前回のあらすじ
アッシュ・グロックはある日、主役の座が欲しいとの願いで怪しげな魔術を使った結果気を失い、目が覚めると魂だけが人形に入っている状態でした。気を失っている間に、犯人が気を利かせて偽アッシュをシャンバラの各都市へと送りこみました。各都市で暴れているとの苦情が相次いで来たために協力して偽アッシュは撃退されましたが、戻って来たのは外側だけでした。その後、胃袋を持った偽アッシュが出現して大食い大会が開かれました。なんやかんやと檄マズ料理を食べ進めなんとか胃袋を取り戻す事が出来たのです。
「ふはは。とうとう完成したぞ」
明かりが無い暗闇が支配する空間で、男性の声が上がりました。
その声は、完成した物を見上げながら薄笑いを浮かべていました。
×××
今日も平和なイルミンスール学校で勉学に励むアッシュ・グロック(あっしゅ・ぐろっく)とアゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)の姿がありました。
お昼の時間に差し掛かった時です。突如イルミンスールの街が地震に襲われたのです。
地震の揺れが収まると、学校内に居た生徒はパニックになりました。
アッシュは地震の揺れは収まったので、校内から外に出ようと校庭に出ると先に外に出ていた生徒が空を指差したのです。
「な……なんだ。あれは」
生徒が指差した先には、ドラゴンと同じぐらいの大きさの巨大なアッシュがイルミンスールの森から付きだすように出現したのです。
巨大なアッシュが出てくると、一斉に本物のアッシュに痛い視線が刺さりました。
「ちょ……今回の敵はとんでもなくでか過ぎだと思うんだけど」
「そうですねぇー。ちょっとでか過ぎると思うんですよぅ」
アッシュとエリザベートが巨大アッシュを見上げながらのほほんとした会話をしようとした時でした。
巨大アッシュは近くの樹を一本引き抜くと、そのまま校舎に向けて投げ込みました。
巨大アッシュの思わぬ攻撃を見たエリザベートは、魔法を唱えるとエリザベート自身を巨大化させたのです。
「おおっ……流石校長。自身の身体で樹を受け止めるのか!」
見る見るうちに巨大化していくエリザベートを見上げながらアッシュ達はエリザベートを応援し始めました。
エリザベートは飛んでくる樹を手ではたき落そうと、手を振り上げました。
「………今よ!」
ぶおんと言う風切り音と共にエリザベートは飛んで来た樹を手で叩き落そうとしました。
「やったか………!?」
「はうっ!」
駄目でした。
額に樹の直撃を受けたエリザベートの巨体は、ズゥゥゥンと音を立てて校庭に仰向けに倒れそのまま気を失ってしまいました。
「エリザベートさま大丈夫ですか!?」
慌てたようにアゾートが校舎から校庭へと飛び出してきました。
アゾートと合流できたアッシュは、この状況を沈静化しようとコントラクター達にヘルプを出したのです。