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第10章 友情

「きゃああああああ! 殺人鬼よ!! 助けてええええええ!!!」
 少女たちは、十字架から解放されたときの半裸の姿のまま、秋葉つかさ(あきば・つかさ)の首斬り攻撃から、涙を流して逃げ惑った。
「みんな、どうしたんですか? さあ、荒くれ者たちはもう片づいています。後は、この飛空艇に乗って! みんな、脱出しましょう!!」
 遥か上空から小型飛空艇オイレを降下させてきた佐野和輝(さの・かずき)は、戦場の状況をみてとるや、少女たちを回収する決心をした。
「アニス、女の子たちを収容次第、出発です!!」
 佐野は、座席の後ろで飛空艇の操縦を補助しているアニス・パラス(あにす・ぱらす)を振り返って、いった。
「オッケー!! はりつけにされて、身体が冷えている女の子たちに、あたたかい飲み物をあげちゃおうかな?」
 アニスはうなずいて、陽気に微笑んだ。
 少女たちは、つかさに襲われる前にと、先を争って飛空艇に乗り込んだ。
「それじゃ、出発です!!」
 佐野の指示で、多数の少女を乗せて、すっかり少女くさくなった飛空艇が、大空に向けて発進した。
 このとき、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)の姿がないことに気づいた人も多かったが、みな、アリアは仲間と一緒に帰ったのだろうと考えた。
 実は、アリアは、男たちによって丘から連れ去られて、恐ろしい場所に監禁されていたのだ。
 ボロボロのアリアが地元の警察によって救助されるのはだいぶ後のことである。
 だが、ともかく、多くの少女たちは助かった。
「みんな、もう安心だぞ。それじゃ、それぞれの家に運ぶまでの間、ケガの治療でも行うとしようか」
 リモン・ミュラー(りもん・みゅらー)が少女たちのケガの治療や回復にあたった。
「さて、この治療の対価は、『笑顔』と『感謝』だ。契約するかね?」
 リモンは、少女たちの身体を医術で治療しながらいった。
「はーい!!」
 明るさをとりもどした少女たちが、元気よく答える。
 着ているものがほとんどボロボロになっていた少女たちは、リモンが女性だったことに気を許したか、全員がボロ着を脱ぎ捨てて、全裸になっていた。
「やれやれ。悪魔も恥ずかしくなってしまうような、色香に満ちた状況だな。みんな、くれぐれも、そのままの姿で和輝のところに行くなよ。いいな?」
 少女たちの肌と、その汗の匂いが充満して鼻をついてくるのに苦笑しながら、リモンは何度も念押しした。
 だが、リモンの言葉を聞いていなかった少女たちもいたのだ。
「あ、あの、助けてくれて、ありがとうございました」
 アケビ・エリカは、飛空艇の操縦席にまで入り込んで、いった。
「えっ? ああ、御礼なんていいんですよ。みなさんの笑顔が、何よりの報酬なんですから」
 佐野は、笑っていった。
「本当にありがとうございます。私、正直、辛かったんです。パンツを脱がされて、ひどい目にあって!!」
 エリカは、深い安堵を味わいたくて、飛空艇を操縦する佐野の首筋にまつわりついた。
 はらり。
 着るもののないエリカが身体を覆うためにまとっていたタオルが、床に落ちた。
「わあ、いいですよ。そんな! よして、よして!! って、何ですか、裸は無しですよ!! どこみればいいのか困っちゃうでしょ、わー、手が変なところ触りそう!! 助けてー」
 一糸まとわぬエリカに抱きつかれて顔を真っ赤にしながら、佐野は際どい運転で、飛空艇を安全な地へといざなっていく。
「あー、もー、この調子で、和輝を好きになる子が出たら困るよ!! 放れて、離れて、離れてったら!!!」
 アニスは、エリカの身体を佐野から引き離そうとがんばった。
 気がつくと、操縦席には、他にも多数の少女たちが裸で入り込んで、佐野に御礼をいって、抱きしめようとしている。
「うーん、君たち、がんばりましたね。素晴らしいですよ!! それじゃ、夕陽が沈むきる前に、家に帰りましょう!!」
 佐野は困りながらも、何だかうきうきしてテンションが上がるのを感じながら、夕陽を追い駆けさせるかのように飛空艇を操縦するのだった。

 佐野の飛空艇が空の彼方に消え去ったとき。
「おう、まだ勝負はついてねえぜ!!」
 ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)は、いまだ残る何人かの荒くれ者たちと、いまだに死闘を続けていた。
「どりゃー!! おりゃー!!!」
 殴り合い、拳と拳をぶつけ、互いに血を吐きながら、ラルクたちは闘い続ける。
「くそっ、まだまだ!!」
 ずっと倒れていた夢野久(ゆめの・ひさし)が、いつの間にか立ちあがって、ラルクと殴りあっている。
「おらおらぁ!! 負ける気、全然しないぜ!!」
 白津竜造(しらつ・りゅうぞう)も、ラルクたちに殴りかかっていく。
「私も、何も考えてません!! だから、ひたすら殴れるんですわ!!」
 セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)も、白津を追って、乱闘に紛れ込む。
「ハイ、青春は爽やかで不毛です!! ぶっ倒れるまで殴り続けますよ!!」
 ルイ・フリード(るい・ふりーど)もまた、何度倒れても立ち上がり、疲れることを知らないようだ。
「ははははははは!!! 十分吸いました。そろそろ私はおいとましましょう!!」
「待てぇ!!」
 エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)が、笑いながら闇の中へ消えていくのを、坂上来栖(さかがみ・くるす)は追おうとしたが、見失った。
「ああ、もう!! 十字架は全部折り倒されるし、この丘の上、冒涜もいいところですよ!! 絶対許しません!!」
 坂上は、ヤケになってラルクたちに殴りかかっていった。
 どごおっ
 ぼごおっ
 いつ果てるともない殴り合い。
 やがて。
 夜空に星が輝くころ、丘の上には、殴り合いの末に倒れた男たちの姿があった。
 むくり
 男たちは、またまた立ち上がる。
 だが、もう、殴り合いは起きない。
「まったく、ここにいる連中は、どいつもこいつも、たいした奴らだぜ!!」
 ラルクが、感嘆していった。
「ああ。骨のある奴がこんなにいるとはな! こんなに気持ちいいケンカは久しぶりだぜ!!」
 夢野が、ニヤッと笑っていう。
「ちっ、みんなタフすぎるな。バカ野郎ばかりでよ」
 白津も、思わず笑っていた。
「パラ実生の驚くべき生態! 負けるつもりはありませんが、もう少し研究する予知がありますわ」
 セシルは、すっかりはれあがった拳を濡れたタオルで冷やしながら、いつか必ずパラ実生をシメる、と心に誓った。
 ちなみに、彼女のトンファーはとっくに壊れてしまっていた。
「これぞ青春、友情です!!」
 ルイも笑って、ラルクたちと握手をする。
「はー、疲れた!! みなさん、揃いも揃って、かなり狂ってますね!! 何だか、気持ちがすっきりしました。何だか、精神を救われたような気がします」
 坂上も、息を喘がせながら、ラルクたちと握手をかわした。
 戦士たちは、闘いの果ての調和にまで行き着いてしまい、それぞれ肩を組んで、空を眺め、お腹も空いたので、一緒にメシを食おうと、丘を降りていった。
「らららららら、らららららー、よーしなーがー、りーきー!!」
 丘の上には、星に向かって歌い続ける、吉永竜司(よしなが・りゅうじ)のみが残されていた。
 吉永の歌は、風に乗って荒野の隅々にまで届き、平和に暮らす人々を恐怖に震えあがらせたとのことである。
 

担当マスターより

▼担当マスター

いたちゆうじ

▼マスターコメント

 今回も何だか書くのが大変でしたが、とり急ぎ提出します。
 激しい殴り合いとお色気の混ざりあった、後味のよい作品に仕上がっていれば幸いです。

 なお、ジャジラッド・ボゴルさんの賭けについては、結局勝者が誰なのかわからない状況でケンカが終わったので破綻してしまってますが、ジャジラッドさんたちも大量の賭け金を抱えてどこかに消えてしまって、まる儲けしたかたちになっています。

 次回はまったく未定ですが、イコンものか、カノンものをやれればいいと思っています。

 それでは、このシナリオに参加頂いたみなさん、ありがとうございました。

※10月29日 一部修正を加え、リアクションを再提出しました。