空京大学

　百合園女学院の校長室では、生徒会メンバーを交えて毎日会議が行なわれています。
　クリスマスが近付いた今日も。
　ここ、ヴァイシャリーにはシャンバラ古王国時代、シャンバラの離宮があったといわれています。
　ヴァイシャリー家の祖先に仕えていた６人の騎士の１人であるソフィア・フィリークスという女性によると、離宮はヴァイシャリーの地下に封印されているようです。
「離宮が地上に戻ったら、街に被害が出るかもしれないんだよね！？」
　校長の桜井静香（さくらい・しずか）の言葉に、集まった生徒会メンバー達が頷きました。
「でも、そのままにしておいたら、それを利用して鏖殺寺院がヴァイシャリーに危害を加えるかもしれないし。どうしたらいいんだろう、どうしたら……うーんうーん」
「静香さん、少し黙ってて下さいませ」
「う……ゴメンナサイ」
　悩む静香に、ラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）がグサリと言いました。静香は問題点を鸚鵡返ししているだけで、何の解決案も出せずにいたのです。
「その件は、調査隊にお任せ下さい。封印は６箇所にある封印全てを解かなければ離宮の復活には至らないようですし、調査と平行して封印を解きに回ることにいたします。ただ……」
　生徒会執行部、通称白百合団の団長桜谷　鈴子（さくらたに・すずこ）はこう言葉を続けました。
「封印を解くには封印を施した騎士達６人それぞれの協力が必要なようです。まだ眠っておられるカルロ様、ジュリオ様の封印は後回しにいたしますが……ファビオ様の封印を解く方法があるかどうかは、今のところ分かっていません」
「それから例の『組織』ですけれど、キマクで人員の募集をしていたようですわ。……教導団にもお訊ねしたところ、優子さんが攻め込んだあの空京の組織とも何か関係があるようですわ」
　ラズィーヤが白百合団副団長神楽崎　優子（かぐらざき・ゆうこ）を見て微笑むと、優子は軽く眉を顰めました。
「白百合団員を誘惑し情報を得ていたようですから、彼等は百合園の情報を得る必要があったのでしょう。百合園内にも彼らの手の者が潜入していないともいえません。各地で発生している誘拐事件のいくつかも、その組織の仕業と思われます。そこで提案なのですが……」
　鈴子は、皆を見回して言いました。
「白百合団の研修、野外ボランティア活動、他校との交流親睦会とでも称して、学校外活動を増やさせてはいただけないでしょうか？　騎士達の封印は各地でなされているようですし、その近くに宿泊し、毎月１週間ほどの百合園生の課外活動を行ないます。封印解除と……囮になるために。私達百合園の生徒は彼等にとって価値のある存在だと思いますから」
「それなら、僕が皆を率いるよ。白百合団だけじゃなくて、百合園生の活動とした方が、警戒されないと思うし……うん」
　頭脳でも武術でもあまり役立てない静香だけれど、確かに校長である静香が同行したのなら組織の関心を惹くかもしれません。
「ええ、行ってきてくださいませ」
　ラズィーヤはあっさりと賛成しました。
　なんだか、少し邪魔と思われてそうな……などと思いながらも、静香は首を強く縦に振って、決意を固めました。

「ただいま」
　昆虫の羽のような羽を生やした女性――マリルがヴァイシャリーの北、ミルミ・ルリマーレン（みるみ・るりまーれん）の家の別荘跡地に戻ってきました。
「遅かったじゃない！　で、どうだった？」
　子供達の世話をしていた双子の妹のマリザが急ぎ駆け寄って尋ねました。
　マリルはまず首を左右に振りました。
「詳しい話はあとで。ジュリオの子孫は話の分かる人達だったわ。娘さんが、通っている百合園女学院の生徒達と一緒に物資を持って遊びに来てくれるそうよ。２５日頃に」
「いや、その娘はちょっと問題なんじゃ……」
　マリザは凄く嫌そうな顔をしました。
「ふふ。楽しい年末になりそうじゃない」
　マリルは水辺で遊んでいる子供達を見ながら、微笑みを浮かべました。
　別荘跡地には、新たな建物が建てられています。
　その一部は既に完成しており、宿泊が出来るようになっていました。
　マリザは子供達と一緒に別荘の部屋を借りて暮らし始めようとしています。
　周辺を農園にするための作業も行なわれています。

こちらのシナリオは、百合女学院のキャンペーンシナリオです。
百合園女学院のＰＣが抽選で優先されますが、他校の方も歓迎いたします。但し囮行動でもあるため、警戒がされています。顔を隠していたり、身分の証明が出来ない方が百合園生に混ざることは不可能です。
これまでの話は特に気にせず、ほのぼのと百合園の課外活動を楽しむことを目的にご参加いただいて構いません。
こちら闇組織編は後半まで単発風になっております。後半に向かってシリアスになっていきます。参加したい回だけのご参加でも大丈夫です。
闇組織を追っていくことや、闇組織側として活動することを目的とする方は、１回１回の積み重ねも大切になってきます。

尚、百合園女学院キャンペーン『嘆きの邂逅』は２分割となっており、こちらの闇組織編１回にご参加された方は、１月中旬〜下旬頃ガイド公開予定の離宮編１回（シリアス、難易度高）にはご参加いただけません。ご了承下さい。

【時期、流れ】
クリスマスから年明けまでの話になります（クリスマスイブの行動は他マスターのシナリオでどうぞ）。
物資を沢山持って、ルリマーレン家の別荘に差し入れに行きます。ご提案があれば、クリスマスパーティなどを行なうこともできます。
子供達の世話を百合園生に任せて、静香、鈴子、白百合団員、神楽崎分校役員、他校の協力者達はマリル、マリザと会議を行ないます。
別荘の地下に施してあるマリザの封印を解きます。
年末まで子供の世話や農園作り、家畜の世話を手伝います。
用意してくれる方がいたら、年越し蕎麦を食べて年を越しましょう。
初日の出を見て、新たな誓いと抱負を語り合います。
その他、友人や恋人と楽しく過ごすシーン（入浴とか寝室とか）をご希望戴いても構いません（事件が起こらないとは限りませんが）。
純粋な恋愛はＯＫですが、猥褻行為は禁止です。

【施設、状況】
別荘と厩舎はほぼ完成しています。その他は建設中です。
農園の整備が行なわれており、多少作物を育てられるようになっています。
キマクの農家の家族が指導に訪れています。
葉物野菜はそろそろ収穫できそうです。
家畜は現在馬と鶏だけ飼われています。

【同行予定ＮＰＣ】
桜井静香（百合園女学院校長）
桜谷鈴子（白百合団団長）
ミルミ・ルリマーレン（鈴子のパートナー。６騎士ジュリオ・ルリマーレンの子孫）
ラザン・ハルザナク（ルリマーレン家執事）
美しきマリザ（６騎士の１人。ルリマーレン家の別荘の地下で眠っていた）
麗しきマリル（６騎士の１人。ルリマーレン家の別荘の地下で眠っていた）
ミズバ・カナスリール（白百合団員）
アユナ・リルミナル（６騎士の１人ファビオと接触したことがある）
（瀬蓮やアイリスを誘っていただいても構いません。ラズィーヤ、他の生徒会役員は来れません）

リアクションでの描写は原則１ＰＣ１シーンです。状況によって複数シーンに登場する方もいるとは思いますが、アクションは原則１つの事柄への行動にして下さい。
ＬＣはなるべくＭＣと一緒に行動してください。但し、同じ事柄へのアクションであり、行動が繋がっていれば別行動も出来なくはありません。

今回のシナリオの舞台はこの別荘一帯のみです。別の場所や皆が行く日以外の日という独自設定行動はどうかご遠慮下さい。
例外として、闇組織への接触方法を持っている方（リアクションや交流等で）は、闇組織絡みの行動をとっていただいて構いません。

【闇組織に絡みたい方】
こちらのシナリオの闇組織は凶悪な組織であるため、闇組織側の行動はＰＬの負担も大きくハイリスクです。
悪役として立ち回り物語を盛り上げて皆を楽しませたいという心意気のある方は大歓迎ですが、軽い気持ちで潜入や、荒し的な悪事をしたいという理由での闇組織側への関与に関しては、色々な意味で残念な結果になる可能性が高いです。ご参加、ご行動は慎重にご検討下さい。

闇組織関連の攻略を目指す方は、参考として
・【慟哭】闇組織を討て
・狙われた乙女〜ヴァイシャリー編〜
・嘆きの邂逅〜聖戦の足音〜
は、ご確認いただければと思います。〜別荘編〜は判定が特殊な為、判定の参考にはしないで下さい（簡単に敵の中に入り込めることはありえません）。
敵側にも契約者がおり普通にスキルも知っていますので、例えばピッキングで手に入れられるようなところに情報が転がっていたりはしません。

イラスト（静香と百合園生。背後に黒い影）：Pino絵師
可愛く描いてくださり、ありがとうございました！

次の川岸のシナリオガイドは１月３日頃公開予定です。離宮編の前に神楽崎優子と共に新年の挨拶回りをする話でも行なえたらと思っています。
（こちら闇組織編１回で分校役員が正式に決らなかった場合（辞退があった場合含む）はこの新年のシナリオでＮＰＣが就任に至ります）

・クリスマスパーティをしよう！

・初日の出を見る

・農園でバイトする

・裏稼業バイトを行なう