【ザナドゥ魔戦記】芸術に灯る魂(第1回/全2回) リアクション公開中! |
シナリオガイド美しき芸術の街、アムトーシス。全ては――ここで出逢う物語。
シナリオ名:【ザナドゥ魔戦記】芸術に灯る魂(第1回/全2回) / 担当マスター:
夜光ヤナギ
◆ 「アムトーシスは久しぶり〜♪」 「モモも〜」 「ナナも〜」 「では、よろしくお願いしますよ」 「「「は〜い!」」」 一見すれば、ただの幼き少女3人組にしか見えない魔神ナベリウスの声が響いたあとで、彼の目の前から彼女たちは姿を消しました。 それを見送って――魔族の最たる王パイモンは静かに口を開きました。 「……遅かったですね?」 「あら、そう? これでも急いでやってきたところなんだけど〜」 背後に目をやります。 そこにいたのは、妖艶な笑みを浮かべる魔族。 ――宙に漂っていた魔神バルバトスは、天使と見紛うばかりの両翼の翼をはためかせて、地に降り立ちました。 「それで? 使者からの話はいかがでしたか?」 「なんでも、講和の申し出ですって」 「…………それはまた」 わずかではありますが、驚いたように目を見開くパイモン。 「それで? どのように処理したのです?」 「もちろん、受けたわよ?」 パイモンは眉を寄せました。 そのいかにも訝しんだ顔に、バルバトスは安心させようというのかクスッと笑ってみせます。 「心配しなくても大丈夫よ〜。別に向こうの連中とキャッキャウフフで仲良くしようってわけじゃないんだからぁ。でも、全く無下にするってわけにもいかないでしょう? 地上での戦いで、こちらも痛手を受けているのは確かなんだからぁ」 「それは……確かに」 素直に頷くパイモンを見て、バルバトスは思わず抱きしめたくなるのをグッとこらえます。 バルバトスにとってパイモンは、5000年をかけて魔族を統べる最たる者、魔王として君臨すべく育て上げてきた、もはや“子”と言ってもいい存在でした。そしてパイモンも、バルバトスの寵愛を受け、今や魔族を率いる長として振る舞うに至っているのです。 (でも、たま〜に王らしからぬ顔なんか見せちゃうのよね〜。うふふ、これも“親”の特権ってものかしら〜?) 心の中でひとしきり愉悦に浸ったバルバトスは、最後にこう告げました。 「それに…………なんだか面白そうじゃない?」 ◆ ザナドゥ主要都市のひとつ――数少ない水辺に面した美しき都アムトーシス。 白を基調とした館を中心とした街並みは、建物から柱の一つ一つに至るまで手が加えられていることがよく分かる構造をしています。ザナドゥの荒涼とした風景にあって異彩を放つその都を治めるのは、魔神アムドゥスキアスでした。 そしていま――彼の目の前にいる芸術品とも言うべき美しき娘は、怪訝そうに彼に聞きました。 「わたくしを……どうなさるおつもりですか」 「んー、ヒドイことをするつもりはないよー。そういうの趣味じゃないしねー」 壁にかかった彫刻の手入れしながら、アムドゥスキアスは飄々と答えました。 娘――エンヘドゥは、そんな彼の意図を計りかねて眉をひそめました。 そもそもが、不思議な話だと彼女は思っているのです。バルバトスに攫われて捕らわれの身となった彼女はその後、魔族の王パイモンの命によって、バルバトスからアムドゥスキアスのもとに賜わられたのですから。ましてそのアムドゥスキアス自身は、こうして誰もが寝静まろうとする夜の時間だけ、彼女に自由を与えてくれたのです。 そう――アムトーシスに滞在するナベリウスも寝静まる、夜の時間だけ。 しかしそれもまた、朝になれば彫像へと戻ってしまいます。 「この事は……他の四魔将はご存知なのですか?」 「…………さあね。バルバトスのお姉ちゃんはアガデとかいうところに行っちゃったし、パイモン様はパイモン様で、北西にやって来た人たちの迎撃に向かうみたいだしねー。もしかしたら、知らないかも」 言葉の端々を曖昧に濁した返答。 エンヘドゥは更に眉根を寄せるようになります。 そのとき、彫刻の手入れが終わったのか、アムドゥスキアスは自身の背の低さをカバーする台座からぴょんと飛び降りました。 「それじゃ、ボクは他にもやることがあるからいくねー」 エンヘドゥの横を過ぎ去って、部屋を出口に向かいます。 「館の中だったら自由にしてていいよー。あ、勝手に外出ちゃうのは止めてねー、後々大変だから」 最後にそう言い残して、ひらひらと手を振ったアムドゥスキアスは部屋を出て行きました。 彼が最後に手入れをおこなったその部屋は、エンヘドゥのために用意された部屋でした。あてがわれたその部屋に取り残されたエンヘドゥの頭の中は、思考が巡ります。 (……あの方……一体何が目的なのでしょう?) 彼の意図が計りきれず、首を傾げます。 ただエンヘドゥは――彼が最後に触れていた壁にかかる彫刻を見て、なぜか不気味な悪寒に晒されたのでした。 (黒水晶ってまでにはいかないけど、ブロンズ像も悪くはなかったねー。さすがは……あの人が目をつけただけはあるってことかなぁ) 廊下を歩きながら、アムドゥスキアスはそんなことを考えていました。 思い起こされるのは、カナン全土の支配へと乗り出していたアバドンとカナン軍との大戦。そして南カナンの領主と幾度の戦いを繰り広げていた魔女――モートのことでした。 まだ地上への門が開き切っていなかった時。 ザナドゥが地上へとわずかな干渉しか起こせなかった数千年前に、自らの身体を犠牲にして“闇”となって地上へ降り立った魔族。 ただ一度だけ。 アムドゥスキアスは彼と出会ったことがありました。 (あの歪んだ美的センスはいただけないけど、実力はあったからねー。あれだけの極上の素材を見つけてくれたことは、感謝しないといけないかな) 彼は、屋敷の大広間へとやってきました。 そこに立ち並ぶ彫像や彫刻、壺に絵画から、果ては壁に連なるレリーフまで。 その全てが、芸術品とも言うべき精緻で美しい造形で仕上がっていました。 そして、それらは魂――他者から抜き出したそれを用いた、言わば命の作品でもあるのです。 「ふふっ…………さーて、エンヘドゥさんはどこに飾ろうかなー? 今から特別な場所でも考えておかないと。やっぱり、一級品には一級品の場所がふさわしいよねー」 魂を封じた芸術品たちを前にして、アムドゥスキアスは楽しげに笑いました。 一見すれば子どものあどけないほほ笑みに見えるその笑みには――底冷えする何かが、瞳の奥で息づいていました。 ◆ 「……やはり、行かれるのですな。シャムス様」 「ああ。エンヘドゥが本当にそこにいるかは分からぬが、いずれにせよ真偽は確かめねばなるまい。だとすれば、誰かが赴く必要がある」 「しかし、領主自ら行かれるなど――」 「この前オレに視察を強いたお前が言えた口でもなかろう」 「いやはや、これは一本取られましたな。 ……心得ました。不肖このロベルダ、シャムス様がご留守の間、我が身に変えても南カナンをお守り致します」 それが――ニヌアを発ってザナドゥへと出発したシャムスとロベルダとの、最後の会話でした。 老成したとはいえ、かつてはニヌアの兵として戦っていたロベルダの言葉です。仮にザナドゥ軍が攻めてきたとしても、それを守るだけの指揮官として力量を発揮するであろうことはシャムスには分かっていました。 だからこそ、彼女は信頼のもと、彼に後を任せたのです。 そしていま彼女は、ザナドゥ主要都市のひとつ――アムトーシスを見通していました。 まるで砂漠のオアシスのような雰囲気を醸し出す眼前の街を見つめ、彼女は思います。 (戦闘の可能性は予測していたが……順調過ぎるな。被害がないのはいいが、罠という可能性も排除できぬ、か。 さて……どのようにして行くか) 必要最低限の手勢を連れてザナドゥへと乗り込んだシャムスたち。各所から得られた情報を元に進んだ結果、障害という障害を受けることなく、順調にアムトーシスまで近づきました。 それが逆に、シャムスに不吉な予感を与えています。 しかし彼女は、臆することはありませんでした。 「シャムス様。いかがなさいますか?」 問いかけた精鋭騎士団“漆黒の翼”の騎士団長、アムドに向けて彼女は答えました。 「……街があるということは、彼らもまた人々の生活があるということだ。オレたちは魔族を恐れはすれ、知ろうとすることはなかった。触れることが叶うかどうかはわからぬが……心を少しでも、見てみたいと、そう思っている。そうでなくては、全ては始まらない。 オレとエンヘドゥの心が――そうであったようにな」 シャムスは振り返って契約者たちを見ました。 臆することのない心の根底には、彼らの存在があるように、彼女は思いました。なにがあっても、彼らと一緒であれば乗り越えられると、そんな不思議な実感が湧いてきたのです。 最愛の妹が囚われているとされるアムトーシスを前にして、シャムスは今まさに行動を移そうとしていました。 魔神の治める街を舞台に、南カナン領主とその妹の今後やいかに? 運命を決めるのは、あなたたちなのです! 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
初めましての方は初めまして。 ▼サンプルアクション ・魔族と交流してみる ・アムトーシスを調査する ・交戦に備える ・独自で調査する ▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました) 2011年07月23日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2011年07月24日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2011年07月28日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2011年08月13日 |
||