天御柱学院は、シャンバラの学校ではなくシャンバラ直下に浮かぶ海京という都市にある学校です。
元々は契約者である日本人を育成するための学校で、蒼空学園の前身となったものですが、その蒼空学園が設立された後、役割は大きく変わっていき、今ではイコンパイロットや強化人間等の超能力者を育成する学校となっています。
2020年に海京に移転したため、いわゆる「旧校舎」というものはありませんが、使われなくなった建物はあります。「イコン・超能力実験棟」もその1つでした。
イコンと超能力その関係性を研究・実験するための施設だったのですが、まだそれほど解明が進んでいなかったある日、実験中に被験者である強化人間の超能力が暴走し、建物全体が壊滅的な被害を受けたため廃棄・閉鎖されてしまい、今では立ち寄る者はいません。
ところが最近、その実験棟について奇怪な噂が立つようになりました。
曰く、
「使われていないはずの実験棟に明かりがともっている」
「機械音が聞こえることもあるらしい」
「不審者らしき怪しい影を見た」
「物が勝手に動いてるのも見た」
「もしかして幽霊?」
といった、いわゆる怪談話のそれに近いもので、話にどんどん尾ひれがついた結果、
「実験棟が閉鎖されたあの事件を知っているか? あの当時、超能力を暴走させたのは少女で、彼女はその際に命を落としてしまった。しかし、彼女の残留思念がまだ実験棟に残っていて、夜な夜なポルターガイスト現象を起こしているそうだ」
「しかもその理由は、自分と同じ強化人間を仲間に引き込もうというものらしい。彼女に惹かれると、両手両足を引きちぎられ、そこにプラグコードが突き刺さり、機械の一部にされてしまうとか……」
というそれなりに信憑性のある「考察」までなされるようになったのです。
放置しても問題は無かったのですが、学院所属の一部の強化人間がこの噂を本気で信じてしまい、精神不安定による恐慌の結果、超能力が暴発、果ては乱闘騒ぎが頻発するようになったため、学院上層部はこの問題の調査・解決に乗り出すことにしました。
最初は教官たち自身がチーム編成で取り組む予定だったのですが、教官の1人が出した意見のため、それは却下となりました。
「たかが不審者騒動に我々がこぞって乗り出す必要は無いでしょう。ここは他校生も含め、学生から志願者を募るようにしてみては? この手の事件に介入したがるお調子者の1人や2人くらい釣れるでしょう」
言葉自体はかなり不穏でしたが特に反対意見は出ず、天御柱学院の生徒を中心に、不審者事件の調査団の募集が行われました。
場合によっては事件解決も望まれます。
ロボットと超能力が支配する学校に振って湧いた不審者騒動。あなたはどう立ち向かいますか?