こちらは1ユーザーにつき1アカウント、及び1アカウントにつき1キャラクター(1人格)限定シナリオとなります。
 ダークレッドホールの先。シャンバラではない、異空間。
 イコンで脱出ポットを抱えて、サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)は、橘 美咲(たちばな・みさき)から聞いた空が光った方向へ飛んでいました。
「人が集まってる?」
 モニターに地上にいる人造人間と思われる若者の姿をした人――光条兵器使いが映っています。
「ロボット型も、同じ方向に……あっ!」
 ロボットもまた、光条兵器使いと同じ方向に向かっていきます。
 そしてその先に、エアバイクのような乗り物を走らせている人物がいました。
 ロボット、光条兵器使いを振り切って、声をあげながらどこかに向かおうとしています。
「助けに来た、後少し、頑張れ!」
 スピーカーを利用してそう声をかけると、サビクは脱出ポットを地上へ下ろしました。
「早くこっちに!」
「威力は発揮できずとも、威嚇くらいには……!」
 脱出ポットの中からレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が飛びだし、エアバイクに乗っていた女性に手を振り、九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)が、キラークイーン(魔道銃)でロボット、光条兵器使いの行動を阻みます。
「白百合団所属マリカ・ヘーシンクです!」
 女性――マリカ・ヘーシンク(まりか・へーしんく)は大声を上げながら、敵を振り切って皆の方へバイクを走らせました。
 そして、バイクから飛び降りて皆の元へとジャンプしました。
「おかえりなさい!」
「無事でよかた!!」
 美咲とレキが抱き留めて、脱出ポットの中へマリカを運びました。
 ポットの出入り口が閉じられたことを確認してすぐ、サビクはポットを抱えて飛び立ちました。
 そして、人造人間のいない場所で再びポットを下ろして、マリカから話を聞き、樹月 刀真(きづき・とうま)が治療をしている、白百合団団長の風見 瑠奈(かざみ・るな)の下に向かったのです。
 瑠奈の状態はかなり悪く、鈴子が魔法での回復を試みても、意識は戻りませでした。
「体内の水分が著しく不足しています……!」
 すぐにローズが、点滴による薬と水分の補給を始めました。
 その間、付近に他に生存者がいないかどうか確認に回っていたレオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)と美咲は、人造人間たちの動きに、変化を感じ取りました。
「発見されても、近づいてこなくなったの」
「光条兵器を使う方々は、何処かに向かっているみたいです」
 それは川の跡地に隠れていた時に、光条兵器使いが訪れた方向と同じ方向のようです。
 荒野の門の前にて。
 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)を下ろすと、光条兵器使いは左手の方向へ去っていきました。
 小夜子は門の先で回復されてから、ここに戻されました。しかし、眠気はまだ残っていました。
「く……っ」
 敵に発見されないためにと、小夜子は必死に岩陰まで這って、岩を背に休もうとしたその時です。
「ママ! 愛菜を捨てないでーっ。愛菜いい子にしてるから。ちゃんとママの言うこと聞くからぁぁぁぁー」
 門の前から子供の声が響いてきました。
「ここはどこですか? エネルギーって何のことですか?」
 愛菜という幼子を抱きしめながら尋ねたのは、白百合団班長のヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)でした。
「ダークレッドホールの先の世界です」
 共に現れた藤崎 凛(ふじさき・りん)が辺りを見回し、青ざめた顔つきで言いました。
「エネルギーの世界なの。ママたちは、コントラクターの地球人のエネルギーを百合園をドーンする力に使うの!」
「先ほどの、30代くらいのヴァルキリーの女性が、ママなのですか? 種族も違うようですが……」
「血はつながってないけど、愛菜のパートナーでママなの。ママなのー!」
 凛の言葉に愛菜はそう答えて、大声で『ママ、ママ』と泣き叫び続けます。
 30代くらいのヴァルキリーの女性――。
 小夜子の脳裏に、うっすらとその姿は残っています。
 殆ど意識のない状態で、連れて行かれ回復を施され、そしてここに戻した女性が、多分30代くらいのヴァルキリーの女性でした。
「いけない……!」
 小夜子は頬を叩いて、眠気を追い払い3人の下に行こうとします。
 それが本当なら。門から連れて行かれた場所にいると思われる、ゼスタ・レイラン(ぜすた・れいらん)、リン・リーファ(りん・りーふぁ)、牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)が、ヴァルキリーの女性と戦うことになるかもしれません。
 この劣悪な環境下でパートナーロストに陥ったのなら、成人であっても死は確実です。
「……」
 それともう一つ、怖い事、に気づきます。
 この子に『もしもの事』があった場合、あの人造人間たちを操る――恐らくは絶大な力を持つと思われるヴァルキリーの女性が、大きなダメージを受ける、ということに。
 門の前がパッと光り、再び人々が姿を現しました。
「ボク達が捕まっていた、お家の中にいた人です」
 ヴァーナーが愛菜を抱きしめつづけながら言いました。
 現れたのは、シャンバラで行方不明になっていた人々でした。
 そして。
 そのエネルギー世界にいる者達は、貧血のような症状に襲われ始めました。
 体の中のエネルギーが、急激に奪われていきます。
 同時期。
 シャンバラから、白百合団員のシスティ・タルベルトがリーダーを務める救護艦が出発し、ダークレッドホールに突入しました。
 その少し後。ダークレッドホール――タシガン空峡に存在した赤黒い渦は前触れもなく消滅しました。
○     ○     ○
 百合園女学院の会議室では、会議が行われていない時にも、白百合団員や関係者、協力者が集まり、情報の取りまとめや意見交換が行われています。
『優子お姉さま、大変です……!』
 
神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)の元に、
崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)の行方を探っていた
桜月 舞香(さくらづき・まいか)から連絡が入りました。
『崩城さんの反応があった辺りの地下から、大きな砲台が現れました。アルカンシェルに似た形です。その砲身が向けられている先が、ヴァイシャリーの方向のような気がするんです!』
「わかった、地図と映像を送ってくれ。亜璃珠はそこにいるんだな?」
『はい、微弱ですが反応があります。動きはありませんので、この辺りの地下に何かがあるようです」
 舞香は報告をしながら、場所に印をつけた地図と、写真データーを優子に送りました。
 優子はすぐに、地図と写真をプリントアウトし、白百合団副団長の
ティリア・イリアーノ、
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)、教師の立場にある
祥子・リーブラ(さちこ・りーぶら)等と共に確認をしていきます。
「古代の兵器、でしょうか……現在の兵器で対抗できるのでしょうか」
 見たこともない兵器の姿に、ティリアも、白百合団員達も恐怖を感じざるを得ませんでした。
「上部が光っているわ。エネルギーチャージに関係ありそう?」
 注意深く写真を見ながら、祥子が言いました。
「……ティリア、イコンを数機出せるか?」
「はい。
ネルソン班長が動けると思います。……兵器の破壊が目的でしょうか?」
「緊急事態に備え配備をしておくことと、付近の『基地局』を破壊できるよう準備しておくことが目的だ」
 己の思想を正義と信じ、シャンバラの人々を混乱に陥れようとしている者達がいるのです。
 今を生きる一般の人々に真相を知られることなく、この事件を治めること――それは、この事件を知ってしまった者の使命なのです。
○     ○     ○
 床に大きな魔法陣が描かれた、窓もドアもない部屋にて。
 青みがかった黒髪。青色の瞳のヴァルキリーの女性が、魔道書を手に呪文を唱えています。
 彼女の指には、いくつのも重厚な作りの指輪が嵌められています。
「長く長く生き延びて足掻き続け、エネルギーを生み続けてちょうだいな」
 くすり、と女性は笑みを浮かべました。