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洞穴を駆ける玄王獣

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洞穴を駆ける玄王獣

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シナリオガイド

地上から来た獣、遥か昔に滅された凶獣、書の中の幻獣……と、小動物たち。
シナリオ名:洞穴を駆ける玄王獣 / 担当マスター: YAM

 聖アトラーテ病院の一室。
「わざわざ来てもらって、すみません……」
 ほんの2日前に集中治療室を出てこの部屋に入ったばかりの杠 鷹勢(ゆずりは たかせ)は、ベッドの上で、訪問してきた山葉 涼司(やまは・りょうじ)に頭を下げました。
 蒼空学園生であった鷹勢が、シャンバラ大荒野にある地下書庫前で竜の攻撃を受けて重傷を負い、パートナーの御宮 めい子を失って倒れたのは1週間も前のこと。契約者たちによって迅速にこの病院に運ばれたおかげで一命は取り留めたものの、パートナーロストの症状に苦しみ、それでもようやく人と会えるまでに回復しました。唯一のパートナーを失い契約者でなくなった彼の今後を校長としてそれとなく案じていた涼司は、その彼から相談したいことがあると言われ、見舞いにきたのです。が。
「あの……皆さんに助けてもらった上に、こんなことまでお願いするのは図々しいのですが……他に方法がなくて」
 鷹勢が切り出したのは、彼の予想とは違う話でした。

――鷹勢の実家・杠家は、長野の山奥に住む一族で、代々特殊な力を持っていました。『神を背に乗せて走る聖獣』として崇められてきた、白毛の山犬たちを使役する力です。この山犬は神がかりになる等不思議な霊力を持ち、杠の血筋の者にしか従わないといいます。
 しかし鷹勢は、何故か生まれつき山犬と通じ合えず、彼らを使役する資質に欠けていました。そのために家人と折り合えず、家を飛び出したのです。
 ただ、鷹勢と同じ日に生まれた「白颯(はくさつ)」という山犬だけは、子供の頃から一緒に育ったため心通じ合う友のような存在でした。鷹勢の世話係でもあっためい子にも懐いており、二人がパラミタに渡った時、一緒に連れてきました。
 しかし、鷹勢とめい子があの地下書庫に向かう前、白颯はツァンダ郊外のペットホテルに預けられたのですが、二人が倒れたのとほぼ同時刻に突然暴れ出し、店員の隙を突いて逃げ出してしまったというのです。意識不明だった鷹勢がそれを知ったのは昨日、未だに白颯は見つかっていません。

「白颯は恐らく、僕たちに何か起こったと感じて、あの地下書庫に向かったんです。今どうしているのか、魔獣や猛獣が生息するあの地で無事なのか……ただ願うしかありませんが」
 鷹勢はちょっと俯き、悲しげに瞳を揺らしましたが、すぐに涼司を真っ直ぐに見て言いました。
「どうか彼を探し出し、保護してくださいませんか」

「……あの地下書庫、か。けど、あそこは……」
 涼司はちょっと言いよどみます。
 イルミンスールからの報告では、あの書庫は『住人たち』が今日完全に引き上げ、明日閉鎖されることになっているはず……。



*****


「なんだ? この洞窟」
 今日までは地下書庫の住人である“はぐれ魔道書”の一人『ベスティ』は、仲間の『パレット』『揺籃』とともに、地下書庫からだいぶ離れた「アトラスの傷跡」に近い場所にぽっかりと口を開けた洞穴を見つけていました。
「本当にここなのか? ベスティ」
「あぁ。中から気配が……」
「これ溶岩洞だな。かなり昔の火山活動で出来た洞穴だよ」

 地下書庫に潜み住んでいた人間嫌いの魔道書達は、彼らの中心人物を巡るいざこざを契約者たちに助けてもらったことから、その人物を保護すべくイルミンスールに設けられた特別施設に移り住むことが決まっていて、移動の日はまさに今日です。
 出発直前、『動物寓意譚』の魔道書であるベスティは、己の中に著述されている動物たちを外に出して、しばしの解放感を味あわせていました。今までもよくやっていたのですが、移動した先では自由に外に出してやれなくなるかもしれないと思い、広大なシャンバラ大荒野に解き放って自由の空気を吸わせていたのです。
 ところが、出発近い時間になっても大部分の動物たちが一向に戻ってきません。特に、地上で『幻獣』と呼ばれていた類の動物――ユニコーンやフェニックス、バシリスクなどが影も見えません。あと、一部の主に草食の小動物らも。
 心配になったベスティが二人の仲間と共に、動物たちの気配を追ってきて、この洞穴を見つけたのです。三人は中に入っていきます。
「かなり広いな……にしても、足元がびちゃびちゃだ」
「地下水でも染み出てるのかね」
 濡れた地面に水音、足音は響いても、動物がいるような物音はまったくしません。
 やがて少し開けた場所に出ました。
 壊れた石盤のようなものが落ちています。
 拾い上げると、それは今は使われていないような古い文字――恐らく呪詛に使う古代文字のようなものが書かれていました。割れていて、途中から読めませんが。
「なんだこの文字」
「あ、俺読めるかも」
「パレット凄いな……、? あっち……」
 開けたところの奥に、動物たちの気配がありました。そっちへ向かった三人は、しかし、次の瞬間息を飲みました。

 強大な化け物のような霊体を背負った白い山犬が、そこに鎮座していました。
 それを取り巻くように、ベスティの幻獣たちが微動だにせず、並んでいるのです。

『機は熟したと見える……。

 5千年の時を経て人間に尾を振る矮小な眷属に成り果てたとて、我の血を引くこの白き獣……

 そして……

 「復活」と「不死」の因子を持つ、炎の鳥の到来……』


 突然金縛りが解けたかのように、フェニックスが高い叫びをあげ、怯えたように翼を広げると、ベスティに向かって飛んできました。
 とっさにそれを己の中に戻した拍子に、ベスティが書物の姿に戻った、その時。

『逃さぬぞ』
 白い山犬が素早い動きで飛びかかってきて、書物のベスティをその口に咥えて飛びのきました。あまりの速さに、揺籃もパレットもなすすべがありません。
『小賢しい、魔道書が……バリアなど張って、それで鳥を閉じ込めたつもりか?
 どのみち、フェニックスの復活と不死の因子は炎の中でしか見つけられぬ。書のままで、燃え立つマグマに放り込んでくれるわ』
 霊体のその言葉を最後に、ベスティを咥えた山犬は、洞窟の奥へと走り去っていきました。
 追おうとした揺籃とパレットの前に、何故か幻獣たちが立ち塞がり、牙をむきます。

「なんだ!? どうしたお前ら!!」
操られている! 駄目だ揺籃、一旦外へ!!」
「パレット、だがベスティが!!」
「俺たちまで倒れちゃ意味がない! それに、まだベスティは大丈夫だ……!」
 見ると、洞窟のあちこちから、兎やリスやネズミなどの小動物が出口へ向かって駆けていきます。それは、明らかにベスティの中の動物でした。ここに迷い込み、あの獣に怯えて物陰に隠れているうちにベスティに戻る機会を失ったのですが、彼らは操られてはいないようです。
「必ず助けに来る! 待っててくれ!!」
 その小動物たちと共に外に避難しつつも、パレットは中に向かって叫びました。



『我ら、瘴気を吐きて人に害為す巨なる玄王獣をこの地にて打ち倒し、荒ぶる魂を奥の祠に封ず。
 地水火風の業持て封印を為すべし。地と火の気はすでに、この場に満てり。
 清き水の流れ、塵芥を祓う風の流れを得るべし、(以下解読不能)』


 パレットが持ち出した壊れた石盤には、そう書かれていました。

担当マスターより

▼担当マスター

YAM

▼マスターコメント

 こんにちは、YAMです。
 6作目のシナリオです。よろしくお願いいたします。すでにシナリオガイド本文が長々しくて申し訳ありません……。
 今回は以前お送りした「絶望の禁書迷宮 救助編」及び同「追跡編」の続編的シナリオですが、前回参加されていない方でももちろん参加していただけます。
 シナリオに出てくる魔道書については、マスターページの方にも詳細書いてありますので、そちらも参考にしてみてください。


【玄王獣】
 5千年前、人々を恐怖に陥れた狂暴且つ巨大な魔獣です。
 形そのものは、燃え立つような長い毛に覆われた狼に似ていますが、額に三つの角が生えています。
 その吐く息には有毒成分があり、人体に害をなしました(動物にも)。
 鋭い爪と牙も持ち、人語を解するなど知能は高いです。また、霊的な力も持っていました。
 一頭だけではなく、戦乱の時期にパラミタ各地で群れで目撃されています。

 しかし、すでに5千年前に彼らの弱点を研究し、決起した人間たちによって倒されました。
 ですが、最後の群れのリーダーは死してなお荒ぶり、霊体の身となっても人に害をなそうとしたため、当時の力ある呪術師が、シャンバラ大荒野にできた巨大洞穴の奥に祠を作ってそこに霊を封印しました。
 これにより、パラミタに玄王獣は完全にいなくなりました。

※PL情報※
 が、5千年前に彼らの内の何頭かは、人に追われるうちに密かに地球に逃れたようです。
 それらが代を重ね、地球生活に適応していくうちに姿や性質が変わっていきました。その末裔の一部が、「杠家の山犬」だったのです。

 PCはその詳細を知りませんが、玄王獣の霊が「我の血を引くこの白き獣」と発言したことは、魔道書達に聞いて知っているものとします。
 また、LCで5千年前に生きていた者なら、その悪名と脅威を知っていてもおかしくありません。


【洞穴(巨大溶岩洞)】
 大昔、「アトラスの傷跡」の火山活動が活発だった時にできたもので、中はかなり広く、また流れた溶岩の幾筋もの跡が交差してできた空洞は迷路のようになっています。
 この火山活動の跡を、5千年前の呪術師が利用して、玄王獣の霊を封じる祠を造ったものと思われます。
 しかし、何らかの理由で祠は壊れ、封じられた霊が出現してしまいました。
 実は原因は、偶然この荒野にやって来た「同じ血を持つ」白颯との霊的共鳴によって、霊体の力が増幅したことです。自ら内側から封印を破ったのです。

 洞穴の最奥部は、実は今も活動しているマグマ溜まりに繋がっています。
 今のところ、そこは岩盤で隔てられていてごく小さな穴で繋がっているにすぎず、人が通れるほどの大きさの道はないようですが……
 魔道書を手に入れた玄王獣の霊(と乗っ取られた白颯)は、そこに向かっています。
 
 その一方で、同じ洞穴の中で、地下水が湧き出ているところもあるようです。深い地層から染み出てきているようで、入り口付近もかなり足元が水浸しですが、もしかしたら奥部でも水が出ている場所があるかもしれません。

 玄王獣の呼気には人体有害な瘴気が含まれますので、対策もなしに近寄ると体調に悪影響が出ます(頭痛やめまい吐き気、五官の機能の低下等)。また本体に近付かなくても、獣が長く留まった場所には、瘴気が凝って溜まっている場合があるので注意が必要です。恐らく、祠付近も危険があるでしょう。


【玄王獣の目的】
 「不死と復活の因子を持つ火の鳥」フェニックスと、己と同じ血を持つ白颯と共に炎(マグマ)に身を投じることで、実体を得てこの世に完全復活し、自分たちを滅亡に追いやった人間に復讐することです。
 フェニックスは火の中で新たな命を得る鳥とされており、その因子を炎の中で己に取り込むのが狙いのようです。

※ここに出てくるフェニックスは、PCが召喚獣として扱うパラミタのフェニックスとは異なる存在です。
 あくまで、ベスティの中に描かれた伝説の幻獣としての鳥ですので、ご注意ください。



【幻獣たち】
 フェニックス以外の幻獣たちは、それぞれ、現在洞窟のどこかに潜んでいます。玄王獣の霊力によって操られており、追ってくる者たちを敵とみなし、襲い掛かってきます。
 しかし、彼らの行動にはもともとの生態の本能によるパターンが残っているため、敵対するとはいってもそのパターンによって対処法を考えることが可能です。
 潜んでいる幻獣は以下の通りです。
※先述のフェニックス同様、ユニコーンなど、PCがペットとして扱うパラミタの動物と同名のものがでてきても、それとは似て非なる存在です。
 あくまで、ベスティの中に描かれた伝説の幻獣としての生態を持っていますので、ご注意ください。


★グリフォン:
 上半身は鷲、下半身は獅子。この獣は雌雄一対、計2頭います。
 重要なものを守護する、という本能に従い、壊れた祠の傍にいて、近づく人間に攻撃します。
★サラマンダー:
 火竜。1頭。火の中に潜むという本能に従い、最奥部のマグマ付近にいます。火を吐き、敵を焼こうとします。火属性の攻撃は一切効きません。
★アスピス:
 小型の竜(犬くらいの大きさ)。1頭。竜の爪と牙による通常攻撃をしてきますが、音楽を耳にすると動きを止めるほどの音楽狂です。
 地面に耳を付けて音を聞くので、歌よりもビートの利いた楽曲の方が効果的かも。
★バシリスク:
 頭に冠状の鱗を持つ毒蛇。視線で相手を石化させます。何故か雄鶏の鳴き声には恐怖し、竦むと言います。1匹。
★マンティコア:
 コウモリの翼と毒針のある尾を持つ赤い獅子。人を食い殺すと言われており、また際限ない食欲を持っています。1頭。
★ユニコーン:
 一角獣。獰猛で動きは俊敏。鋭くとがった長い角で敵を突き貫く。乙女には服従すると言われているが、この状況でも通用するかどうかは不明。
 またその角は、どんなに汚れた水をも浄化するという。1頭。
★カラドリウス:
 神秘的な小鳥だが、特に驚異的な攻撃力は持っていない。嘴も小さいので、襲われても大したことはないかも。
 病人の生死を見極め、助かる運命の病人からはその病を吸い取って完治させてくれるという伝説の鳥。1羽。

 グリフォンとサラマンダー以外は、洞窟内のどこに出現してもおかしくないので、注意してください。


【ベスティの状態と小動物たち】
 白颯に咥えられて攫われたベスティは現在、緊急事態と見て、玄王獣にフェニックスを奪われないよう、己の内部に他者の力が干渉するのを防ぐバリアを張って籠っています。
 相手の霊力が強すぎて、それだけで手一杯の状態です。
 そのため、フェニックスも含めた彼の書の中の動物たちは、バリアに阻まれて本の外に出たり中に入ったりできない状態です。
 なので本文にある「逃げ遅れた小動物たち」も、現在書の中には戻れません。

 小動物たちは現在、揺籃とパレットのもとに集められていますが、ベスティに属する存在であるため、ベスティや幻獣たちの存在を感知することができます。
 なので、この動物を伴って、洞窟の中に入っていくことが可能です。彼らがベスティの居場所を探り出すレーダーの代わりをしてくれるからです。
 また、いずれかの幻獣を探して保護するもしくは戦う、ということがしたい場合も、それにも応じて、PCの希望を酌んで幻獣の居所を探ってくれます。
 ただ、幻獣との戦闘などになった場合、怯えて逃げ出したりすることもあるのでご注意を。

 貸出可能な小動物は以下の通り。


(鳥)ハト、カラス、トキ、キジバト、フクロウ、オウム、鶏
(動物)ハリネズミ、ウサギ、リス、犬、猫、モグラ
(やや大きめ)鹿、イタチ、キツネ、猿、ヤギ


 借りたい方はアクションに希望の動物を書いてください。かぶっても2匹目までは雌雄一対いるとしてOKです。万が一それ以上被った場合はこちらで抽選させていただきます。
(気になる方は第2希望まで書いていただけると助かります。)
 借りたいけど特に希望はない、という方は、こちらでランダムにお貸しします。
 借りずに行く、というのももちろんOKです。ただ、ベスティや幻獣の発見はその分困難になります。


【白颯について】
 本文にて説明したとおりです。鷹勢から保護の依頼が出されています。
 しかし現在、玄王獣に体を乗っ取られて、正気を失ってる状態です。
 現時点で確実に、玄王獣の霊を白颯から除く方法は、祠を復元することによる再封印です。
 石盤によると祠の封印は「地水火風」の気によって維持されるようですが、どのように取り入れていたのかは、現地に行ってみないと分かりません。 


【注意すること】
 幻獣及び小動物たちは、ベスティの魔力の具現化であるため、戦いや瘴気でこの場で倒れることがあっても永遠に消滅するということはありませんが、魔力が削がれることになるためベスティのバリアの強度も減退し、彼とフェニックスたち彼の中の動物が危機に近付くことになります。

 揺籃とパレットは、基本的に洞窟の入り口にいます。保護した動物たちの管理と、壊れた石盤からそれ以上のことが解読できないかという挑戦をしています。
 ただし、戦力が足りないなどの場合、必要に応じて揺籃が「黒い獣」(前回のリアクションや、マスターページを参照)を内部に放つ可能性があります。
 今回は契約者と敵対していないので、黒い獣がPCに対峙することはありませんが、「相手の恐怖する姿を纏う」のはこの獣の性質なので、出会ってうっかり目を合わせて恐怖してしまったりするとその性質が自動的に発動します。これを利用して本筋と関係ないアクション仕掛けたい人はぜひどうぞ(かけていただければ必ず獣は出します)。

 ガイド本文に登場している山葉涼司は、鷹勢の依頼を契約者たちに伝えただけで、リアクションには登場しません。


 長々書いて申し訳ありません。皆様のご参加をお待ちしております。
 

▼サンプルアクション

・玄王獣を追う

・幻獣と戦う、もしくは保護する

・再封印に備えて祠を直す

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2012年10月23日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2012年10月24日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2012年10月28日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2012年11月07日


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