの布をかがされて、眠らされて、それで! って、おい、聞いてるのかよ」
カレンは、美空がガクッとうなだれるのをみて、思わず声を荒げていた。
だが。
すやすやすや
カレンの焦燥をよそに、美空は穏やかな寝息をたて始めていたのである。
「お、おい、よく寝られるな。ってか、寝てる場合じゃないって。起きろ!!」
カレンは美空に怒鳴りつけるが、美空の意識は再び深みにはまりつつあった。
「むにゃむにゃむにゃ。とりあえず、もがいてどうにかなるわけではありませんし、体力を維持するために眠ってみますわ」
美空は、本当に眠ってしまった。
「お、おい! うっ、うわあ!!」
カレンは悲鳴をあげた。
荒くれ者たちが、棒で自分の身体を突っつき始めたからだ。
棒は、カレンの胸を叩き、スカートの中にも侵入してくる。
「や、やめろ、何で、オレが、こんな目に!」
カレンは、泣きそうになりながら身をよじらせて、棒を避けようとする。
「わはははは! やめろー、無駄な努力だぜー!!」
「へっへっへ、姉ちゃん、あんたはもうオシマイだぜー!!」
荒くれ者たちはカレンの焦る姿をみて狂喜し、ますますイタズラをエスカレートさせていく。
「や、やめろ、やめろよ、変態ども! グス。くっそー、負けるかー!!」
カレンは涙をボロボロこぼしながら、股をびしっと閉じて、迫りくる棒の攻撃に耐えようとするのだった。
「ああ、私もこんな目に!!」
天津のどか(あまつ・のどか)もまた、十字架の上で悲惨な境遇を嘆いているところだった。
「どうしましょう。また狙われてしまいました。例によって、下着なんて履いてませんから」
のどかは、身をよじらせて、風にまくれあがろうとするスカートの裾を、何とか引き止めようとする。
まくれあがれば、全てがみえてしまう。
のどかは、嘆きながらも、どこかでこの状況に興奮している自分を感じていた。
十字架の上に縛られている自分。
眼下では、荒くれ者たちが自分をたっぷりと鑑賞している。
まさに、なぶりものにされるしかない状況。
そんな状況に対し、身体の奥で、うずくものがあった。
熱い、小さな炎が、のどかの体内で徐々に燃えあがろうとしていた。
「ハァハァ」
気がつくと、のどかは喘いでいた。
熱い吐息が、灰色の空にのぼっていく。
のどかのスカートからのぞく白い太ももが、怪しく揺れ動いた。
「誰でもいいんです。このうずきを止めて下さい。私は、突然こんなことになって、おかしくなりそうです」
「お、おお。こっちの姉ちゃんは、妙にそそるぜ」
「あ、ああ。ちょっと股間をおさえたくなるな」
荒くれ者たちもまた、のどかが身悶える姿に、何ともいえぬ興奮をかきたてられていた。
いつしか、のどかの周辺の荒くれ者たちは、鼻息を荒くしながらも、言葉を発することなく、じっと、のどかの艶姿に見入ってしまっていた。
見入って、下着を履いていないというのどかのスカートが風に吹かれてまくれあがるのを、いまかいまかと待ち構えている。
まくれあがった瞬間、明かされる真相を凝視できるように、視線をひたと固定していた。
その視線を受けて、のどかはますます興奮していく。
「ああ、私の身体を十分堪能して下さい。そして、このうずきを!! ああ、助けてくれる人でも、襲ってくる人でも、どちらでも、ああ、ああー!!」
のどかは、興奮のあまり、顔を紅潮させて、身を震わせるのだった。
「あれれ、ボクもこんな目に!? はりつけだなんて! うーん、縄のくいこみが何ともいえないなー」
神崎輝(かんざき・ひかる)もまた、十字架の上で身悶えていた。
見知らぬ男たちにトラックの中に連れこまれ、頭を叩かれて気絶して、気がついたらこの有様だ。
輝は、完全に女の子に間違えられている状況が怖かった。
もし、自分が男だとバレたら?
そう考えただけで、ゾッとするのである。
「ヒャッハー! お目覚め、かい? それじゃ、ショーの始まりだぜー!!」
荒くれ者たちの振りまわす棒が、十字架の上の輝の身体に襲いかかってくる。
「うわー、ダメ、ダメ! スカートの裾をまくりあげるとか、股間を叩くとかやったら、そのうちバレちゃうよ! ストップ、ダメー!!」
輝は身をよじらせて絶叫し、棒から逃げようとするが、その様は、輝を女だと思っている荒くれ者たちを喜ばせるだけだった。
「ギャハッハッハ、こりゃ、面白いおもちゃだぜー!!」
「うらうら、棒でどこを突いて欲しい? ここか? それともここかー?」
「ひゃー、やばい、やばい」
すっかりテンパってしまった輝の顔は、真っ赤になってしまっていた。
そのとき。
(マスター? 大丈夫ですか?)
天の配剤というべきか、一瀬瑞樹(いちのせ・みずき)のテレパシーの声が、輝の脳裏に届いたのだ。
(瑞樹、すぐにきて。大変なんだ。やられちゃう!!)
輝は、必死の想いで瑞樹に呼びかけた。
(大変、って、どういうことですか? ま、まさかエロいことに!?)
瑞樹は、輝の状況の危うさを、敏感に察していた。
(エロいっていうか、やばいっていうか、貞操は大丈夫だと思うけど、でも、うーん。やばい。死ぬ。くわれるよ!!)
瑞樹の剣幕にうろたえながらも、輝は必死でテレパシーにこたえる。
(ゆ、許せない! マスターをそんな目にあわせるなんて! 待ってて下さい。いま行きますね。で、どの辺ですか?)
(丘の上の、十字架のある辺りだよ。早くして。お願いだよ)
輝は、瑞樹が一刻も早く到着することを祈るしかなかった。
そうこうしているうちに、荒くれ者たちの棒によるお触りが、エスカレートしてきた。
「わー!!」
輝は悲鳴をあげた。
棒が、輝の胸を突っついてきたからだ。
「うら、感じるか? ああー?」
荒くれ者たちは、よだれをたらして興奮している。
(ま、まずい。何でもない顔をしていたら、男だとわかってしまう!! ここは、感じるフリをしなきゃ)
輝は、気持ちを女にする決心をした。
「や、やめて、やめて下さい。ああ、そんな、そこは! う、ううー。お願いです。お嫁にいけなくなってしまいます。ああー!!」
わざとらしく身悶えて、喘ぎ声をあげてみる輝。
(うーん、ちょっとおおげさかな?)
だが、荒くれ者たちは完全にだまされてしまった。
「ヒャッハー!! そうか、感じるか!! 大丈夫だよ、俺たちがお前をお嫁としてもらってやるから! ちょっとばかり激しくさせてもらうけどな!! うら、うらー!!」
興奮のあまり目を血走らせて、輝の胸に棒の先を押しつける荒くれ者たち。
「あ、ひゃあ。ビンビンです。やめて、いやあ!! ケダモノ、近寄らないでー!!」
ひたすら芝居を続けながら、輝は内心ではもううんざりしていた。
(最悪だよ。何でこんないやらしい仕草をして微妙に興奮しなきゃいけないんだ? ボクのプライドが音をたてて壊れていくよ。ああ、瑞樹ー!!)
パートナーの到着を首を長くして待ち受ける輝であった。
そのころ。
「カレーン、美空ー!!」
荒野の中を、相田なぶら(あいだ・なぶら)が、いなくなった2人のパートナーの姿を探し求めて、さまよい歩いていた。
突然いなくなった2人のことを思うと、なぶらはいてもたってもいられない心境だったのである。
「カレーン、返事をしてよー!! ああ、もう、まさか、変な男たちにつかまって、いやらしいことされてたりしないよねぇ? 大丈夫だよね。まさかね」
いいながら、なぶらは、異様な胸騒ぎを覚えて、身体をブルッとさせた。
自分の予感が恐ろしいほど的中しているなどとは、なぶらにとっては知らない方がいいことであるかもしれなかった。
「カレーン、美空ー!!」
パートナーを探し、荒野をさまようなぶら。
彼の行く先の空は、どこまでも灰色にくすんでいた。
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