葦原明倫館

　――朝。ヒラニプラ地方のある街の一角にて、唐突に爆発音が響きました。

　何事かと驚き慌てて飛び出す住民の姿が……ありません。誰もが落ち着き払っています。
　テラスで座椅子に腰掛ける老人は「またブリーゲルの倅か」と呟き、読みかけの新聞に目を落としました。
　その姿を横目に高根沢　理子（たかねざわ・りこ）は肩をすくめ、爆発音の出処、『ブリーゲル工房』と書かれた扉を叩きます。

「はぁい……」
　もうもうとした黒煙を背に、煤まみれのツナギ姿の少女が扉を開けました。

「あ、リコっちさん！　お久しぶりですね！」
「さんは余計。近くに寄ったから顔を出してみたけど……リーナは相変わらず元気そうでなによりね」
「丈夫さが取り柄ですから！　すぐ片付けてお茶を淹れますね！」

　気を使わなくていいと遠慮する理子を、リーナと呼ばれた少女は嬉しそうに迎え入れます。
　彼女はアーティフィサー（機工士）の見習いで、理子はちょっとしたキッカケから懐かれてしまったのです。
　リーナは理子が代王であることは知りません。お忍びの外出中に出会ったので、今更説明するのもなぁと考えています。

「機工士の修行は順調？　って、訊いても良いのかしら」
「これでも最近はマシになってきたんですよぅ！　……でも、それも無駄になるかも」
「……どういうこと？」
「この前、ウチの土地を買いたいって人たちが来て――」


『こんな辛気臭い街は爆破解体更地にして最高にエンターテインメントな総合アミューズメントパークを建てるのですわー！
　おほほほほほほぇほっ、げほっ』
『素敵なお嬢さん。キミのような可憐な花が枯れゆくのは酷く悲しい。
　どうだろう、二人の未来について語り合うために夕食を招待したいのだが』


「――って。フリフリのお姉さんと変なお兄さんと、あとおっきくて無口なおじさんが」
「個性的な地上げ屋ね。リーナは今年で幾つだったかしら」
「今年で15歳ですねー」
「……まあいいわ。条件はどう？　ああ、土地を売るって話の方ね」

　リーナが取り出した書類には、そこそこ妥当な内容が書かれていましたが……

「でも、ここを売り払うつもりはない、と」
「はい。今は寂れちゃってますけど――先輩のお爺ちゃん達も、自分たちの街を壊したくなんてないって。私も、師匠から貰ったこの工房を離れたくないです」
「むぅ」

　この街は地下に遺跡が発見され、調査団が「成果の見込みがない」と放置した土地に、技術者が集まり作られました。
　遺跡を掘り進める内に防衛システムが動きだし、探索可能範囲は掘り尽くされ、見切りをつけた若者達は他の大きな街へ。
　感情的にはともかく、生活を保証する金銭が得られるなら、買収を断りきれる保証もありません。

「でも、師匠は遺跡の奥に、一番大きな隔壁の向こうには凄いお宝があるって！　掘り出せば、街を守れるかも！」
「昔から機工士たちが潜って無理だったんでしょう？　一人で何か出来るとは思わないけれど」

「けど、色々調べて隔壁の一つは開けられたんです。たどり着きさえすれば」
「警備ロボから逃げ回りながら？　流石に非現実的じゃないかしら」

「うぅ」
　リーナは悔しそうに俯きます。


「でもやれるだけのことはやりたい、か。……時間さえあれば隔壁のロックは解除できるのね？」
「え？」
「手伝ってくれる人を探しましょう。これでも顔は広いのよ、あたし」

　理子は悪戯っぽく微笑みました。

このシナリオでは、例えば

・理子から契約者たちに伝わった依頼を聞いて来た
・独自に情報を得て訪れた
・たまたま街に滞在していた

などといった状況からスタート可能です。
※ブリーゲル工房へ出入りしたことがあり、リーナたちと知り合いだったとすることもできます。
　地上げ屋に仕事を依頼された、などもＯＫです。

主に遺跡内部の探索、及び隔壁の向こうにあるという宝物の発見が目的となります。
遺跡内の地図は大きな隔壁にたどり着くだけなら、過去の記録が残っているため基本的にマッピングの必要はありませんが、より詳細に調査を行う場合は有効かもしれません。

隔壁の解除には機晶技術、あるいは電子的な知識が必要になります。
かなり分厚いので破壊には解除以上の時間がかかるでしょう。

三人組の地上げ屋たちは、探索を妨害するために遺跡内に現れます。
戦闘においては謎の手段にて持ち込んだアンズーを使用します。
遺跡内は崩れやすく狭いので、真っ当な手段でイコン等を持ち込むことはできません。
さらに遺跡内を警備ロボが徘徊しているので、機械の敵への対策が必要になるでしょう。

・カッコよく戦うところが見たい！

・他の人たちのサポートをします。

・ＮＰＣの手伝いがしたい

・遺跡に隠された秘密が気になる