パラミタ上空500メートル。
大きなドラゴンが、真っ逆さまに落ちていきます。一対の大きな翼は傷だらけ、丈夫な鱗に覆われた胴体も傷だらけです。
激しい戦闘の末、ドラゴンは満身創痍のまま墜落。場所はシャンバラ地方、イルミンスールの森とサルヴィン川の間です。
もうもうと砂埃が舞う荒野の中、ドラゴンは息を荒げて、身体中の傷口からは血が流れています。
「きゅー」
と、大きなドラゴンのお腹のあたりから、身体の小さなドラゴンがひょこっと出てきました。ドラゴンの子供です。子供でも体長は約1.5メートル。強力なブレスと鋭い爪牙、硬い鱗を持つ立派なドラゴンです。
「ぴー、ぴー」
子のドラゴンは、親ドラゴンの顔に鼻を擦り付けて、甘えています。
親ドラゴンはか細く声を出しますが、力尽きたのか、動けません。
実はこのドラゴン親子、もう何日もまともな食事にありつけていないのです。親ドラゴンは食べ物を見つけても真っ先に子供に食べさせ、外敵と出会ったときは子供をかばって攻撃を受け続けてきたため、衰弱し、ぼろぼろです。
「…………!」
子供ドラゴンが、何かを察知しました。
振り向くと、小型の獣の群れが近づいてきています。
「グルルル……」
子供ドラゴンは、親ドラゴンの前に立ちふさがり、火炎ブレスを一発お見舞いします。
突然の高熱攻撃に驚いて、獣たちは慌てて逃げていきました。
「シャーッ! カーッ!」
威嚇し、精一杯吠えて、子供ドラゴンは戦う気満々の様子です。
この落下したドラゴン親子を保護しようといろいろな団体が接触しましたが、この子供ドラゴンが大暴れするため、追い返されてしまいました。しかも今の季節、荒野はとても寒く、親ドラゴンの大怪我した身体はどんどん生命力を奪われていきます。そしてこのドラゴンの肉を食らいに、大型の獣、ゾンビモンスターが出現。子供ドラゴンだけではいつまでも守りきれないでしょう。
どうか、このドラゴンの親子を救ってください!
そんな文言で各地の町にビラが撒かれ、ネット上にも書き込まれてました。猶予はそれほどありません。たとえドラゴンでも消えようとする命を救おうとしてくださる方を募っています。
寒さと飢えで衰弱死するか、魔物たちの餌となるか。ドラゴン親子のそんな悲劇の運命を、覆してください!