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シナリオガイド

沈黙は平穏なり
シナリオ名:ヘッドマッシャー / 担当マスター: 革酎

 鏖殺寺院の残党集団のひとつ『パニッシュ・コープス』のアジトが、ヒラニプラのとある山中に隠されていることが、シャンバラ教導団の特務潜入調査隊からの報告によって判明しました。
 このアジトに入るには、ある特殊な防護ロックが施された隠し通路を抜けていかなければならないのですが、この隠し通路自体が、ひとつのセキュリティデバイスとして機能していました。
 つまり、事前にDNA情報と脳波を防護ロックシステムに登録しておき、通過の際には、この両方が一致するもの、即ちデバイス・キーマンが隠し通路の入り口前に立たなければ、隠し通路そのものが出現しない構造になっているというのです。
 如何にコントラクターといえども、DNA情報と脳波の両方を完璧に模倣することは極めて難しいといわざるを得ません。
 であれば、パニッシュ・コープスのアジト強襲の為の唯一の方法として、防護ロックシステムにDNA情報と脳波を登録したデバイス・キーマンを、あらかじめ確保しておかなければならないということになります。
 一見、困難に思えるこの問題ですが、幸いにも教導団はデバイス・キーマンたる男を空京警察から引き渡しを受け、確保することに成功していたのです。
 これでパニッシュ・コープスのアジトへの強襲作戦は、十中八九成功するであろうと、誰もが楽観的に考えるようになりました。
 ところが――。

     * * *

グエン・デュベールが、殺されただと?」
 対パニッシュ・コープス部局の指揮官である教導団のレブロン・スタークス大尉は、自室の執務デスク前で、部下からもたらされたその報告に不機嫌な表情を浮かべました。
 グエン・デュベールとは、空京警察から引き渡しを受けたデバイス・キーマンであり、今回の強襲作戦の成否を左右する重要な人物だったのです。
 そのグエン・デュベールが、軟禁先のホテルの室内で殺害された、というのです。
 スタークス大尉が苛立った様子を見せたのも、無理からぬ話でした。
「警備担当のレオン・ダンドリオン(れおん・たんどりおん)は、何をしていた?」
「デュベールを守るべく最善を尽くした、との報告を受けておりますが、結局力及ばず、デュベール暗殺を許してしまった模様です」
 報告者の若い下士官の声を、腕を組んだままじっと聞いていたスタークス大尉ですが、ややあって、厳しい表情のまま更に問いを投げかけました。
「では、質問を変えよう。犯人は、分かっているのか?」
「はっ……当局の照合結果に間違いが無ければ……犯人は、ヘッドマッシャーであろうと思われます」
 その瞬間、スタークス大尉の面に張りついていた色は、苛立ちから、驚愕へと変貌していました。
鏖殺寺院内でも、その存否が議論の的になっていたという、噂の暗殺者か……」
 若い下士官は、神妙な面持ちで軽く小首を傾げました。
 どうやら、ヘッドマッシャーなる存在について、あまりよく知らないようです。
 スタークス大尉は、幾分姿勢を改めて、深い溜息と共に語り出します。
「鏖殺寺院内に於いて、裏切者や、敵の手に落ちた重要人物などを始末することを任務とする暗殺者だそうだ……いわば、寺院の敵ではなく、身内を殺すことを目的として生み出された闇の処刑人、といったところか」
 そして卓越した暗殺術や潜伏能力はもとより、このヘッドマッシャーが何より恐ろしいとされている最大の理由は、その肉体が、生まれついてのPキャンセラーとしての特性を具えている、ということでした。
「これはあくまでも諜報部からの伝聞に過ぎないのだが……奴自身はコントラクターではないが、相当に無理な強化を重ねた強化人間であり、且つ鏖殺寺院内では対コントラクター戦技術を徹底的に鍛えられているらしい。その為、奴はコントラクターと互角か、或いはそれ以上の強さで渡り合える能力を身につけているようだ。ダンドリオン中尉が後れを取ったのも無理は無い、といったところか」
 若い下士官はごくり、と喉を鳴らしました。
 本当にそんな化け物が相手であるならば、コントラクターが数人集まった程度では、相手にならないのではないか、という恐怖感を覚えたからです。
 ここでスタークス大尉は頭を切り替えるように、表情を改めました。
「よし、プランBに移行する。もうひとりのデバイス・キーマン確保には、ダンドリオン中尉を向かわせろ」
 実のところ、殺されたグエン・デュベールには、双子の妹がいました。
 その双子の妹のDNA情報と脳波が、グエンと奇跡的に一致するという報告が、数週間前にもたらされていたのです。
 パニッシュ・コープス殲滅を成し遂げる為には、その双子の妹が最後の希望となります。
 しかしそれは同時に、ヘッドマッシャーの脅威がまだまだ続く、という事実の裏返しに他なりません。

     * * *

 二日後。
 レオン・ダンドリオンは、見渡すばかりの不毛な大地、シャンバラ大荒野のとある一角に姿を現しました。
 その彼の前には、革製ビキニスタイルにテンガロンハット、そして二丁ショットガンといういでたちで武装バイクにまたがる、ひとりの美女の姿が。
 強烈な陽射しのもとで妖艶に微笑むその美女は、レオンに対し、どこか馬鹿にするような視線を投げかけています。
「……どうしても、オレ達を信用してはくれないのか?」
「ふふっ……それはそうですわ、私共は何ていったって、野盗団ですのよ? 教導団に尻尾を振れといわれて、ハイそうですかと、簡単にいえる筈もございませんでしょう?」
 ジェニファー・デュベールという名の美女は、レオンの必死の説得にも、まるで耳を貸そうとはしません。
「良いか……相手は、鏖殺寺院だ。野盗団如きが相手になる敵じゃないんだ!」
「あらあら……教導団なら相手になる、ってことですの?」
 切り返されて、レオンはうっと言葉に詰まりました。
 先日、グエン・デュベールを目の前で殺された時の記憶が、鮮明に蘇ります。
 ジェニファーのいう通り、教導団だから間違い無く、ヘッドマッシャーから守り切れるという確証は、どこにも無かったのです。
 苦しそうな表情で僅かに視線を落としたレオンに対し、ジェニファーは意味深な笑みを向けました。
「それに……ただ私を守りたい、とおっしゃる訳ではなさそうですわね。何か、協力して欲しいことでもあるのかしら?」
「あぁ、そうだ……あんたの双子の兄、グエン・デュベールの件で、頼みたいことがある」
 その名前を出した瞬間、それまで余裕に満ちた笑みを湛えていたジェニファーの表情が、たちまち険しい色へと一変しました。
 どこか艶っぽさを含んでいた声も、一瞬にして堅い緊張に強張ります。
「そういうことでしたら……私共の首領に、お話を通して頂かないといけませんわね。このジェニー・ザ・ビッチを動かせるものはただひとり、デーモンガスの言葉だけですわよ。よくよく、覚えておいてくださいましな」
 それだけいい残して、野盗団アヤトラ・ロックンロールの女幹部ジェニー・ザ・ビッチことジェニファー・デュベールはバイクのエンジンを吹かし、黄色い砂塵を巻き上げてレオンの前から去っていきました。

担当マスターより

▼担当マスター

革酎

▼マスターコメント

 本シナリオガイドをお読みくださり、ありがとうございます。

 内容としては教導団vs鏖殺寺院の暗殺者、という構図ですが、基本的にはどなたでもご参加頂けます。
 また、パニッシュ・コープスのアジト強襲作戦そのものは、本シナリオの範疇外です。

 アクション内容例としましては、
  ・ヘッドマッシャーと戦う
  ・ジェニー・ザ・ビッチをいいくるめる
  ・その他諸々の調査
 といったところでしょうか。


 以下は、PC情報として、参加頂けるPCの皆さんが事前に知っている内容として頂いて構いません。

■蛮族の野盗団『アヤトラ・ロックンロール』の幹部達
・デーモンガス
 革製ブーメランパンツと鋼のフェイスガードを装着する、全身筋肉の塊のような怪人。
 アヤトラ・ロックンロールのリーダー。
・トゥーエッジャー
 オールバックの長髪と髭面が特徴的な、葉巻をこよなく愛する悪人面の巨漢。
・ジェニー・ザ・ビッチ
 革製ビキニスタイルとショットガン二刀流が特徴的である、妖艶な美女。
・ヴァーノン・ジョーンズ
 ピンク色のモヒカンと革鎧、ボウガンがトレードマークの凶暴な男。

■ヘッドマッシャー
・身長およそ2メートル80センチ。
・全身を黒い革製のマントで覆った巨漢の暗殺者。
・いびつな黒い兜と、醜悪な黒い仮面を装着しており、ガスマスク越しのような呼吸音を響かせています。
・仮面越しの目は血走っており、ほとんど狂気そのものです。
・肉体の周辺には常時Pキャンセラーが発動しており、彼に戦闘を仕掛けるものは、最も効果的と思われる能力をひとつ、打ち消されてしまいます。
・主な武器はブレードロッドと呼ばれる鞭性の二刀流武器で、しなやかに変化しながら敵に襲いかかり、少しでも触れれば真っ二つに叩き斬られます。


 それでは、皆様からの素敵なアクションをお待ちしております。

▼サンプルアクション

・ヘッドマッシャーを迎撃する。

・ジェニファーを仲間にしようと頑張る。

・パニッシュ・コープス関係を調査。

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2012年08月20日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2012年08月21日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2012年08月25日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2012年09月07日


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