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魂の研究者と幻惑の死神2~DRUG WARS~

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シナリオガイド

むきプリ君の薬が未来を救う!!
シナリオ名:魂の研究者と幻惑の死神2~DRUG WARS~ / 担当マスター: 沢樹一海

「ユー、リ……アン?」
 ピノ・リージュン(ぴの・りーじゅん)が大人らしい声音で呟くと、それだけで彼は“どちら”なのか判ったようでした。ラス・リージュン(らす・りーじゅん)――の前世であるユーリアンの人格は、自分と同じように『表』に出てきたシェルティに軽く笑いかけます。
「ああ。久しぶりだな、シェルティ」
「やっぱり……! やっぱりそうだったのね! おかしいと思ったのよ。だって……」
「まあまあ」
 まあまあ、とユーリアンは彼女を押し止めます。積もる話は後にして、と自分の胸元を指し示しました。大きくはありませんが、丸く開いた刺創があります。
「一度、ピノちゃんと代わってくれるか? お前、回復スキル持ってないだろ」
「ピノのだって覚えてるレベルでの治療なのに……」
 唇を尖らせたピノから、立ち上っていた大人特有の気配が消えていきます。一瞬の後、目をぱちくりとさせたピノは混乱を瞳に宿しながら治療を再開させました。
「お、おにいちゃ……どういうこと? 戻……」
「大丈夫だ。今は寝てるけど、ショックから回復したらラスと入れ替わる事も出来っから。ピノちゃん達みたいにな」
 そう言うと、ユーリアンはLIN禍津殺生石を押し付けたまま、彼女の傷口を厳しい目で確認します。石の治療効果も多少は見られるようですが、多数ある傷口からはまだ血が噴き出しています。石を奪った事でリジェネレーションが切れ、天神山 葛葉(てんじんやま・くずは)もかなりの重症でしたが彼はそちらには関心を持ちませんでした。
「……にしても、この人どーすっかな……危ねーし、いっその事、殺した方がいい気がすんだけど……死んでも、全員は無理としてもナラカの娘とは暮らせんだろ? ……ま、身内じゃねーから言える事なんだろうが」
「よ、よく分からないんだけど……」
 その場で事態を見ている皆や、サトリ(覚)・リージュンリン・リージュンを見るユーリアンに、大いに戸惑った様子を見せながらリンは言いました。
「その人は、私とは決定的に違う考えをしてるわ。初めてその人の考えを聞いた時、私、正直、良い考えだと思ったの。私も娘に会いたい……もの凄く。その為に“私を含めた家族全員”で死んでナラカに行くならありじゃないかって。でも彼女はさっき本気で死ぬのを嫌がっていた……助けてって。彼女の中で、自分の死は選択外なのよ。自力でナラカに行けるなら、確かに死ぬ必要は無いわ。でも、それって……」
 リンは数秒黙り、改めて口を開きます。
「家族の幸せなんか考えてない。自分が幸せなら、それで良いんだわ」
 怒りと悔しさの込められた言葉には、どこか突き放すような響きも混ざっています。
「……それより、サトリの方が気になるわ。サトリは、どうしちゃったの? 筋肉って何?」
 再びおろおろとするリンに、ユーリアンはムッキー・プリンプト――むきプリ君について説明します。
「色違いだけど同じ瓶だし、多分あいつ絡みじゃねーかな」
「じゃ……じゃあ、時間が経てば元に戻るのね?」
「今までのパターンならな。でも、持続時間とか分かんねーし……」
「それなら、環菜様達が彼を呼び出して事情聴取するらしいですよ。薬についてもそうですけど、『魔王』について気になる点があるみたいです」
 そこで、先程まで御神楽 環菜(みかぐら・かんな)と連絡を取っていた御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が彼等に告げます。
 空京ではその頃、環菜と御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の住居に来たむきプリ君がエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)の顔を見て――

              ◇◇◇◇◇◇

 警戒していました。
(な、何だ、まさか、ついに退学か……!?)
 むきプリ君は未だ、ホレグスリ製造及びホレグスリ配りを続けています。最早、学生がおまけでホレグスリ製造が本業と言ってもいいでしょう。長く見逃されてきましたが、いつ退学になってもおかしくありません。
 ですが、呼び出した彼女達が見せてきたのは1枚のプラカードでした。

『間違いなく、ムッチー
 大きくなったら可愛さを
 失い、兄
 にそっくりに
 なるでしょう。ま
 る。』

「これは予言なんだけど……どう? この文章の意味は解る?」
「む……?」
 環菜に訊かれ、むきプリ君は一応意味を考えます。ムッチーというのは、異母弟のムッチー・ムースの事でしょう。彼の家系の男性は、成長すると例外なくガチムチになります。特に驚く予言ではありませんが。
「文章の改行の仕方が何か変だな」
「ですよねぇ〜。ということでむきプリ君、それぞれの行の頭文字を縦読みしてみてくださいぃ〜」
「縦読み? ま、お、う、に……こ、これが何だと言うのだ?」
 まだ、事の重大さが分かっていないらしいむきプリ君に、エリザベートはこれ見よがしに溜息を吐いた。
「にぶいですねぇ〜。まあしょうがないですけどぉ。魔王といっても、その辺にいる魔王と同じ意味じゃないんですよぉ」
「未来で問題を起こす『魔王』がいるのじゃ。恐らく、この予言はそれを現しているのじゃろう。『魔王』がドラゴンを攻撃した、というのが子供が浚われた件と繋がっている気もするしのう」
 エリザベートとアーデルハイトは未来で『魔王』が世界に齎した影響、そして人々に起きた『現象』を説明しました。続けて、環菜も言います。
「私はこの『魔王』が『現象』にも深く関わってるんじゃないかと考えているわ。病気が原因だとしても、病にも更に原因があるでしょう」
「つまり、むきプリ君の弟は重要人物だということですぅ〜」
「むむ……。それで、俺に何をしてほしいのだ?」
 退学の話にはならなさそうですが、あまり茶化せる話でもなさそうだ、とむきプリ君は確認します。降って湧いたような話でしたが、何故か大声を出すほどは驚いていませんでした。実感が無かったのかもしれません。
「薬を作ってほしいんですぅ。その子供が『ドラゴンに食べられかけた』という記憶を忘れる為の薬ですぅ。私が作ってもいいですけど、忙しいですからぁ〜」
「材料のヒントには心当たりがあるわ。『智恵の実』という人の記憶も戻せる果物がヒラニプラに売っているから、それが参考になると思う。要するに、逆の効果の薬を作れば良いということね。智恵の実の効果はそれだけじゃないから、そこまであてにはできないけどね」
「記憶か……」
 多少大げさに難しい表情を作ってから、むきプリ君は満面の笑みを浮かべました。すっかり気を大きく持ってしまったようです。
「よし、やってみよう! 俺が世界を救い、弟を正しい道に導くという事だな!」
「う、ま、まあ、そう思ってもらっても構わないですぅ〜」 
『病気』が本当の原因であれば『魔王』の暴挙を止めても問題は解決しないかもしれません。しかし、エリザベート達は、これが未来を平和にする1ピースだと予感していました。
「それと、今、パークスという所で事件が起こっているんですが……」
 更に、鼻を膨らませてやる気満々になっているむきプリ君に、陽太がLINが覚に何をしたか、覚がどうなってしまったかを説明します。
「その薄紫色の小瓶に入った薬について、何か心当たりはありますか? ホレグスリ以外に別の薬を開発中だとか……」
「俺は何も作ってないぞ! 未来人が持っていたのなら未来の俺が作った薬ではないのか?」
「やっぱりそうですか……」
「だが、その瓶を回収して薬の成分を分析する事は出来るな。一応解毒剤も作っておくか?」
 むきプリ君としても、未来で自分がどんな薬を作ったのか興味がありました。それが売れそうな効果であれば、ばんばん売って借金を返す事も出来るかもしれません。
「お願い出来ますか?」
「ああ、人助けだからな! 当然だ!」
 むきプリ君の口から聞き慣れない言葉が出た事で室内は一瞬しーんとなりましたが、エリザベートは気を取り直して言いました。
「それなら、特別大サービスで私が連れて行ってあげますよぉ〜」
 空京からパークスまでは距離があります。緊急事態ということで、彼女はむきプリ君を送ることにしたのです。


 ……
 …………
 ………………
 ……………………

              ◇◇◇◇◇◇

 それから数週間の時が経ち、3月も半ばの事。
「2048年に起きた現象について、解決策が判明した」
 ファーシー・ラドレクト(ふぁーしー・らどれくと)の家を訪れたリィナ・コールマン(りぃな・こーるまん)は、集まった面々に説明を始めました。フィアレフト・キャッツ・デルライド(ふぃあれふと・きゃっつでるらいど)――イディア・S・ラドレクトブリュケ・センフィットアクア・ベリル(あくあ・べりる)の3組の検査結果を元にして導き出された結果です。
「未来と現代の結果には、確かに差異があった。原因は、微生物だ。採取物から、微生物が検出された」
「微生物……? それが、子供が出来なくなった原因なんですか?」
「……それなら、なんで学者達は分からなかったんだ?」
 フィアレフトに頷いたリィナは、ブリュケの問いに冷静に答えていきます。
「それが、特殊な生物だからだ。一度人の身体に溶け込んだそれは、あらゆる性質を兼ね備えたものに変質してどんな検査にも反応しない。だが、体液を特殊な機械で見た時だけ、その存在が確認できる。所謂、不可視の存在を可視化する為の機械を通して見た時だ」
 つまり、その微生物は体内で透明化していたということだ。
「それが何故、未来の人々の身体に侵入したのかは判らないが……この微生物を殺す方法は存在する。様々な薬を試した結果――」
 リィナはそこで、少しの間を開けてから皆に言った。
「ムッキー・プリンプトが新たに作った薬――
 ・人の記憶の一部を消す薬。及び――
 ・愛する者に支配される薬、愛する者を嫌いになる薬
 の三種類に効果があることが分かった」
「……え? ムッキー……って……むきプリさん?」
 予想外に飛び出してきた名前に、皆は思わずぽかんとしてしまいました。ファーシーの確認を、リィナは淡々と肯定します。
「そうだ。未来人達を治療する為の薬を作る方法はこうだ――
 通称『むきプリ君』と呼ばれる彼が作った薬を、一度体内に取り込む。そして、取り込んだ者の体液を採取して変質した薬物を取り出す。
 そこまでして初めて、微生物を殺す薬が完成する」
 それは、つまり――

 現代にて有志でむきプリ君の薬を服用しないと、新たな薬が作れないという事だ。

「ちなみに、ホレグスリでも試してみたがこちらでは効果が無かった。新しく作られた薬のみだ」
『…………………………』
「安心しろ。全国民に飲ませなくても、一定量が集まればそれを増やす事は可能だ」
 そういう問題ではありません。

 こうして、未来を救う為――
 むきプリ君の薬を『進んで飲んでくれる』有志を募ることになりました。

              ⇔

 その頃――
「ここが、2024年か……!」
 マスクを被り、ビキニパンツを穿いた筋肉質の男が、パラミタの空に浮かんでいました。
「薬を作られるわけにはいかん! 必ず、製造を防いでみせるぞ……!」

担当マスターより

▼担当マスター

沢樹一海

▼マスターコメント

※本シナリオのアクション締切日は10月11日となります※

『魂の研究者〜』シリーズの最終章です。文系マスターが理系設定でシナリオ書くとこうなるよ、という感じの内容になっております。ツッコミ所が多々あるような気がして冷や汗ものですが、最後はシリアス&はっちゃけ(?)でお送りできればと思います。

★★★
この最終章では、主に以下の状況を扱います。

1、【舞台:パークス】LINさん決着とか色々。
現在瀕死のLINさんですが、彼女の処遇について決めていただければと思います。
以前にアクアさんの生死関係の時も書きましたが、彼女に関するその後の殆どは皆様のアクションに委ねられます。そんなもん家族で何とかしろというお声が聞こえてきそうですが、どういう結果になろうとそれは家族の経験値となります。
(アクアさんの時とは違い、LINの場合は死=バッドエンドとは限りません)

前章最後でいきなりユーリアンとシェルティが復活しましたが、いつから居たんだお前、等、質問がありましたら受け付けます(実はこの2人、ラスピノから魔鎧分離させる予定だったのですが間に合わず……魔鎧にしてやってもいいっす! という心優しい悪魔の方がいましたら魔鎧になるかもしれません。ならなかったらそのまま1体内同居となります)
ラスピノユーリアンシェルティはその時々で中身が入れ替わりますので、アクションを掛ける際にはあまりその辺りは気にしなくても大丈夫です。

開始時点で、その場にはガイドに出ているNPCの他に→ファーシー・ラドレクト、アクア・ベリル、サトリ(覚)・リージュン(状態異常中)がいます。

他、エリザベートとむきプリ君&プリム・リリム、フィアレフト達検査チームが後に合流いたします。


2、【舞台色々】未来の為の薬を作る為に犠牲になる(むきプリ君作の薬を飲む)

薬には3種類
・人の記憶の一部を消す薬(ムッチーに使う為に作った薬。ちなみに、ムッチーには飲ませ済です)
・愛する者に支配される薬(覚が飲まされた薬)
・愛する者を嫌いになる薬(上の薬の解毒剤)
となります。
記憶に関する薬は、基本的に効果が切れる事はありません。
「支配〜」「嫌い〜」の薬の持続時間には個体差がありますが、体内に変質した成分が残るので、それを後に採取します。
「愛する者に支配される薬」はホレグスリとは違います。ホレグスリは、どの相手にも効果がありましたが、これは真実「愛する者」相手にしか効果を発揮しません。効果が発揮できないと成分が変質しませんので、飲むだけでは『未来を救う為の薬』に進化させる事は出来ません。


3、【パラミタのどっか】『魔王』との対決

集まった『成分』を増やして未来に持っていくわけですが、それを阻止しようと『魔王』がやってきてしまいました。なぜ阻止しようとしているのかは分かりません。その理由を考えていただいても一向に構いません(というか考えてくださry)。

彼との対決を得て、薬が完成し、ハッピーエンド……になるといいですね(希望)という流れです。

――――
他、これまでのシリーズ中でやり残した事、気になる事等ありましたら、上記に限らずアクションを掛けてくださって結構です。

(おまけ)
・ブリュケ君があまり命令を聞かなくなった機械人形達にちょっと困っているようです。助けてあげると喜ばれるかもしれません。


★★★
また、このシナリオでは公式NPCを参加させる事が可能です。公式NPCについてはこちらを参照ください。

公式NPC1人につき、LC1枠をご使用ください。
公式NPC、ルミーナ・レバレッジ、エリザベート・ワルプルギス、アーデルハイト・ワルプルギス、御神楽環菜へのアクションには必要ありません

・NPC枠となるLCの欄には「○○を誘います」とお書きください。
 基本的には、この一文のみで問題ありません。
(個別で公式NPCを登場させる場合は、どうしても描写量が多くなる為の措置となります。ご了承ください)
 NPCのアクション=行動 を書いてしまうと、確定ロールになってしまいますのでご注意ください。

・公式NPCとの関係称号は必須ではありませんが、なるべくセットしてご参加ください。関係称号が無い場合は、アクション失敗の可能性もあります。

また、公式NPCであっても、『すぐに来ることの出来ない場所にいる』NPCは呼び出せません。

<公式NPCの扱い>
PCとほぼ同じ扱いとなります。
いつもの「公式NPCの依頼を受ける」とか「公式NPCの手助けをする」とかではなく、
「公式NPC“と”一緒に冒険する」という感覚が一番近いのではないかと思います。

NPCなので、時には私の都合で動いてもらう事もあるかもしれませんが、PC達と大きく立場は変わりません。
アクションをかける際には、「○○と一緒に△△をしてみます」とか「○○を※※に誘って、□□をします」とか、公式NPC自身が何をする、という書き方ではなく公式NPC「に」何をする、という書き方でお願いします。
上との繰り返しになりますが、こちら、「すぐに来ることの出来ない場所にいる」だったり「来る事が不自然そう」だったりする場合は呼び出し失敗になることもありえますのでその部分だけご留意願います(まあ殆ど失敗しないと思いますが)。

※私の方で背景や設定を把握しきれていない公式NPCもいますので、あまり膨らませられずに本当にPCと同扱いになる場合があります。このシナリオにこんな設定が書いてあるからこんな事が出来るよ! という事があれば伝えていただければ出番も増えるかもしれません(確定ではありません)※

★★★

※本シナリオのリアクション公開は「11月中」を予定しております。あらかじめご了承ください。※

▼サンプルアクション

・むきプリ君の薬を飲む

・『魔王』を止める

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2014年10月01日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2014年10月02日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2014年10月11日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2014年11月30日


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