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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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リアクション

 
「2人ともデート中だったから気が引けたけど、受け取ってくれて良かったな」
 大野木 市井(おおのぎ・いちい)の言葉に、マリオン・クーラーズ(まりおん・くーらーず)はこくっと頷いた。
 マリオンは友人である姫宮 和希(ひめみや・かずき)各務 竜花(かがみ・りゅうか)にチョコレートを持っていったのだ。
 和希はミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)と、竜花は魚住ゆういち(うおずみ・ゆういち)とデート中であったが、きちんと渡すことが出来た。
「しかし、恋か……」
 市井は過去に手痛い失恋を経験したことがあり、恋愛に対して引いた姿勢をとっている。
 だから、デートする彼女たちを見て、いろいろと思うところがあったのだが……ちょっと安心した点もあった。
 片思いのマリオンに、市井自身がチョコをもらってないのに「配り歩きに同行してください」と言われて、もしかして、お世話になっている人と言いながら本当は……ということを考えないでもなかったが、2人ともちゃんとした相手がおり、それは杞憂だったようだ。
「なあ、ところで」
 今日はこれからどうする、と市井が聞こうとすると、マリオンが立ち止まってどこかに視線を向けていた。
「どうした?」
「いえ、ああいうのをえーと…………逆ハーレムと言うのでしたっけ?」
 頭の中の辞書を検索し、マリオンが単語を選び出す。
 マリオンの視線の先には、セレネ・メルクリウス(せれね・めるくりうす)シリウス・レインシーク(しりうす・れいんしーく)不知火 白夜(しらぬい・びゃくや)に囲まれた如月 空(きさらぎ・そら)がいた。
「バレンタイン限定の美味しいチョコが食べた〜い!」
 という空のおねだりに付き合わされ、4人で空京に出て来たのだ。
 しかし、実はシリウスも白夜もバレンタインについてはあまり知らない。
 空が行きたいというので、白夜は「……オレも、行く」といって付いてきて。
 空に惚れてるシリウスは「ッフ、俺がいなくては話にならんな」とえらそうに付いてきたのだ。
 4人の中で一番の常識人であるセレネは全員の引率として前に立ち、お勧めのお店に3人を連れて行った。
「ほら、空ちゃん、シリウスさん、白夜さん、こっちこっち」
 おれが居ないとマジヤバそうだし、と思ったセレネの予想は当たり、場慣れしない3人はセレナがいないと、はぐれて迷子になりそうだった。
 セレネは何とか全員をはぐれさせずに買い物を終えさせることが出来、ほくほく顔の空を連れて、みんなで公園へと向かった。

「みんなのおかげでいっぱいチョコも買えたし、楽しかった〜! バレンタインフェアで内装もかわいくなってたね♪」
 白夜が運んでくれたチョコいっぱいの袋をあけ、空はご機嫌な笑顔を浮かべた。
 そのそばでシリウスはセレネと話をしていて、シリウスはセレネにバレンタイン嘘情報を教えられていたのだが、「フ、フン。当然知っている」と言って、信じ込んでいた。
 セレネは密かに(ホワイトデーか来年のバレンタインが楽しみだなぁ)とか思っていた。
「運んでくれてありがとう!」
 空がお礼を言うと、白夜は「……」としながら、黙って頷いた。
 たくさんのチョコを開け、空はみんなに配りながら、ニコニコと笑顔を浮かべた。
「今日はすっごく楽しかったよ! またみんなで一緒にお出かけしたいなあぁ」
 みんなといるときが一番楽しいよ! というような空の態度と言葉に、セレネもシリウスも、そして表情を変えない白夜もうれしくなる。
 ただ付き合っただけでなく、セレネも甘いものは結構好きなので「限定品の中でもこれが美味い」とか言いながら、チョコを摘んだ。
「あ、この生チョコすっごいおいしい! 食べて食べて」
 自分が食べて美味しかったものを共有して欲しいのか、空がみんなにチョコを回す。
「はい、あ〜ん」
 チョコを摘んで差し出され、シリウスは真っ赤になってたじろいだ。
「ちょ、ちょっと待ってください。ここは公園で外なので……」
「? チョコを食べるのが、外かお部屋かって何か関係あるの?」
 不思議そうな空に、シリウスは口ごもる。
「……食べたくない?」
「い、いえ、そんなことは!」
 ちょっと寂しそうな空の表情を見て、シリウスは慌てて否定した。
 そして、恥ずかしくなりながら、口をあけて、空にチョコを入れてもらう。
「おいしい?」
「う、うん。とろけて美味しいです……」
 シリウスが照れてるのに気づかず、空はニコニコと笑みを浮かべる。
「あ、そうだ、白夜」
「?」
「さっきは重い荷物を持ってくれてありがとう」
 空が一生懸命背伸びをして、白夜の頭を撫でる。
 すると、珍しく白夜の表情が緩んだ。
「やっべ、おれ白夜さんの鉄面皮がはがれたの、はじめて見た!」
 セレネがそう言った途端、白夜の表情が戻る。
「あーーおっしい。ま、いいや、おれ、ちょっと飲み物買って来るなー」
 気を利かせたセレネが飲み物を4人分買いに行った。
 セレネが戻ると、空はみんなにこう明かした。
「お部屋にね、わたしがつくったチョコレートケーキ上がるの、セレネくんにもシリウスにも白夜にも食べて欲しいって思って、昨日、作っておいたんだ!」
「さすが空ちゃん! よくわかってんじゃん!」
 空の言葉を聞き、セレネが空の頭を撫で撫でした。
「ありがとう。みんなで帰って食べよう!」
 セレネとシリウスと白夜にぎゅっと抱きつき、空は朗らかな笑顔を浮かべた。
 シリウスはあたふたして一番照れたが、セレネと白夜は素直に抱きつかれ、しばらくみんなでぎゅっと抱き合った後、チョコケーキの待つ部屋へと戻っていった。