それはとてもよく晴れたある日のこと。
いつもと変わらず賑わっているミス・スウェンソンのドーナツ屋、通称ミスドに、一人の男性が飛び込んできました。
「た、大変なんです! 誰か、助けてくださいっ!!」
慌てた様子の男性は、店内にいる学生や冒険者たちを見ると言いました。
「巨大化したダンゴムシが、逃げてしまったのです!」
彼の名前は八森古閑根(やもりこがね)。好奇心旺盛な生物学者です。
八森博士の話によると、飼っていたパラミタサルヴィンダンゴムシが突然変異を起こし、巨大化してしまったとのこと。
その大きさは最低でも20メートルはあるらしく、人々に被害が及ぶ可能性があります。
「全部で6匹いて、それぞれ、つがいで飼っていたんだ」
分かりやすく色を塗っており、シアン・マゼンタ・イエローの三色です。
「だけど、今朝目覚めたら研究所が破壊されていて、慌てて探しに行ったんだけど……」
厄介なことに、ダンゴムシたちはバラバラの方角へ逃げ出していました。
シアンのつがいは蒼空学園のあるツァンダの方へ。
マゼンタのつがいは百合園学院があるヴァイシャリーへ。
イエローのつがいはシャンバラ教導団のあるヒラニプラへ。
八森博士は、今にも泣き出しそうな顔で頭を下げました。
「もちろん僕も行きますので、どうか協力してください! お願いしますっ!」
注意
パラミタサルヴィンダンゴムシはその名の通り、サルヴィン川周辺に生息するダンゴムシのことです。
このダンゴムシは陸だけでなく、水中でも生きられます。
普段はダンゴムシらしく、のらりくらりと生活している生き物です。
しかし、危険が迫ると身体を丸めて防御をします。これだけなら普通のダンゴムシなのですが……。
彼らは丸まった状態で敵にぶつかっていく習性があるのです。
水中にいても同じように攻撃してきます。泳ぎも上手なので、水中戦は避けた方がいいでしょう。
八森博士の研究実験について
パラミタサルヴィンダンゴムシはどこまで知能が上がるのか、実験をしていました。
特別な薬を与えたり、独自に考え出した訓練を行ったりです。
その結果かどうかは分かりませんが、それぞれ特徴があります。
シアン
もっとも体が大きく、攻撃的な上に餌を大量に食べる。
マゼンタ
おっとりしているが気まぐれで、何をするか分からない。
イエロー
もっとも賢く、危険を察知するのに長けている。
つがいで飼っていたのは、次の世代に親を超える知能を持った子が生まれるかもしれない、と考えた為です。
そうして実験を繰り返せば、芸を覚えるダンゴムシが出てくる可能性だってあります。
八森博士はそれを夢見て、今回のような研究実験を開始したのでした。
ですが、つがいなだけに、もしかすると卵を産んでいるダンゴムシがいるかもしれません。
その場合は酷ですが、卵もろとも退治するしかありません。
彼らが街へたどり着く前に、各学校に被害が及ぶ前に、ダンゴムシたちを倒しましょう!