シナリオガイド
大樹の歌、地の底の眠り――vsコクビャク、最終戦。
シナリオ名:【逢魔ヶ丘】戦嵐、彼方よりつながるもの:後編 / 担当マスター:
YAM
パクセルム島の戦局は大詰めを迎えようとしています。
コクビャクが手に入れようと躍起になり、守護天使たちが必死で守っていた『丘』の、謎の内部に潜入するための扉が、ついに開かれました。
何故そうなったのかは双方にも分かりません。
ただ、この『丘』を開くための鍵である『灰の娘』エズネルが姿を変えた魔鎧ペコラ・ネーラが、ばらばらになった状態で扉の前に落ちていました。
もう動かず、人の声にも反応しないペコラの生死は分かりません……
【1.戦局・大勢】
空中要塞から離脱した堅固な特殊素材製の特殊防護室は、守護天使や警察の砲撃を交わしながら『丘』の近くに降り立ちました。室内にいる幹部たちの指揮で、地上で戦闘をしていたコクビャク兵たちが、その周囲を固めます。
彼らのもとには、「『丘』が開かれた」という情報がすでに入っていました。
先の戦闘で多くが倒されたり捕虜になったりして、かなり人数が少なくなっています。また、要塞内の構成員たちは、潜入した契約者たちが隔壁操作したことによって居住区に閉じ込められたりしており、それを置き去りにして上陸したので戦力となることはもう望めません。
が、幹部たちの勝算は揺るぎません。
「頭数が減ったとて、『黒白の灰』噴霧計画が完遂されさえすれば関係のないこと。
全パラミタ住人が魔族化し、我等の下に下ることになるのは間違いのないことなのだから」
最高幹部である指揮官のゼクセスは、そう嘯き、残る配下の兵にこう指示しました。
「皆、よくやってくれた。辛抱もあと少しだ。
我らは今より丘に入り、中にある大転移装置にてこの灰を大陸全土の上空に転移させ、噴霧する。
それで、我らが積年の望みもついにかなえられるのだ。
ご苦労だが、皆には最後の大仕事が残っている。
我らが機械を動かすまでの間、敵の手からこの『丘』を守るのだ。
エルデルド副官にここに残り、指揮を取ってもらう。
よもやの場合に備え、この「改良型の灰」も少量残しておく。ほんの一握り程度だが、この島の連中相手には十分な量だ。
皆、頼んだぞ」
そうして、ゼクセス指揮官率いる幹部陣は、扉の前の鎧の残骸を横に蹴散らして、どかどかと丘の中に入っていきました――
【2.魔鎧による抗体製作】
一方、守護天使と空京警察の連合軍の陣営には、新たな天幕で俄か作りの仮設ラボができていました。
移動要塞から脱出してきた魔鎧グラフィティ:B.Bが、「黒白の灰」を無効化するため予め人体に投与する「人工抗体」製作の可能性が示唆されたからです。偶然のアクシデントから、自分の体を使ってその可能性に気付いた彼は、警察医療班の全面協力の元、検査によってその理論の正しさを実証しました。
「タァによって改良された『黒白の灰』は、適正な環境下以外では短時間で劣化してオリジナルの灰に戻る。
改良によって得られた性能は『魔族への影響を無効化する』ことだが、改良後も非魔族への影響は残っていることを考えると、改良は元の性能を損なわれないよう行われたはずだから、最大限にオリジナルの性能を残しているはず。
そこから、オリジナルにも、適正以外の環境によって性能が劣化するのではないかと考えられた。
先程、実際に改良灰を摂取した俺の血液を医療班が検査して、抗体の発生が確認された」
「まず、改良灰を魔族が摂取する。これは、魔族には何の影響もないから無事に済む。
そしてその灰を、体内で劣化させる。
これにより改良型がオリジナルへと劣化変性し、さらにそこから劣化が進んで無害なものに代わる。
1段階目の劣化である程度の抗体ができ、この2段階目の劣化に耐えうるというわけだ。
しかしこの抗体は完全なものではない。
だから、摂取した灰の成分は、脳や神経への影響を最小限にとどめるよう、神経系への吸収を極力抑制する必要がある。
体内に摂取しながら吸収は抑える――普通の種族ではまず無理だ。
これはつまり、理論上、魔鎧にのみ可能だということだ」
「正確に言えば、灰を摂取した魔鎧が「鎧形態」で、体内で灰を無害なものに変性させるということだ。その過程で抗体が製作される。
オリジナル灰を劣化させるには、改良灰劣化時の抗体を備えた生物の体内、という環境が必要だ。
だが、自らがオリジナル灰を吸収しないよう、生命体でありながら鎧化することで限りなく物質に近い状態になって耐えられる。
そして改良灰の特性を有効活用できる『魔族である』こと……
この条件を満たすのが、魔鎧なんだ」
そこまで言うと、B.Bはふうっと息を吐き、こう続けました。
「けど、俺の体から抗体は採取出来たけど全く足りないんだ。この島にいる人たちの分にすら。
さらに、万が一、コクビャクが広範囲にわたる噴霧を遂行してしまった場合を考えると……
今、培養を急いでいるけどやっぱり時間はかかる。
だから出来るだけ多くの魔鎧に、抗体製作に参加して貰いたい。
幸い、俺が持ち出した改良灰がまだ少しだけ、劣化していない状態のもので残っている。量は少なくても十分だ。
この灰に、俺から採取した抗体を混合し、摂取してもらう。それで俺が試した時より、灰の完全劣化までの時間は大幅に短縮される計算だ。
契約者の魔鎧なら、俺よりも体も頑丈で耐久力もあるだろうし」
「体への影響? うん、皆無ではない。多少は辛いよ。
精神的には……自分の体験から言うと、夢を見ているみたいな時間があった。幻覚を見ていたのかもしれない。
遠い昔の記憶の、幻を……」
【3.タァの望み】
幹部たちが脱出した空中移動要塞もまた、島の大地の上に降下しました。
潜入組の鷹勢、パレットらの連絡で、隔壁によって居住区に閉じ込められた構成員たちを身柄を確保するために、やがて警察が来るはずです。
幹部たちの造反によって完全にコクビャクとは切り離された奈落人幼女のタァは言います。
「コクビャクの、パラミタぜんじゅうにんまぞくかけいかくなど、ほんとうはさいしょからどうでもよかった。
ただ、とうさまのかいはつしたあの『灰』とひきかえに、わたしのけいかくをたすけてくれるというからとりひきした、それだけのこと。
わたしののぞみは、とうさまとかあさまをころした、パクセルムとうのてんしたちをくるしめること。
けど、いまは……ちがう。
もう、わたしののぞみは、とうさまのほんとうのしょうそくをしることだけ。
あの『丘』のなかに、そのてがかりがあるはずなんだ。
丘のなかには、このようさいをはこんだ『じくうてんいそうち』ときほんてきにはおなじつくり、でももっとだいきぼなてんいにたえる『だいてんいそうち』があるらしい。
そこに、とうさまがなにかをのこしているかもしれない。
わたしは、そこにいきたい。
そのためにひつようなのは、『灰の娘』のせいたいはをもつからだだ。
とびらはひらいたらしいが、まがいのペコラ・ネーラはバラバラになってしまったという。
……やはり、うゆき。あのむすめのきょうりょくがほしい。
かのじょでなければうごかせないものがあるかもしれないし、かのじょのセッションのちからでかんぶたちのそうちのあくようをとめられるかのうせいもある。
かのじょのたすけをかりて、丘のしんぶにさがしにいきたい。とうさまののこしたものをさがしに」
灰を改良してコクビャクに加担し、パクセルム島に戦乱を引き起こした人物です。
勝手な言いぐさかもしれません。いや、確実に勝手でしょう。
それでも彼女は彼女なりに、切実な望みだったかもしれません。
その話を、鷹勢たちから警察陣営に入った連絡を聞くという形で知ったキオネ・ラクナゲン(きおね・らくなげん)は、唇を噛みました。
卯雪は先程意識を取り戻しましたが、大事を取って休ませており、現在の状況の説明をこれからゆっくりしていこうかといったところでした。
――彼女を利用しようと拉致して、散々振り回した相手の言うことです。勝手すぎます。
(でも……)
ただ、タァの話を聞いた時……
(もし卯雪さんがそれを聞いたら……絶対悪事に加担はしない、という約束をさせたうえで、協力する気になるかもしれない)
やや気性は強いが、自身も家族に対する情が厚く、人情家で弱い者を見捨てるのが嫌いなら卯雪なら……
(もしかしたら、だけど……)
一方、警察の陣営に収容されていた、意識不明のヒエロ・ギネリアンが、一時的に意識を取り戻しました。
「ペンダントを……」
かなり体が衰弱しているためか、震える低い声で、ヒエロは付き添っていた医療班員に訴えました。
「あのペンダント……タァメリカに……バルレ、ヴェギエの嫡子、に……渡して、ほしい……」
体力が続かず、その言葉と共にヒエロは再び昏睡に陥ったのでした。
【4.大樹の根】
『丘』の中には、扉が開いたことで作動し始めた機械がありました。
しかしそれらは、何かの計器や内部の照明を点灯させるための発電機といった、さほど重要ではない機械ばかりです。
地下へ続く階段があります。幹部たちはそこを降りて行きます。
長い長い、地の底まで津漉いていくような、深みへと降りる階段です。
その底に、大転移装置があるのです。
突然、丘の上の折れた大樹が、めきめきと音を立てて成長を始めました。
枝がざわめき、葉が鳴ります。
そして、根が波のようにうねり、太さを増すと、地中に向かってぐんぐんと伸び始めたのです。
丘の中を突き破るように、地中へ、地中へと……
まるで、降りていく幹部たちを追いかけるように……
丘の入口は、残ったコクビャク兵によって守りを固められています。
が、荒ぶる根が地中へと先端を潜らせていく時、根と地面の間に隙間のような穴が出来ました。
人間が根を辿ってどうやら中に入っていけなくもなさそうな、それほどの大きさです。
――私は私の、出来る事をするからね、キオネ……
大樹からは、あの魔鎧と同じ気配がしていました。
担当マスターより
▼担当マスター
YAM
▼マスターコメント
こんにちは、YAMです。
【逢魔ヶ丘】シリーズ、ラストになります。よろしくお願いします。
今回だけの参加という方も歓迎いたします。
【1.戦局・大勢の補足】
前のシナリオに比べてコクビャクの兵数はかなり減っています。
丘の周囲、特に扉周辺を固めて守っています。
しかし、窮地に陥ると黒白の灰を使ってくる可能性があります。
(先のシナリオに書かれたところのコーティングはすでに済ませた、改良型の灰です。非魔族にのみ摂取者を魔族化する効果があります)
【2.魔鎧による抗体製作の補足】
抗体が完成すれば、予め人体に投与することで灰を摂取した場合でもごく軽症の内に影響を無効化することができるようになります。
また、備えずに摂取した場合でもその後の治療にも大いに役立つでしょう。
魔鎧LCが抗体製作に参加する場合、抗体ができるまでの間、魔鎧は鎧形態でいることになります。
その間MCが装着する、しないは自由です。
但し、装着して戦闘に出ることはできません。魔鎧は抗体製作に精神的集中も体力も費やすことになるからです。
MCが戦闘に出る場合は、抗体製作に参加する魔鎧LCとは別行動でお願いします。
製作中に精神力の低下で幻覚を見るかもしれない、という件ですが、遠い昔の、魔鎧になる前の記憶に関係した幻覚を見る感じになります(PL情報)。
幻覚を見るアクションをご希望の方は、具体的な内容を書いてください。
特に記述がない場合は幻覚の内容は省きます。精神力が強いので幻覚は見ない、というのでももちろん構いません。
【3.タァの望みの補足】
タァは大地に降下した要塞内にいる状態から始まります。
先のシナリオにあった通り、ヒエロが持っていたペンダントには、何かの機械のプログラムがインプットされています。
『バルレヴェギエ家の家屋管理責任者』から、『偉大な技術者ヒエロ・ギネリアン』に託したものだという文言も入っています。
【4.大樹の根の補足】
丘の中に伸びていった太い根は5本ほどです。
根と土の間に空いた穴は、人一人がやっと入れるくらいの広さだと思ってください。
ところどころ広くなったり狭くなったり、また丘の内部の中に侵入していったりしています。
根は、幹部たちを追うように絶えず下へ下へと進んでいっています。
丘の中に入ろうとする場合、扉から入ろうとするとコクビャク兵との戦闘は免れませんが、根の穴を使おうとすれば、地上での戦いの回数は減る、もしくは上手く避けられるという展開も考えられます。
【NPCの動き】
ヒエロは未だ昏睡中です。
ペコラ・ネーラは生死不明のまま、丘の扉付近でバラバラの鎧の状態になっています。
(ただ、大樹からは彼女の気配のようなものがうかがえます)
グラフィティ:B.Bは、仮設ラボで抗体作りに関わっています。
キオネは、安全地帯に警察が新たに設けてくれた天幕で卯雪に付き添っています。
今後どう動くかは卯雪次第のようです。
目覚めた卯雪はすこしぼうっとしていますが、検査の結果特に体調に問題はないようです。
刀姫カーリアは、前回大剣を破壊されたショックからまだ抜け出せていません。
落ち着いたら、何事も起こらない限りは、B.Bの求めに応じて抗体作りの手伝いに加わることでしょう。
鷹勢とパレットは、タァの傍にいます。
彼女の主張を受けて今後どう行動するか考えているようです。
【その他】
・MCとLCの別行動は許可しますが、別々の場所で連絡を取り合い連携するアクションの場合は、その連絡を可能にするスキル等をきちんと装備してください。
・前編に参加してくださったPC様で、要塞に入ったままの状態で前回終わっている方
…要塞は地上に降りており、要塞内でのコクビャク側からの攻撃や圧力はないので、そこからの移動は自由です。
(要塞にいるタァにも、PCの移動を止める強制力はありません)
お好きな場所に移動した設定でアクションをおかけください。
▼サンプルアクション
・丘周辺のコクビャク兵と戦闘
・木の根の穴から丘の内部に潜入
・抗体作りに参加(※要魔鎧LC)
・タァの行動に絡む
▼予約受付締切日
(予約枠が残っている為延長されています)
2014年05月03日10:30まで
▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)
2014年05月04日10:30まで
▼アクション締切日(既に締切を迎えました)
2014年05月08日10:30まで
▼リアクション公開予定日(現在公開中です)
2014年05月20日