クリスマスも近くになったある日世間ではクリスマスムードに対し、空京にある雑居ビル内にある旅行会社では社員全員が浮かない顔をしていました。
この旅行会社の名前はパラミタ・トラベル・ツアーズと言い、小型結界装置の普及率が高まったことから、格安でシャンバラ各地へ旅行に行けるとここ最近噂になっている小さな会社です。
「……で、このデータの低さはなんだ? 十代〜二十代のツアー参加者が一番低いじゃないか!」
この日旅行会社内の会議室では、社員全員での戦略会議をしていた際の社長の一言に、新人の女性がどういうことだ。と問い詰められていました。
社員全員がスクリーンに写されている年代別の人数集計表を見つめています。その解説を手元の資料を見ながら女性――リュリネスはただ説明をしていたに過ぎません。
「社長、この年代は学生が多いと言う事であまり旅行に行く人はおりませんので……」
「それを解消するのが我が社ではないのかね?」
「それは、そうですが……」
社長にずけずけと言われて、リュリネスはお茶をにごしたような返事をするしかありません。
「では、リュリネス君。君に来年の我が社最初のツアーを企画してもらいたい」
「えっ!? 私一人がですか! 何故私なんでしょうか。ダクレス先輩やイラエット先輩のような人気の企画を発案する人が居るではありませんか」
ダクレスは『イルミンスール魔法学校内での鬼ごっこツアー』を企画し、イラエットは『ヴァイシャリーでのセレブ・お嬢様体験ツアー』を企画し、それぞれツアー参加者に好評を博していました。
リュリネスの言葉に社長はちらりと二人を見たが、すぐにリュリネスへと視線を戻します。
「たしかに、ダクレス君やイラエット君は今年一番人気になった企画を提出した。その時君はどう思ったのかね?」
「私も先輩達のようなツアー参加者に楽しんでもらえるような企画を提供したいと思いました」
リュリネスは、ゼロに近い数の年代別の十代〜二十代のグラフを見て呟きました。
社長はパチンッと指を鳴らしてリュリネスを指差します。
「一週間後の会議にて、君の企画を聞かせてもらいたい」
「ですが……まだ私は半人前ですので……」
「そういい訳をしていては、いつまで経っても半人前のままだ。半年が過ぎた今、君も成長する時だと私は思ったまで。一週間後を楽しみにしているよ」
そう言い残して、社長は会議室を出て行きました。
席に戻ったリュリネスは、その日からPCにかじりついて企画を作り始めました。
一週間後――
リュリネスは、プレ企画ということで「2022-2023 年末年始・弾丸初詣ツアー」を提案して来ました。
ツアー内容は、12月31日夜に各自所有の空飛ぶ乗り物に乗り空京に集まった後、シャンバラ大荒野にあるアトラスの傷跡山頂までレースを行い、山頂上空で日の出を見た後、葦原島にある妖怪の山の山頂にある神社で初詣をして帰ってくる。という企画です。
「初日の出を見た後、葦原島まで移動し、妖怪山の神社で来年の抱負を発表してもらい、おみくじを引いてもらいます。その後空京に戻って来てツアー終了となります」
リュリネスのプレゼンテーションを見た社長は、資料を見ながら軽く頷きます。
「ふむ。まだまだだが初めての企画にしては良いと思う。よし、今年最後の企画はこれで行こう」
こうして「年末年始・弾丸初詣ツアー」は同社サイトの企画欄に掲載されたのでした。