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断崖に潜む異端者達

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断崖に潜む異端者達

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シナリオガイド

明かされる過去……かつて金鋭峰が進めていた計画とは!?
シナリオ名:断崖に潜む異端者達 / 担当マスター: 水無月へる



◆シャンバラ教導団本校舎・会議室◆

「シャンバラ国軍参謀長の羅 英照(ろー・いんざお)だ。
 今回の作戦は私の指揮下で行う事になった。よろしく頼むのだよ」

 ホワイトボード、そして作戦の説明を図解で行うためのシミュレーター。
 それらを背にするようにして、羅英照は立っています。
 作戦を説明する彼の眼前には、たくさんの簡易テーブル付きパイプ椅子が設置されていて、
 そこに座って話を聞く、関係者達の姿がありました。

「諸君らも知っての通り、2ヶ月前のシズレの一件から、
 教導団の情報科では、ジュリエンヌ商会の親組織であるエレクトラについて、秘密裏に調査を進めていた」

 ……ジュリエンヌ商会
 新興都市シズレで起きた事件がゴシップ誌などで騒がれた事もあり、
 その悪名はまたたく間に各地に広まっていました。
 後のシズレは徐々に復興の兆しを見せているものの、依然として苦しい状況は変わっていません。
 彼らが残した傷は、思いのほか深かったのです。

 しかし、そのジュリエンヌ商会を裏から操っていた更なる黒幕、
 鏖殺寺院の一派・エレクトラの存在は、まだ公になってはいません。
 正体不明の組織なので、無用な混乱を避けるため、今は極秘に扱われている情報なのです。

 教導団は、暗躍を続けるエレクトラに対して報復を与えるべく、
 また、実益的な面においては彼らの技術力を吸収するために、ずっとその行方を追っていました。

「そして集まってもらったのは他でもない、そのエレクトラの件である。
 情報科が行っていた長い調査の末、
 遂にエレクトラが保持する重要拠点の場所を突き止める事に成功した!」

 ざわ……と一瞬だけどよめきが起こりましたが、すぐに沈黙が戻ります。

「もう察しはついているであろうが、
 諸君には私と共に、その拠点を制圧する任務に就いてもらう。
 敵拠点の設置場所は、ツァンダ東の森とタシガン空峡の境となる断崖の中腹だ。
 以降はこの拠点を、断崖の拠点と呼称する」

 羅英照の声に応じて、シミュレーターに詳細なポイントが映し出されます。
 ツァンダの東に広がる森の北端にある拠点……
 見ると、どうやら断崖の拠点への侵入ルートは2つあるようです。
 森側からは、大樹の根元に巧妙に隠された下り階段が。
 タシガン空峡側からは、岩盤に遮られて上からは確認しづらいものの、
 直接飛空挺を乗り付けられる発着場です。

「これらの侵入地点をまず占拠し、退路を断ったうえで一気に制圧を仕掛けるのだよ。
 今までのように他校の契約者達にも協力を要請し、
 合同部隊による挟撃で確実に制圧を成功させる!」

 今度はわっと歓声があがりました。
 敵がこちらに気がついていない以上、
 作戦通りいけば、完全に意表を突くことが可能な状況です。
 羅英照は一度頷くと、その場を制するように手をかざして、

「だが、油断は禁物だ。
 拠点内の構造については未知の部分が多いうえ、ある筋の情報によると、
 エレクトラの構成員は皆、技術力の高さを利用した特殊なスキルを用いるらしい……
 他にも、妙な兵器を持ち出してくる可能性もある。交戦になった際は十分に注意してもらいたい。
 ―――公募に応じて集まった契約者達にも、この事は十分に広報してくれ。以上だ!」


 こうして、教導団の部隊と契約者達による、みたび目の合同作戦が開始されることになります。
 作戦開始地点は、ツァンダ東の森のなか、
 断崖の拠点への侵入地点から、少し離れたポイントに設置された臨時野営地―――
 そこには、各学校から集まった契約者達の勇姿がありました。
 ……反撃の火蓋が、今、切り落とされようとしている。





◆シャンバラ教導団本校舎・某室◆

 話は少し遡ります。
 作戦についての説明が行われている間、とある部屋で待ち合わせた2人の人物がいました。

「まず確認させてほしいんだ。
 IRIS計画(あいりすけいかく)―――この名前に聞き覚えはあるか?」

 その内の1人、シュヴァルツが切り出したのは、そんな言葉でした。
 エレクトラ追跡の件で話がある……
 そう聞いてやってきた金 鋭峰(じん・るいふぉん)は眉をひそめて、

「確認を返すようで悪いが、それはエレクトラに関係ある話なのか?」
「あぁ」

 金鋭峰の質問には、簡潔に要領を得た回答が返ってきます。
 それを受けて、少し沈黙が続き―――

「……IRIS計画か。懐かしい響きだ」

 顔をあげた金鋭峰は、当時を反芻しながら語り始めました。

「聞き覚えも何も、それは私自身の手で進められていた計画であろう。
 私が紅生軍事公司を立ち上げて、しばらくした頃に立案したものだ。内容も当然覚えている。
 結論から言ってしまえば、
 IRIS計画とはパラミタに入場可能な地球人を、人工的に作る計画だったのだよ」

 つまり彼は……契約者に代わる存在を作ることで、当時最大の難問であった、
 地球人はパラミタでの活動を拒絶される問題を解決しようとしたのです。
 今でこそ契約者たちが活動して回るパラミタですが、
 IRIS計画が進められていた時期は、契約の適正や条件が曖昧であり、少数の契約者しか存在しませんでした。

「私はそんな中、いずれ自分もパラミタに進出する事になると直感していたのだよ。
 実際、中国共産党に命じられるという形で、その時はすぐに訪れた。
 だが、やはり当初は契約者の絶対数が無いため、人員不足という壁に直面した……
 そこで、紅生軍事公司の同志を共にパラミタへ渡す事ができれば、
 より円滑に事を運べるようになると考え、IRIS計画の実行に踏み切ったのだ。
 ……特に羅 英照(ろー・いんざお)の存在が大きかったな」

 羅英照は契約ができなかったというのは、一部では有名な話。
 明確な理由はわかりませんが、おそらく適正が無かったのでしょう。
 金鋭峰のために動きたい彼が、共にパラミタに渡ることはできなかった問題……
 IRIS計画が実れば、合わせてその事も解決できたわけです。

「人員不足を補いつつ、信頼できる参謀として彼をパラミタへ連れていきたかった。
 そんな二重の動機があって、団長さんはIRIS計画を立ててたんだな」
「そういうことだ。
 しかし、IRIS計画の目的である地球人のIRIS化は、予想よりも難航してしまってな
 詳細については省くが、過程の一部に人道的な問題もあり、必要な素材も入手困難だったのだよ」

 なるほどね……とシュヴァルツは左の手のひらを見つめて呟きます。
 彼の左腕は全体が義手でできているので、その仕草は少しぎこちないように見えました。
 そしてシュヴァルツは顔をあげると、

「で、その後のIRIS計画は、契約者の数が増えるにつれ少しずつ予算が削減されていき、
 強化人間の技術が先に実用化の目途が立った事で、完全に廃案になった……だよな?」

 金鋭峰は、彼にしては珍しく驚いた表情を浮かべる。
 本来はIRIS計画自体が紅生軍事公司の中で極秘に進められていたものなのですが、
 どうしてこの男はその存在だけに留まらず、末路まで知っているのか……?
 しかし、その疑問はシュヴァルツが発した次の一言で掻き消えます。

「IRIS計画は生きてる」

 瞬間、金鋭峰の中で全てが繋がりました。
 新興都市シズレに根付いていたエレクトラの支部『ジュリエンヌ商会』……
 なぜ連中が、あそこまで高い技術力を保持していたのか?
 教導団管轄下の研究所で起きた事件にしても、
 外部犯は犯行を読み取られぬよう、建物全体に【サイコメトリ】を妨げる偽装工作を行っていました。
 ですが、ただの細工や契約者が扱うスキルには、その方法は存在しません。
 なら……通常では考えられない異端な方法によって、それは行われたということ。

「まさか、エレクトラの正体は―――」

 IRIS計画が実った場合。
 つまり、地球人のIRIS化が成功した場合、
 被験者は、契約者とは異なる未知の力を手にする可能性がある……
 金鋭峰はIRIS計画を担うプロジェクトチームから、かつてその報告を受けていたのです。

「私が見限った、IRIS計画の残党だというのか……!?
 打ち切られたはずのIRIS計画を密かに続け、独自に完成させた組織がエレクトラ……
 そしてIRIS化した地球人を使って、通常では考えられないような事件を起こした?」
「……それだけじゃない。
 連中は、保有していた技術力をエサにして各地の鏖殺寺院を取り込み続け、
 徐々に大きくなっていったんだ」

 それが、今のエレクトラなのでした。
 ですが……重要なのはそこではないのです。
 作戦開始の時まで猶予も少ない。金鋭峰はいきなり核心を突きます。

「シュヴァルツ君。
 君が何者なのか、なぜ作戦開始直前の今というタイミングで話を持ってきたのかは、この際捨て置く。
 ただ一つだけ教えてほしいのだよ。
 こうまでして反社会的な活動を繰り返す組織エレクトラ……連中の目的は、……なんだ?」

「―――…………復讐


担当マスターより

▼担当マスター

水無月へる

▼マスターコメント

初めての方は初めまして、これまでのシナリオに参加してくれた事のある皆様は、お久しぶりです。
ゲームマスターの水無月へる(みなづきへる)です。

本シナリオは時系列的には『新興都市シズレの陰謀』の続きになりますが、
2ヶ月という長い期間が空いています。
また、これまでエレクトラを捉えられなかった教導団がいよいよ反撃に出る回となっており、
ほとんど新シナリオと見てもらって差し支えありません。
誰でもどしどしご参加ください!

※ガイド中に出てくる固有名詞について調べたい場合は、
 へるのマスターページを見て頂ければ、簡単な説明が記載されています。
 もっと詳しく知りたいという方がもしいましたら、
 既存シナリオの『紅き閃光の断末魔』および『新興都市シズレ』シリーズに目を通してみてください。


■アクションについて
今回の作戦では教導団の部隊は二手に分かれ、
断崖の拠点のツァンダ東の森側出入り口、およびタシガン空峡側発着場を封鎖します。
その後は包囲網を徐々に狭めていく形で、拠点内を完全制圧する目論見のようです。
ただ、その動きだけでは、拠点内の敵に激しい抵抗を受けてしまう可能性が高いです。
その点を踏まえて参加PCは、

・どちらかの部隊に混ざり制圧戦に加勢する
・独自に拠点内へ侵入し、遊撃戦で敵を攪乱する
・拠点内の構造把握や、敵勢力の情報収集といった裏方を担う
・その他、思いついた行動があれば!

などの状況から開始することになると思います。

ここで重要なお知らせ!
どんなアクションであっても、タシガン空峡側から侵入する場合は飛行手段が必須となります。
必ず飛空挺系のアイテムや、飛行能力のあるペットなどをセットしてアクションをかけてください。
【レビテート】などのスキルでも可としますが、その場合はシナリオ開始時点で疲弊した状態となります。
これらのいずれもセットされていなかった場合は、自動的に獣人の森側からスタートとなります。

また、明確な行動指針がアクションに無い場合は、
アクションそのものが無効になってしまう恐れがあるのでご注意ください。


■断崖の拠点について
エレクトラが保持する重要拠点のようです。
情報科が掴んだ情報では位置を特定したのみで、内部構造については一切把握できませんでした。
よって未知の領域に踏み込んでいく作戦となります。
ただ、エレクトラは高い技術力を持つことが判明しているので、何が出てきても不思議はありません
そういえば、臨時野営地がある地点では、野営地の設置作業中から、
微弱な妨害電波のようなものが感知されているという情報があがっています。
その正体は不明ですが、断崖の拠点にいる敵が何かを仕掛けているのかもしれません。


■IRISについて
かつて金鋭峰が完成させようとしていた、IRIS計画の成果物。
人工的に作られたパラミタに入場可能な地球人です。
契約者でもなく強化人間でもなく、パラミタの拒絶を受けない第三の存在であるといえるでしょう。
今のところ、わかっているのはそれだけですが、
IRIS化した地球人は、契約者とは異なる未知の力を手にする可能性があるようです。


▼サンプルアクション

・森側から突入する!

・タシガン空峡側から突入する!

・個人で動いて情報収集!

・非常口がないか調べる!

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2013年07月22日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年07月23日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年07月27日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年08月07日


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