誰がために百合は咲く 前編 リアクション公開中! |
シナリオガイド守旧派VS革新派。生徒会選挙の行方は、海上のお茶会へ。
シナリオ名:誰がために百合は咲く 前編 / 担当マスター:
有沢楓花
百合園女学院──そこは、たおやかな乙女が咲き誇る百合の園。その多くはマドンナリリー、天使ガブリエルの手にある、聖母の純潔を示す汚れなき純白の百合。地球の百合園女学院は、大和撫子の美しい伝統を伝える学校です。 * 「わたくしは、日本文化の復権を公約に掲げまして、美しき文化の保存と継承の奨励を──」 「生徒会発足時想定されていた以上の事件が相次ぐ中、今後の生徒会は、より生徒の保護と団結を促すべきであり──」 「現状の議事録の取り方では不十分です! 詳細な記録を取るべきではないでしょうか!」 百合園女学院の中庭は、いつになく大きな声と熱気に溢れていました。 声の主たちは全員手に手にマイクや拡声器を持って、タスキをかけて、幟の下で演説をしています。彼女たちの側には応援なのか、チラシを配ったり飲み物を演説者に渡している生徒達もいました。演説者の間を行きかう生徒達に、熱心に話を聞くように呼びかけています。 百合園女学院生徒会・白百合会。その生徒会選挙が開始され、今、中庭は演説会場になっているのです。 「……わ、私は現生徒会長伊藤 春佳(いとう・はるか)様の示していただいた道に従って……対話を重視したいと思っています。 他文化との融和の前に、その前に立つ私たち一人一人が……真の大和撫子として、自立することが必要ではないでしょうか……」 その中に一人、マイクを手におずおずといった様子で演説をしている線の細い美少女がいます。声も決して大きくはなく、ともすれば声を張り上げる生徒達の中に埋もれてしまいそうです。 彼女は日高 桜子(ひだか・さくらこ)、春佳の所属する薙刀部の、地球百合園時代からの後輩です。 彼女の声を埋もれさせている最大の原因は、彼女の隣で、演説中の、派手な顔立ちの少女です。 プラチナブロンドに薄いロシアン・ブルーの瞳。アナスタシア・ヤグディン。 エリュシオン帝国の貴族の娘であり、百合園女学院革新派で頭角を現し、サロンを開き、校内の賛同者を次々に獲得している少女でした。 生徒会選挙の立候補の受け付けが始まると、真っ先に、会長に挙手した少女でもあります。彼女の隣には、賛同者なのでしょう、パラミタ出身らしき生徒が四人、各役員ポストのタスキをかけていました。 「──パラミタ出身の生徒の増加が著しい昨今、日本の文化に縛られることなく、共通言語としての儀礼、新しいお嬢様のマナーの確立を急ぐべきですわ。 そのためには大国であり、パラミタで最も栄えているエリュシオン帝国の文化を取り入れることが必要ですわ!」 ところで、もう一人、庭の隅っこで演説をしている少女がいます。高等部三年の村上 琴理(むらかみ・ことり)でした。 「会計に立候補した村上です。当選した暁には、百合園生による会社を立ち上げ、ヴァイシャリーに積極的に貢献したいと思っています。また、百合園女学院敷地内を中心とした、有事の際の避難場所・経路の確保及び設備・備品の増強を考えています」 彼女は元々選挙には立候補するつもりはありませんでしたが、アナスタシアに気後れした守旧派の立候補者が足りないと、現職の生徒会の面々に頼まれ、生徒会選挙に出ることになってしまったのです。 選挙に出馬する可能性のある友人がいるため、もし彼女と役職が被るなら、思案のしどころではありましたが。 しかし、選挙は演説だけでは終わりません。 それぞれの思惑を抱いた彼女たち立候補者は、既に生徒総会宣言された通り、「現役員の職務に携わる機会」、もとい「試験」を課されることになっていたのです。 ある日、選挙候補者の元に配られた書類。 それは、今度船上で開かれるお茶会のスタッフを務めて欲しいというものでした。 * お茶会当日がやってきました。 イルミンスールの森とジャタの森がつながっている、丁度その部分の北にある、平野部。 そこに設けられた小さな港に、三本のマストを持った、一隻の四角い姿の船が停泊しています。 最も目を引くのは、船首像のユニコーンの角として削りだされた、透明な機晶石でしょう。 浅い喫水、甲板の両側にカルバリン砲が据えられていますが、船尾の楼に設けられた窓は優美な飾りに縁どられています。よく見ると、そこにシャントルイユ商会の名がみえます。 それに港には、白い軍服姿が幾つも見えます。 ──今日のお茶会は、いつもとちょっと違いました。 生徒会役員の他、ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)までが遠出していたのです。 ラズィーヤは、お茶会のスタッフに、横に立つ長身の女性を示します。 「みなさんに紹介いたしますわ。こちらは、わたくしの従姉妹で、フランセットさんですわ。もっと正確に言うと、わたくしのお父様のお姉様……ラティーファ伯母様の長女ですの」 「シャンバラ海軍ヴァイシャリー艦隊所属、海軍中将・フランセット・ドゥラクロワ(ふらんせっと・どぅらくろわ)だ」 ラズィーヤより幾らか年上でしょうか。白い軍服に赤毛を靡かせ、浅瀬を思わせる緑の瞳が凛として周囲を見渡します。 「フランセットさんのお父様は、古代より軍人を輩出されてきた貴族の家系でいらして、元ヴァイシャリー海軍の総督を務めていらしたのよ」 元、というのは、建国がなされてから、ヴァイシャリー軍──ヴァイシャリー家の私兵──が、国軍の一部に組み込まれたからです。 元々湖上の都市であるヴァイシャリーは水上戦力を多く持ち、その多くがシャンバラ軍の海軍にスライドしての活動を行っています。 内海には怪物や海賊もいるので、その護衛のためや沿岸警備のために艦隊が編成され、フランセットはその責任者となったのでした。 「今日は従妹殿に頼まれ、周辺の警備を指揮する。客人が安心して茶会を楽しめるよう全力を尽くさせていただく。皆、宜しく」 「それからこちらはご存知の方もいらっしゃるかと思いますけど、フェルナン・シャントルイユ(ふぇるなん・しゃんとるいゆ)さん。船の提供者で、商工会議所からいらっしゃったうちのお一人ですわ」 フェルナンは軽く頭を下げて、父の代理で参りました、と言いました。 「既にご説明があったかと思いますが、夏より、ヴァイシャリー家や商人が中心となって、パラミタ内海での交易を行うことになりました。 シャンバラにはそもそも国家神がおらず国として認められない時代が長く続いたため、長い間民間レベルで細々とやってきたにとどまっているのが現状でした。 これを国同士の交易にする前に、まず都市レベルの計画として行いたいというのが、ラズィーヤさんと私たち商人の希望です。 今日のお相手は、エリュシオン帝国の交易商人の方と、近海の珊瑚礁にお住いの獣人の長老です。辺境の新興国としては、なるべくこちらに都合の良い条件で交渉を成立させたいと思っています」 要するに、足元を見られる可能性が高いのです。こちらに損な条件で取引が成立すれば、搾取されるだけになってしまうでしょう。 「──ああ、いらっしゃいました。それでは皆さん、宜しくお願いいたします」 フェルナンの視線の先。港に停泊していた別の船から、二組のお客が現れました。 「まぁ、シャンバラにしてはまずまず……といったところかねぇ。今日は何が出てくるのか楽しみだよ」 エリュシオン帝国の、両手に大きな宝石の指輪をはめた老商人・アダモフ氏は、分厚い書類を携えた秘書に笑いかけました。それから突如、ごほごほとむせます。 「長時間の外出は汚体に障ります……お薬の時間をお忘れなきよう」 「わかっとるよ、君」 一方、イルカ獣人の族長・ハーララ氏は、連れてきた娘に何やら注意をしています。 「ヤーナ、まだそんなことを言ってるのか。お前も宝石の細工物を持ってきたんだろう?」 「お父様、ですから今日は、それはついでです。シャンバラの近くの海を見に来たのです」 イルカ獣人の部族の住む群島は、周囲を岩場や珊瑚礁に囲まれ、干満が激しい地帯となっています。干潮時に仕掛けた網で、満潮時にかかった魚を捕るという一風変わった漁をしています。 ですが、最近その差が少なく──満潮時に水が島の海岸を侵すことが多くなりました。 部族内からは民族移動をすべきとの意見が出ており、いつの間にか彼らは本島を出て、ひとかたまりに棲むようになってしまったのです。 「あそこの息子に何を言われたんだ」 「あの人は関係ありません!」 むきになって否定する娘は、見たこともない青色の宝石を使った首飾りをしていました。これは海底の宝石を加工した、彼らの特産品です。 「嘘を言うな、さっき船に紛れ込んでいたのを見たぞ。とっとと追い返してやった」 「そんな……」 やがて交渉の時間がやってきて、船に迎えられた彼らに、スタッフがお茶を運びました。 最初の一杯は、ヴァイシャリー近郊で採れるラベンダーを用いた、ハーブティです。 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
こんにちは、有沢です。 ▼サンプルアクション ・生徒会役員に立候補(副会長) ・お茶会のスタッフをする ・お茶会で警備をする ▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています) 2011年07月25日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2011年07月26日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2011年07月30日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2011年08月15日 |
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