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真冬の空と落ちたドラゴン

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真冬の空と落ちたドラゴン

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序章

 寒空のパラミタ、雪が降っていないだけマシの冬の日。それでも、傷ついた身体はその寒さにみるみる体力を奪われていく。
 サルヴィン川とイルミンスールの森との丁度中間地点に、そのドラゴン親子はいた。
 ヒトと同じくドラゴンにもいろいろな種族がいる。遠目に見ても子供はまだ小さく、体長は約1.5メートル。その体は親の体を単純に小さくした形に近い。炎は吹けるようだが幼い故に威力はそれほど高くない。爪も牙も鋭く、人間にとっては充分脅威だが、大自然の前では戦闘能力はまだまだ未熟だ。
「シャーー!」
 それでも子供は、血の匂いに引かれて近づいてきた肉食の獣を威嚇。ブレスを吹きかけて追い払った。
 しかし、はたから見れば分かる。それは無駄な努力だ、と。
 今、彼ら親子の周りには、親ドラゴンから流れ出る血の匂いに引かれた獣と、新鮮な血肉を求めてやってきたアンデッドモンスターが集まって来ていた。それは次第に数を増やしている。このまま親子が数の暴力に呑まれるのは、すでに時間の問題だった。
 そしてやがて、四方八方から獣とアンデッドの群れが迫り来る。
 ドラゴン親子まで距離15メートルまで近づいてきたその時、天空からまばゆい光が敵に降り注ぐ。
「うふふ」
 魔術系スキル・裁きの光。降り注いだ光は着弾と同時に弾け、あたり一帯の敵を吹き飛ばす。その向こうで、爆風でなびく帽子のつばをつまんで支える女性の姿があった。
「いつだって魔女はきまぐれなもの、ですわ! 主、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)に代わり、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)参上、ですわ!」
 エリシアは得意げな顔で、大声で名乗りを上げる。爆発とこの声に反応した一部の敵勢が、そちらに注目した。
「そぉれ、もう一発お見舞いです!」
 続いて、ワルプルギスの夜が発動。闇の炎が駆け巡り、近くにいたアンデッドモンスターをあっという間に焼き尽くす。
「さっすが魔女! すごい破壊力! やっぱり頼りになるわ!」
 味方全体に防御の魔法を掛ける赤い髪の女性が感嘆の言葉を漏らす。
「さて、オートガード、オートバリア展開完了! 道も開けた! 行くわよ皆!」
 リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)の号令と同時、10人ほどの契約者たちが突撃。
「まずはドラゴンの周囲の敵を片付けて安全を確保するわ! 子ドラの攻撃に気を付けて! 間違っても反撃しちゃだめよ!」
「腕自慢の方々は防衛へ! すぐに診断と治療を開始します!」
 走りながら、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が叫んだ。

 かくして、ドラゴン親子の救出作戦が展開された。