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精霊と人間の歩む道~風吹くウィール遺跡~ 前編

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精霊と人間の歩む道~風吹くウィール遺跡~ 前編

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シナリオガイド

シャンバラに取り憑く闇が、各地に歪をもたらす――
シナリオ名:精霊と人間の歩む道~風吹くウィール遺跡~ 前編 / 担当マスター: 猫宮烈

 季節は春。
 冬の寒さに耐えた生物が次々に目覚め、生命を謳歌する季節。

「もうすっかりあったかくなっちゃった。あたいはずっと冬のままでもいいんだけど」
「それは困るよ〜。春のあったかさがあるから、冬の寒さもガマンできるんだよ?」

 リンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)の家には、イルミンスールと契りを交わした『精霊』、今はリンネのパートナーとして日々を過ごすカヤノ・アシュリング(かやの・あしゅりんぐ)の姿がありました。

「あれ? そういえばレライアちゃんは? 今日は一緒じゃないの?」
「なんか、他の精霊とイナテミス行ってくるって書き置きがあったわよ。何よ、あたいがよく寝てたからって、置いてくことないじゃない」
「そっか〜。あはは、きっと起こすのをためらっちゃうくらい、カヤノちゃんの寝顔が可愛かったんだよ」
「な、ななな何言ってんの!? 変なこと言うとリンネでも凍らせるわよ!!」

 真っ赤になったカヤノが手に氷を宿らせたその時、レライアが戻ってきました。
 レライアの後には、セリシアサティナサラセイランケイオースの姿もありました。

「わ、お客さんたくさんだ」
「突然のことで済まない。少々気になる話を伺ったのでな」
「気になる話……?」

 サラが言うには、最近イナテミス――かつてカヤノが襲撃をかけた街――に精霊と思しき女性が保護されたとのことでした。『ウインドリィの風の精霊』キィと名乗った女性はひどく弱っており、『ウインドリィ』に帰れない状態だったのを、街の青年ホルン・タッカスに助けられたのでした。

「女性が精霊であるかを確認するために訪れたのだが……問題はそれだけではなかった。イナテミスは今、季節外れの寒波に見舞われ、さらには気を狂わせた獣の襲撃を受けていた。芽吹きを迎えるはずの草花は未だ顔を見せず、獣の所為で門や壁、建物は損壊が酷く、人間は疲れ切っているようだった」
「遠くの地では悪しき者が復活し、それが原因で様々な争いが起こっていると聞き及びますわ。そうして生まれた好ましくない気が、各地に影響を及ぼしているようですの」

 『鏖殺寺院』と『ダークヴァルキリー』によって目覚めた『闇龍』がシャンバラ地方を取り巻いている最中、イナテミスは未だかつて経験したことのない長い寒波に見舞われていました。冷たく、何もかもを吹き飛ばすかのように吹き荒れる風雪は、人々を少しずつ蝕んでいます。
 それに加え、食糧が不足したのか気を狂わせた獣の襲撃を頻繁に受けていました。

「暴風に寒波、そして狂った獣の襲撃……その出処はどうも『ウィール遺跡』、そして、『氷雪の洞穴』のようなのです」
「えっ、そうなの、レラ?」
「わたしが直接見たわけじゃないけど、そうとしか考えられないわ。起きていることが似ている」
『……これは我の勘じゃが、その悪しき者の復活の余波が、それらの場所に何らかの作用を起こしていると考えられるのだ』

 セリシアとサティナと初めて出会った『ウィール遺跡』、カヤノとレライアと初めて出会った『氷雪の洞穴』はそれぞれ、シャンバラ女王に繋がるとされるリングが見つかった地でもありました。
 今は2つともイルミンスールの監視下に置かれていたはずでしたが、最近の混沌とした情勢の中で連絡が滞ってしまったのです。

「ねえ、リンネ。あたいたちで何かできないかな? 別に罪滅ぼしとかいうわけじゃないけど、あの街はあたいとレラが迷惑かけちゃったし。そのキィって人も、街が元気になればきっと元気になるわよ」
「わたしからもお願いします。わたしたちの行いで皆さんが元気になってくれるのなら、力になりたいです」
 カヤノとレライアの頼み事に、リンネが腕を組んで考えます。

「う〜ん……リンネちゃんと精霊さんとで、何が出来るんだろう?」
「それを考えるためにも、一度皆さんでイナテミスに行ってみませんか?」
 声に一行が振り向けば、空から降り立ったミーミル・ワルプルギス(みーみる・わるぷるぎす)が皆の前に進み出ます。

「生徒の皆さんと精霊の皆さん、それにイナテミスの皆さんで、キィさんのため、そして街に住む方のために何ができるかを考えるんです。皆さんで考えた方が、きっといい案が出ると思います」
 ミーミルのその言葉は、今までのミーミルからは出なかったであろう言葉でした。

「ミーミルちゃん……うん、そうだね! じゃあ、今から早速イナテミスに行ってみよー!」
「今からぁ!? ってもういないし! ま、そういうところがリンネらしいし、あたいも好きだけど!」
 飛び出していったリンネを追って、カヤノも家を飛び出して行きます。

「私たちはこれまで、他種族と一つのことを成し遂げようとはしてこなかった。……だが、こうして何かをしようとするのも、いいのかもしれないな」
「……そして、その良さを教えてくださったのは、ここの者方、ひいては人間方、ですわね」
「俺たちにも出来ることがあるはずだ。同行しよう」
「皆さん、ありがとうございます」
 サラ、セイラン、ケイオースがミーミルに頷きます。

 そして一行は、イナテミスへ向かいました。
 街には今も雪が溶けずに残り、街を歩く人影はまばらです。そしてその誰もが、精霊に訝しげな視線を向けています。
 
「やっぱりって感じだけど、こうもあからさまだと嫌になってくるわ!」
「仕方ないことだと思います。でも、これからの私たちの行動次第で、きっと変わっていくと思いますよ」
 声を荒らげるカヤノをミーミルがなだめ、一行はキィが保護されている家へ向かいます。

「彼女だけじゃない、街の人も最近はすっかり元気をなくしてしまっている。このままじゃ街は廃れてしまう」
 ホルンの家に辿り着いた一行は、キィの様子を見舞った後でホルンから話を聞きます。キィの容態は回復の兆しを見せず、むしろ少しずつ悪くなっているとの見立てでした。
「異常気象の原因が、君たちの言う場所だというのは街の長も把握しているし、対策もいくつか出されている。……だけど、誰もそれをやろうとしなくなっているんだ。一部の住人の中には、彼女が今の災厄を持ち込んだ張本人だって疑っている。……君たちの申し出はありがたいけど、街の人が動いてくれるかどうか……」
 今は安らかな寝顔を見せるキィを見遣って、ホルンが溜息をつきます。
 
 沈みかけた場の空気を振り払うように響いたのは、リンネとミーミルの声でした。

「不安になっちゃダメだよ! みんなが頑張れば、街の人だってきっと応えてくれるよ! だからまずは、動いてみよっ?」
「初めは小さなものかもしれませんけど、きっと大きなものになるはずです。皆さんにはそれができるはずです」
 2人の言葉に続くように、精霊たちも真摯な眼差しで頷きます。それらを受けて、しばらく顔を伏せていたホルンも、表情を明るくして頷きます。
「……俺に何ができるかは分からないが、彼女を助けたからには何かしてやりたい。彼女と、そして街の元気な姿を見てみたいんだ」

『……レライア。お主、どう思うかの?』
 家の中ではこれからの話が進められている最中、そっと家を抜け出したサティナが、隣に立つレライアに呼びかけます。
「今回のことはおそらく、わたしとサティナさんのリングが関係しているんだと思います。……事次第では、わたしも、サティナさんも――」
 目を伏せ呟くレライア、遠くを見つめるサティナの指には、それぞれ輝きを放つ『アイシクルリング』『シルフィーリング』がありました。

 話し合いの結果、リンネ率いる『アインスト』と7名の精霊は、イナテミスの復興、そして『ウィール遺跡』と『氷雪の洞穴』の調査に赴くことになりました。
 サラ、セイラン、ケイオース、そしてミーミルを有事の際の備えとイナテミス復興のために残し、セリシアとサティナ、カヤノとレライア、そしてリンネとモップスは、ウィール遺跡と氷雪の洞穴の異変を解決するべく、それぞれの場所に向かうのでした――。


『これはまた大層なことになっとるのう』
「……ええ、そうですわね、姉様」

 『颯爽の森』で、縁のあったコボルドたちの案内を受けて辿り着いたそこには、変貌したウィール遺跡が大きく口を開けて一行を待ち構えていました。辺りは一面雷雲に覆われ、時折発生する雷が遺跡に降り、爆音を響かせています。
 コボルドたちの話では、目の前の入口の他に3箇所、合わせて4箇所の入口ができたそうです。それがどこに繋がっているか、また内部がどうなっているかまでは彼らにも分からないそうです。外は樹木と蔦で覆われており、上空から内部の様子を伺うことはできませんでした。また蔦は絶えず脈動しており、侵入者である皆さんに対して牙を向く可能性もある、と教えてくれました。

「入って確かめるしかないみたいだね……モップス、何かあったら護ってね!」
「あんまりアテにしないでほしいんだな。ま、やるだけやってみるんだな」

 リンネとモップス・ベアー(もっぷす・べあー)、セリシアとサティナ、それに集まった『アインスト』の一行は、手分けして4つの入口から、遺跡に起きた異変の謎を解決するべく足を踏み出すのでした――。

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

 猫宮・烈です。
 
 此度のキャンペーンシナリオは、グランドシナリオの影響を受けて激動するシャンバラ地方の異変に際し、精霊と人間とがどう関わり合っていくのかを軸に、『精霊と人間の歩む道~凍結せし氷雪の洞穴~』と同時展開で進めていく前後編です。
 シナリオの結果次第では、グランドシナリオに影響を与えることになります。

 今回のシナリオは同時に二つのシナリオが並行するため、以下に注意点をまとめました。
 ご覧の上アクションをおかけください。

 ●シナリオの時間の流れについて
 両シナリオのリアクションで描かれる時間帯は、ある程度の幅(数日程度)があります。そのため両方のシナリオに参加された場合もご自由にアクションをおかけください。

 ●シナリオの舞台について
 シナリオの舞台ですが、固有の舞台として『氷雪の洞穴』と『ウィール遺跡』、共通の舞台として『イナテミス』がございます。
 両方のシナリオに参加された場合は、それぞれ1つずつの舞台を選択出来ます。
 ただし、以下にご注意ください。

 ・リアクション内で別の舞台に移動出来ません。
 ・両シナリオでイナテミスに参加することは可能ですが、同じ行動をとったからといって成功確率が2倍になるわけではありません。
 ・両シナリオでイナテミスで行動し、矛盾する行動をとった場合は両方のアクションとも失敗する可能性があります。
 ・両シナリオでイナテミスを舞台として選択した場合、片方でLC追加をしたからといって、もう片方のシナリオでもそのLCが登場する訳ではありません。LC追加はそれぞれのシナリオに登場するごとに行って下さい。
 
 ここからは、『イナテミス』の情報を記載します。
 
 イナテミスは度重なる天候不順と気を狂わせた獣の襲撃を受け、ライフラインを保つのが精一杯の状況です。
 街を守る門は、今一度大嵐が襲ってくれば崩れてしまうほどに損壊しています。街にある建物も、優先度の低いものは損壊が進み、街の中心にある噴水などはその一部が崩壊してしまっています。
 そして何より、続く混乱の中で人々の心は疲弊しきっています。
 街を揺るがす脅威を取り除くのも重要ですが、その間の街のケアも大切です。混乱の中では、人間は何をしでかすか分かりません。現に一部の住人は、ホルンの元に匿われているキィを、『こんな災厄を持ち込んだ張本人』と疑っている節があります。そうした人たちの誤解を解き、そして共に災厄に立ち向かうよう意識を振り向けなければ、イナテミスという組織は自壊してしまうでしょう。
 
 街の大まかな全体図は、まず街の周囲を取り囲むように壁、3つの門(1つは大きく、2つは小さい)があり、街に入ると田畑が広がり、田畑に水を供給する水路を超えた先、中心部に住民の家や商店などが立ち並んでます。ホルンの家も中心部の一角にあります。

 ここからは、『ウィール遺跡』の情報を記載します。
 
 ウィール遺跡へは4つある入口から進入することができます。
 位置は、遺跡を7×7のマス目で区切られた盤に見立て、右から左に1~7、上から下に一~七と記した際に(将棋盤の7までと考えていただけると分かりやすいと思います)、それぞれ(4一)、(1四)、(4七)、(7四)となっています。
 
 遺跡調査に参加する皆様は、以上の入口から中心部(4四)を目指して調査をしていただくわけですが、そこに行くためには蔦に覆われた地形に隠された仕掛けを見つけ、解除する必要があります。仕掛けの中には遺跡の道を開くものもあれば、冒険者に危害をもたらすものもあり、その位置を把握しておかなければ有事の際に思わぬ被害をもたらすことになるでしょう。
 皆様はアクションをかける際、どの入口から侵入するかを必ず明記してください。各入り口に集まった人数、及びアクションに応じて、仕掛けが解除されたり新たな道が開けたりといった判定が示されます。
 後編に役に立つアイテムを入手することがあるかもしれません。しかし場合によっては仕掛けで被害を被ったり、襲いかかってきた蔦と戦闘になることも考えられますので、対策はお忘れなく。
 
 皆様で仕掛けを解除し、ウィール遺跡に起きた異変を鎮めましょう!
 同時にイナテミスの人々と、街に活気を取り戻しましょう!
 
 ここからは、種族『精霊』についての注意事項を記載します。
 
 『イルミンスールの冒険Part2』では精霊が炎や風で敵を攻撃していた描写がありましたが、今回LCとして参加する精霊は、スキルに炎術や雷術(風は雷に含まれると思ってください)、その他攻撃や防御のためのスキルを装備していなければ、炎や風の力を使って敵を攻撃したり味方を守ったりできません。『装備』しないと行動出来ないという判定をご了承願います。

 例外は『精霊の知識』スキルを使った時で、これはマスターシナリオでは、
 
 『スキル使用の際の成功率が上がる』
 
 と設定します。その時の描写として、スキルを使うMCをサポートしたという意味合いで、精霊は属性の力を使うことができます。この際は『炎術』を装備していないから炎によるサポートはできない、とはなりません。
 
 なお、今回の精霊に関する判定、その他設定した判定は、このシナリオに限定します。
 他のマスター様のシナリオで、『こういう判定だったから』という話を持ち込むのはご遠慮くださいませ。

 以下に、今回登場するNPC精霊が持っているスキル(正確にはスキル効果)を記載します。
 NPCは以下に持っているスキルに基づいた行動をします。
 (描写としてはより精霊らしいものに変更される場合があります)
 
 サラ:炎術・ファイアストーム・ファイアプロテクト
 セイラン:光術・バニッシュ・リカバリ
 ケイオース:実力行使・等活地獄・幸せの歌
 セリシア:雷術・サンダーブラスト
 サティナ:雷術・対電フィールド
 カヤノ:氷術・ブリザード
 レライア:氷術・アイスプロテクト
 
 初の試み故、説明等色々と煩雑になってしまいましたが、ご理解とご了承のほど、よろしくお願いいたします。
 なお、特殊なシナリオ運営のため、リアクション公開は提示された日程と異なる場合があるかもしれませんが、その場合でもお待たせしないよう、また皆様のアクションが最大限生かされるよう、善処したいと思います。
 
 それでは、よろしくお願いいたします。

▼サンプルアクション

・荒廃したイナテミスの復興を、街の人と一緒に行う

・ウィール遺跡の調査を行う

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2010年04月12日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2010年04月13日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2010年04月17日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2010年05月10日


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