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リアクション
0.騒動の始まり
大きな体で地面を進む二つの影――殻をシアン色に塗られた、パラミタサルヴィンダンゴムシのオスとメス――は、着実にツァンダへと近づいていた。
今にも平穏を破壊しようとする彼らの前に、一人の勇者が現れる。
「ここから先には行かせないぜ!」
高い木の上から地面へと着地し、ダンゴムシの前へと立ちはだかる。
「正義のヒーロー、ケンリュウガー!」
と、ダンゴムシ以外に見る人もいないのに決めポーズを決めた。毎度おなじみ、ケンリュウガーの姿になった武神牙竜(たけがみ・がりゅう)である。
突然現れたケンリュウガーに、ダンゴムシたちは歩みを止めていた。
「それでマスター、どうするつもりです?」
と、加勢するように後ろへ立ったパートナーの重攻機リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)がケンリュウガーへ問う。
「合体だ」
「え? しかし、それは……」
ダンゴムシを睨みつけているケンリュウガーを見て、リュウライザーは言葉を飲み込んでしまう。彼は本気だ。
「ツァンダを、みんなを守るためなら、それしかないだろう」
「マスター……。そうですね、やってみましょう」
ケンリュウガーはカードへ手を伸ばす。合体の成功する確率は5万分の1といわれていた。
退屈そうにダンゴムシたちが見守る中、ヒーローはカードを引いた……!
「「フォーメーション・ユニオン」」
雲間から顔を出した陽光が二人を眩しく包み込む。機械のぶつかりあう音がしたかと思うと、再び太陽が雲の上へ隠れた。
「「グレート・ケンリュウガー!」」
それはかつて見たことのないヒーローの姿だった。二人が合体したのは良いが、それは期待を大きく裏切っていた。何故なら、ケンリュウガーがリュウライザーをおんぶしているだけだからだ。
「行くぞ! グレート・ケンリュウガーの力を思い知ら、せ……」
その重さに耐えきれず、ケンリュウガーが地面へ膝をつく。直後、乗っていたリュウライザーに押しつぶされ、動けなくなった。
リュウライザーが呆れたように言う。
「やっぱり、ダメでしたか……」
そしてダンゴムシたちは二人を無視して前進していくのだった。
ミスドでは騒動の元凶、八森古閑根(やもりこがね)がパニクっていた。
「協力するから、エサをもらえませんか?」
と、ピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)が八森博士へ歩み寄る。
「え、エサ!? えっと、そうだな……なんでも食べるから、うーん」
そう言って八森博士は悩みだした。どうやら、何も持ってこなかったようだ。
「俺も、エサ欲しいんだけど」
と、天城一輝(あまぎ・いっき)も言う。
「……そうだ! ドーナツがあるじゃないか!」
八森博士の大きな声に、オーナーのヨハンナ・スウェンソンが目を丸くする。
「そんなもの、本当に食べるんですか?」
と、それまで様子を見ていたマーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)が席を立った。
「食べるよ! 本来のサイズなら食べきれないだろうけど、今なら全然小さいから!」
のんびりとドーナツを食べていた春夏秋冬真菜華(ひととせ・まなか)は、それを聞いて手を止めた。ドーナツはまだ、半分ほどある。
「それじゃあ、ドーナツください」
「百個ほど」
ピクシコラと一輝が八森博士へそう頼み、真菜華は残りのドーナツを紙に包んだ。
「他に特徴は?」
と、店にあるだけのドーナツを買い占める八森博士へ、マーゼンが質問をする。
店員たちが慌ててドーナツを作り始めるのを横目に、真菜華は一人、店を出た。
数十分後、ヒラニプラ周辺の空を宇都宮祥子(うつのみや・さちこ)は飛んでいた。まだこちらには辿り着いていないらしく、いつもと変わらない穏やかな景色だ。
国頭武尊(くにがみ・たける)とルイ・フリード(るい・ふりーど)は、ヴァイシャリーの空を飛んでいた。陸だけでなく、水中にもそれらしきものが潜んでないかと目を凝らす。
ツァンダ周辺には支倉遥(はせくら・はるか)、御厨縁(みくりや・えにし)とラウラ・モルゲンシュテルン(らうら・もるげんしゅてるん)が飛んでいた。侵入経路として考えられる東部を主に見て回っているが、ダンゴムシの巨大な影は見られなかった。
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