葦原明倫館

−砂漠のイコン輸送防衛前線−


「蒼空学園校長だ。何の用だ？」
　
　校長室に繋がった電話に出ると、山葉　涼司（やまは・りょうじ）がぶっきら坊に応対します。
　今彼の態度が無礼なのは致し方有りません。別件で頭を抱え込んでいる最中なのですから。
　しかし、電話の向こうにいる人物は涼司の無作法を気にする事無く、自らの詳細と要求を述べます。
　
「突然申し訳ない。オレ、いや私は『シャンバラ・カナン共同イコン研究所』の九品寺　Q策（くほんじ　きゅうさく）と申します」

「ああ、西カナンの……で、そこの研究者さんが、学園に何用だ？」

「実は、私どもが運用実験をしていた“改良型イコン”を近日シャンバラ地方へとお返しする手筈を整えておりましたが、訳あって、それが難しくなっております」

　九品寺の言う“改良型イコン”とは、従来のイコンと性能も外観も変わらないが、生産性の向上と部品コストの削減、及び操縦運用の安全性を図ったものです。
　イコンの製造は各学校のプラントにて行われているが、イコンの改良や実験を行うにはより高度な技術と専門的な知識が必要です。また、過酷な環境での起動実験も必要です。
　そこで『シャンバラ・カナン共同イコン研究所』です。
　『シャンバラ・カナン共同イコン研究所』はシャンバラ・カナンと共同でイコンでの土木作業・救助作業の為の装備及び運用を研究するための施設です。
　そこにシャンバラで改良したイコンを秘密裏に運んで起動実験を行い、様々な効率化を図るためのデータ収集をしていたのです。

　研究所で収集された実験データをシャンバラにある各学校が受け取り、その情報を元に、より効率のいいイコンの製造を行うのです。
　今回学園側が受け取るイコンも元は学園のプラントで改良製造したイコンであり、その起動および改良実験の為に、学園が秘密裏に研究所へと提供していたものです。

「それで俺らに何かしろと」
「折り入ってはなんですが、シャンバラへの輸送を護衛してほしいのです。カナンの砂漠にて海賊が出ておりまして、既に第一輸送隊がその襲撃によりイコン数機を強奪されております」
　奪われたイコンはクェイルやイーグリットアサルトなど、蒼空学園のイコンのほか、各学校のイコンが数機奪われてしまっています。

「なるほど。改良型を引き渡す代わりに、それを西カナンまで取りに来いって訳か……」
「数日前の起動実験中の事故で、コチラの専属パイロットが一人負傷し……、もう一人が研究所を脱退して、第一輸送隊のこともあり、護送のためのイコンパイロットが不足しているのです。どうか、蒼空学園にお力添えをして頂きたい！」
　
　砂漠に海賊とは妙な話だと、涼司は思います。しかし、海賊の目的がイコンの略奪にあるなら見逃すわけには行きません。
　イコンはまだ現存数が少なく、非常に強力な戦力でもあります。一機でも奪われるなら、その分の戦力と開発製造費を丸々奪わるのと同じです。

「既に、他の学校にも護送の応援要請を取り付けております。第一輸送隊の証言では、シュメッターリングに襲われたと聞いていますので、予断を許すわけにはいきません」
　シュメッターリングは鏖殺寺院の生産運用しているイコンです。
　何やらこの依頼。キナ臭いものなってきました。

「……わかった、こちらもできるだけの事はする。護送に全面的に協力しよう」

　涼司は九品寺の依頼を受けることにし、本件に参加してくれる学園生徒の募集を開始しました。
　

　初めましての方は初めまして。前シナリオからの方はまたお会いできて光栄です。
　外見も中身も黒い、ゲームマスター黒井　威匠（くろい　いしょう）です。
　今後見かけたら、何卒よろしくお願い致します。

　今回、イコンがメインとなるロボットシナリオと成りますが、ご安心ください。イコンが無くても参加可能で御座います。
　寧ろ、生身での参加をしていただくと大変有難いです。
　イコン有り無し関係なく楽しんで頂ければ幸いです。
　
　それでは、この場にて今回の輸送護衛シナリオの説明をしたいと思います。
　
　
●本シナリオについて
　本シナリオでは、砂漠に現れる海賊から、輸送中のイコンを守るものです。
　海賊はサンドモービルやイコンに乗って襲撃してきます。彼らかイコンと輸送トレーラーを守りつつ、砂漠地帯を脱するのが目的です。
　海賊は砂漠に罠を仕掛けたり、何らかの妨害をしてくる可能性が有ります。
　
●輸送について
　イコンの輸送は大型トレーラーにて行います。３〜５台を予定し、更に飛空艇にてトレーラーを誘導します。
　参加者のイコンもトレーラーに積載し、有事の際に外で戦闘を行います。
　礫砂漠を直走るので、かなり過酷な輸送となります。
　
●参加方法について
　イコンの有無関わらず参加出来ます。生身での参加も問題ありません。

●イコンでの参加について
　イコンによる参加の場合、イコンの特性に注意してください。
　イコンは二人乗りで100％の出力を発揮します。一人で操縦した場合、その出力は30％に低下します。
　また、イコンによる参加の場合、敵イコンとの戦闘がメインとなります。
　敵はシュメッターリングをリーダー機として、第一次輸送隊から奪った各学校のイコンに搭乗して、攻めて来ます。
　
●イコンなしでの参加について
　イコン非所持での参加の場合、幾つかの活躍場面があります。
　生身での戦闘、トレーラーの運転、飛空艇から輸送部隊への指令、敵の罠の発見、などです。
　敵も生身でのイコン略奪を画策していますので、それを防ぐのが主となります。
　特技やスキルを駆使して、略奪を阻止してください。（例えば、罠解除に《ピッキング》《トラップ解除》、トレーラーの運転には特技「運転」が必要です）
　基本はサンドモービルで襲撃してくる敵を倒すことに成りますが、生身でイコンと戦うことも可能です。ただし、相当な実力とレベルがないと勝てませんのでご注意ください。

　基本的には、バトルシナリオと思ってもらえれば構いません。ダブルアクションなどの禁則事項に注意して頂ければ幸いです。
　
　なお、ここで少しネタをバラしますと。
　今回設定した研究者、九品寺　Q策と敵のリーダーは元研究所の同僚であり、敵リーダーの妹が九品寺と恋仲です。
　しかし、敵リーダーの妹は、改良型イコンの試乗実験中の事故、以降消息不明となっている……。
　
　実はかなり黒いシナリオとなる可能性が有ります。それでも宜しい方はぜひ参加してください。


　最後に、3月11日の東北地震で被災および、何らかの災害、影響に見舞われた方。誠に大変だったかと思います。
　私は九州おり、幸い被害という被害は出ておりません。
　遠くながら、皆様の無事と、被災地の復興を願っております。
　また、このシナリオリアクションも出来る限り早く上げ、皆様の励みとなるようにしたいと思います。

・イコンで護衛に参加する。

・生身で護衛に参加する。

・輸送隊を指揮する