リアクション
○ ○ ○ ○ その日のヴァイシャリーの歓楽街はいつもより賑やかだった。 クリスマスを数日後に控えて、人々は浮き立っており、笑顔が溢れていた。 「そう、女達にぶっつぶされた廃屋を拠点としてた組織のアジトを探してるんだ」 パラ実のナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)は、浮かれる人々に声をかけていた水商売の女性に尋ねる。 ぶっつぶされた廃屋とは、白百合団の神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)率いる集団の、早河綾救出作戦により潰された組織の拠点のことだ。 その後、早河綾の自宅が襲撃に遭っていることから、組織のメンバーはまだこの街にも潜んでいると思われる。 「知らないわぁ〜。危ないことが好きなのね。私も若い頃は色々無茶したのよぉ〜。ふふふ、危険な香りのする子は好きよ。どぉ? 寄っていかない〜? 女の子も大歓迎よぉ。そっちの子も是非ぃ〜。お姉さん、サービスするわよぉ」 「いや、また今度な。組織の情報が入ったらナガンまで連絡くれよ」 ポンと女性の肩を叩いて、ナガンはパートナーのクラウン ファストナハト(くらうん・ふぁすとなはと)と共に、更に歓楽街の奥へと進むことにする。 ――と、その時。 突如響いた発砲音。続いて感じた激しい痛み。 ナガンの脇が血に染まる。 咄嗟に避けたことと、強化スーツを着込んでいたことから、心臓を撃ちぬかれはしなかった。 ナガンとクラウンは即座に路地へと駆け込む。 水商売の女性や通行人達が悲鳴を上げて建物の中へと逃げ込んでいく。 続け様に銃声が響き、路地の中に弾丸が飛ぶ。 足音が響き、黒い服を纏った男2人が銃を構えて顔を出す。 「よっと」 ナガンは助走をつけて跳び、現れた男の頭にバットを叩き込んだ。 「そこまでじゃん」 もう1人の男には、クラウンがチェーンソーを突きつける。 「鉛弾、美味しかったぜぇ。てめぇら見たいな小物じゃなくて、ナガンは幹部に興味があるんだけどな。教えてくんない?」 バットを叩き込んだ相手は気絶している。 ナガンはもう1人の男の胸倉を締め上げ、クラウンがチェーンソーを男の首に近づける。 「ひっ」 男の顎が軽くチェーンソーに触れ、血が弾け跳んだ。 「か、金で雇われただけ、だ」 男が銃を落とし両手を上げた。 「動くな!」 途端、声が響く。 ヴァイシャリーの警備兵だった。 「動くなって言われちゃ、動かざるを得ねぇな〜」 ナガンは男に蹴りを入れて離し、クラウンと共に突破を図る。 ヴァイシャリー軍に指名手配されているナガンだが、組織への裏切り、攻め込み、そしてこの聞き込みにより組織にも目をつけられているようだ。 ○ ○ ○ ○ 『集合場所で一悶着有ったらしい』 『爆音が轟いた後、事態は収拾』 『目的は不明だが、人手を要している』 それから、大した情報がつかめなかったことのお詫びと、何かあった際にはメールを下さいと桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)にメールを送った後、蒼空学園の桐生 ひな(きりゅう・ひな)はふうと溜息をついた。 「にゃんか戻ってきてから目の色が変わってるんじゃが」 パートナーのナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)がひょこっとひなの顔を覗きこむ。 「私、あの組織に入ることにしました」 「にゃんと」 ひなの言葉に軽く驚きはしたものの、ナリュキは止めはしない。 歩き出すひなについていきながら、ナリュキは携帯電話を取り出した。 「ちと2名程、携帯でコンタクト取っておくとするかの」 送信先は亜璃珠と黎明。 状況説明と揉みに行くのが遅くなるとか、何か有れば揉みに来るが良いとか、そんなメールだった。 |
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