空京大学

　冬休みが終わり、新学期が始まる頃。
　学生たちの多くは、やり残した宿題や期末試験に向けて勉強に明け暮れていました。
「……ああ、もう」
　宿題にうまく集中できずにいた加能シズル（かのう・しずる）は顔を上げると、溜め息をつきました。
「全然集中できないわ。答えも分からないし」
「それじゃあ駄目ですわ。もう時間がないのだから、今やらないと」
　レティーシア・クロカス（れてぃーしあ・くろかす）に言われて、また溜め息をつくシズル。まだまだお正月気分が抜けない様子です。
　教室には彼女たちの他にも、何人かの生徒が同じように勉強をしていました。
「この前、ちらっと聞いたんだけど、冬になると現れる地祇って知ってる？」
「地祇さんですか？」
「ええ……頑張って勉強をしている人の耳元で、答えを教えてくれるっていう」
　レティシアは呆れた顔をしてシズルへ言いました。
「そんなに勉強するのが嫌なのですか？　まったく、シズルさんらしくないですわ」
　シズルは少しむっとしましたが、勉強を再開させることにします。

　しかし、その話は本当でした。
　冬季限定で現れる地祇の名はユベール。シズルの言うように答えを耳元に囁いてくれる幼女です。元は小さな村の精霊なのですが、冬になると放浪する癖があるのでした。
　素直に教えてもらった答えを信じれば、ユベールは満足してふらりとどこかへ消えていきます。ですが、答えを信用しないと……。

「正解は１番だよ」
　図書室で勉強していた松田ヤチェル（まつだ・やちぇる）は、一瞬びくっとしました。
「今考えてるんだから、邪魔しないで」
　と、すぐそばにいたユベールへ返し、再び思考を巡らせます。ユベールは不満げに口を尖らせると、ヤチェルの頭へ熱いお茶をどぼどぼとぶっかけました。
「きゃあ！？」
　何が起こったのか分からず、びしょびしょの頭を振るヤチェル。見ると、近くには誰もいませんでした。

　さっさと逃げ出したユベールは、次なる生徒の元を目指して校内をふらふらします。
　手にしたペットボトルの中身が半分ほどになってしまったと思いながら、残りのお茶をずずっと飲んで呟きます。
「せっかく教えてあげたのに、最近の子どもは可愛げがなくて嫌だな」
　ふと立ち止まり、空になったペットボトルを見つめるユベール。
「……ちょっと柔らかいかな？　ま、いいか」
　にやっと笑って、彼女はそれを野球のバットのようにして勢いよく振ります。次に反抗してくる生徒に出逢ったら、それでお仕置きしようと思い立ったのです。
「普段からしっかり勉強しないのが悪いんだ」
　と、ユベールはシズルたちのいる教室の方へ向かって行きました。

　この地祇の噂は蒼空学園だけでなく、各地の学校に広まっています。
　ある時はイルミンスールに現れ、またある時は空京大学に、と、様々な学校で目撃されているからです。
　ただこれまでと違うのは、蒼空学園でお仕置きをされた生徒が後を絶たないことでした。他の学校でもお仕置きをされた生徒はいるようですが、今年は蒼空学園での目撃情報が例年よりも多いのです。
　報復しようと考える生徒も多く、ユベールの立場はやや悪い方へ傾き始めていました。

　彼女の言った答えを信用すれば何もされないのですが……シズルは信用しても、レティシアが信用するかどうか。
　その前に生徒たちが報復しに来たら、ユベールは不利になって逃げ出すでしょう。答えを教えて欲しい生徒たちはいるでしょうが、これ以上、犠牲者を出すわけにもいきません。
　本当は悪い地祇ではないのですが、果たしてユベールは無事に蒼空学園から出られるでしょうか――。

宿題をやり忘れた時、先生に分厚いテキストの角で頭を小突かれました。
あけましておめでとう、瀬海緒つなぐです。

宿題の答えを教えてもらうも良し、報復しに来るも良し。
犠牲者が出ないよう、勉強している生徒を守るも良し。事態には構わずに、友だちとのんびり勉強するも良し。
答えを教えてもらう場合、『何の勉強をしていて』『どんな答えになるのか』、必ずアクション内に明記して下さい。

ちなみにこの地祇、お茶がなくなったら新しく飲み物を買いに行きます。落ちてる物は拾うし、手当たり次第の方法でお仕置きします。
特に希望がなければ、こちらで勝手にお仕置きさせていただきますので、ご了承下さい。

ＮＰＣに絡む場合ですが、松田ヤチェルのパートナーは今回は不在です。
ガイド内に出ている人物のみとなりますので、ご注意下さい。

それでは、本年もよろしくお願いいたします。

・答えを教えてもらう

・報復する

・生徒を守る