目覚めまであと5分 リアクション公開中! |
シナリオガイド超高級ふかふかお布団の秘密を暴け!
シナリオ名:目覚めまであと5分 / 担当マスター:
有沢楓花
パラミタ内海の中央部には、“原色の海”(プライマリー・シー)と呼ばれる海域があります。 * 「……いたたたた……」 守護天使の青年は、後頭部の痛みで目を覚ましました。 いえ、ずきずきするのが後頭部だけで、全身、特に背中が鈍い痛みで支配されています。 「……何だこの床……、ううん、岩か……?」 どうやら岩肌に寝かされていたために体が痛かったようです。彼は半身をゆっくり起こすと、周囲を見回します。 周囲には同じように、二、三人の守護天使が横たわっていました。 その岩でできた小部屋は、どうやら牢屋のようでした。鉄格子には、同じく鉄でできた扉が嵌っています。 鉄格子を挟んで向かいにも同じような小部屋があるのが、通路の壁にかけられた松明がうすぼんやりとした灯りを放っているおかげで、ようやく分かりました。 「……大丈夫ですかー?」 小さく声をかけて、転がっている守護天使を揺り動かそうとして、じゃら、という音に気づきます。 彼の手足には枷が嵌められた上に鎖で壁に繋がれていたのです。壁から半径一メートルくらいしか動けなさそうで、これでは牢屋の出口にも近づけません。 しかもそれには、魔力を封じる細工までしてありました。 おまけに、転がっている守護天使は──単に眠っているのではなく、どうも気絶させられているようなのでした。周囲には羽根が散らばっています。 「…………」 魔法が使えないのでは、無暗に揺り起こすわけにもいきません。もし何かあっても治療もできないのです。 その時コツコツと遠くから足音と話し声がして、彼は急いで床に伏せ、気絶しているふりをしました。 「……評判は急上昇です……売れ行きは……。このまま……ば……」 「……そうだな。試作品の受けもよかった。一年後には新規事業として、服飾部門を立ち上げるのもいいだろう。その際はお前に任せよう」 「ありがとうございます。光の翼で織った布、ドレスにすればどれだけの貴婦人が買い漁るか……」 声からして、どうも中年の男と、部下の女のようです。彼らは牢屋の前で足を止めました。松明かカンテラでも持っているのか、周囲が明るく照らされました。 「おっと、忘れては困るな。その前にゆる族のシェアを充分に奪うのだ」 「失礼しました。社長の野望は、ぬいぐるみ兵器の販売──見た目ゆる族爆弾の開発でしたね。ぬいぐるみの爆発物だけでも恐ろしいのに、ゆる族の爆発だと思われれば、濡れ衣を着せることもできる……」 青年は深く深く息を吐いて、それからふっと思い出しました。 一緒にリフレッシュ休暇とやらで、観光と綿の補充の案内役を務めさせた──以前、濡れ衣を着せられて困ったのはお前のせいだとかなんとか、身に覚えのない理由で──あの、薄汚れた熊のぬいぐるみ、に見えるゆる族のことを。どこかに彼も囚われているのでしょうか。 薄目を開けて見ると、牢屋の向かいにも光が届いています。 そこにはぬいぐるみが積み上げられています。大小の着ぐるみは、熊、うさぎ、猫、犬、カバ、ラクダ、アンパン、ぬいぐるみを抱いたぬいぐるみ、人間サイズの美少女型の着ぐるみまでがありました。 彼らも犠牲者なのでしょうか、それとも試作品なのでしょうか……? 「あははは」 「ふふふふふ」 再び、声と足音が遠くなっていきます。そして、疲労のせいで、再び青年の意識も遠くなっていきました。 かすかな潮の匂いと遠くに聞こえる漣の音に包まれながら……。 * 「──それで、昨日の朝から出かけたまま帰ってこない、と……?」 ある日の朝の事です。ヴォルロスにある、一件の宿屋兼酒場。その客室で、数人が膝を付きあわせるように座っていました。 「ははあ、そういうわけでございます」 ヌイ族の、カバの着ぐるみ姿をした族長、ドン・カバチョは、ヴァイシャリー艦隊の海軍提督フランセット・ドゥラクロワ(ふらんせっと・どぅらくろわ)に向かって、大きく頷きました。 「何しろ列島はのんびりしたものでして、はい。都会は珍しいとはいえ何度か遊びに来ている筈なのでございますが……。 しかも今回は私ども族長一族のカバの姿が嫌だとかで、新しい着ぐるみで飛び出したようでして、姿も検討が付かないのでございます。 姪が事件にでも巻き込まれたのではないかと思いまして」 「そんな大げさな。年頃の娘さんなら一晩くらい帰ってこなくったって──」 艦隊の船医の青年は肩を竦めましたが、聞いたフランセットの顔は真剣でした。 「その可能性はあるな。ここ数か月起こっているゆる族及び守護天使の連続失踪事件はこちらでも把握している」 「あれ、そうなんですか?」 「ああ。地元住民のほか商人、観光客。それに、昨日はイルミンスールから訪れた客人も行方不明になっていると聞いている。今報告を待っているが──」 「──提督!」 その時、扉がノックされたかと思うと、ばんっと扉を開いて飛び込んできた少年がいました。 「おっと、……失礼いたしました」 「セバスティアーノか。話せ」 慌てて敬礼を取る黒髪のどこか幼い印象の少年は、上官の命令に、話し始めました。 「はっ。イルミンスールより訪れた客人の正体が判明いたしました。 ゆる族のモップス・ベアー(もっぷす・べあー)。彼の案内役として、ドリュス族長ドリュアス・ハマドリュアデスの補佐を務める守護天使のご子息が一人」 「子息は多くいるはずだが……誰かは特定できなかったのか」 「す、済みませんっ! 確かヨハンかトマスか、ジョージだったかラファエルだったか……。困ったことにその父親である族長補佐も、名前を覚えてないそうで──こちらが写真です」 そうして彼が取り出したのは、一枚の写真(※扉絵)だったのです。 確かに、集団で埋没しそうな雰囲気の守護天使でした。 「……引き続き捜索を続けてくれ。事件性が認められる、少々手荒なことになったとしても、可及的速やかに確保を──」 それが……、と、ドン・カバチョは言いにくそうに口を挟みました。 「ちょっと困ったことがあるのでございます。ご存じのようにゆる族はチャックを開けると爆発するのでございます。 実はですね、姪のユルルの着ぐるみには我らヌイ族の特別製・秘伝のバク──むにゃむにゃ、が仕掛けられておりまして……ハイ」 「爆発するのか……?」 「ええ。それはもう派手に。多分建物ごと吹っ飛ぶでしょうな。 本人は無事でしょうが、周りはどうなることやら……。クレーターで瓦礫掃除なんて趣味はございませんでしょう? それに、万が一、しおれてしまっても困りますし……いえいえ、こちらの事情ですハイ」 フランセットは眉をひそめると、失礼と断って携帯電話を取り出しました。 「従妹殿か。……済まないが、……ああ、現地の契約者に協力を……」 一時間ほどの後、電話を受けて宿を訪れたのは、生徒会の会計を務める村上 琴理(むらかみ・ことり)でした。 観光に来た百合園生たちに同行して、宿や諸々の手配などをしていたのです。パートナーが海の獣人たちの問題解決のためここを訪れているのに同行していたため、多少は慣れていたのです。 彼女は気難しげな顔で、早口でフランセットに言いました。 「ええ、こちらに来ている地球人の契約者たちには協力を求めました。私たち百合園生も全面的に協力します。 実は非常に申しあげにくいのですが、今朝着ぐるみで観光に出かけた生徒達が──生徒会長を含めまして──まだ戻っていないのです。 いえ、まだ帰る時間ではないのですが、参加者の携帯電話が不通で……」 「つまり、事件性が認められます」 言葉を引き取ったのは、横にいた彼女のパートナーフェルナン・シャントルイユ(ふぇるなん・しゃんとるいゆ)でした。 「百合園の生徒会長らが訪れる筈だった<フラフィー寝具店>にも当たってみたのですが、店主によると訪れた生徒はいないとのことですが……、その後どこかに出かけられました。どうやら何か隠し事があるようです」 「それならば、部下に店の動向を調べさせよう。 実は幾つか気にかかることがあってな。たとえばあのドン・カバチョが、姪が行方不明になっただけで、捜索を我々に頼るだろうか?」 こうして、行方不明者たちの捜索が始まったのでした。 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
■2012年5月10日:追記 ▼サンプルアクション ・失踪者を救出する ・誘拐される(LCメイン) ・店に乗り込む ▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました) 2012年05月07日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2012年05月08日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2012年05月12日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2012年05月25日 |
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