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【●】葦原島に巣食うモノ 第三回

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【●】葦原島に巣食うモノ 第三回

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シナリオガイド

カタルの暴走、漁火の暗躍、葦原島の謎。
シナリオ名:【●】葦原島に巣食うモノ 第三回 / 担当マスター: 泉 楽


「――だんだよ」

 葦原島の誰も知らない人里離れた場所に、「梟の一族」はひっそりと住んでいました。
 彼らの存在理由はただ一つ。いつか蘇るミシャグジを封じるため、「眼」の血を絶やさぬこと。
 この頃、一族には二人の「眼」の持ち主がいました。一人はトサクという名の男性。もう一人はその息子、カタル。親子で「眼」を持つことは珍しく、これまでの例から取り分けカタルは強い力があるのではないか、と一族は彼を大事に育てました。
 カタルの母は、彼が生まれた間もなく崖から落ちて死にました。母はいませんでしたが、代わりにアカレがいました。彼女と結婚したばかりのオウェンはいつも無愛想でしたが、時々、狩りの土産をくれました。アカレの弟であるヤハルは、実の兄のように遊んでくれました。
 だから、カタルは寂しくありませんでした。たとえ父が、カタルを抱き上げてくれなくても。
 しかし、子供に事情が分かろうはずもありません。
 ただでさえ人数の少ない一族に於いて、カタルと同年代の子は僅かでした。トレアという一つ年上のその子は、いつもカタルと一緒に遊んでいました。悪戯をして母に叱られたばかりだった彼は、誰からも大事にされるカタルを羨ましく、妬ましく思ったのでしょう。両親から聞いた話を、カタルに聞かせました。
「カタルの母様は、カタルを生んだから死んだんだよ」
 まだ四歳のカタルは、その言葉の意味を理解しようとしました。トレアは続けます。
「カタルの『眼』のせいだ。生まれたときに、母様の命を吸い取ったんだって」
「……嘘だ」
「眼」が生き物の生命エネルギーを吸い取ることは、カタルも知っていました。父はその力を抑えるため、いつも呪の綴られた布を左目に巻きつけています。カタル自身、トレアと比べても食事量が少なくてすむこと、それが「眼」のせいであることはおぼろげながら理解していました。
 けれど、母が自分のせいで死んだ――その話は初耳です。
「嘘じゃないって」
 トレアは勝ち誇ったように言いました。カタルのびっくりした顔を見られて、彼は満足しました。
「嘘だ」
「嘘じゃないって」
 カタルにはもう、分かっていました。トレアの言っていることが真実であると。一族の者の余所余所しい態度、決して触れようとしない父。
 それでも、信じたくはありませんでした。「嘘だ」とカタルは呟きます。
「嘘だ嘘だ嘘だ、トレアの嘘つき!!」
 トレアはびっくりしたような顔をしています。そして、そのままばったりと倒れました。
 何が起きたのか、カタルには分かりません。周囲を見回すと、トレアの母親が倒れていました。アカレもそこにいました。
「カタル!」
 父がカタルを抱き締めました。
「カタル、落ち着け、力に飲み込まれるな! 大丈夫だ、お前は悪くない、だから――」
 トサクの口から、生命エネルギーが流れ、カタルの眼へ流れ込んでいきます。そして――

* * *


「――俺とヤハルは、翌日、里に戻った」
 オウェンはその時、ヤハルと共に町に出ていました。明倫館が葦原島に移設される前のことで、今ほど町は発展していませんでしたが、契約者の話は既にこの土地にも届いていました。遠くない未来、何か動きがあるかもしれない――そう話しながら戻ってきたのです。
「トサクの生命エネルギーを取り込んだことで、カタルの『眼』は容量がいっぱいになり、犠牲者は十五人ですんだ」
 とはいえ、百人ほどの里にとっては大打撃でした。カタルを危険な存在として、殺すべきだと言う者もありましたが、結局、次の「眼」の持ち主が生まれるまで、という条件付きでカタルは生き長らえることになりました。
「幸い――と言っていいか、カタルは何も覚えていなかった。だから全てをトサクのせいにして、俺とヤハルがあの子を鍛えることにした。主に精神面を。だが、結局のところ、失敗したというわけだ」
 治療を終えたオウェンは自嘲気味に言いました。
「今度は、何人分を取り込めば満足するのか……」
「気絶させたらどうでありんすか?」
 ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)が尋ねました。
「『眼』は他の器官と同じだ。気絶をしていても、カタルが生きている限り、勝手に生命エネルギーを取り込み続ける。気絶すれば意志の力で押さえつけることが完全に出来なくなる」
「つまり、正気に返すことが肝心というわけでありんすね?」
「でなければ……」
 オウェンは口ごもりました。
「そうだ、『風靡(ふうび)』を使えばいいんじゃないか?」
 誰かが言いました。「風靡」は、使い手の意志で相手の感情を操る剣です。うまく使えば、カタルの意識を甦らせ、暴走を抑えることも出来るでしょう。しかし「風靡」は、御前試合の優勝者に賞品として渡してしまいました。その人物がどうする気であるか、まだ分かりません。
 カタルはふらふらと明倫館の中を彷徨っているという報告が入りました。どうやら町へ向かう様子はないようです。
「触手と違って、生命エネルギーを求めるというわけでは、ないようでありんすね……」
「だが、もし町へ出たら――」
「観客も避難させなきゃ!」
 御前試合の観客は、ハイナの命令で留まったままなのです。
「俺が止める」
 オウェンは、左腕を支えにして立ち上がりました。右腕は、肘から先がありません。
「どんな手を使ってでも、俺が止める。それが俺の役目だからな」



 漁火(いさりび)は、偽の「風靡」を指先で弄りました。
「やられましたねえ……」
 本物は御前試合に優勝した仲間が手に入れましたが、漁火の元にはまだ届いていません。
「これで失敗したら、あたしはあのお方に合わせる顔がありませんよ」
 どうする、と尋ねる仲間に、
「まあ、いいでしょう。要はあの坊やが溜め込んだ命を、翼ある大蛇を目覚めさせるきっかけにすればいいんです。後は鏡に封じた分で動けるようになるでしょうし、そうしたら、大蛇はいくらでも食いたい放題でしょう」
 封じることの出来る唯一の人物は、今や倒さねばならない存在です。
「皮肉なもんですね」
 漁火は楽しげにくつくつと笑います。
「だって、そうでしょう? 今度はあの坊やをあたしらが守らなきゃならないんですから」

担当マスターより

▼担当マスター

泉 楽

▼マスターコメント

泉 楽です。「葦原島に救うモノ 第三回」シナリオガイドをお届けします。
既に三回目ですが、途中参加も大歓迎です。その場合は第一回及び第二回に、一通り目を通されることをお勧めします。長いですが。
なお、明倫館の生徒がやや参加しやすくなっていますが、引き続き、どの学校の生徒でも歓迎です。
時系列としては、第二回の直後から始まります。以下、注意事項がありますのでよくお読みください。

・前回と異なり、基本的にダブルアクションは不可とします。ただし、御前試合直後にパートナー同士で別行動を取っている場合は、そのままで構いません。もちろん、合流するのも問題ありません。

・「風靡」は御前試合の優勝者が持っていますが、そのPCさんが参加されない、またはアクションが未投稿だった場合は、漁火の手元に届いたとします。

・「眼」は現在暴走しており、カタルの意識がないままふらふらと歩いています。近づくと、生命エネルギーを吸い取られるため、HPが499以下のPCは1アクション、HP500以上のPCは2アクションが行動の限界とします(この場合、「殴る」「蹴る」「掴まえる」「体を張って止める」といった動きを一つのアクションと数えます)。
それ以上の行動は気絶します。また、何もせずとも長時間傍にいることは出来ません
ただし、HP499以下のPCでも魔鎧を装備している場合は、魔鎧のHPをプラスしても構いません。その場合、魔鎧は真っ先に生命エネルギーを吸い取られると思ってください(二人分動けるということではありません。動きは2アクションまでです)。

・遠距離からの攻撃は可能です。この場合は、生命エネルギーを吸い取られることはありません。

・漁火がどこにいるかは不明です。漁火を探す場合は、ある程度予想を立ててください。ただし、漁火の味方に限っては「行動を共にする」というアクションだけで一緒にいられます。
また、漁火は一般人を操っている可能性があります。

いよいよ本当のクライマックスです。どうか皆さんで葦原島を、そしてカタルを救ってください。ご参加、お待ちしています。

NPC情報
▼カタル
感情の起伏が少ない、物静かな少年です。年は十四〜五歳です。「ミシャグジ」を封じる力のある「眼」を持ちます。普段は呪の綴られた布を右目に巻いていますが、今はそれも外れ、「眼」の力が暴走、意識のないまま移動しています。近寄ると生命エネルギーを吸い取られます。
父親が犯したと思っていた罪は、カタル自身の過去でした。

▼オウェン
表情に冷酷さが見える男性です。年齢は三十代半ば〜後半。あまり口数は多く無く、誰に対しても厳しい態度であたりますが、ハイナにだけはそれなりの敬意を払っているようです。とはいえ、信頼しているというわけでもなさそうです。
カタルを守り、鍛えるのが彼の役目でした。現在は右腕を失くしています。カタルを止めるべく行動します。

▼ヤハル
温和な表情をした眼鏡の男性です。年齢は三十歳ぐらいです。
オウェンと同じくカタルの御目付け役兼兄貴分でしたが、漁火に殺害されました。


▼梟の一族
葦原島のどこかに五千年もの間ひっそりと隠れ住み、ミシャグジを封じるためだけに生きてきた一族です。
始祖は女性でした。代々、カタルと同じ「眼」を持つ者が生まれるようです。
「眼」を伝えるため、近親婚を繰り返してきました。従って、カタル、オウェン、ヤハルだけでなく、一族全員が縁戚関係にあります。
隠れ住んでいたものの、ミシャグジの様子を探るために、時折町にやってきていました。そのため、契約者等ある程度の情報は持っています。


▼漁火
「ミシャグジ」を甦らせようとする謎の女です。人を操る能力を有し、他人に化けることができます。人の感情を読み、嘘を見抜きますが、「記憶」は読めません。そのため、彼女を裏切ることはほぼ不可能です。
PCに限らず、彼女の周囲を守る人間で自主的に仲間になった者(称号:漁火の仲間)以外は、全員、操られていると思ってください。いったん操られると、自力で目を覚ますことは不可能です。
居場所は不明ですが、ミシャグジを今一度甦らせるつもりのようです。

▼サンプルアクション

・御前試合の会場から、観客を避難させる

・オウェンについていって、カタルを何とかする

・漁火の味方をする

・漁火を倒す

・ミシャグジについて更に調べる

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2012年04月21日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2012年04月22日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2012年04月26日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2012年05月15日


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