天御柱学院

「”グランツ教”か……」
　天御柱学院生徒会長山葉　聡（やまは・さとし）は腕組みをして唸りました。
　生徒会室には、生徒会役員や風紀委員、海京警察の関係者が集まっています。
　その中には、対クルセイダー組織として認可を受けた同好会、『スーパーロボット理論研究会』の姿もありました。
　未来から来た魔法少女アイリ・ファンブロウ（あいり・ふぁんぶろう）は堂々と会議に参加していますが、
　遠藤　寿子（えんどう・ひさこ）は、この空気に慣れないのか、さっきからずっと挙動が不審です。
　捜査の結果、浮上したのはクルセイダーとグランツ教の繋がりでした。
「とは言え、まだ確たる証拠があるわけじゃない。今、必要なのは確実な証拠だ」
　聡はアイリに目を向けます。
「そこで”同好会”には、グランツ教への潜入捜査を頼みたい」
「潜入捜査ですか？」
「ああ、あくまで秘密裏に進めてほしい。
　おおっぴらに正面から乗り込んだりするなよ。こちらの動きに勘づかれたら証拠を隠滅される可能性がある。
　それに教会には信者が出入りしてる。
　その数は少しずつ増えているそうだが、彼らは海京の一般市民、彼らを人質に取られたら、手が出せない。
　必要なのは、”グランツ教が事件に関わっていた決定的な証拠”。
　そして、”クルセイダーが次はどこをターゲットにしているのか”、その情報だ」

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「失礼するぜ」
　海京警察のサーファー刑事がやってきました。
　金髪グラサン、小麦色に焼けた肌、常に海パン。むせ返るココナッツの臭いを纏う海京警察の名物刑事です。
「ちょっくら神官に変装して、教会に潜入してきた」
　小脇に抱えたサーフィンボード（礼拝用と書かれた）を机の横に立てかけ、一枚の写真の置きました。
「こいつが、グランツ教海京支部の責任者”メルキオール”だ」
「あ、この人、見た事があります。この前、街頭で演説しているのを見ました」
　アイリは言いました。
「見た目はひょろい青二才だが、これまでの経歴を見る限り、マジ気を付けたほうがいいぜ。
　空京にいた頃は慈善事業を積極的に行って、信者に言わせりゃ、清廉潔白な人柄でどんな奴にも分け隔てなく接する、
　まぁ人間の出来た奴らしい」
「あのー、その説明だと気を付ける箇所がよくわからないんですけど……」
「馬鹿、おめぇ、ほんと馬鹿。こんな真っ当な人間がいるわきゃねぇだろ。逆に怪しすぎんだよ」
　それから教会の見取り図を広げました。
「西側に馬鹿デカイ礼拝堂、中庭の花園を挟んで、東側に神官たちの寝泊まりする宿舎がある。
　この図にはねぇが、以前あった建物を調べたところ、どうもここには”地下室”があるようだ。
　ただ、俺がざっと調べた感じじゃそんなもんは見つからなかった。
　となるとそこが怪しい。どこかに地下室への入口があるはず。お目当てのもんはそこにあるはずだ」
　刑事の言葉にアイリは頷きます。
「例のガーディアンの対策はどうしましょう？」
　風紀委員の鈴木が、聡に尋ねました。
「こっちにばっかり構ってると足元をすくわれかねないからな。出現したらすぐに対応出来るようイコンを配備させておくんだ」

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「……それともうひとつ」
　聡は声を潜め、鈴木に目配せをしました。鈴木は部屋の外に誰もいない事を確認します。
「大丈夫です。既にこの部屋、左右上下の部屋の調査は済んでいます、ここでの会話が盗聴される恐れはありません」
「ならいい」
「なんだかものものしい空気ですけど、何の話です？」
　アイリは首を傾げました。
「実はどうも俺の知らないところで、学院は秘密裏に”何かの開発”を行っているようなんだ。
　破壊されたプラントの調査にあたった連中の話では、あそこで開発された何かが学院の”普通科”に持ち込まれた痕跡がある、と。
　それに、一連の事件で殺害された研究者も普通科と何かしら繋がりがあったようだ」
「……なんでまた普通科なんです？」
「そう、そこなんだよな。研究開発から縁遠そうな部署なのに……。
　俺もいろいろ調べてみたんだけど何も出てこなくてさ。学長にも探りを入れてみたんだが、上手い事はぐらかされちまった。
　どうやら俺たちには言えないことがここで行われてるみたいだぜ」
「それから、大文字勇作（だいもんじ・ゆうさく）先生の件で奇妙な報告がされています」
「だ、大文字先生！？」
　鈴木の口から飛び出した思いがけない名前に、寿子は身を乗り出しました。
「ええ、なんでも普通科校舎にある彼の研究室が”秘密のフロア”に繋がっている……との事なんです」
「え？　秘密のフロア……って何？」
「私も詳しくはわかりませんが、普通科校舎の地下に存在するフロアのようです。
　フロアを発見した生徒たちも、すぐに大文字先生が戻ってきたため詳しく調査は出来ていないと言っていました。
　一連の事件と関係している可能性があります。学長たち上層部の意向はともあれ、我々も把握しておく必要があるかと」
「その調査をだな……寿子、おまえに頼みたいんだけど」
「ええっ！」
「先生のことはよく知ってるだろうから、おまえが適任かと思ってさ。
　ああ、くれぐれも先生に勘づかれないようにしてくれよ。学院の大人たちにとってはデリケートな話らしいからな。
　何を開発してるのかわかるまでは慎重にやってくれよ、期待してるぜ、同好会会長」
「は、はうぅ。う、うん……頑張ってみる」

マスターの梅村象山です。
前回参加された人も、今回から参加される人も、どうぞよろしくおねがいします。


【今回のシナリオについて】

グランツ教の教会は周囲を高い塀に囲まれています。
西側には礼拝堂があります。礼拝の時間になると信者たちが集まって、超国家神への祈りを捧げたりするようです。
また、礼拝堂には懺悔室があり、ここでは”メルキオール”に懺悔を聞いてもらう事が出来るそうです。
こちらは一般人でも入る事が許されています。
そして東側には神官達の宿舎があります。メルキオールの自室もここにあり、他には大食堂や書庫等があります。
こちらは神官以外（信者も）は立ち入る事が出来ません。
それから、礼拝堂と宿舎の間には庭園があります。そこでは色とりどりの美しい花が咲き乱れています。
神官も多く、信者達の出入りもあるので、大っぴらに壁や床を調べてると不審に思われます。
怪しまれないようにするか、もしくは彼らの注意を別に引き付ける等の工夫が必要でしょう。
一応、目的は”教会とクルセイダーの繋がりの証拠”を見付ける事ですが、
信者達が礼拝する様子や神官達の生活の様子を観察したり、メルキオールに直接接触出来る機会でもありますので、
そちらの調査に重きを置いても、今後先に繋がる情報が得られるかもしれません。
また、本当にクルセイダーと教会が繋がっていた場合、クルセイダーの襲撃を受ける可能性がありますのでご注意ください。
　※潜入調査にはアイリ・ファンブロウとサーファー刑事も参加します。

御柱学院秘密のフロアには、普通科校舎にある”大文字先生”の部屋から行く事が出来ます。
ただ、大文字先生が部屋に居る状態では向かう事が出来ないので、先生が部屋に来ないよう、しばらく足止めする必要があります。
先生を拘束出来た時間だけ、謎フロアを調べる時間が増えます（入手出来る情報が増えます）。
こちらのパートでは、拘束班と調査班に分かれ、協力して作戦を進めると良いでしょう。
　※調査班には遠藤寿子が参加します。
報告によれば、謎フロアには三つの大きな教室、謎の武器開発室、謎の設定資料室、謎の大ホールがあるそうです。
時間的に調べられるのは一カ所なので、どこを調べるか絞ってアクションをかけてください。

クルセイダーの使う謎空間『シャドウレイヤー』では魔法少女以外は大幅に能力が減退してしまうそうです。
そのため、彼女は協力してくれるPCで、クラスが魔法少女ではない場合、
未来道具『魔法少女仮契約書』で一時的に魔法少女、もしくは魔法少女のマスコットにしてくれるそうです。
仮契約書は簡易的に魔法少女やマスコットとなれますが、効果は一日しか持ちません。
また、契約書にサインすると強制的に魔法少女っぽい衣装になってしまうので、
恥ずかしい人はマスコットになることをお勧めします。
契約希望の方はアクション欄に【魔法少女になるよ！】【マスコットになるよ！】と書いて下さい。

また、風紀委員での実績のあるPCには【２０２２年度天御柱学院風紀委員】の称号が付与されています。
風紀委員として活動したい場合、称号を付けるようにお願いします。


【本シナリオにおける注意点です】

ダブルアクションについて、改めて説明します。
MCとLCの目的が別のアクション、目的が複数あるアクション。
これらはダブルアクションになります。この場合、アクションが一部しか採用されませんので、ご注意ください。

またシーンを複数に跨ぐようなアクションも限りなく透明な……じゃない、ブラックに近いグレーです。
ダブルアクション気味になってしまうので、ワンシーンで魅せるようなアクションにして貰えると助かります。
ワンシーンで自分を出し尽くすようなアクションこそ、完成されたアクションだと私は思う次第です。

上記のシーン跨ぎ問題があるので、原則MCとLCの別行動を禁止とさせていただきます。

・グランツ教に潜入する

・ガーディアン（クルセイダー）を迎撃する

・天学の秘密に迫る