シナリオガイド
赤色の招待状。動けない二人。カーニバル六日目の行方は――
シナリオ名:星影さやかな夜に 第二回 / 担当マスター:
小川大流
「人喰い勇者ハイ・シェンは、我らプレッシオの民にとって紛うこと無き勇者だ。
しかし、それ以上に……いつの日か時計塔が動き出さないためにも、プレッシオに祭りは必要だった」
人喰い勇者ハイ・シェンの生誕祭の由来 最終章「生誕祭の必要性」より抜粋
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自由都市プレッシオ。
その街はシャンバラとカナンの間に位置する孤島にあります。
カナンに属してはいますが、立地などの関係のためか、かつての自然災害の影響も少なく、また、古くから自立性が非常に強くもありました。
過去に、この街独自の「王」も存在していたほどです。
都市の「悪王」からの独立を記念して、街の中央に建てられた動かない時計塔プレッシオ。
街外れの野原に咲き乱れた一面の鈴蘭畑。数百年前、自由都市プレッシオを悪王の圧政から解放させた人喰い勇者ハイ・シェンの伝説。
時の流れに取り残され、歴史のある建築物が色濃く残るこの街は、別名御伽の街と呼ばれ観光業により繁栄していました。
そんなこの街で、一世一代のカーニバルが行われようとしています。
一週間にかけて行われるその催事は、人喰い勇者ハイ・シェンの生誕三百年を祝うためのものです。
お陰で自由都市プレッシオは昼夜活気に溢れ、町民はこれから起こるであろうお祭りに想いを馳せて、せわしなく準備を進めていました。
しかし、その裏。
騒がしい日常に包まれたこの街の暗部で。
ゆっくりと、けれど確実に。
悪意と憎悪がこの街を侵し始めていました。
カーニバル、六日目の早朝
特別警備部隊の詰所に一通の封筒が届きます。
封筒の色は鮮烈な紅色。リーダーである李 梅琳(り・めいりん)は封を切り、中から赤色の一枚の便箋と写真を取り出しました。
「……っ」
梅琳は写真を見て、美しい瞳を大きく見開けました。
便箋の文面は以下の通り。
組織に囚われた少年・少女はあと六人います。彼らが写真の死体と同じ道を辿るのも時間の問題でしょう。
しかし、そんな不幸で哀れな子供達を救う術が一つだけ、あなた方にはあります。
それは強奪戦です。カーニバルの六日目を丸一日かけて、『我らコルッテロと特別警備部隊の皆さんで力づくの奪い合い』を行いましょう。
強奪戦の参加をお考えならば、ルールをよくお読みのうえ、指定された日時に下記の住所までお越しください。心より、お待ちしております。
コルッテロ首領 アウィス・オルトゥス
つまりは、招待状というわけでした。
参加資格があるのは、特別警備部隊に所属する面々のみ。武器の持ち込みは自由。通信機器は不可。
他言無用。他の組織に報せた、もしくは知られた場合は、その時点で失格。場所はコルッテロのアジトがある街の最南端全てが会場。
勝敗のルールは至極簡単。
参加する特別警備部隊の面々と同じ数をコルッテロが用意し、日付が変わった時点で多く生き残っていたほうの勝利。
「ふざけるな……っ」
梅琳は怒りに駆られ、その招待状を握りつぶします。
その瞳に写るのは怒り、そして子供を食い物にする犯罪結社への嫌悪でした。
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彦星明人とリュカは合流した契約者と共に路地裏の廃墟で休息をとっていました。
それは五日目の未明にリュカが積もりに積もった疲労が仇となり、高熱を出して倒れてしまったからです。
「…………」
リュカはぼろぼろのソファーに横になって、静かに寝息を立てています。
明人はその隣で水を含ませたタオルを絞り、彼女を起こさないよう丁寧に顔の汗を拭いてあげていました。
「……リュカ」
明人は小さな声で彼女の名前を呼びました。
先ほどまで高熱によって苦しそうに呻き、顔も真っ青になっていました。
しかし、彼女は首に下げた『幾学模様が刻まれた機晶石のペンダント』を手で握ったまま、決して離しませんでした。
それは『計画の鍵』であり、リュカにとって命よりも大切なモノの一つです。
『わ、私はプレッシオを守りたいの』
それが彼女の願い。
『うん……これは、亡くなった親友達との約束だから』
それが彼女の望み。
『えっと、その……こんなこと、無駄なのかもしれない。
……でも、私がカーニバルの期間を逃げ続ければ、最悪でも計画だけは破綻させることが出来るの』
それが彼女の決意。
「…………」
明人はリュカと初めて出会った日の夜に言われたことを思い返しました。
自分よりも年下で、小さくて。けれど、強大な敵に立ち向かう意思を持っていて。
守ってあげたい、と明人は思いました。強く、思いました。
(……けれど、どうだ? あの時、あの人達が来なければ、僕達は多分今ごろ――)
明人は自分の無力さを痛感して、悔しそうに掌を握り締めました。
そして、明人は自分の想いを小さく復唱します。それは、踏ん切りをつけるためです。
「……自分はこの子を守る。どこの誰が来ようと、必ず守る」
明人は人知れず、覚悟を決めました。
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「きゃは、きゃはははははははは……」
朝日を迎えたプレッシオの街。
街並みを睥睨する動かない時計塔の頂上。鋭角な屋根を張った塔の頂上には巨大な鐘楼の傍ら。
赤色の光を浴びる街を眺めながら、ヴィータ・インケルタ(う゛ぃーた・いんけるた)は嗤っていました。
「楽しみねぇ。これから、最悪のゲームである六日目が始まるんだから」
ヴィータは笑みを称えつつ、巨大な鐘楼をコンと軽くノックします。
地上には届かない、小さい清らかな音色を耳にして、ヴィータは唇に手を当てました。
「これが第二幕の合図。『ハイ・シェンの再誕』のハジマリの鐘よ」
ヴータはきゃは、と噴出します。
「さぁ、救いようのない御伽の街に」
ヴィータが朝日を見上げ、両手を広げました。
「人喰い勇者を呼び込みましょうか――」
ヴィータの声が朗々と響きます。
世界を呪うように。そして、祈りのように。
端正な唇は、自らの言動を笑うかのように歪んでいました。
担当マスターより
▼担当マスター
小川大流
▼マスターコメント
このシリーズの扉絵は須藤怜さんに描いていただきました!
こんにちは。初めましての方は初めまして。小川大流です。
星影さやかな夜に 第二回です。前回は こちら となります。
一回目で集めていただいた様々な情報や事柄を参考に、このシナリオに挑んでいただければと思います。
もちろん、今回からの参加も歓迎でございます。お待ちしております。
また、今回は私の以前のシナリオで登場したキャラクターが再登場します。
しかし、そのシナリオに参加していない方、内容を知らない方でも全く問題ありません。該当シナリオ参加、という点だけで判定が特に有利に働くということもありません。
また、今回のシナリオはカーニバル六日目となります。今回は事前に行動していた、というアクションは不可です。六日目だけとします。
最後に、アクション次第では悲しい結末が待っているかと思います。ご覚悟ください。
ここからはシナリオガイドに書かれていない補足情報になります。
また、前回までに登場したキャラクター、情報については割愛させて頂きます。お手数をおかけしますが、前回のシナリオガイドをご覧ください。
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▲現在の状況
特別警備部隊→明人とリュカの捜索のほかに、新たな問題が出現。二手に分かれる予定です。
コルッテロ→変わらず計画を進行中。
ゲヘナフレイム→ゲヘナフレイムは全滅しました。生き残りはルベルだけです。
ラルウァ家→三人衆が登・場! 彼らの情報は下記に記載します。
●特別警備部隊
今回は、強奪戦に参加するメンバーとリュカと明人を保護するメンバーに分かれます。
強奪戦には、李梅琳と煤原大介。
リュカと明人の保護には、アルマ・ウェルバが向かう予定です。
さすがに危険なため、フランは運営の医療スタッフのお手伝いをするようです。つまりはお留守番です。出番はないかもしれません。
●コルッテロ
特別警備部隊と同じく、強奪戦に参加するメンバーとリュカと明人を奪取するメンバーに分かれます。
強奪戦には、ルベル・エクスハティオとストゥルトゥス、ニゲル・ラルウァ、アルブム・ラルウァ、(捕捉分に腕に覚えのある構成員)。
リュカと明人の奪取には、ヴィータ・インケルタ、コルニクス、ルクス・ラルウァが向かう予定です。
アウィス・オルトゥスは、高みの見物をしているかもしれません。六人の子供が囚われているのは、コルッテロのアジトの倉庫です。
◆強奪戦の会場
プレッシオの最南端。観光名所の集まる中央部から外れ、後ろ暗い雰囲気のただよった場所です。
市街地ですが、使われていない無人の建物が多くあります。また、人通りは全くといっていいほどありません。
コルッテロのアジトは、街の最南端の風景とは似つかわしくない、高級ホテルのような高層の建物です。
◆リュカと明人を追う場合
リュカは非常に衰弱しています。それは動けないほどです。
よって、今日一日リュカは休息する路地裏の廃墟から逃げられません。
その廃墟は今や見る影もありませんが、礼拝堂のようなものだったようです。廃墟の外か大広間が戦闘に適しているかもしれません。
リュカと明人が居るのは、大広間の隣の部屋である小さな応接間です。
リュカを守るために廃墟で迎撃するか。それとも、計画の鍵を持ち出して逃げるか。それとも、リュカを見捨てるか。
コルッテロのメンバーは計画の鍵を狙うでしょうし、裏切り者のリュカをそのまま放っておくとは思えません。
判断は、皆様にゆだねます。
■ラルウァ家のNPC
※??はまだリアクションで判明していないものです。
ニゲル・ラルウァ
二十九歳 男性
種族:?? クラス:ラセツ(羅刹)
ラルウァ家の一員です。称号は【百鬼夜行】です。
今回、この街にやって来ているラルウァ家のメンバー内ではリーダー的存在のようです。
性格は兄貴分。身内には甘く、それ以外には厳しいです。また、風靡を愛し、風流に通ずるようです。
アルブム・ラルウァ
十九歳 女性
種族:?? クラス:??
ラルウァ家の一員です。称号は【棺姫】です。
大きな棺桶を担ぐ、小さな少女です。棒読みの英語をよく使います。
性格はゆるいです。ですが、仕事には誇りを持っていて、仕事に関しては非常に合理的で、思考と行動に遊びはありません。
ルクス・ラルウァ
二十三歳 男性
種族:守護天使 クラス:??
ラルウァ家の一員で、去年ラルウァ家になった人物です。称号は【??】です。
ベリタス・ディメントの弟であり、主義も主張も信念もない理性の壊れた殺人狂です。制御の利かない凶暴さから、ゲヘナフレイムからも追放された過去を持ちます。
性格にはかなり問題はあるものの、実力主義のラルウァ家にとっては特に問題はないようです。
■NPCの武器について
リアクション内で描写したNPCの武器を以下に書きます。
バトルの戦法を考える材料になれば幸いです。また、特別警備部隊のNPCとアウィスを除くNPCは、それぞれ固有の武器を所持しているかもしれません。
《悲姫ロート》
持ち主はルベル・エクスハティオ。
真紅の槍。刃は常に炎を纏っていて、炎の大きさは使用者の感情によって左右されます。
《断罪者ギロチン》
持ち主はニゲル・ラルウァ。
何の飾り気もない長刀。効果はまだ判明していません。
■その他のNPC
ベリタス・ディメントは死亡しました。しかし、死体はニゲルに回収されたようですが……。
イグニートは孤島の縁でうたた寝をしているでしょう。しかし、背中の集落は全壊しているようですが……。
▼サンプルアクション
・特別警備部隊として行動
・コルッテロに雇われた傭兵として行動
・情報収集を行う。
▼予約受付締切日
(予約枠が残っている為延長されています)
2012年10月04日10:30まで
▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)
2012年10月05日10:30まで
▼アクション締切日(既に締切を迎えました)
2012年10月09日10:30まで
▼リアクション公開予定日(現在公開中です)
2012年11月13日